代表メッセージ

神田祭2025:江戸三大祭りのひとつに、地域企業としてダンクソフトも参加


今年(2025年)の5月8日から、東京千代田区の神田明神で「神田祭(かんだまつり)」が行われます。江戸三大祭りのひとつに数えられ、毎回30万人を超える人で町中が賑わう大祭礼です。今年はこのお祭りに、地元町内会の一員としてダンクソフトも参加することになりました。代表・星野も半被と帯の講習会に参加してきました。今回のコラムは、地域のお祭りに初参加するダンクソフトが、神田祭の魅力を紹介します。地元でのリアルな体験と、得意とするデジタル技術の化学反応はおこるのか?ダンクソフトの地域コミュニティにおける取り組みを紹介します。 


┃神田祭は、江戸三大祭りのひとつ、2年に1度行われる大祭礼 

今年(2025年)の5月8日から「神田祭」(かんだまつり)が行われます。山王祭、深川八幡祭と並んで、江戸三大祭りのひとつとされる東京を代表するお祭りです。京都の祇園祭、大阪の天神祭と並んで、日本の三大祭りのひとつにも数えられています。2年に1度、東京・千代田区の神田明神で行われ、毎回30万人を超える人で町中が賑わう大祭礼です。 

 

その起源についてはあまり明かではないようですが、江戸時代には幕府の庇護を受け、城内に祭礼行列が練り込んで、将軍による上覧もありました。庶民から「天下祭」として親しまれたそうです。 

 

お祭りは5月8日、神田祭の始まりを告げる神事、「鳳輦神輿遷座祭 (ほうれんみこしせんざさい)」で幕開けし、9日夕刻に「氏子町会神輿神霊(みたま)入れ」が執り行われます。 

 

この神田祭のハイライトともいえるのが、10日に行われる「神幸祭 (しんこうさい)」です。平安時代の衣装を身につけた絢爛豪華な大行列が神田・日本橋・大手町・丸の内・秋葉原の町を練り歩きます。午後には、趣向を凝らした曳き物を巡行する「附け祭 (つけまつり)」と合流し、数千人規模の大行列に膨らみます。  

そして一番の見どころが、11日に行われる「神輿宮入 (みこしみやいり)」。 

氏子の108町会、大小200を超える神輿が、揃いの半被を着た氏子たちに担がれて町内を練り歩き、朝から晩まで続々と神田明神に宮入りします。  

ちなみに神田祭は、昔は京都の祇園祭と同じように、山車(だし)が中心のお祭りでした。それが明治時代以降の路面電車や電線の普及とともに通行に支障をきたすようになり、現在のような町神輿が主流になったそうです。   

┃町内会の一員として、ダンクソフトが由緒ある祭りに参加 

 

今年は、ダンクソフトも、この神田祭に参加します。 

 

きっかけは、昨年夏に引っ越してきた新オフィスです。神田祭には氏子として108にものぼる町内会が参加するのですが、そのひとつに「神田須田町二丁目町会」があります。新オフィスが入居するビルがこの町内に位置しているんですが、ビルが自治会に参加していたようでした。ある日、ポストに神田祭参加の案内が届いていたんです。興味を持って、万世橋区民会館で行われた説明会に行ってみました。それがはじまりで、今年の2月頃のことです。 

 

私は、以前から「神田藍の会」を運営するなど、企業が地元コミュニティとつながりを持てるように活動してきました。まして伝統ある大祭に関われることは、地元にいるからこそ体験できる貴重なチャンスです。根っからの好奇心もむくむく膨らんできて、ぜひ参加してみることにしました。説明を聞いていると、話の端々に「粋」や「いなせ」といった言葉が交じり、そんな雰囲気にも刺激を受けましたね。   

┃お祭りに向けて開催される地域での講習会 

 

その後は、毎週水曜日にお祭りに向けた講習会が行われています。祭りに関わるしきたりや御神輿の担ぎ方など内容はさまざまです。

さすがに仕事もあるので毎回は参加できませんが、ある回では、半被を着る時に巻く帯の結び方を習いました。これは印象深い機会になりました。  

法被よりも、帯が難しいんです。帯の長さは4メートルくらいあり、それを2つ折にして腰のまわりに巻いていきます。最後に結んだ両端がV字型に上向くのが粋な結び方だそうです。両端が上を向く姿が縁起がよいという話でした。 

 

もちろん、祭りの時に着る半被も「神田須田町二丁目町会」のオリジナルです。町内会では約600着もの半被を用意しているそうです。神輿を担ぐのには、20人~30人かかるのだそうです。ただ重いので、しょっちゅう入れ替わりながら担ぐそうで、交代のためにも、多く用意しているのだそうです。 

 

ちなみに、この町内の昼間の人口は6000人弱。それに対して、夜間人口が600人ほどだという話を聞きました。東京都心部ではよく耳にする話ですが、人口減少のため、祭りの時には神輿の担ぎ手が少なくて苦心しています。昼間にそのエリアで働く人たちが参加すれば、若い担ぎ手も増えるかもしれません。また、町内会に関わっていなくても参加できる仕組みがあるようなので、興味のある人は、つてを頼ってどこかの町内会に尋ねてみてはいかがでしょうか。 

 

もう少しだけローカルな話をすると、神田須田町二丁目町会は、近隣にある「柳森(やなぎもり)神社」の氏子でもあります。お祭りの期間中、11日に柳森神社、12日に神田明神に宮入りします。 


神田明神の宮入りでは、各神輿が大鳥居の下を通りますが、なかには大型のために鳥居につっかかってしまい、脇を通らなければならない神輿もあります。その大きな神輿のひとつが、うちの町会の神輿であり、それが町の自慢のようです。「神田藍の会」には、お隣の「神田東松下町」のメンバーが何人かいます。話を聞いていると、うちの神輿のほうが大きいなど、時々、町内会同士のライバル心みたいなものが伝わってきます。そんな雰囲気が味わえることも、地域に参加する楽しみのひとつになっています。  

┃地域のコミュニティ活動「神田藍の会」から縁が深まり、神田祭へ 

 

私が、神田という地域とこのような関わりを持つようになったのは、「神田藍の会」が始まりです。今から数年前、「インターミディエイター・フォーラム」という集まりで、峯岸由美子さん(一般社団法人「遊心」代表理事)と出会い、意気投合してプロジェクトに参加しました。その頃、峯岸さんは、神田地域にあるビルの屋上を使って、子どもたちと一緒に野菜を育てる活動をしていました。詳しい話は省きますが、その野菜に代わって、神田にもゆかりの深い「藍」を地元の人たちと一緒に育てようと、「神田藍の会」を立ち上げました。2021年のことです。 

 

もともと神田は、ダンクソフトにとっては創業の地です。40年を超える活動のうち、半分ちかい歳月を、神田がある千代田区を拠点にしてきました。地域といえば、ダンクソフトはこれまで、全国各地で地域コミュニティと一緒にスマートオフィスや新しい働き方を推進するプロジェクトを実施してきた企業です。ですが、なぜか東京本社のある地域とは、なかなかそういう関係にはなりませんでした。そんな状況が、「神田藍の会」をきっかけに少しずつ変わってきて、今回の神田祭への関わりで、またステップアップしたように感じています。  

┃コミュニティFMというメディアから、新しい地域のつながりを 


ダンクソフトが携わっているもうひとつの地元コミュニティ活動があります。それが、「中央エフエム」です。 

 

これは、中央区を拠点とするコミュニティFMです。2010年に中央区が初めて始めたワークライフバランス推進認定企業にダンクソフトが認定されたことが縁で、翌2011年から、当時中央区にあったオフィスを使って、生放送の番組を始めました。以来、継続して番組をお届けしてきましたが、この千代田区須田町二丁目の現オフィスに移転した今も、オフィスをスタジオにして生放送の番組をやっています。 

 

名前は「中央エフエム」でありながら、現在は隣の「千代田区」を拠点に番組をやっているわけですが、私はこれをきっかけに中央区と千代田区を結ぶようなコミュニティづくりに貢献できたらと考えています。実際、地元の須田町二丁目にゆかりのある人物に登場してもらう企画も進行中です。 

 

コミュニティFMは、災害時には災害情報を伝える放送に切り替わるなど、地域コミュニティにとって重要な情報インフラでもあります。そんなメディアの可能性を探りながら、また新しい取り組みへと広げることができたら楽しいですし、地域貢献の輪を広げられるかと、実証実験を続けています。  

┃地域づくりと関係づくりの未来に向けて 

 

ダンクソフトでは、2024年7月、創業50周年に向けての「グランド・ナラティブ(大きな物語、未来構想)」をつくりました。その中の大きな柱のひとつとして「地域づくりと関係づくりの未来」をあげています。 

 

地域コミュニティとの協働については、これまでも私たちなりに経験を積んできましたし、ダンクソフトには「WeARee!(ウィアリー)」をはじめ、地域での取り組みを支援するユニークな製品が多くあります。そんなデジタルの力と、今年の神田祭のようなリアルなつながりをかけ合わせながら、グランド・ナラティブで掲げている「明るく楽しいデジタルの未来」に一歩ずつ近づいていきたいと考えています。 

 

「神田藍の会」の活動も年々多くの人たちが関わるようになり、地域コミュニティにしっかり根を落としつつあります。今年の2月には、地元の保育園の子どもたちも参加して、神田明神に藍の種を奉納しました。この子どもたちが大人になったとき、デジタルと社会の関係はさらに大きく進化しているはずです。将来、デジタルで便利に楽になった暮らしを享受しながら、自分たちで育てた藍で染めた手ぬぐいを頭に巻いて、神田祭の御神輿を担いでくれたら嬉しいと思っています。 

 

今年の神田祭では、私も町内会の半被をまとい、参加してみます。御神輿は相当腰にくるようなので、担ぐかどうかは迷いますね。地域の祭りに地元企業として関われるのは、貴重な経験です。ダンクソフトは、神田祭とちょうど同じタイミングに、年に2回の全社会議を開催することにしましたので、ダンクソフトのメンバーたちにも声をかけています。お祭りに参加しなくても、東京の町中を絢爛豪華な行列が練り歩く様子を目の当たりにするだけでも、忘れられない体験となるはず。皆さんも、ぜひ、季節の風物詩、神田祭を楽しみにしていてくださいね。 

 

ダンクソフトが、学生との共同学習プログラムを実施し続ける理由とその効果


「生涯学習」という考え方を知った、2003年のプロジェクト 

 

学生という存在を意識するようになったのは、おそらく2000年代の最初の頃です。ダンクソフトのプロジェクトとして、法政大学系のキャリア・マネジメント支援団体向けに、ウェブサイトを開発したことがありました。大学1年生用の講座で、早いうちから将来のキャリア・プランを考えていこうというものでした。文部科学省がキャリア教育を初めて審議したのが1999年ですから、早いタイミングでプロジェクトに参加したことになります。これが、若い人たちの可能性に関心を持ちはじめたきっかけとなりました。 

 

その監修者に、今では著名な労働分野の研究者になられた方がいました。その方から、色々と学ぶ機会を得たんです。特に、ポール・フルキエの書いた『哲学講義』という本に出会いました。フランスのリセ(高等学校)で、哲学の代表的な教科書になっている分厚いテキストです。これを読んで、「生涯学習」ということや、「余暇時間」の考え方について知り、気づきを得て実践をはじめました。 

2010年。テレワーカー第1号スタッフと、1歳半の息子とのオンライン会議 

 

もうひとつ、思い出深いエピソードがあります。 

ダンクソフトは、テレワーク先駆企業です。もともと2008年から、テレワークの実証実験を始めています。スタッフの働く環境を整備していたら、いつのまにか誰よりも先んじて、テレワークを実践していたのでした。Facebookができたのが2004年、YouTube日本語版が2007年、Twitter日本語版が2008年、iPhoneが日本に登場したのが2008年。背景としてはそんな時代です。

さて、このエピソードは2010年のことなんですが、産休明けのスタッフが、保育園が見つからず復職できない状況に陥りました。そこで、在宅ワークを基調にしたテレワーク勤務を提案し、初めてのテレワーカーがダンクソフトに生まれました。自宅とテレビ電話(ビデオ通話)をつないだとき、当時まだ1歳数ヶ月だったお子さんが、画面ごしに笑顔で手を振ってくれました。小さいお子さんとでも、あんな風にコミュニケーションできることが印象的でした。お子さんのデジタル面での可能性を感じ、子供たちが早いうちからデジタルに親しむ環境づくりに、さらに関心を持ちました。  

山口県萩市で行った中学・高校でのリモート授業 

大きな進展となったのは、2014年、2015年のプロジェクトです。当時、山口県萩市で、官公庁関連の実証実験に取り組んでいました。古民家を改修して、サテライトオフィスで仕事をする実験です。その流れから、同市の萩商工高等学校から声がかかり、情報デザイン科の教員とともに授業を行うことになりました。 

 

今から10年前のことですが、離れた地域をつないで中継しながら交流することが、まだまだ珍しい頃だったんです。高校生に、萩と東京など、多拠点を結んでコミュニケーションし、働くことができる環境をお見せしました。このこと自体が、萩の高校生たちにとって、未来をイメージできる価値ある取り組みでした。(萩での実証実験レポートP.21-22) 

 

これが呼び水となり、翌年には同市の明木中学校で、中学生への課外授業を行っています。高校での取り組みをご覧になった中学の校長先生から、熱心に直接依頼をいただきました。同じようなリモートの授業ではありましたが、実際に手を動かしてウェブをつくるという工夫を取り入れました。持参したパソコンと、東京にあるダンクソフトの本社を結んで、エンジニアと中学生たち15人程度が交流しながら、ダンクソフトのホームページの中に1ページ分の記事をつくるという授業でした。 

 

参加した生徒は大変楽しんで、大喜びでした。いまダンクソフトが「WeARee!(ウィアリー)」を使って支援している共同学習プログラムと同じような、インターネットによる町の紹介などの活動を行っていたのですが、中学生たちは、まさかウェブサイトを自分で作ることができるとは思ってもみなかったようです。そのデジタル体験は、彼らにとって大きいものでした。 

 

一方で、見ていた大人の先生たちは、遠巻きに見てあまり関心がない様子ではありましたが、生徒たちの活気のある姿を見て、こういうことが価値あることなのだと気が付いたはずです。これが、本プロジェクトを実施した意味だったと考えています。このときの写真は、私にとっても思い出深い貴重なものです。よかったら、こちらの萩実証実験レポートで、中学生と楽しそうな私の笑顔を見てみてください。 

インターネットと意欲さえあれば、国境を越えて学べる時代 

 

当時はスマホもタブレットも今ほど普及してなくて、リモートワークなどもほとんど知られていなかった時代です。デジタルに関わるリテラシーは、現在と明らかに違いましたね。 

 

ですが、いまの若い人たちは、インターネットを通じてあらゆる情報に上手にアクセスしています。インターネットがあれば、どこにいても、学び続けることができるようになりました。 

 

例えば、入社3年目となる当社の新卒スタッフは、中学生の頃、家ではスマホを持たせてもらえなかったそうです。そこで、親には内緒でスマホを入手。それが、「初めて文明に触れた感覚」を持てた経験となったというんですね。徳島で、家と学校の往復だけだったなかに、初めて都会の人と同じ情報に触れられて、世界が一気に広がった感覚を持ったと聞かせてくれました。彼は今も、徳島オフィスのスタッフとして、たくさんの情報に触れながら、自分を成長させる上で必要なラーニングを自発的に続けています。 

 

また、余談ですが、たまに観るおもしろいテレビ番組があります。『博士ちゃん』というのですが、毎回、大人顔負けの知識を身につけた子どもが登場します。たとえ若い人でも、意欲さえあれば、どこまでも学びを広げていける時代ですね。阿南高専の学生たちと話をすると、オンラインゲームの人気も、リテラシーの向上に一役買っている印象を持ちます。  

各地の生徒たちと関わり合って実感する、彼らの能力 

 

ID学園高等学校様 事例:
『高校生が地域に飛びだし、デジタル・スタンプラリーをつくる実践的な共同学習プログラムを開発 』https://www.dunksoft.com/message/case-idgakuen-wearee

最近も、ダンクソフトでは、若い人たちの支援に力を注いでいます。広域通信制高等学校であるID学園高等学校や、和歌山県田辺市の大塔中学校をはじめ、「WeARee!」を使ったさまざまな取り組みを進めています。このような活動を通じて、生徒さんたちと触れあう機会が私自身よくありますが、彼らからも、先にあげたリテラシーの高さをしばしば感じます。 

 

大塔中学校では、中学1年生でしたが、動画編集には慣れていて、簡単に動画編集をする様子を見せてくれました。一方で、情報を組み合わせてウェブをつくることは難しくて自分にはできないと、思い込んでいたようです。実際には、まちの魅力的な拠点を得意の動画で紹介するなど、「WeARee!」のデジタル・スタンプラリー機能を使って、ウェブ上にすてきなデジタル・スタンプラリーをつくってくれました。 

 

それに加えて印象的なのが、人前で発表するというプレゼンテーション能力に長けていることですね。おそらく練習をしているとは思うのですが、大人数の前で物怖じすることなく、しっかり自分の意見を伝えることができて驚きます。昨年12月には大塔中学校1年生のみんなが、田辺市の市長、観光協会会長の前でプレゼンテーションを行い、大成功だったそうです。 

 

※ この写真は保育園から承諾を得て掲載しています。

ぐっと年齢が若くなりますが、先日、ダンクソフトが関わっている「神田藍の会」の関連で、保育園の子どもたちに話をする機会がありました。2~3歳ぐらいの子供たちとの時間はまた、とても楽しいものでした。保育園の子供たちが大きくなって、地域をデジタルで支える人たちになってもらえる日が来るかもしれません。  

なぜダンクソフトはボランタリーに取り組むのか? 

 

これらの学生たちとの取り組みを、ダンクソフトではボランタリーに行っています。それは、これらの活動は、ダンクソフトの「グランド・ナラティブ(ビジョン)」を実現していくための、貴重な機会になると考えているからです。また、取り組みに関わっているメンバーたちも、実際にさまざまな刺激を得ているようです。 

 

メンバーたちは、学生たちの習得スピードの速さ、成果物の品質の高さに驚いています。一方、「WeARee!」のスタンプラリーに関わる機能について、「このような機能はあまり使わない」など思わぬ提案を受けることがあります。ランキングが分かるようにしたらおもしろいのではないかという大人からの提案に対して、競いあう必要はないので、なくてよい、とコメントがあったそうですよ。このように気づかされることも多く、アプリケーションの改善や、次の製品開発に向けていろいろなヒントを得る機会にもなっています。 

 

学生たちから寄せられる改善ポイントを、その場ですぐに再度プログラミングして修正する様子を目の前で見せることもあります。そうやってリアルタイムでやってみせると、学生にとってはその姿が驚きでかっこよく見えるようで、「おー、すごい!」という反応が返ってきます。これにはスタッフもうれしいようです。自分のプログラミング・スキルを人に見せることも通常あまりないため、若い人たちからの純粋なフィードバックに励まされています。このように学生と触れ合うことで、自分の仕事の価値を再認識する効果もあります。 

 

話題はプログラミングなど技術的なことばかりではありません。たとえば、スタンプラリーをつくるために、飯能(埼玉県)の街を歩きながら、将来の進路などの相談を受けることもありました。それが刺激になって、ダンクソフトのメンバーにとってのやりがいにつながったようでした。ダンクソフトでは、徳島県の阿南高等専門学校をはじめ、高専の学生たちとの連携を、以前から進めています。メンバーたちからは、「阿南高専との取り組みをモデルに、もっと全国に広げていきたい」と意欲的な提案も聞かれるようになってきました。  

未来を構想し、対話し、学生たちから大いに学ぼう 

 

昨年のノーベル賞でAI分野の研究が席巻したように、未来社会でデジタルが果たす役割は、今後ますます高まっていきます。インターネットの広がりとともに、新たな知識をどこまでも貪欲に学べる環境がありますから、少し手を伸ばせばノーベル賞を目指せるような時代です。私たちをとり巻く環境は、多様性が認められ、一人一人の可能性が活かされて、上下構造中心ではなくフラットになってきています。そんななかで、デジタルの進化は、年齢や性差などに関係なく、平等にやってきます。そうなると、頭が柔らかく、たくさんの時間を持っている中学・高校の学生さんたちは、優位です。デジタルの進化からよい面を積極的に取り入れて、もっとクリエイティビティをあげていけると考えています。 

 

さらに、リモートワークなどの拡大によって、私たちは地域に暮らしながら活躍できる環境も整い始めています。地域企業と学生たちがつながれば、旧来のビジネスをリノベーションでき、事業継承といった課題も解決できる可能性があります。ダンクソフトは、「スマートオフィス構想」を通じて、若い人たちと地域企業の連携にも積極的に取り組んでいます。 

 

『事例:「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に』https://www.dunksoft.com/message/case-hanamaru-kintone

数年前、当社のシステムを活用している沖縄・石垣島の学童クラブを訪れて交流する機会がありました。そのとき、私たちが学童をサポートするシステム開発を行っていることを知ると、小学生の子どもたちから、笑顔で握手を求められたんです(笑)。びっくりするとともに、すごく嬉しい気持ちになりました。島の子供たちと触れ合って、子供には未来があると痛感しました。 

 

日々ビジネスに携わっていると、視線がついつい大人に向きがちです。けれども、新しい変化は、若い人たちのあいだから始まります。私たちが彼らから学べることが、たくさんあります。学生たちと、今のうちから一緒になって関わっていることで、互いに刺激し、これからの時代感覚を持つことができます。どの企業・団体にとっても課題となっている人材採用の活性化を考えるなら、「まず彼らと語り合ってみること」からだと思います。将来の方向性を見誤らないためにも、彼らと出会い、対話すること。これは、これからをつくる経営者として実践したい、大切なことだと考えています。 

 

 

「地域企業再生チーム」を創る:心あるパートナーとともに

「地域企業」とは、地域に根差して地域に貢献する企業を言います。日本の場合は、中小企業であることがほとんどです。彼らは今、さまざまな課題に直面しています。解決するうえで、「デジタル」が欠かせないキイワードだと考えています。  



企業の店じまいが過去最大を記録 

 

ダンクソフトでは、2011年の東日本大震災以降、全国さまざまな地域で、地元の自治体や企業・団体と連携し、デジタルを活かした地域活性に取り組んできました。また、私自身が2代目の経営者で、創業社長からダンクソフトを事業継承し、40年の経営経験を積んできました。  

ダンクソフトの歴史はこちら
https://www.dunksoft.com/40th-history

ところが、データの示す日本の現状は逆で、いま地域から企業は姿を消し、事業継承もうまく進んでいません。  

帝国データバンクがこの1月に発表した、2024年の企業倒産の状況を見ると、全国どの地域でも、前年よりも件数が増加する傾向にあります。人手不足によるものが過去最大の件数、後継者がいないため会社を閉じるケースが、過去から2番目の水準の高さとのことです。こうした状況を見るにつけ、考えることがあります。  

それは、企業を閉じてしまうのではなく、企業を再生して存続させることについてです。  

参考情報:2024年の企業倒産は9901件、年間件数3年連続で大幅増 1万件に迫る ― 全国企業倒産集計2024年報(帝国データバンク プレスリリース) 

  

デジタルによる地域企業の再生へ 

 

地域の方々や、周りの経営者たちを見ていると、事業継承がうまくいっていないケースがありますよね。この現象は、地方になるほど多く、帝国データバンクのデータでも、事業継承ができずに会社を閉じるケースが増加しているのがわかります。中には、後継者不在を理由に、黒字でも、清算して片づけてしまう会社も出てきています。  

地域企業の再生について、地場の金融機関なども含めて、さまざまな方策を考えているようです。例えば、銀行が早期退職プログラムを作って、退職した銀行員の方たちが地域企業の再生に関与するケースが増えています。彼らはお金まわりのことには詳しく、会計には長けているかもしれません。とはいえ、必ずしも経営そのものや、ビジネス・スキームの見直しや刷新が得意なわけではありません。  

しかし、今日もっとも必要とされているのが、ビジネス・スキームの見直しや刷新であり、これをデジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼んでいるわけです。

  

デジタル企業のダンクソフトからすると、現代に即した企業再生でいちばん有効なのは、「まずはデジタル化する」ことです。大幅なコストダウン効果があるからです。

 

そして、コストダウンによってできたお金を、これからをつくる活動、つまりもっとクリエイティブな領域に再投資することができるようになります。 

2019年にご支援した徳島合同証券様のケースで、まずペーパーレスからデジタル化に取り組みました。3週間という短期間で、社内に温存されていた7トンの紙を、半分の3.5トンにまで減らすことができました。この結果、700万円ものコスト削減になり、これを他の事業活動に割り当てることができるようになったんですね。 

また、地域企業の再生ではかならずといっていいほど人手不足の話が出てきます。これも、デジタルをうまく使うことで、バックオフィスやウェブ制作や経理業務を、かなり省力化することができます。すべて自分たちで持つ必要はなく、外と連携するのがこれからですから、少ない人数でも会社は運営できます。さらに、オフィスをデジタル化することで新しい世代の採用にもつながります。これは「スマートオフィス」の話なので、後ほどとりあげます。  

 

地域づくりのデジタル・パートナーに 

 

地域から企業がなくなれば、地域から活気がなくなっていきます。雇用される人の数も減少していきます。ところが、地域にいながら仕事を続けたい若者が、一定数、存在します。若い人たちが地域で活躍するために、受け皿となる、価値ある地域企業があることは、とても重要です。 

そこで、ダンクソフトは、「地域企業の再生」に取り組んでいきたいと考えています。  

地方の企業やコミュニティが抱える課題として、少子高齢化や、若い人たちが地域外に流出していることは広く知られています。この結果、慢性的な人手不足となっています。これは後継者問題にも影響します。くわえて、地域経済じたいが縮小傾向にあり、地域内でビジネスがうまく回らないことも、指摘されています。これからの地域課題をていねいに解消していくために、「デジタル化」は重要な手段です。  

しかし、活用してみたいけれど知識がない、どこから手をつけてよいのかわからない、という方が多いのではないでしょうか。  

これは地域の中小企業ばかりでなく、地域コミュニティを支援する団体にとっても、似た状況だと思います。地域の支援団体が、自分たちのメニューのひとつに、「デジタル化」を組み込むことによって、活動の幅が大きく広がります。ダンクソフトでは、地域のために活動する団体、企業、個人の方たちのデジタル・パートナーとなることで、中小企業を支援し、地域社会を活性化することに積極的に関わっていこうと考えています。  

 

企業と地域を再生する、ダンクソフトの「スマートオフィス構想」 

 

私たちは、世に先駆けて、2011年以降、地域企業の働き方改革をお手伝いしてきました。今日、「改革とは、デジタルを積極的に導入し活用することですが、私たちが提供する企業再生のカギ、それが「スマートオフィス」です。私たちがパートナーの皆さんと協働するにあたっても、この考え方を重視しています。  

「スマートオフィス」とは、インターネットやデジタル・ツールを積極的に活用して、どこからでも働くことのできる環境を整えたオフィスのことです。メリットとして、ペーパーレス・キャッシュレス・サインレスの3つをあげています。この3つを入口としてスタートすれば、企業にコスト削減だけでなく、新たな可能性が生まれます。  


たとえば、感度が高い地域の若者たちを惹きつけることは、そのひとつです。 

ダンクソフトでは、徳島県の阿南高等専門学校(阿南高専)の学生たちと、スマートオフィス構想をテーマとした勉強会を、リモートで数回行っています。昨年夏には、数名の学生たちがダンクソフトのインターンシップに参加してくれました。彼らと話をしていると、リモートワークをはじめ、新しい働き方への関心の高さがひしひしと伝わってきます。地元を離れずに働けることも、新しい働き方ですよね。いままでは大都市で就職するのが当たり前でしたから。  

実際、ダンクソフトでは同校の卒業生たちがインターン後に入社して、徳島のサテライト・オフィスで働いています。彼らは地元・徳島を離れずに働くことを希望しているメンバーたちでした。非常に意欲的で、未来志向で、すでに社内で重要な役割を担っています。 

デジタル・ツールを上手に取り入れて、快適で効率的な職場環境を実現し、リモートワークといった柔軟な働き方を提供する。地域企業は、オフィスをスマートオフィス化することで、地域の優秀な若者を惹きつけ採用し、彼らが力を発揮できる環境を整えることができます。これは既存のメンバーにも刺激を与えることになります。デジタル化は、地域企業の再生にとって最優先の経営課題、つまり、次世代の採用と既存メンバーの活性化につながっています。  

 

ネットで、対面で。対話と協働のための場づくりを 

 

「スマートオフィス」って、どんなイメージか? デジタル以外をあげると、それは地域のさまざまな担い手をつなぐ対話の場なんですね。これはインターネットだけでなく、リアルな場づくりも含みます。  

先ほど例に挙げた徳島合同証券会社様のケースでは、ペーパーレス化を入口にデジタル化を推進した結果、ワンフロア丸ごとスペースを空けることができました。現在、その空いた空間を活用して、地域の企業やクリエイターなどが交流できるサロンづくりを進めているようです。ただし、交流が機能するには、ただ空間があればいいのではなくて、異なる人々を結んでプロジェクトを展開する「インターミディエイター」が必要でしょうね。ダンクソフトはデジタル支援とともに、こうした場づくり支援にも力を入れています。  

ダンクソフトでは、昨年6月に本社を移転しまして、この新オフィスが、まさにそうした場づくりのショーケースとなっています。

 

ここは、ペーパーレス・キャッシュレス・サインレスをすべて実現しているのはもちろん、オフィスに外部の方が出入りしても問題ないセキュリティ環境になっているのですが、ここで、地元 東京・神田エリアの有志と一緒に、「神田藍の会」という活動を行っています。神田は、江戸慶長年間に紺屋町がうまれ、染物屋があり、明治期には、手拭いや浴衣の一大産地だったそうです。その神田で「藍(あい)」を育てることを通じてつながる、地域住民や地域企業のネットワークが次第に広がってきました。私たちの新オフィスでは、この「神田藍の会」に関連するさまざまなイベント開催を通じて、地域にどんどん顔見知りが増えています。そもそも人的なつながりが希薄な東京で、ベッタリした間柄ではないが、声がけのできる“顔見知り”が増えるのはよいことですね。 

また、オフィスをスタジオにして、「バザールバザールライブ」というコミュニティ・ラジオの生番組を、月1回くらいのペースで配信しています。このラジオも、地域の企業や住民の方々の集いの場になっています。  

このように、オフィスに地域関係者が集うような場づくりが進み、ダンクソフトという企業のまわりに、賑わいが生まれています。意図したわけではありませんが、ダンクソフトを応援して、好きになってくださる方々も、増えてきたように思います。ですが、こうした温かい関係はとても励みになるものですね。情緒的な意味だけでなく、創造的な意味でも、「関係づくり」は、地域企業再生のキイワードです。関係づくりがあって、持続可能性も、共進化も実現するわけですから。要するに、スマートオフィスが重要なのはそれが“関係づくりの拠点”だからです。徳島合同証券様やダンクソフトは、その一例です。  

 

「地域づくり」と「スマートオフィス」を支えるデジタル・ツール 

 

ここでは、「地域づくり」や「スマートオフィス」を支えるデジタル・ツールをいくつか手短にご紹介します。  

「未来かんり」や「日報かんり」は、実際にダンクソフト社内でも使用しているツールです。「未来かんり」はクラウド上に、経営に欠かせない情報を一元管理するので、無駄や手間を省き、少ない人数での運営や、離れたメンバー同士の連携をサポートします。「日報かんり」は、Outlookに予定を入れるだけで、勤務状況がデータベースに入り、勤怠管理ができます。スタッフ同士で日報をシェアする機能で、離れたところで仕事をするメンバーがいても、チーム力をあげられます。 

この他、「WeARee!(ウィアリー)」は、バーチャルツアーやARカメラを使ったコミュニティ・イベントを誰でも簡単につくれるサービスです。今、「WeARee!(ウィアリー)」をデジタル・スタンプラリーとして使う方が増えています。   身近なところでは、ダンクソフト本社の近くにある五十(ごとう)稲荷神社では、WeARee!の順番待ち管理機能が、御朱印受付からお渡しまでスムーズに行うために活用されています。  

これらは、観光地のような地域の「場所」を地図にプロットする事例ですが、ほかにも地域の「人」にフォーカスするのもいいですね。地域の人々を通じて、土地土地の魅力を再発見できるような仕掛けとしても活用できます。  

「ダンクソフト バザールバザール」は、様々なグループや会員組織を運営する人のためのクラウド・サービスです。自治会や、地域づくりの団体などにも、気軽に簡単に使っていただけます。コミュニティ運営の効率化やコスト削減はもちろん、団体・コミュニティをまたいで会員同士のマッチングができるんですね。なお、Googleのようにデータを収集することはありません。先にあげた「神田藍の会」をはじめ、さまざまな地域コミュニティで活用されています。  

 

デジタルは、人と地域の自由のために 

 

いくつかのデジタル・ツールを紹介しましたが、地域づくりのカギはやはり「ひと」ですね。これからの場合、とりわけ「対話と協働ができる人たち」と「若いひと」が重要だと思います。 

 

まず、「若いひと」のほうですが、これは単に年齢の若さを意味するのではありません。若い方の中にも古い考えをする方たちがいますし、逆に年齢が高い方で、思考が新しい方もいます。マインドが若々しく、学ぶことをやめず、たえず新しいことに挑戦している方々のことです。人口減少が言われますが、「考え方の若いひと」は、あらゆる世代にいるはずです。そうした地域の“若者たち”を結び、いつでもどこでも楽しく働ける自由人のネットワークから、地域づくりを広げていきたいですね。人と地域の自由のために、本来、デジタルがあるわけですから。 

 

もうひとつ、対話と協働ですが、ダンクソフトには「インターミディエイター」と呼ばれる有資格者が3人在籍しています。立場の異なる人々を結び、新たなプロジェクトを展開する、新しいタイプの媒介者です。多様性・複雑性の許容度を高めることや、対話と協働の作法を学んでおり、未来志向の場づくりを実践できるメンバーたちです。これからは彼らが中心となって、「地域企業再生チーム」ができることを期待しています。  

2025年 年頭所感:Go Innovation(イノベーションしよう)

新年あけましておめでとうございます。
2025年の年頭にあたり、ご挨拶申し上げます



▎2025年:よりよいものをインターネットにのせていく 

 

2025年。インターネットが一般的に使われるようになって、30年がたちます。新しい年を迎えて感じているのは、ようやくデジタルによるパラダイム・シフトが本格化するだろうということです。最近の音声認識や生成AIの進歩は、目に見える変化のひとつです。そのほかにも、スマートフォン対応はもちろんのこと、グラスなどのウェラブルなデバイスなど、デジタルや通信の進歩によって、人が持ち歩ける情報の量が格段に増えました。この先、ホログラムのような技術も出てきます。こうした細かい技術の積み重ねの先に、おそらくここ何年かのうちには、人と人をつなぐコミュニケーションのあり方が劇的に変わっていくはずです。それに先駆けて、私たちダンクソフトも、ビジネスを先へと進めていくフェーズに来ていると考えています。 

 

世界に目を向けると、各地で紛争が続いています。これらの紛争でもドローンやAIといった最新のデジタル技術が利用され、私にとって心苦しいニュースでもありました。その様子がソーシャル・メディアで、簡単にリアルな映像として私たちに届けられるようになったことが、戦争・紛争をより身近な問題に感じるようになった理由のひとつです。インターネットに偽情報や誤情報をのせて、情報戦も同時に行われています。AIが核兵器のように使用されることを視野に入れ、世界では抑止力となる政策が検討されています。だからこそ、ダンクソフトは、よりよいものをインターネットにのせていく。社会のために、デジタルをよりよい方向に活用していきたいと思っています。  

▎デジタルの魅力を、人間とコミュニティの活性化に 

 

ダンクソフトにとって、昨年はメンバーが入れ替わり、新陳代謝が進んだ年となりました。私は、この変化をとてもポジティブにとらえています。デジタル・リテラシーの高い中堅層が一段と成長してマネージャーを担うことになり、各チーム間の連携が今までになくスムーズになってきました。それにつられるように、スタッフ一人ひとりの成長がそこここでみられ、Co-learning(共同学習)が進みました。スタッフたちが活性化し、成長したとても嬉しい1年でした。(人間の活性化) 

 

もうひとつの変化としては、オフィスの在り方が変わりました。昨年6月に本社が移転しましたが、これは創業41年のなかで、12回目の引っ越しとなります。2024年はこの新しいオフィスを、コミュニケーションの場として活かして、さまざまなイベントを開催できるようになりました。 

 

オフィスは、もはや集って仕事だけをする空間ではなく、相互にコミュニケーションをするための空間になっています。ここにきて、ダンクソフトの特色でもあるコミュニティとのつながりや多様な人たちとの交流が、いっそう活発になっています。 

 

例えば、年2回の全社会議は、全国から神田の新オフィスに集まって実施し、チーム力の向上に寄与しています。 

 

夏には、以前から関係の深い徳島県から、阿南工業高等専門学校の学生たちがインターンシップの一環として本社にやってきました。こうした若い人たちとの出会いも、ダンクソフトにとっては大切な経験です。 

 

また、2011年の震災後から継続しているコミュニティ・ラジオの活動では、ダンクソフトが協働する「神田藍の会」の取り組みを通じて出会った人たちとともに、神田界隈の情報を発信し始めることができました。神田のある千代田区にはコミュニティFMがないことから、防災のテーマも視野に入れ、地域コミュニティづくりに寄与しているのではないかと考えています。 

 

デジタルの力をコミュニティの活性化に結びつけていくことは、私たちダンクソフトが取り組むテーマのひとつです。2025年は、東京や徳島だけでなく、新たな地域や、コロナ禍で控えめになった全国の地域の皆様との関係を、いまいちど結んでいきたいと考えています。デジタルが地域づくりや人づくりを支えるプロジェクトを、もっと増やしていきたいですね。(コミュニティの活性化)  

▎「褒めあう」文化を育む 

 

2025年は、新たな開発にも積極的に取り組んでいきます。そこで一つのヒントになったのが、昨年11月の全社会議で行った社内ピッチ・コンテストです。新しいビジネスのアイディアを募ったところ、メンバーたちからたくさんの提案が寄せられました。なかでも印象的だったものが、優秀賞を獲得した「褒める」という考え方を取り入れたサービスでした。ふだん仕事をしていると、業務やメンバーに対して不満を持ち出したり、あるいは批判するといったことはよくあります。そんな文化とは反対に、褒め合う文化を育むことが、世の中で求められるのではないかという提案でした。 

 

新しいソリューションとして提供するのか、既存のサービスに機能を追加するのかといった方針は、これからみんなで対話し、具現化していくフェーズにあります。いずれにしても面白いし、ユニークなチャレンジだと思います。企業内も、社会も、「ペナルティ」という考え方をベースにルール作りされることが多いですね。そこに「褒める」ことを取り入れたら、これはイノベーションです。「承認」は時代のテーマですから、推進する意義もあります。ですが、日本人は褒めることも褒められることにも慣れていないところがあります。まずはダンクソフトの社内で「褒め合う」ことを実践しつつ、そこからダンクソフトならではのプロダクトを生み出し、「文化的イノベーション」にまで広げていけたら楽しいですね。  

▎未来を先どりする「スマートオフィス構想」の展開 

 

さて、ダンクソフトが提唱し実践している「スマートオフィス構想」の推進にも、引き続き力を注いでいきます。 

 

コロナ禍を機に、遅ればせながら日本でもリモートワークが一気に拡大しました。しかし、最近、その反動もあってか、米国も日本でも、社員たちに出社を求める企業が再び増えているようです。けれども、私は長い目でみるなら、リモートワークをはじめとする「スマートオフィス」の動きは、これからも強まっていくと考えています。なかでも少子高齢化や地方創生、東京への一極集中といった課題に直面する日本にとって、分散型のワークスタイルは、重要な社会課題への解決策となるでしょう。 

 

実際、徳島の若い学生たちと話していても、地元に居ながらにして働けることや、リモートワークすることに、とても高い関心を持っていることを実感しています。これも、先ほど話した阿南高専に関連した話題ですが、昨年同校で学生向けの採用イベントが開催され、ダンクソフトも出展しました。大盛況だったと、担当したスタッフから嬉しいニュースが届いています。このような反響を通じて、柔軟な働き方ができること、好きな場所から参加できること、こうしたダンクソフトの提唱する「スマートオフィス構想」の話は、若い人たちを魅了するものだと手ごたえを感じています。 

▎Go Innovation(イノベーションしよう) 

 

北欧の小国エストニアは、世界に先駆けて電子国家に取り組む国として知られています。同国では、行政手続きのほとんどが電子化され、お金の流れもデジタル化した結果、企業ではわずらわしい決算業務が不要になっています。 

 

一方、日本に目を向けると、未だに旧態依然の仕組みのままです。企業間でのお金のやり取りは、「締め日」といった古くからのルールに縛られ、デジタル上では瞬時に済むようなお金のトレーサビリティのために、多大な労力と時間が投じられています。お金は、“経済の血液”といわれます。その血流が滞っているようでは、企業も、そして社会も暮らしも前へと進んでいきません。ダンクソフトのソリューションを活かせば、自社の環境をエストニアのようにすることができるでしょう。「スマートオフィス構想」をはじめ、ペーパーレスやテレワークを早くから推進してきたダンクソフトならではの知見と取り組み、つまりデジタル・イノベーションを通じて、社会の未来に一石を投じていけたらと思っています。  

▎Digital、Dialogue、Diversityで、明るく楽しい未来へ 

 

今回の話を考えるにあたって、昨年の出来事をいろいろ振り返り、とても嬉しかったことをひとつ思い出しました。全社会議で、各メンバーの健康づくり(ウェルネス)が話題になり、大いに盛り上がったことでした。仕事だけでなく、余暇時間にもみんながユニークなことに熱中していて、それらを楽しく共有できる環境がある。ダンクソフトが目指しているチームの在り方に、着実に近づきつつあると実感しています。 

 

この春には、新卒の新入社員が2名加わる予定です。採用活動には今後もさらに力を入れていきます。メンバーたちの多様性を活かし、対話を継続することで、さらにインクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)を起こせるような環境づくりを目指します。 

 

ダンクソフトは、2025年も、ユニークで楽しいさまざまな取り組みを展開していきます。当社だけでなく、お客様、パートナー、連携団体の皆様とともに、じっくり対話し、協働していきたいと考えています。そして、「明るく楽しいデジタル」を、みなさんとさらに実現する年にしていきます。 

 

株式会社ダンクソフト  
代表取締役 星野 晃一郎 

 

50周年に向け、いよいよ物語が始まる

ダンクソフトは、2032年に設立50周年を迎えます。2024年は、その50周年に向けて新しい一歩を踏み出し、羅針盤となる「グランド・ナラティブ(大きな物語)」をつくった年でもあります。そこで、ダンクソフトの3人のマネージャーたちが集まり、代表の星野とともにこの1年を振り返り、50周年に向けた想いを語り合いました。  



参加メンバー

星野 晃一郎 株式会社ダンクソフト 代表取締役 

多田 弦 Webチーム マネージャー 

澤口 泰丞 開発チーム マネージャー

竹内 祐介 シニアマネージャー

「ポリバレント」がいっそう求められた2024年 

 

星野 ダンクソフトにとって2024年は、メンバーがかなり入れ替わりました。マネージャーも、今日集まった3人による新体制になりました。総じてチームが大きく変わった年でしたね。3人は振り返ってみて、どんな印象を持っていますか? 

竹内 そうですね。星野さんがおっしゃるように、メンバーも大幅に変わって、マネージャーにも、メンバーにも、いっそう「ポリバレントであること」が求められた年だったように感じます。ポリバレントとは、状況や場面に応じて、フレキシブルに多様な役割を果たせる人のことで、ダンクソフトがスタッフに求める大事な資質のひとつですよね。 

それとあわせて、全体的にコミュニケーションが活性化し、チーム間の交流が一挙に活発になりましたよね。 

澤口 開かれた組織へと向かう上では、多田さんが新しくWebチームのマネージャーになったことが大きな変化といえるかもしれないですね(笑)。 

星野 多田さん、新しくマネージャーになってみてどうですか? 

多田 僕はこれまでチーフエンジニアという立場で働いてきたのですが、ふだんから口数が少なくて、社内では“しゃべらない人”だったんですよね。それがマネージャーになって、みんなと会話することが格段に増えました(笑)。おそらく、就任1か月で、昨年1年分のコミュニケーションをすでに大きく超えていると思います。それが自分にとって一番の変化です。 

澤口 多田さんがマネージャーになって、チーム間でやりとりする情報の量が増え、透明性が高まったと感じています。 

竹内 それと、多田さんのマネージャー就任は、Webチームみんなで話し合って決めたことなんですよね。チームとしての自発性というか、メンバー同士の対話が増えたことを物語る、大きな変化かもしれないですね。 

星野 がらっと人も体制も変わりましたが、それがよい方向、よい方向へと化学反応した1年でした。 

多田 くわえて言うと、Webチームには、新しいメンバーが入りました。単に増えたというより、この新たな出会いは、チームに多様性をもたらしてくれているんですよね。これもよかったことのひとつです。 

ダンクソフトの採用情報はこちらをご覧ください。

澤口 来年4月には、また新卒の方々が入社予定ですね。さらに東京オフィスで私と一緒に動ける開発チームの新メンバーも、募集中です。 

星野 ということで、「マネジメント力」もさることながら、今年は若いメンバーをはじめ、「一人ひとりの力」も大きく伸びた手応えがあります。40周年を終えて、50周年を目指すためのいいチームができましたね。  

みんなのアイディアが次々と重なってアップグレードした、全社員参加の経営会議 

 

竹内 そういう意味では、今年、「マネージャー会議」が「全社会議」へと変わったことも象徴的な変化かもしれませんね。 

これまでダンクソフトでは、社長の星野さんとマネージャーたちが参加する「マネージャー会議」がありました。今までは、ここで全社的な方針などを決め、それを議事録という形で社内に伝えてきました。でも、よく考えれば、マネージャー限定の会議といってもメンバーたちに隠すような話題はほとんどないことに気が付きました。ならば、メンバー全員参加の会議にしてしまおうと——。 

澤口 そこで、名称を「全社会議」に変えることを提案しました。誰でも参加できるものになったので、もはやマネージャー会議と呼ぶにはそぐわないですからね。 

竹内 澤口さんの提案を受けて、名称を変えた後も、別のメンバーからいくつかのアイディアが出されました。いまは、全社員が参加して会社のことを話し合う会議へと変わろうとしています。「全社に開こう」と提案したのは私ですが、その提案に澤口さんや他のメンバーたちが次々とアイディアを重ねてくれて、生成的に進化していることが新鮮で嬉しかったですね。 

星野 確かにこれまでは、私が伝えたいことが、なかなかメンバーたちまで届かないという感覚がありました。今回の変更で、伝達や共有のスピードが格段に増しましたね。これからも、スタッフ皆さんの経営への参加意識が高まることを期待しています。 

澤口 竹内さんが言うように、メンバーたちに隠すようなことはほとんどないわけですよね。それよりもいわゆる「伝言ゲーム」になって、伝えたい情報が抜け落ちてしまう方が怖い。こちらから一方的に情報を伝えるのではなく、メンバーそれぞれが新しい情報を持ち寄れる場になれば、さらによい対話の場になると思いますね。 

多様な人たちと協働できる機会をもっと増やしていく 

 

澤口 開発チームとしての新しいチャレンジは、「やさしいまちづくり総合研究所様」(以下、やさまち総研)とのプロジェクトがあげられると思います。これまでいろいろな会社と仕事をしてきましたが、「やさまち総研」さんのような、新しく立ち上げるスタートアップと、いちから協働するのは初めての経験です。とても新鮮で、私としても学ぶべきことがたくさんあります。 

竹内 「やさまち総研」さんには、「日報かんり」など、ダンクソフトが開発したアプリケーションを提供していて、今のところ、高い評価をいただいています。 

星野 以前にこのコラムで「やさまち総研」さんとのダイアログを行いました。つい先日もお会いしたところ、すごくうれしそうな面持ちでダンクソフトのアプリケーションを語ってくださり、評価してくださいましたね(笑)。 

竹内 先日は、ダンクソフトも共催企業として関わっている「インターミディエイター・フォーラム」で、全国のさまざまな企業・団体の人たちと対話する機会がありました。私自身、そこからたくさんの刺激をもらいました。来年は、そんな多様な人たちと一緒に仕事ができる機会を、もっと増やしていきたいと思っています。  

「やさまち総研」さんとのダイアログの様子はこちらをご覧ください。

「日報かんり」の詳細はこちらをご覧ください。

リーダーはいらない。ダンクソフトのマネージャーは、目線を合わせて「なんとかする人」。 

 

多田 私は、マネージャーになる際に、星野さんと改めていろいろ話す機会があったのですが、ダンクソフトのマネージャー像って、他の会社とちょっと違うと思うんです。英語でいうところの、”manage to do”で、“なんとかする、何とかやり遂げる”という意味合いがつよいのですよね。 

星野 そう。僕らはよく社内では、「なんとかする役割の人」というような言葉を使っています。一般的な日本企業の、いわゆる「管理職」のイメージとはぜんぜん違います。マネージャーの日本語訳は管理者ですが、ダンクソフトの場合は、管理する人ではありません。 

竹内 僕が意識しているイメージは2つあって、1つはお笑い芸人さんのマネージャー。タレント——うちでいうならばメンバーにあたるわけですが、彼らが力を存分に発揮できるように環境を整える人ですね。もう1つのイメージは、高校の部活のマネージャー。2つとも、一方が偉いというわけではなく、どちらも必要な役割で、補完関係で成り立っています。 

澤口 僕もマネージャーになった時にいろいろ考えたのですが、頭に浮かんできたのは、やはり部活のマネージャーでした。みんなが100%活躍できる場をつくる人といった意識を持って、メンバーたちと接しています。 

多田 私はマネージャーになったとたんに感じたことがありました。それは、チーム・メンバーとのあいだに、今までとは違う関係が生まれそうになってしまうことがあるということです。わかりやすく言うならば、マネージャーがリーダーで、メンバーがフォロワーのような、つまり上下関係になってしまいがちです。ですが、ダンクソフトの場合はそうじゃなくて、「目線を合わせて対話していく関係」でありたいわけです。チーム・メンバーとの関係で、そのへんのギャップを感じた時は、随時話し合っていくことを意識しています。 

竹内 リーダーシップについては、うっかり出してしまわないようにふだんから気をつけています(笑)。その気配が伝わると、メンバーたちも「指示待ち」みたいになってしまうので。 

澤口 僕も同じ理由で、リーダーはいらないと思っています。リーダー・フォロワーという関係よりも、目指したいのはもっとフラットな関係ですね。 

星野 僕自身が、そもそも「リーダー・タイプ」ではありません。複雑で多様なこれからの時代に、強力なリーダーがいると、逆に「指示待ち」現象や「サイロ化」など、組織自体がへんな方向に行きがちだと考えています。でも、こうして3人の開かれたマネージャーたちの話を聞くと、ダンクソフトがよいチーム体制に向かっていると、改めて実感しますね。  

たとえ忙しさに追われようとも、「コ・ラーニング」の時間を大切に 

 

竹内 2024年を振り返って、反省点を1つあげるなら、「コ・ラーニング」の時間がつくれなかったことでしょうか。メンバーたちの学びの時間を増やそうと、今年は勤務制度まで改革したのですが。忙しさに追われてなかなか実践することができなかったですね……。 

多田 それはWebチームでも同じです。そこで、新たに、1日30分ほど、通常の勤務時間内にメンバーが共同で学ぶ時間を設けました。これがなかなかいい効果が出ています。それでもコ・ラーニングについてはまだまだというのが実感ですね。 

澤口 ダンクのメンバーは、そもそもみんなデジタルが好きで、休日に趣味としてプログラミングをやっているメンバーもいるほどです。そんな趣味のことなどもみんなで共有できれば、新しいアイディアが生まれるヒントになるのではないでしょうか。コンピュータ関係じゃなくても、スポーツでもダンスでもなんでもよいと思いますので(笑)、新しい情報を学びあえると刺激になりますよね。 

あとコ・ラーニングということでは、来年は内向きばかりでなく、社外のいろいろな人たちから学ぶ機会も増やしていきたいです。 

星野 ITの世界にいる限り、自ら進歩していかないと生き残れないということは、誰でも感じていることだと思います。僕はこの業界に40年いますが、大きなパラダイム・シフトを何回も経験してきました。そのたびに、新しいことを取り入れて、先を見据えて情報を取り入れたり、行動を変化させたりしてきています。こうしたことを、皆さんがちゃんと意識するようになったことは、僕は新しい変化だと非常にポジティブにとらえています。50周年に向けたグランド・ナラティブでは、ダンクソフトがテックスクールになるというイメージを掲げました。社内外がダイナミックに交流しながらのコ・ラーニング環境を、さらに整えていきたいですね。  

50周年に向け、内にも外にも、開かれた「対話する企業」へ 

 

星野 ダンクソフトは、メンバーや体制が大きく変わって、50周年に向かっていいスタートがきれました。新しいメンバーたちも参加して、2025年4月にも新卒スタッフが加わり、いい意味で、さらに変化していくでしょう。最後に、50周年に向けてひと言。 

竹内 先日、ダンクソフトの全社員が集まるDNAセミナーを実施しました。あの時、ダンクソフトには、「多様性と対話」を大切にする、よい土壌ができつつあるなと感じました。僕は、土壌とか文化はすぐにはできない、長い時間をかけて培っていくものだと思っています。それでも、いい文化ができつつあるのは嬉しかったですね。 

そんな自分が想い描いている50周年のイメージは、全メンバーから、業務に直結するしないにかかわらず、次々と新しいプロジェクトのアイディアが湧き上がってくる会社です。どれを選んだらよいのか悩むくらい、プロジェクトのアイディアにあふれた会社を目指したいと思っています。 

澤口 うーん、僕も同じことを考えていたんですよ(笑)。50周年を迎えて、記念のプロジェクトをやろうとなったとき、みんなからあれもこれもやりたいと声があがって、お祭り騒ぎができるような会社になれたら楽しいですよね。 

多田 僕は、仕事寄りの話になってしまうのですが、たとえばお客様とか、もっと外の人たちとコ・ラーニングできる環境をつくっていきたい。Webサイトって、運用やデザインなど、お客様と共にできることが意外に多いんです。そこをコ・ラーニングして、しかもコ・ラーニングから対価が生まれるような場づくりの新サービスが生み出せたら面白いと思っています。 

星野 多田さんは仕事寄りといいましたが、それもプロジェクトのあり方の話ですよね。すごくいいじゃないですか。 

さて、この何年かのうちにデジタルのスピードはさらに1桁も2桁も速まっていくと考えています。先日は社内の若手が、10ギガのLANはいつ使えるようになるのかと話していましたが、近いうちに、本当にクオリティの高い画像がやり取りできて、立体的な動きになるコミュニケーションが実現してくるでしょう。そうすれば、離れた場所で仕事をしていても、リアルでのコミュニケーションとますます大差ないコミュニケーションが可能になります。実際に会わないと話がつかないというような錯覚が、おそらく相当なくなってくると思います。 

多田 早い時期からテレワークの実証実験をしてきた私たちとしては、また先駆的に、次の動きもつくっていける存在になりたいですね。 

星野 いいですね。そうした未来に、「スマートオフィス構想」はどうなっているのか。きっとますます面白くなっていると思いますね。ダンクソフトは今も、社外のお客様やパートナー、地域の方々との連携があり、開かれた企業です。50周年の頃には、デジタル・テクノロジーを享受しながら、社内にも、社外にも、さらに開かれた企業、対話する企業になっていきたいものです。 

 

インターンシップ座談会2:開かれたテレワーク環境が若者たちを魅了する

ダンクソフトでは2024年9月、第2回目となるインターンシップを開催しました。今回も、第1回目と同じように、徳島県の阿南工業高等専門学校からお二人の学生たちが参加しました。そこで、再びダンクソフト代表の星野と学生たちのダイアログをご紹介します。前回とはまた違う、個性豊かで、ハツラツとした若い人たちの考え方をたくさん聞くことができました。  



┃阿南高専OBがダンクソフトで働く姿。僕たちが選んだ進路は間違っていなかった 

星野 おふたりはどのような理由でダンクソフトに興味を持ちましたか? 

左からダンクソフトの星野と港、第2回インターンシップに参加したお二人。

松本 僕は以前から在宅勤務という働き方に関心がありました。阿南高専で講師をされているダンクソフトの竹内さんを通じて、この会社が独自の働き方をしていることを知って、インターンシップに参加してみようと思いました。 

天羽 僕たちは、高専でプログラミングの勉強をしています。それが果たして会社で役立つのか、実際にどんな進め方をしているのか、知りたいと思いました。僕は、インターンシップは今回が初めて。いきなり県外の会社で経験するのではなく、徳島にもオフィスがあるダンクソフトを選びました。 

星野 まだ途中ですが、実際に参加してみてどうですか? 

松本 プログラミング言語の C# を触るのは今回が初めてでした。けっこうサクサク進めることができて、内心すごくほっとしています(笑)。また、Webアプリの開発はぜひ経験してみたいと思っていたので、とてもよかったです。 

天羽 Webアプリはあまり詳しくないのですが、意外に簡単につくることができて楽しかったです。 

星野 皆さんの受け入れ担当である港さんは、阿南高専のOBです。先輩たちの働く姿を見ていかがですか? 

松本 天羽さんが言ったように、僕も学校で習っていることが果たして役立つのかなと少し心配していました。けれども、港さんが仕事をされている様子を見て安心しました(笑)。 

天羽 そう、自分たちが選んだ進路は間違いなかったんだと(笑)。自信を得られました。 

星野 ダンクソフトには、もう1人、阿南高専のOBがいますが、どちらの社員も社会への適応力が高いですよ。高校・大学という一般的な進路と比べて、高専の卒業生は中学生のころに進路を考えて、そのころから技術を学びながら進んでいますよね。普通に高校・大学と進んで大学3年生で就職活動をする方たちとは、ずいぶん差があると思います。また物心がついたときには、インターネットが普通に存在する世代だから、情報をいくらでも取りに行けますよね。もっと自信を持って大丈夫ですよ(笑)。  

┃中学生のころからずっと気になっていたテレワークを初体験 

 

星野 松本さんはテレワークに関心があるそうですね。 

松本 僕の住む所から学校までは、片道1時間半くらいかかります。もしも徳島市内の会社に就職するとなると、やはり同様の通勤時間がかかります。一方、部活でプログラミング部に入っているのですが、夏休みなどの活動はけっこうオンラインでもできるんですね。それならば、仕事も在宅の方がよいかなと——。 

天羽 僕の場合、在宅勤務に関心を持つようになったのは中学生の頃、コロナ禍の時です。TVのニュースなどでテレワークといった新しい働き方がクローズアップされていたのですが、実際どんな感じなのだろうとずっと気になっていました。 

星野 今回、徳島オフィスでのインターンシップは、1日が徳島オフィスで、台風が来ていたこともあり、残りの2日間が在宅ワークでしたね。どうでしたか? 

徳島オフィスでのインターンの様子

松本 徳島オフィスで受けたのと同じようなプログラムを在宅でも実施したのですが、驚くほどスムーズでした。これなら、ぜひテレワークで働きたいなと思いました。 

天羽 コミュニケーションはTeamsを使ってやったのですが、こちらからの質問などにもすぐに対応があって。ビデオ会議で相手の顔を見ながらできたので安心でした。実は僕が部活でやっている会議は全員カメラをオフにしていて、マイクもオフにしていて、会議と呼べないほど暗い印象です。それだと僕も話しにくいし、やりにくかったんです。デジタルで、離れている人とも顔を出して会話できるのはよいと思いました。開いている感じがいいなと思いました。明るいし、楽しい印象がありました。 

星野 「開かれている」というのは、すごく重要な視点ですね。お互いがどういう状況にいるかも分かるし、表情が分かってできるのは、普段のオフライン・コミュニケーションではそうですからね。これから技術が進めば、3Dが使われるかもしれないし、さらにホログラムのようなものになるかもしれない。人と人とのつながりをデジタルが補完していって、お互いをもっと良く知ることができます。同じ方向を向いている人であれば、一緒に働いたり、一緒にいろいろな研究ができたり、学びあうことができます。閉じたところで怪しい話をするのではなく、開かれた環境で建設的に話をしたい。明るく楽しい方向を選んでくれる人が増えるような、そういう時代を僕らは作らなきゃいけないって思っています。   

┃部活でも学生会でもデジタル・ツールを活用、ダンクソフトとの違いは? 

 

星野 少し話が変わりますが、2人は普段どんなスマホ・アプリを使っていますか? 

松本 主に使っているのは、カレンダーやToDoリストといったアプリですね。これまで手帳などに書き込んでいたものがスマホを見るだけでパッとわかるので便利です。部活のメンバーたちともカレンダー・アプリでスケジュールを共有しています。 

天羽 カレンダーは部活の仲間たちとよく使っています。あとは友だちとの連絡はLINEやDiscord、部活ではSlackを使っています。 

松本 僕もよく使うのはSlackかな。僕は学校の学生会の会長を務めているのですが、学生会や部活での連絡はだいたいSlackでやっています。 

天羽 学校の授業で、グループで作業する時など、LINEでグループをつくってメンバーたちとやりとりしています。ただ、ファイルの送信が面倒だったり、情報が流れていってしまうので、使いづらいです。それよりもSlackやTeamsの方が便利ですし、プログラムなどもクラウドで共有したい。このあたりのツールがもっと広まったらいいなと思っています。 

星野 ダンクソフトでは、メンバー間のスケジュール共有にOutlookを使っています。でも、以前は社長の僕には妙に気をつかって、わざわざ事前に会議を入れてもいいか連絡してくることがよくありました。そんな余計な手間もなく、スマートに使いこなすようになったのは、皆さんの先輩である港さんの世代からですね。港さんは僕のスケジュールの空きを見て、空いていればスケジュールをサッと入れています。余計な階層を気にせず、フラットな関係を意識して仕事を早く進められることは、デジタルを使ううえで、よい作法の一つだと思いますよ。 

ところで、家庭でのデジタル化について、なにかやっていることがありますか? 僕の家では、SwitchBot(スイッチボット)を使ってカーテンの開け閉めや照明の点灯を自動化したり、最近では、家の鍵に指紋認証を使ったりしています。 

天羽 僕の家でも照明のオン・オフなどでスイッチボットを使っていますが、それ以外はまだやっていないです。 

星野 こうした工夫は、ちょっと手間をかけるだけですごく便利で楽になるし、たいした費用もかかりませんよね。日本では、Beyond5Gといわれていて、次世代の情報通信インフラとして6Gを使った通信ネットワークが構想されています。その時代になると、ほぼ日本全土を網羅する通信網が実現されます。これからデジタル技術が進歩すれば、社会も家庭もさらに明るく楽しくなると思いますね。   

┃ペーパーレス化で書類も判子もいらない。パソコン1つ持ち歩くだけでよい社会が僕の理想 

 

星野 これも前回のインターンに参加した方たちにもお聞きましたが、ダンクソフトが進める「スマート・オフィス構想」については、2人はどう考えますか? 

松本 ペーパーレス化については、僕は大賛成です。ぜんぶデジタルになれば、書類も判子もいらなくなり、パソコン1つ持ち歩くだけでよくなります。学校の先生方には紙媒体を多用する人もいるのですが……。紙に書くと、手も目も疲れますし。僕は、紙媒体はぜんぶiPadに取り込んで勉強しています。そうすれば、ベッドで寝転んで試験勉強ができます(笑)。 

天羽 ペーパーレスにすれば環境的にもよいですし、物理的に紙を管理したらコストもたくさんかかるし、効率的じゃないと思います。ただ、デジタル化を進めたい一方で、紙も少しは残してほしいというのが希望です。紙のよさがあって、僕は勉強もノートに書いた方が憶えやすいですし、漫画や本を読むのも紙媒体の方が好きです。 

星野 僕はぜんぶデジタル派ですね。雑誌などもPCの大画面ディスプレイで見ると、実物よりも大きくてすごく読みやすいんですよね。どちらにしても、オフィスでも家庭でも社会でも、これからはどんどんデジタル化が進んでいくはずです。選挙などにしても、インターネットを使って便利に投票できる時代が早くやってきてほしいですよね。 

松本 それは僕も同感です。学生会の選挙のときには、学生800人分の投票用紙をつくりました。印刷をして、800枚の1枚1枚に、学生会の判子を押して、人数に分けて封をする作業があります。投票用紙の管理がものすごくたいへんです。こういうことは、どんどんデジタル化してほしいと思います。 

天羽 デジタルでできることははやくデジタルでやってしまえばいいと思います。そういうペーパーレス化については大賛成です。   

┃次の世代の人たちのために、社会に役立つものをつくりたい 

 

星野 2人は将来、どんな仕事をしてみたいと考えていますか? 

松本 僕はいま、プログラミング部の部活でWebアプリばかりをつくっています。将来の仕事も、Webアプリの開発にチャレンジしてみたいと思っています。 

天羽 部活はロボット研究部です。プログラミングも好きですが、それを使って社会の役に立つモノをつくり出すような仕事に取り組んでみたいと思っています。いま僕たちが便利に暮らしているのは、先人たちが作った技術あるからこそ。今度は僕が次の世代の人たちのために、新しいものを生み出してみたいんです。 

星野 それはとても大切なことですね。僕たちは若い人たちのチャレンジを応援しますし、「リバース・メンタリング」という考え方を大事にしているので、逆に若い世代から学べることがたくさんあると思っています。そんな双方向の学びを通じて、コミュニティ全体で新しい考え方や実践・経験をシェアしていきたいものです。それが、インクリメンタル・イノベーション(斬新的イノベーション)を起こしつづける秘訣だと考えます。 

ところで、将来の働き方についてはどうですか? 

松本 僕は、人が多い場所が苦手なので、できれば在宅勤務中心で働きたいと思っています。それが叶えば住む場所は徳島でも東京でも、近所にスーパーとコンビニと飲食店があれば、基本的にはどこでも大丈夫です(笑)。 

天羽 一度は徳島県から飛び出てみたいと思っています。東京で働くのも面白そうかな。 

星野 やりたいことがあるなら、どんどんチャレンジしてみたらいいと思います。インターネットを活用すれば、働く場所にとらわれずに、どんどん可能性が広がります。一方、自分で経験してみないとわからないこともたくさんある。両方のいいとこ取りをして経験を積んでいってほしいですね。 

最後に、ダンクソフトのインターンシップに参加してみてどんな印象ですか? 

松本 僕は他の会社のインターンシップにも参加したことがありますが、ダンクソフトは在宅勤務、リモート・ワークということではすごく進んでいる会社、強いと思いました。Teamsでの情報共有もビデオ通話もとても手際がよくてすばらしい環境だと感じています。 

天羽 プログラミングやWebアプリ開発を実践で学ぶことができて、自信がつきました。在宅勤務も、言葉では知っていたのですが、実際に体験するのは初めて。とても楽しく、自分の将来を考えるためにもすごくよい経験になっています。  

▎デジタルと対話・協働の文化が、未来社会を創る 

 

僕たちダンクソフトも、昨年40周年を迎え、50周年に向けて、新しいさまざまなチャレンジを始めています。その柱の一つが「対話と協働」です。実は、この文化があるから、若いスタッフも積極的に参加することができますし、顔を出して、きびきび連携して進めていけるんですよね。デジタルと双方向の文化が補完しあうことを大切にしたいですね。皆さんのような柔軟な考え方ができる方たちとネットワークしながら、よりよい未来社会を創っていきたいものです。 

  

第1回目インターンとダンクソフトのスタッフ

◆あせて読みたい: 

 第1回目のインターンシップ座談会の様子はこちらをご覧ください。

インターンシップ座談会1:僕にとってある意味、理想的な職場かもしれない。

やさまち総研 with ダンクソフト ─デジタルがつくる、あかるく・やさしい地域の未来─

「労働者協同組合」という新しい法人制度をご存じでしょうか?  

2024年7月に設立された「やさしいまちづくり総合研究所」(以下、やさまち総研)は、全国で95番目に設立された「労働者協同組合」です。この生まれたてのスタートアップ「やさまち総研」の日々の活動を、ダンクソフトではデジタルの面からサポートしています。そればかりでなく、地域とデジタルの未来に向けて、両者が一緒に取り組めることはたくさんあるはず。これからどんな協働を繰り広げていくのか、ダンクソフト代表の星野と、「やさまち総研」のメンバー3人とのダイアログをご紹介します。  

 【左から】   
労働者協同組合 やさしいまちづくり研究所

代表理事 中西大輔さん 
常務理事・主席研究員 前神 有里さん 
理事・主任研究員 加藤 翔大さん 

株式会社ダンクソフト 

代表取締役社長 星野晃一郎   



▎「労働者協同組合」として全国95番目に設立。 

「労働者協同組合」とは? なぜ3人で「やさまち総研」を始めたのでしょうか?  

 

星野 「やさしいまちづくり総合研究所」(以下、やさまち総研)は今年の7月に立ち上がったばかりの団体ですね。まず初めに概要を紹介してもらえますか? 

右:やさまち総研 中西大輔さん 
左:やさまち総研 前神有里さん 

中西 メンバーは私と前神さんと加藤さんの3人。私が滋賀県庁、前神さんが愛媛県庁、加藤さんが総務省と、みんな元公務員というところが共通項で、私と前神さんは古くからの知り合いです。では、なぜ「やさまち総研」を立ち上げることになったのか……。それは前神さんに話してもらった方がよいかな(笑)。 

前神 そうですね。私は2018年に親の介護を理由に愛媛県庁を退職し、その後しばらくフリーランスとして人財育成や地域づくりの仕事に携わっていました。けれども、フリーランスは自由な反面、1人であるため立場上弱いようなところがあり、活動も限られてストレスを感じる場面も多かったんです。 

でも、1人で創業するほどの勇気もない。そこで思い至ったのが「労働者協同組合」という法人制度でした。私はフリーランスの自由さも、組織で働く楽しさも知っています。私たちのような活動を進めていきたい人たちにとってぴったりのスタイルだと思いました。そこで、「ならば中西さんだ!」とまっ先に顔が浮かび、声をかけたのです(笑)。 

中西 私は長く滋賀県庁に勤め、2022年3月に定年退職して比較的自由な立場でした。一方、自治体職員の傍ら、地域づくりなどの活動にも長く携わってきたんです。前神さんとも、こうした活動で出会ったのですよね。 

その前神さんから「労働者協同組合を一緒にやろう」と相談があって。私自身もこれからの自分の働き方に合った法人形態だなと思っていたこともあり、前神さんとならやってみようかと、一緒に立ち上げることにしました。 

前神 ところが、「労働者協同組合」には3人以上の発起人が必要です。そこで声をかけたのが加藤さん。私も中西さんもまちづくりなどの活動についてはそれなりに経験も知識もある。けれども、法人をつくるとなると、会計や労務などの管理体制も整えないといけない。その足りないピースを補うためにも、事務ワークを得意とする加藤さんはうってつけの人なんですね(笑)。 

加藤 私は総務省で自治体や地域などに関連した仕事やDX推進に携わった後、総務省を退職したんです。東京を離れて暮らしたいと思ったときに、かつて赴任していた愛媛県の松山にまた住みたいなと思って、思い切って移住しました。 

ここでは塾の講師やそのほか短期的な仕事をいくつか複業していたのですが、そんな中でたまたま前神さんと再会したんですよ。私も、地域に根ざした拠点づくりをやってみたいと思っていたので、ぜひ!と参加することになりました。 

星野 ところで、「労働者協同組合」※1というのは、どのような法人格ですか? 

中西 2022年10月から始まった新しい法人制度ですね。介護・福祉や子育て、地域づくりなど地域におけるさまざまなニーズに応じた事業を実施できます。3人以上の発起人がいれば組合を設立でき、組合員の立場はみんな平等で、話し合いながら事業を進めていくところに特徴があります。ですので、「やさまち総研」も私が代表を務めてはいますが、3人でワイワイと話をしながら活動を進めています。 

前神 「労働者協同組合」は現在、全国で110法人※2が活動しており、「やさまち総研」は日本で95番目に設立した「労働者協同組合」なんですよ。 

※1:https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/  

※2:2024年10月1日現在  

▎「やさまち総研」にとってデジタルは必須の道具。 

その頼れるパートナーとしてのダンクソフト。 

 

やさまち総研 中西大輔さん

中西 私が京都、前神さんと加藤さんは愛媛に住んでいるため、普段の打ち合わせはすべてインターネットを介したWeb会議で行っています。このように「やさまち総研」の活動にとって、デジタル環境はなくてはならないもの。それをサポートしてくださっているのが、星野さんの会社、ダンクソフトさんです。 

前神 そう。私と星野さんが知り合ったのはもうずいぶん前ですよね。 

星野 僕は、前神さんのFacebookは以前からフォローしていたけど、最初に顔を合わせたのは10年前くらいでしょうか? 

前神 そうかもしれないです。けれども、今回の「やさまち総研」とダンクソフトの協働のきっかけとなったのは、今年5月に行われた「インターミディエイター」※3についてのオンライン・ダイアログのときです。「新しい働き方に“対話と協働”は必要か?」というテーマのもと、ダンクソフトの星野さんと竹内さんが登壇されたのですが、私、おふたりの話を聞いていて、「まさにこの働き方こそが私たちがやりたいことだ!」と興奮したことを憶えています。そこからトントン拍子で、ダンクソフトさんにデジタルの話を伺ってみよう、となって、ご相談に伺ったんですよ。 

星野 前神さんからお話を伺って、ダンクソフトも、労働者協同組合の仕組みに近いところがあると感じました。僕は社長という役割ですが、階層はほとんどなくて、フラットな組織です。これまでも、スタッフみんなで会社の就業規則をつくったり、お互いに話しながら、かなり積極的に変化していく会社なので、このあたりも、「やさまち総研」さんの考え方にも近い印象があります。これからは、自分たちで未来を切り開ける人たちが増えると思っています。そういう人づくり・地域づくりにたずさわる「やさまち総研」さんですから、連携するなかで、デジタルのところをダンクソフトが担えたら、地域の可能性はさらに広がるだろうと考えています。 

前神 大きい組織で働いていた時には、共有ツールというものがありました。でも、こうやって新しい団体をたちあげるとなると、デジタルまわりを自分で用意しないといけなくなります。大きな組織にいたときには、用意された環境を使いこなすユーザーで、使いこなすレベルは結構高いんですけれど、自分たちで一から準備するとなると、まったくわからない状況でした。それと、私の周りにはキントーンを使っている人が結構いるんです、愛媛県はサイボウズさんの発祥の地なので。使ってみたいなと思っても手探りだったので、素人3人組としては、ダンクソフトさんに色々アドバイスいただきながらやれるのが、今、とっても安心です。 

星野 今回、皆さんの業務の課題や将来やっていきたいことをお聞きして、最初に導入したのは「日報かんり」ですね。これは、サイボウズのクラウド製品「kintone(キントーン)」をベースにダンクソフトが開発した、便利なアプリケーションなんですよね。 

前神 「労働者協同組合」は非営利組織の区分になりますので、kintoneのチーム応援ライセンスを活用できたので、利用料を抑えることもできました。 

やさまち総研 加藤翔大さん 

加藤 「日報かんり」は、Microsoft Outlookの予定表に入れた情報から、ボタン一つで日報を簡単に作成できるアプリです。私たちは基本的にリモートで別々の場所から働いているので、団体としてではなく個人で受けている仕事もあったりと、勤怠管理や給与計算がたいへんなんです。 

前神 出張がすごく多くて、全国色々と飛び回っているので、何のために何時間働いたかを集計しなくてはいけないんですが、これが一苦労で(笑) 

加藤 その点、「日報かんり」は、Outlookに作成した予定データが「キントーン」に自動的に蓄積されるので助かっています。そこから勤務時間がすぐ集計できるので、それをもとに月末には給与計算がスムーズにできますし。 

中西 もうひとつ、「日報かんり」のユニークな機能として活用しているのが「所感欄」ですよね。 

前神 勤怠や経費に関わることなど硬いことだけでなく、なんでも自由にコメントを書き込むことができるんですよ。「やさまち総研」ではメンバー間の交換日記みたいな役割も果たしています(笑)。 

星野 離れていてもメンバーの様子が共有できるので、チームの連携力をあげるためにも有効です。実際に、ダンクソフト社内で長年活用しているなかでも実証されています。それと、もうひとつ、いま導入段階にあるアプリが「ダンクソフト・バザールバザール」ですね。これは事務作業というよりも、これからつくっていくコミュニティ運営をサポートするプラットフォームになるものです。さらにダンクソフトには、人、モノ、お金、時間などの情報を一元管理できる経営ツール「未来かんり」があります。現在、この「未来かんり」を「キントーン」と連携させるための開発を進めており、その実証実験を「やさまち総研」と一緒にやろうと考えています。 

中西 ダンクソフトのアプリを利用して改めて感じるのが、私たちのような組織におけるデジタルの重要さです。それは業務の効率化のような部分はもちろん、新しい働き方や地域づくりといった活動においても同じだと思います。 

たとえば「労働者協同組合」には、介護や福祉の事業を行っているところも多いのですが、介護などではスタッフの勤怠や報酬の管理が非常に複雑です。そういうことを考えても、「労働者協同組合」にとってダンクソフトとの協働はとても意義があると感じています。 

※3:https://www.intermediator.jp/   

▎やりたいことがどんどん膨らんできて、 

限られた時間をどう使っていくかが一番の悩みです。 

 

星野 まだ立ち上がったばかりですけど、「やさまち総研」ではどんな活動を進めていこうと考えているのですか? 

中西 そうですね。「働く」ことにこだわり、それを通じて地域と人をつないでいくために、さまざまな活動を考えています。研修やセミナー、イベントの開催、コンサルティング、元公務員という強みを活かした「労働者協同組合」の立ち上げ支援といった事務代行までいろいろですね。目指している社会をあえてあげるなら、厚生労働省が打ち出している「地域共生社会」と一番親和性が高いでしょうか。将来的には国の政策づくりにも関わるような提案もできたらいいなと思っています。 

このように3人で話し合っているうちにやりたいことがどんどん膨らんできて、限られた時間をどう使っていくかが、今のところの一番の悩みですね(笑)。 

星野 デジタルを導入するよさは、時間を余らせることができることなんですよ。日報かんりをダンクソフト社内で導入した結果、業務報告書を作成する時間がいらなくなって、あるスタッフは1か月で8時間もの時間が生まれました。日報かんりを使うと、皆さんがもっと有意義な活動に時間を使える状況になりますよ。 

やさまち総研 前神有里さん

前神 それは時間に追われることが多い私たちには魅力的ですね。私は、公務員時代から現在に至るまで人財育成や地域づくりまでいろいろな仕事に携わってきましたけど、ベースにあるのは、福祉という側面から地域を見るという視点なんですね。中西さんが言うように、やりたいことはほんとうにたくさんあって、1つの「業」だけでは収支が成り立たないようなことでも、3人が得意なことを合わせることによってやっていけるのではないかなと思っています。たいへんなこともありますが、それが「労働者協同組合」のよいところですよね。 

中西 加藤さんは、飲食に関わるような拠点をつくりたいと思っているのだよね? 

加藤 ええ。居場所づくりとして、バーのような飲食業をやってみたいと思っていて、現在、物件を探し中です。夜だけ使うのではもったいないので、昼間はシェア・オフィスにしてもいいし、私は子どもたちのための塾もやってみたいと思っています。 

前神 地域の人たちが食材を持ち寄る食堂みたいなこともできそうだし。 

中西 まだ妄想中ですが、バーの名前はもう決まっているのですよね。「バー・テンダー」(笑)。「やさまち総研」の英文名、“Tender Community Renovation Research Institute”に由来しています。 

星野 それは面白そうですね(笑)。僕も「日本パエリア協会」の理事をしていたり、飲食とも関わりが深いんですよ。デジタルばかりでなく、いろいろなコラボレーションができそうです。 

「やさまち総研」のオフィス。古民家を利用。

前神 私たちは、「やさまち総研」の拠点として、愛媛県伊予市の古民家を選びました。そこは国の登録有形文化財で、まちの縁側として人々をつなぐ場としてコーワーキング・スペースになっています。今後は、そこを使ってイベントもいろいろ考えていきたいんですよね。先日、東京・神田にあるダンクソフトの新しいオフィスを訪ねたのですが、とても快適で楽しそうな空間で、星野さんからもいろいろアイディアをもらえそうな予感がしています。 

星野 ダンクソフトは「神田藍の会」という地域プロジェクトにも参加していて、事務局を担当しています。ですので、ダンクソフトのオフィスでは関連イベントを開いたり、夜は地域の方たちと飲み会をしてみたり、「やさまち総研」が取り組もうとしているようなこととも重なりますね。僕は、会社というものはこの先、人々が集うコミュニティとしての場になっていくイメージがあります。そのなかで、デジタルが有効に活かされると、コミュニケーションの質も量もあがって、ソーシャル・キャピタルが豊かなコミュニティになっていきますのでね。  

▎デジタルで、働き方や地域のあり方を変えていく。 

「やさまち総研」とダンクソフトが協働することはたくさんある。 

 

やさまち総研が開催するセミナーの様子

前神 最近、新しい働き方を知りたいということで、「労働者協同組合」を紹介する勉強会を地域で実施しました。すると、募集を上回る参加者が集まって、なんとその半数が高校生でした。働くことに対する意識って、若い人たちの間では多様化しているのではないでしょうか。 

中西 それと同じようなことは私も体験しています。ある大学の寄付講座で講師を務めた際、学生たちと話をすると、彼らは就職に関して大企業を目指していたり、意識が固定化されていてやはり安定志向なんですよ。ところが、「労働者協同組合」のことを紹介すると意識が大きく変わりました。なかにはこの講座がきっかけになって人生観が180度変化して、全国を旅しながら働けるような仕事を探したいという学生も出てきました。 

星野 おもしろいですね。ダンクソフトは、以前から徳島県の阿南高専とのつながりが深く、この夏には何人かの学生がインターンシップとして来て、お互いに楽しく学び合いました。将来的には、こんな学生たちとダンクソフト、「やさまち総研」で、面白そうな協働プロジェクトもできそうですね。 

今日、皆さんと話をしていて改めて感じたのですが、ダンクソフトと「やさまち総研」はとても親和性が高いように思います。ダンクソフトが提唱している「スマートオフィス構想」は、まさに「やさまち総研」が目指しているような働き方をサポートするものですし、「労働者協同組合」という仕組みも私たちが目指している組織のあり方に共通するところが数多くあります。 

加藤 私たちも、デジタル・ツールを活用すればやれそうなことがたくさんあるのですが、まだなかなかそれを上手に言語化できない。理解を深めるためにも、今日はとても貴重な機会だと感じています。 

星野 ダンクソフトでは、今、「やさまち総研」と進めている取り組みを実証実験として、「スマートオフィス・パック」のようなソリューションにできないかと検討しています。けれども、私たちが目指しているのは、単に出来合のパッケージソフトを提供するのではなく、今回のように、お悩みやお困りごとが何か、どんな未来を創りたいのか、ていねいな対話を重ねて、それぞれの「労働者協同組合」ごとにベストな解決策を一緒に考えていくことなのです。 

前神 その言葉を聞くと、嬉しいですね(笑)。 

加藤 すでに、すごくお世話になっているんですよ。ちょっとした分からないことでも、問い合わせると、すぐに担当の竹内さんがチャットを返してくださって、すぐにわからないことが解決できています。 

前神 ほんとうにそう!デジタルに不案内な私たちでも、アシストいただいて一緒に歩めています。私たちのような労働者協同組合が全国にこれから広がりますので、そういう意味でも、ダンクソフトさんにはめっちゃ期待しています(笑)。 

中西 私もとても心強く思っています。星野さんがおっしゃるように、ダンクソフトと「やさまち総研」がこれから協働していくべきことはたくさんありそうです。今回のダイアログがその大きな一歩になると思っています。 

星野 我々は働き方の変化に対して、かなり積極的に取り組んできた企業です。創業42年目の企業が、「やさまち総研」さんのような、誕生間もない組織と出会いました。「やさまち総研」さんのユニークな挑戦を、もっと多くの人たちに知ってもらいたいですね。そこに、デジタルが関わることで、変化のスピードもあがるでしょうし、よりよい社会をつくれる期待感もふくらみます。これからも、明るく楽しい未来を、一緒に描いていけるといいですね。今日はありがとうございました。 


労働者協同組合 やさしいまちづくり総合研究所 

https://www.yasassii.or.jp/  

インターンシップ座談会:僕にとってある意味、理想的な職場かもしれない。

ダンクソフトでは2024年8月、今年第1回目となるインターシップ・プログラムを実施。徳島県の阿南工業高等専門学校の学生2人が参加しました。そこでダンクソフト代表の星野と学生たちのダイアログを行いました。今回のコラムでは、20歳前の若い人たちが考える理想の働き方など、リアルな声をご紹介します。 



┃5日間のプログラム、そのメニューは? 

 

星野 おふたりはどのような理由でダンクソフトのインターンシップに参加しようと思ったのですか? 

堀江 私たち2人とも阿南高専で情報コースを専攻しています。実際に企業ではどのようにソフトウェア開発が行われているのか、自分が学校で学んでいる知識がどの程度通用するのか、興味を感じて参加しました。 

北村 ダンクソフトの社員である竹内さんが、私たちの情報コースで講師をされています。そのため、ダンクソフトの名前は以前から知っていました。IT企業はたくさんありますが、ダンクソフトには知っている人がいる安心感と親しみがありました。そこでインターンシップ先に選びました。 

星野 今回のダンクソフト・インターンシップでは、色々な働き方を体験していただけるようプログラムを組んでいます。1日目~3日目は徳島オフィスを中心に実施して、オフィス勤務と在宅でのリモート勤務を経験していただきました。4、5日目は東京本社での実施です。今日は4日目、東京初日ですね。ここまでどんなことを体験しましたか? 

堀江 ASP.NETというフレームワークを使ったWebアプリケーション開発とVisual Studio環境でのプログラミングに取り組みました。ASP.NETは思った以上にたくさんの機能があって、「なるほど、こういう感じでWeb開発が行われているんだ」と感じることができました。 

北村 僕が印象に残っているのは、Visual Studioでのプログラミングです。チャレンジングな課題に取り組むときに、予想しなかったことが起こってどうなるかと心配したのですが、プログラミング上で起こった競合なども、意外と簡単に解決できた経験ができました。 

星野 東京では、ダンクソフトが開発している「WeARee!」を使って、新オフィスである12KANDA内の魅力を伝えるスタンプラリーを作成いただく予定ですね。   

┃初めての在宅勤務を実際に体験 

 

星野 さて、まだインターシップ期間の最中ですが、これまでのところでは、ダンクソフトについてどんな印象を抱いていますか? 

阿南高専の堀江さん(左)と北村さん(右)

堀江 働きやすい環境が整っているな、という印象を受けました。最近、企業で在宅勤務が増えているというニュースを耳にしていましが、実際にはどうなんだろう?と思っていました。ところが、ダンクソフトではふつうに行われています。どこでも仕事ができる環境を整えるためにすごく努力しているようにも感じました。 

星野 なるほど。僕らはあらかじめ目標を決めて、それを達成するために努力しているわけではないんですね。むしろこれまで、いろいろな働き方をしたい人たちが集まってきて、みんなで理想型を考えているうちに、徐々に形ができてきて、自然といまのスタイルになってきました。これはダンクソフトの特徴かもしれないですね。ただ、全員が自宅勤務で、物理的に離れたところでプロジェクトを連携して行うので、理想の働き方を実現するために、確かに、一人ひとり工夫や努力をしていると思います。今までにない新しいことを形にするわけですからね。 

北村 僕も在宅勤務についてはちょっと心配していました。けれども、実際に体験してみて、意外に自分に向いている働き方だなと思いました。パソコン上で1対1で話し合った方が、自分的には落ち着いて話ができました。まわりにたくさんの人がいるとついつい緊張してしまって……(笑)。 

星野 それは面白いですね(笑)。逆にオンラインで話す方が緊張してしまうという話はよく聞きますが。ところで、ダンクソフトには阿南高専のOBが何人かいるのですが、話を聞いてみましたか? 

北村 徳島オフィスで、プログラミングを一緒に行ってくださった港さんも、僕らの先輩ですよね。親しみがあって話しやすく安心でした。  

┃若者は、本当に地域に残りたいのか?  

 

星野 毎年マイナビが、地元就職を希望する学生の割合を調査しています。だいたい6割の学生が、卒業後に地元での就職を希望しているそうです。私の感覚としても、そういう人たちが増えてきているのではないかと思っています。ですので、ダンクソフトでは、10年ほど前から地元に残りたい若者たちが地元に居ながらにして仕事ができる働き方を提唱してきました。おふたりは徳島県の出身ですよね。実際にはどうですか、皆さんは、卒業後も地元で働きたいですか? 

堀江 僕は、将来を考えると、子育てがしやすい町に住みたいので、その点では徳島はいいと思います。徳島では地域の人が優しかったりするので、そういう環境で働けるのだとすると、自分的にはだいぶありがたいかなと考えています。ですが、職住が近ければ、徳島に限らず、どの地域でもよいかなとも思います。 

星野 なぜ職住接近がよいのですか? 

堀江 眠ることが大好きで(笑)。少しでも多く睡眠時間を確保したくて(笑)。 

星野 (笑)確かに通勤時間は、ある意味、注目すべき時間ですよ。というのも、たとえば往復3時間かけて通勤するとしても、その3時間は勤務時間にはカウントされません。会社のために使っている時間ですが、そこに対価は発生しないんですよね。ダンクソフトでは、在宅ワークですから、自分の貴重な時間を通勤時間にかけることなく、その分の時間を、自分自身をアップデートするために使うことができるという利点がありますね。 

北村 僕はできれば徳島で働きたいと思っています。東京などと比べても物価が安いですし、将来家庭を持って家を建てるにしても実現しやそうですし。でも、徳島にも不満なところがあります。 

星野 それはどのような? 

北村 1つは南海トラフ地震への不安。2つめは、もうちょっと都会的だといいなと思っています(笑)。徳島には、オシャレで便利なお店が少ない。今はサイゼリヤに行ってみたくても、兵庫まで行かないと徳島にはないんです。 

星野 いま聞いた竹内さんからの情報によると、もうすぐ徳島にもサイゼリヤがオープンするらしいですよ。 

北村 ならば問題解決で、徳島で働きたいです(笑)。 

星野 いいですね。徳島オフィスの竹内さんもそうだし、港さんもそうですが、徳島に残りたい人が残ることによって、地域との関わりができますよね。少し前まではテレワークというコンセプトもなく、地元にいながらにして仕事ができるという選択肢が、そもそもありませんでした。働きたい若い人たちが地域に残って働くことによって、地域の未来が変わるんじゃないかという期待があります。   

┃ペーパーレス化への不安と興味 

 

星野 ところで、ダンクソフトでは、ペーパーレス化をして、データをインターネット上にのせて共有し、離れていても連携して働ける「スマート・オフィス」を提唱して、実践しています。「スマート・オフィス」のように、ペーパーレス化され、デジタルの能力を生かした職場環境だときくと、どう思いますか? 

堀江 ペーパーレス化ということですが、職場からすべての紙がなくなってしまうことには、僕は正直言って不安があります。書類をぜんぶデジタル化してクラウドで保管すると、不具合が起こってサーバーがダウンした場合、復旧作業が難航し、仕事が麻痺してしまう恐れがあるのではないでしょうか。それを考えると、重要なものは書類として保管し、日々の仕事で使うようなものはデジタル化するといった、アナログとデジタルの中間くらいのイメージがちょうどよいような気がします。 

星野 なるほど。しかし、実際は逆ですね。最近のクラウド・サービスは、データを複製していろいろな地域にあるサーバーに分散して保管しています。また、今回堀江さんが感激したウェブ開発ツールもそうですが、バックアップが自動でとられていて、復元ができるサービスが今はほとんどです。ですので、もしもトラブルが発生しても、バックアップがしっかりしていますから、むしろ安全です。データが消えるリスクは相当低いし、復旧もスムーズなはずです。一方、紙の書類で保管していると、紛失してしまうかもしれないし、万が一、火事や災害で被害にあえば、もう復元できないのですよね。デジタル化されているオフィス環境のほうが、アナログな環境よりも盤石なのですね。 

北村 僕も、どちらかというと、実物があった方が安心です。お金の使い方も最近はキャッシュレスが主流ですが、自分はやはり現金派。1000円あったとして、そのうちどれくらい使ったか実感がないと不安です。それは書類でも同じだと思っていて、手元に実物としてある方が忘れないし安心できます。ぜんぶがパソコンの中に入っていると、ついつい見落としたり忘れたりするんじゃないかと思うので、大事なものは紙で確かめたいです。 

星野 確かにクラウドは目に見えないものです。その不安は、企業人のなかでも、デジタル化した時に比較的多くの人が最初に感じるものだと思います。しかし、デジタル化するとメリットがたくさんありますよ。ほしい情報を検索するのも、紙の束から探すよりも、ファイルを検索するほうがはるかに速いです。1万枚の書類から、探し出すのは本当に大変です。また、単に保管するだけでなく、情報をアップデートでき、その履歴を管理できることも、ペーパーレス化の大きな特長です。在宅ワークで離れているメンバーたちがチームで連携し、仕事の質を高めていけるのは、デジタル化されているからこそ。 

堀江 確かに、在宅勤務が主流になってきたという最近のニュースでも、紙でやり取りする必要性があって、結局は会社に行かなければいけないと聞きます。ですが、ダンクソフトさんだとその可能性がだいぶ少ないのだということは実感できました。 

星野 それはよかったです。そしてさらに、なによりもペーパーレス化はエコですよね。この地球の温暖化についても、もうちょっと全体で考えなくてはいけない局面にきていますしね。 

要するに、デジタル化には、次の3つの期待をしているんですよ。1つは、地球温暖化というマクロな課題の解消にとって重要だということ。2つ目は、これまでになかった選択肢として、残りたければ新しい世代が地元に残って仕事することができること。これは、いまなおつづいている一極集中を解消して、全国各地の地域を活性化するという日本の問題の解決にもつながっていますよね。このほうが地元の商店街も企業も活性化するしね。 

3つ目は、デジタルと人間のよい関係が、かえって新しい安心を創り出すということ。多重バックアップとか、何度でも柔軟にアップデートできるとかね。印刷文化だと、一度公表したら、直すだけでも大変でした。それに、今後もっとそうなると思いますが、どんなに離れた場所にいても、良質な協働作業ができるのもいいですね。この中で一人ひとりもしっかり成長できますから。 

このように大きな問題から、身のまわりの問題まで、デジタルが計り知れない大きな役割を果たすと期待しています。   

┃仕事もプライベートも充実して働けることが理想。ダンクソフトは? 

 

星野 ところで、2人は社会に出てからの働き方について、何か具体的にイメージしているものはありますか?  

堀江 僕はゲームが好きで、自分でも3Dオブジェクトをつくることに挑戦しています。ですので、以前まではゲーム開発といった仕事にチャレンジしたいと思っていました。けれども最近は、ゲームは趣味だけにしておいた方がよいかなと感じています。職種的には、学校でも勉強していますし、ITの仕事に興味があります。一つ条件をあげるなら、プライベートの時間も大切にできるような働き方をしたいです。 

北村 僕も同じです。まだ仕事について、はっきりしたイメージは持っていませんが、プライベートも仕事も充実できるようなバランスのよい働き方をしたいと思っています。体力にはあまり自信がないし接客も苦手。それも考えると、ITは自分にとって向いている仕事ではないかと感じています。 

星野 体験してみて、ダンクソフトはどんな会社だと感じていますか? 

堀江 僕的には、かなり理想に近い職場じゃないかなと感じています。自宅でもカフェでもどこでも働くことができて、仕事ばかりでなく趣味にも熱中できる。こういう会社はなかなか巡り会えないではないかと思っています。 

星野 基本的にはダンクソフトでは、プライベートの時間を大切にしていますね。先ほどの睡眠の話もそうですが、自分の健康や家族が整っていて初めて仕事に集中ができます。余暇時間をご自身のクリエイティビティを高めたり、新しいことを学んだりする時間に使ってほしいと考えている会社です。 

北村 高専の講師でもある竹内さんの話を聞いていると、とてもたくさん趣味があってプライベートも充実しているように思います。最近では、メンサの会に入られたり、マラソンもされていたり、仕事もしながら学びもされていて、すごいなと。インターンシップに参加してみてそんな印象が強まり、仕事もプライベートも楽しんで働ける会社だと感じました。 

星野 今回はインターンシップへの参加、ありがとうございました。一人の人間のなかには、たくさんの多様性があると考えていて、ダンクソフトでは「ポリバレント」という考え方を大事にしています。もともとはサッカー用語で、一人が、ひとつの固定したポジションではなくて、状況に応じて色々な役割ができることをいいます。ぜひ、おふたりが好奇心や探求心をもって学びつづけ、これからますます活躍されることを期待しています。   

◆ インターンを経て、ダンクソフトのスタッフとして活躍するメンバーの声  

ダンクソフトに入社して、想像以上の成長を実感しています。 

開発チーム プログラマー 港 左匡 

私が阿南高専の学生としてダンクソフトのインターンシップに参加したのは2020年のこと。徳島オフィスと在宅勤務の両方を体験して、こんな働き方ができるのだと驚きました。入社してみて感じているのは、よい意味でのギャップです。入社当時はソフトウェア開発ばかりするものかと思っていましたが、お客様とのやりとりやプレゼンテーションをしたり、社内業務を担当したり、仕事の幅が広がって、色々な経験をしています。さらに阿南高専をはじめ地域の人たちとの活動などさまざまな仕事に携わり、想像以上の成長を実感しています。今回のインターンシップでは、そんな自分の経験も活かしてプログラムを企画しました。 

 

インターン当時のインタビュー 
https://www.dunksoft.com/message/2020-11?rq=%E6%B8%AF#2011%E2%80%903   


【関連コラム】

安全な個人情報の管理だけでない? プライバシーマークの5重効果

インターネットが普及して、デジタルを使って便利さを手に入れた一方で、個人情報をめぐって、企業が甚大な被害にあう事件が増えています。ハッカーによって大手企業が標的にされ事業が停止するなど、近年よく報道されるようになりました。いまや、個人情報保護の有効な対応が、優先度の高い経営課題となりました。 

 

そこで今回は、プライバシーマーク(Pマーク)についてお話しします。プライバシーマークとは、個人情報の保護に関わる第三者認定制度です。 

 

ダンクソフトは、このPマークの認証をいち早く取得しています。今回のコラムは、ダンクソフトの経験を通じて、Pマークの重要性や2年ごとに実施される更新審査などをご紹介します。さらに個人情報を安全に管理するばかりでなく、そのプロセスから生まれてくる5重の複合効果についても、お話しします。  



┃新基準で加わった「トレーサビリティの確保」とは 

 

ダンクソフトでは、2006年にプライバシーマーク(Pマーク)を取得しています。お客様のプロジェクトを行うために取得が必須だということがありますが、ダンクソフトのような20数名規模の会社でPマークを取得しているケースは多くはないと思います。 

 

実際、Pマークの取得率は、上場企業でも2割ほどといわれています。そんな状況もあって、「ウチの会社は関係ない……」と思っている経営者の方も多いのではないでしょうか。  

 

しかし、個人情報は企業が扱う情報の中でも、もっとも基本的なものです。その保護への関心は年々高まっています。 

 

2022年には個人情報保護法が改正され、それにともなってPマークの基準も変更されました。個人情報における「トレーサビリティの確保」が義務づけられたこともそのひとつです。 

 

この「トレーサビリティの確保」とは、個人情報のやり取りを、追跡可能な状態にすることを言います。ですので、個人情報を提供する側と、受け取る側の双方が、個人情報取り扱いの記録を残すことが求められます。 

 

ダンクソフトだけが実施してもだめで、取引先にもそれが求められるということです。この変更に対応して、ダンクソフトでは名刺の発注を、それまで長く付き合ってきた会社からPマークを取得した企業へと、やむなく変えざるを得ませんでした。 

 

このように、個人情報のマネジメントが、名刺1枚にも関わってくるわけです。ある程度の規模がある会社はもちろんのこと、規模にかかわらず、これから積極的にビジネスを広げていこうとする会社であれば、業種にかかわらずPマークの取得をぜひ検討してみることをお勧めします。  

 

┃「ペーパーレス化」は、プライバシーマーク取得とともに推進 

 

Pマークを取得する理由は、主に、企業としての信頼性を高めることがあげられます。皆さんも、個人情報がきちんと管理できる会社にプロジェクトを依頼したほうが、安心しませんか。また、採用活動などでもよいPRになることが期待されます。 

 

ただ、実際に取得してみた経験では、Pマーク導入には、それ以外にもさまざまなメリットがあることに気づきました。 

 

まず第1に、「ペーパーレス化」による業務改善や働き方改革がすすみ、とても役立ちました。 

 

個人情報は、顧客リストや管理台帳ばかりでなく、注文書や請求書まで業務に関わるさまざまな情報に関連しています。Pマークを取得するためには、これら情報を、安全に効率的に管理することが不可欠です。そのためには、紙ベースではなく、データベースによる運用に切り替えるなど、必然的にペーパーレスを促進することになるわけです。 

 

2006年当初は、まだ当社でも、社内のシステムを作っていなかったので、全部、紙で対応していました。ExcelやWordで書いたものを、出力してファイリングし、保管していたんです。それを、最初はマイクロソフトのシェアポイントに入れるようにつくったのが2008年です。そのタイミングで、経費の仕組みをつくって、ダンクソフト内のペーパーレス、サインレス、キャッシュレスができていきました。 

 

紙で管理していたころは、たしか、毎月400枚ぐらいの紙が出てくることになってしまいました。個人情報に関わる書類の中でも、とても煩わしくずっと悩ましいものがありました。それは、社員の勤怠管理に関わるものでした。顧客ばかりでなく社員に関する情報も、企業が保護しなければならない重要な個人情報なのですね。 

 

Pマークの規定に合わせて制度をつくって運用すると、それまで割と適当にしていたものがしっかりした管理になりました。その結果、たとえば遅刻届けや早退届けなどの、社員たちから届けられる勤怠に関わる書類だけでも、毎月そうとうの量の紙になりました。 

 

そこから誰がいつ休むのか、休みなのか遅刻なのかなどをタイムリーに調べるのは、たいへん面倒な作業でした。 

 

そこで、Pマーク導入後に、いろいろと現実的なオペレーションを目指すなかで、クラウドサービスを活用して書類のデジタル化、データベース化を進めました。その結果、だれがいつ休暇を取るのかなどの情報にすぐアクセスできるようになるなど、業務を、画期的に効率化することができました。 

  

┃Pマーク対応をプロジェクト化、「人材育成」の機会に 

 

第2のメリットとして、Pマーク業務を「人材育成」の機会として活かせたことです。 

 

Pマークは有効期限が設定されていて、2年ごとに更新の審査を受けます。そのためには、審査書類の作成などいろいろ準備をしなければなりません。また、機関の審査員が来社して現地審査も行われます。 

 

一見面倒に感じるのですが、ダンクソフトでは、こうした更新審査の準備などPマーク業務を、入社したての社員や入社歴が浅いスタッフが担当する仕組みをつくりました。 

 

更新書類を準備するためには、Pマークについて精通することになります。それだけでなく、社内のさまざまな情報、仕組みにアプローチして、深く理解することになります。準備のプロセスを通じて業務への知識が深まり、ITのリテラシーも高まります。 

 

もちろん、その結果、個人情報ばかりでなく、会社のさまざまな情報を、安全に効率よくマネージすることへの意識が高まるわけです。さらに、Pマーク関連情報を入社歴のまもないスタッフから発信することによって、長年在籍しているスタッフも含めて、ダンクソフト全体での意識も高まっていく効果があります。ダンクソフトが重視する「Co-learning(共同学習)」の機会として、活かされています。 

  

┃経営者の姿勢が問われる現地審査、その実態 

 

Pマークの審査では、書類提出の後、審査員2名が来社して、審査を行います。10時から17時までなので、結構、長時間かけて審査しますよね。 

 

1日の最初は、経営者のヒアリングから行われます。初めて取得した時には20-30分程度のヒアリングでしたが、今では15分ほどになっています。プライバシーマークを、経営者自身がどう考えていて、どう体制が成り立っているかをきかれます。ここで経営者が何を語るかで、その会社の方針が分かるため、ヒアリングを重視しているようですね。 

 

参考情報: 

かしこい中小企業はもう始めている‼ “守るが勝ち”の セキュリティ対策! 

https://www.ipa.go.jp/about/ipanews/ipanews202302.html  

今回は、経営者の意識が高いと評価されました。セキュリティに関して、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から取材をうけた記事を、審査員の方が読み込んできたようでした。 

 

2006年を振り返ると、最初の審査のとき、この経営者ヒアリング時に、組織の中でも理解が低い人が、その組織の姿勢を表しますよ、と言われました。そのレベルを上げていくことが、組織の力になります、と。 

 

その通りですよね。そこでダンクソフトでは、新しい人が入社すると、必ず社内レクチャーを行っています。また全社員が半年に1度、Pマーク担当者がつくったテストを受けることになっていて、定期的に理解度を確認しています。 

 

先日は、担当のひとりである竹内が用意したテストでした。阿南工業高等専門学校で授業をうけもっているだけあって、ひっかけ問題が含まれているんです。これがひっかかってしまうんですよね、点数に満たないと追試なので、私自身も心してテストに参加しています。 

 

ダンクソフトがPマークを取得してから20年近くが過ぎました。いま改めてチームを見れば、情報管理に関わる会社全体の力が格段に高まったように感じています。 

 

多くの企業では、総務部などで一括して業務を行い、義務的に遂行するケースが多いようです。ダンクソフトのように、全社プロジェクトとして推進する仕組みと体制をつくっていることは、審査員から評価されたポイントのひとつです。 

  

┃審査員たちが感嘆したダンクソフトの“スマートオフィス” 

 

2年ごとに実施されるPマークの更新審査は、ペーパーレスをはじめ、仕事の効率化がどれだけ進んだかを再確認する、とてもよい機会になっています。2006年、最初の取得審査の時には、紙の書類を膨大に用意しなければならず、テーブルに乗り切らないほどの量でした。それが更新審査の度に少なくなり、当初は丸1日かかっていた現地審査の時間も短く済むようになってきました。 

 

今年はちょうどその更新年で、ダンクソフトが新オフィスに移転したばかりの7月に、審査員が来社して現地調査が行われました。 

 

ダンクソフトでは、個人情報に関わるものをはじめ、社内で扱う書類のすべてをデータベースに保管し、クラウドサービスの「kintone(キントーン)」を利用して独自の仕組みで管理しています。その結果、書類も年々減少しています。 

 

新オフィスには、メインのオフィス・スペース1ヵ所と、書類を補完するだけの別部屋、これら2つのスペースがあります。メイン・オフィスには、今では、紙の書類を入れておく棚はありません。書類はといえば、小さな別部屋のなかに、書棚2段ほどしかありません。ちなみにPマークを取得した10数年前は大きな書棚が10以上もありました。 

 

現地調査に来た審査員は、その整然とした仕組みに驚き、感嘆した様子でした。審査後の雑談で聞いたのですが、未だにほとんどの会社が膨大な書類によって管理を行っており、審査もたいへんだそうです。Excelで作られたファイルがバラバラに存在して探すのが大変だということ。 

 

ダンクソフトの場合は、データベースで簡潔に整理されて、すべての情報が連携しているシステムなので、Excelは使わずに、データはデータベース上にあります。検索、抽出も容易です。日々進化している理由は、情報システム構築レベルの高さにもあると思います。 

 

ですので、ダンクソフトのような会社は希少だという話でした。多くの企業がダンクソフトのような個人情報管理の方法になればいいですね、と、コメントをいただきました。 

  

┃レベルアップをめざすなら、外部の基準や視点を取り入れること 

 

この話を聞いて、改めて、ダンクソフトが提唱し、実践してきた「スマートオフィス」の効果を再認識しました。そして、もっとさまざまな企業・団体にも、チャレンジをしていただきたいと思います。 

 

ビジネスの基盤を強化し、企業としての信頼を高めるPマークの取得、そしてそのPマークを機会にペーパーレス・キャッシュレス・サインレス化を進めていきたいと考えるなら、ぜひダンクソフトにご相談ください。 

 

ある程度の規模、たとえば、10人以上の企業・団体なら、取得を検討してみるとよいのではないでしょうか。ただ、会社の規模は本来的には関係がないと思います。むしろ、規模を問わず、成長しやすい方向に組織を変えていこうとするならば、外部からの確認が入ることが、ガバナンスやBCPの観点からは重要です。 

 

組織は、何も手をかけずに放っておくと、どんどんレベルが下がっていきます。自社の質について、レベルを維持し、さらに上げていくためには、外部の基準を取り入れると近道だと考えています。ぜひご一緒に、実践していきましょう。 


明るく楽しいデジタルの未来をつくる ─ ダンクソフトのグランド・ナラティブ─

7月から、ダンクソフトの新しい年度(42期)がスタートしました。42期を迎えるにあたり、ダンクソフトは12回目の本社移転を行いました。神田と秋葉原の丁度あいだに完成した新築の複合ビルへ。この新しいオフィスを起点に、デジタルによって、明るく楽しい未来をつくっていこうと考えています。 

 

そこで今回は、ダンクソフトの5年後の姿をまとめた「グランド・ナラティブ(大きな物語)」をご紹介します。この物語は、私たちが目指す4つの「未来」から構成されています。  



┃未来像1:Project と Tech School の融合 ─オフィスと働き方の未来─ 

 

まずお話ししたいのは、オフィスの未来、働き方の未来です。 

 

今回、新しい場所への本社移転を決めたことも、未来のイメージに近づくためのひとつといえます。その未来イメージのひとつめが、“「Tech School」と「Project」が融合するオフィス、働き方の未来”です。 

 

一人ひとりが「学ぶこと」は、ダンクソフトにとって生命線です。 

 

テクノロジーの進歩はますます加速します。テクノロジーのみならず、私たちを取りまくビジネス環境も、創業時の40年前とは様変わりしているように、これからますます変化していくでしょう。 

 

こうした未来環境に対応するため、また、未来に先んじて innovative な動きをつくっていくためには、スタッフ一人ひとりが、自らのスキルや知識を深め、広げていくための時間が大切になります。常に“先駆者の精神で、学び続ける”ことが大事です。そこで、「Tech School」というイメージを、みんなで具現化していきたいと考えています。 

 

昨年度を振り返ると、社内では、労働基準法をより意識したため、業務内の「学びの時間」を確保することが難しいチームもありました。今年度からは、スタッフたちの学びの場や時間を改めて確保できるようにしていきます。その結果、個人として、またチームとしてのさらなるレベルアップを目指します。 

 

このとき、社員のみならず、社内外のメンバーたちが関わりあいながら、学びあっていくような、ダイナミックな学びの機能をイメージしています。この新しいオフィスや、オンラインを介して、人々が集い、交流しながら、「Tech School」のイメージをつくりたいものです。 

 

その表れのひとつは、数年前から行っている阿南工業高等専門学校との協働プログラムです。高専の教員や学生とプロジェクトを実施し、開発チーム マネージャーの竹内は、阿南高専で授業を担当しています。こうした高専とのつながりを有機的に発展させていくことも、「Tech School」という未来イメージのひとつです。 

 

 「Tech School」が会社全体の活動の3分の1を占めるとするなら、残る3分の2で、「Project」を推進します。「Tech School」で得られた技術力や提案力を、「Project」に活かしていきます。 

 

今までを振り返ると、ダンクソフトの場合、お客様とともに新しいビジネスにチャレンジしていく案件が多いのが特徴です。これまでにも、建設会社の工程設計、弁護士事務所向けの銀行業務にまつわるペーパーレス化など、その業界での仕事の進め方を劇的に変革するようなProject を数多く手がけてきました。 

 

ダンクソフトの社名は、バスケットボールの「ダンクシュート」に由来しているのですが、これはゲームの流れを変える劇的なショットを意味します。ダンクソフトは設立から 41 年の間におよそ 3 万件を超える案件を手がけてきました。これらの大半が、社名を反映した新しい価値を提供し、それまでの流れを変えるような Project です。 

 

テクノロジーとビジネスを、ともに学びあい(Co-Learning)ながら、新たなサービスを構築し、お客様や、さらにその先のお客様に喜んでいただく。そこからまた、次のProject が生まれることで、社会に新たな価値のさざ波を広げていくことができると考えています。   

┃未来像2:スタッフが成長する未来 ─採用と成長、そしてコミュニティとともに─ 

 

2つ目の未来は、「スタッフが成長する未来」です。スタッフたちの成長は、いつでも現在進行形ですから、「スタッフが成長している未来」と表現するのが、より正確なのかもしれません。 

 

ダンクソフトの採用情報はこちらをご覧ください。

まず、今もこれからも、ダンクソフトでは採用に力を入れていきます。人口減少が進むなか、質の高いスタッフを確保していくことは、企業にとって重要課題です。 

 

ダンクソフトでは、採用時に大事にしていることがいくつかあり、なかでも、「Polyvalent(ポリバレント)であること」を、重視しています。 

 

これは、これからの人材に求める大事な条件です。もともとサッカー用語で、さまざまなポジションを担える人材を言います。ダンクソフトの場合、たとえば、ウェブ・デザイナーがプログラミングを覚えてプログラマーとなることもありましたし、プログラマーが全社イベントを運営・実施したり、会計業務にも携わったりすることもあります。 

 

ひとつのポジションに固定されずに、興味・関心を広げていければ、一人ひとりがさらに成長する機会を得られます。 

 

また、採用して終わりではなく、その先に大事なフェーズがあります。それが、スタッフが「成長しつづける」環境を用意することです。 

これが「採用と成長」と明記する理由です。 

 

最近、日本のスポーツ界でもチームのあり方が変わってきましたよね。以前は、監督が主役で、選手はその指示どおりに動くことが常識でした。そうではなく最近では、選手たちがお互いに話しあい、意思疎通して、局面ごとに動くようになってきています。 

 

ダンクソフトは、このような「クリエイティブ・ワークチーム」という考え方で仕事を進めることを奨励しています。つまり、①スタッフたちが「対話」と「協働」を中心に Project を進め、②Co-Learning しながら互いに成長し、そして③みんなで創造的なアイディアを出しあいながら、柔軟性の高いチームとして、Project を展開していくことを目指しています。 

 

最近では、企業に求められる事柄が多くなりました。たとえば、SDGs といった社会課題への寄与、ワークライフバランスなど働き方改革、防災の観点では災害発生時に地域と共助することなどが期待されています。これからの企業は、地域社会と連携し、コミュニティの一員として関わることになります。 

 

このことは、スタッフたちが成長していくうえでの機会だと考えています。私たちはこれからも地域や社会に参加し、互いに支えあう姿勢を大事にしていきます。  

┃未来像3:地域づくりと関係づくり ─パートナー、若者とともに─ 

 

3つ目の未来は、「地域づくりと関係づくりの未来」です。ダンクソフトは、これまでも地域とのつながりを大切にして、一緒になってさまざまな協働関係を生み出してきました。このような取り組みを、さらにさらに広げていきたいと考えています。 

 

初回は、当時のダンクソフトのオフィスから公開生中継。動画はこちらからご覧いただけます。

2011 年 2月 1 日から、ダンクソフトは、コミュニティ・ラジオでの番組放送を始めました。

もともと、中央区からワークライフバランスに関する受賞をうけたことがきっかけで、中央区のコミュニティ・ラジオ「中央エフエム」で、子育て支援番組をスポンサーすることになりました。

その経験から、地域に情報がいきわたること、地域をデジタルで結ぶことが不可欠だと考え、番組をスタートすることになりました。

「バザールバザールライブ」という生番組は、それ以来、月 1 回くらいのペースで、ゲストを招きながら、放送を重ねています。 

 

今後は、この新しいオフィスをスタジオにして、ここから放送することを計画しています。千代田区はコミュニティ・ラジオを持っていないため、中央エフエムの番組に情報を載せることで、千代田区のお役にも立てると考えています。番組収録時には、リスナーの皆さんを招くことも可能です。番組を通じてつながりができた人たちと、さまざまなタイプの活動を進め、「地域づくりと関係づくり」を広げていきます。 

 

また、地元との関わりということでは「神田藍の会」をはじめて、今年で3年が経ちました。神田を中心とするエリアの有志メンバーが集まり、日本の伝統的な植物である「藍(あい)」を育てています。藍が結ぶ、地域住民や企業のネットワークです。神田明神も参加していますし、今年は、武道館の目の前にある千代田区旧庁舎のベランダでも、藍を育てています。地域にどんどん顔見知りが増えて、安全・安心な街づくりにも貢献してきた実感があります。布を藍の葉で染める生葉染めイベントも、ダンクソフトのオフィスで行っています。先日は、千代田区のまちづくり協議会から、2 年連続で表彰されました。 

 

AST倶楽部(旧ACT倶楽部)については、こちらをご覧ください。

東京・神田だけではありません。ダンクソフトがサテライト・オフィスを構える徳島県との関わりが年々深まっています。阿南市にある阿南高専の学生や先生、OBなどと一緒に「AST倶楽部(旧ACT倶楽部)」を運営するなど、地域の皆さんと一緒にいろいろな活動を進めています。地域を離れることなく、地元に居ながらにしての働き方を支援しています。これはダンクソフトが提唱する「スマートオフィス構想」の実践の場でもあります。 

 

このように、地域づくりを通じて得られた知見やネットワークもまた、ダンクソフトの新しいProjectを生み出す大切な基盤になっていきます。   

┃未来像4:需要づくりの未来 ─スマートオフィス構想で人々を幸せに─ 

 

最後にお話しする未来は、「需要づくりの未来」です。50 周年に向けてダンクソフトが成長し続けていくため、そして、さらにお客様や社会に貢献していくために、考えていることです。 

 

まず、オフィスのイメージを、ProjectとTech Schoolの融合に近づけていくことで、着実な成長を目指します。 

 

これに加えて、新しいオフィスを「SmartOffice Labo」のショーケースにし、「ペーパーレス」・「キャッシュレス」・「サインレス」を訴求して、新しい需要をつくっていきます。実際、新しいオフィスに引っ越してから、SmartOffice としての姿がより鮮明になったと感じています。このオフィスで出る1年間の紙の書類は、わずか段ボール箱半分くらいのものです。すべて数えても、総量は6箱分ぐらいと、少ないですよね。 

 

そして、ダンクソフトでは、「デジタル・デバイドの解消」から「コミュニティの活性化」へ、というストラテジーを掲げています。これらを推進すれば、デジタルが生活の中にとけこむとともに、私たちはもっと幸せを実感して暮らせるようになるでしょう。 

 

そのために、ダンクソフトは、製品の組み合わせや連動を進めて、もっと製品やサービスを使っていただきやすくすることをプランしています。 

 

近い将来、ウェブ・サービスやインターネットをベースにして、既存のサービスを組み合わせることを視野に入れています。「ダンクソフト・バザールバザール」や「WeARee!(ウィアリー)」など、ダンクソフトのサービスが、さらにさまざまなシーンで利用できるようにしていきます。 

 

さらには Microsoft Partner Network や kintone Cafe といったテクノロジー・コミュニティを活用して、ビジネスの輪をさらに大きく広げていきます。 

 

新しい需要をつくっていくために、これまで以上にパートナーたちとの協働にも力を入れていきます。なかでも私がフォーカスしたいと思っているのが、「若者」との協働です。ここでいう若者とは、単に年齢が若い人という意味ではなく、いくつになっても考え方が若く、遊び心を持ち続けている人たちのことです。 

 

これまでも、さまざまな地域で、多様な人たちと一緒にコミュニティづくりに取り組んできました。さらに多種多様なパートナーたちとのネットワークを構築し、デジタル・デバイドのないコミュニティづくりを進めていきたいと考えています。   

┃明るく楽しい、デジタルの未来に向けて 

 

私は、この「需要づくりの未来」について、「明るく楽しいデジタルの未来」というサブテーマをつけています。 

 

これからはデジタル・テクノロジーがもっと身近になり、私たちはオフィスばかりでなく、家庭でも、デジタルの持つさまざまな便利さや楽しさを実感していくでしょうね。 

 

たとえば、いま私は新しいオフィスに引っ越してきたばかりで、旧オフィスのベランダに、育てている藍やバラの植木鉢をまだ置いたままにしてあります。そこで、IoTのデバイスを使って、遠隔にある植物たちをリアルタイムで見守れる仕組みをつくりました。 

 

また、家庭内でも、ちょっとしたテクノロジーを使って、カーテンの開け閉めや、照明のオン・オフが、フリーハンドで行えるようにしてあります。 

 

ひと昔前なら最先端といわれるようなデジタル・システムも、誰もが安価に、簡単に実現できる時代になっているのですね。 

 

こんな明るく楽しいデジタルの未来を、皆さんと一緒につくっていこうとしています。 

 

デジタル社会はまだ始まったばかりです。設立 50 周年を迎える 2032 年に、ダンクソフトはどのように成長し変化して、皆さんとどんな協働をしているのか。いまから本当に楽しみです。 

データベース保護の重要性 ─未来企業のリスク・マネジメント─ 

最近、個人情報に関わる情報漏えいのニュースをしばしば耳にします。もしも会社がこのような事態に直面してしまった場合、ビジネスに支障が出るばかりでなく、社会的な信頼を失い存続すら危うくなってしまいます。「ヒト」に関わる情報を守ることは、経営者が先頭に立って取り組むべきとても重要なテーマ。そこで今回のコラムでは、個人情報のマネジメントに関わる課題と解決のためのポイントをまとめてみました。 

 



┃江戸商人に学ぶデータベースの管理術 

 

今回お話ししたいことを整理しているうちに、ある絵が私の頭の中に浮かんできました。「稀代勝覧」(きだいしょうらん)と呼ばれる絵巻物です。これは、江戸時代後期の日本橋の様子を描いた、長さ12メートル余りもある絵巻。作者は不明で、1995年、ドイツの屋根裏部屋で発見されたという数奇な運命を持っています。 

 

以前のオフィスに近い地下鉄・三越前駅のコンコースに展示されていて、通勤時にいつも見て気になっていたものでした。 

 

この絵巻には、当時の日本橋通りに連なるお店の様子、行き来する人々の表情などが精緻に描かれています。その中でも目をひいたのは、「大福帳」を扱う専門の商店があることでした。 

 

この大福帳は、お客さんのさまざまな情報を詳細に記した台帳です。当時の商店にとって、商売のベースになるものでした。現代でいうならば、顧客データベースですよね。江戸で火事が起こると、商人たちはまっ先に大福帳を持ち出して、井戸に投げ込んで守ったそうです。大福帳は丈夫な和紙を使い、水に溶けない特殊な墨で書かれ、乾かせば復元できたそうです。江戸の時代でも、お客さんのデータはそれほど大事に扱われていたのですね。  

┃もしも個人情報が盗まれてしまうと…… 

 

企業が扱う情報の中で、もっとも気をつかわなければならないのが「ヒト」に関わる情報です。このことは江戸から現代に時を移しても、変わりません。最近では、マイナンバーカードにおける情報問題は誰もが知っていますし、大手IT企業のコンピュータがウイルスに感染し、個人情報が漏えいしました。 

 

このようなニュースはもはや日常茶飯事になっていて、企業の規模にかかわらず、真剣に対策を考えなければならないリスクとなっています。万が一、自社が個人情報を流出するような事態に陥ってしまった場合、ビジネスに支障が出るばかりでなく、会社としての社会的信頼が損なわれ、存続すら危うくなってしまいます。 

 

「ヒト」の情報を守ることは、経営者が最優先で取り組まないといけない重要課題といえます。起こるだろうリスクには、前もって対応しておきたいものですよね。先々のリスクを想像して、手前から対応しておくことも、大事なクリエイティビティだと常々考えています。  

┃顧客情報をExcelで管理していませんか? 

 

中小規模の会社でよく見られる問題が、個人情報を含む顧客情報をExcelなどのビジネス・ソフトで安易に管理しているケースです。また、Webサービスで収集した個人情報を、そのままWebに残しているような場合も危険です。インターネットを介して盗まれたり、関係者や社員がUSBメモリなどを使って持ち出すケースが、しばしば起こっています。 

 

このようなリスクを未然に防ぐために、いつもアドバイスしているのが「データベースの活用」です。顧客ごとに独自の番号などをふり、データベースに格納します。いわゆる「顧客マスター」、「マスター・データ」ですね。 

 

大切な情報をデータベースに隠すことで、外部の攻撃からデータを守ることができます。また、不正なアクセスがないように、データを監視することも可能です。大切な顧客情報を、頑丈な金庫にしまって守るイメージです。  

┃データベースを「無価値なもの」にしないために 

 

個人情報に関わるデータは、あちこちに分散させず、ひとつのデータベースで管理することも、非常に重要なポイントです。漏洩や流出などの事故を防ぎます。 

 

例えばダンクソフトでは、顧客、潜在顧客、社員、パートナーなどの情報を、ひとつのデータベースの中に格納しています。データはそれぞれグループ化してありますので、使うときにも楽に作業ができます。この工夫によって、バラバラのExcelをいくつもつなぎあわる必要もなく、セキュリティも強化できますし、業務の効率も格段にアップします。 

 

さらに大事なことは、その先の使い勝手まで考慮しておくこと。データベース化のメリットは、情報を安全に格納するばかりではありません。蓄積したデータを使って分析して、将来のビジネスに活用することが大事です。そのためにも、多少面倒でもデータの登録にはひと手間かける必要があります。 

 

マスター・データの登録にあたって、よく見られる悪例に「その他」を多用することがあげられます。 

 

たとえば「潜在顧客」を登録する場合、区分けがよくわからなかったり、その時には重要と思われなかったりする情報などを、「その他」という区分をつくって、次々と登録してしまうことがよくあります。顧客情報ばかりでなく、販売した製品やサービスなどの場合でも同じです。現象としては、多くのデータに、「その他」=「99999」などという数字がふられてしまいます。 

 

このように、その時には面倒だからと大雑把に登録すると、あとからデータを分析しようとしても、結局はほとんど役に立ちません。その結果、改めてExcelでデータをまとめ直したりすると、そこでまた情報漏えいの危険にさらされることになります。せっかく苦労して作成したデータベースが無価値なものになってしまうのですね。データを外に持ち出さず、データベースのところで作業できるようにして、留めておくことが大事です。 

┃「ヒト」の情報は、会社にとって信頼の基盤 

 

スマートオフィスは「伝票」のペーパーレス化から:カギは「一元化」はこちらです。
https://www.dunksoft.com/message/first-action-to-start-smartoffice-is-how-to-deal-with-integrity-of-slips

前回のコラムでは、ペーパーレス化に向けてまっ先に取り組むものとして、発注書や請求書など、社外に向けた伝票を紹介しました。 

 

実はこれらと同じくらい、ペーパーレス化をすると業務効率が格段に高まる書類があります。それは、遅刻届や早退届など、社内で扱う書類です。 

 

これらはヒトの労働時間をマネジメントするために欠かせないデータです。近年では、教員の残業がクローズアップされたり、物流業界で「時間外労働の上限規制」が適用されたり、労働時間に対する社会の視線が厳しくなっていますよね。 

 

社員たちの労働時間を効率的にマネジメントすることは、今後、企業が社会からの信頼を得るために欠かせない条件になっていきます。また、労働時間は、人件費などお金の管理にも直結します。労働時間も人件費も、大きな意味では「ヒト」に関わる情報です。「ヒト」にまつわる情報は、企業にとっては信頼の基盤となるもの。経営者が優先的に守るべきものです。 

┃ダンクソフトでは保護体制の証「プライバシーマーク」を取得 

 

「ヒト」に関する情報、つまり個人情報の保護体制を評価する認証制度に「プライバシーマーク」があります。 

 

ちょうど5月半ばに発表されたデータでは、2024年3月時点の取得企業数は17,681社です。令和3年時点での企業数が368 万社ですから、全体では取得率が0.5%程度ということになります。まだまだ経営者の意識が時代の動向に追い付いていないのでしょう。 

 

一方、ダンクソフトは、スタッフ20数名規模の企業にも関わらず、プライバシーマークを取得しています。この規模の会社ではまだまだ早いほうですね。

 

【参考】付与事業者数の詳細:https://privacymark.jp/certification_info/data/index.html 

 

認証にあたっての審査では、審査員が会社を訪問してチェックします。私自身も経営者という立場でヒアリングを受けました。その時に聞いた言葉が今でも印象に残っています。 

「誰ひとり取り残されることなく、社員全員で個人情報の重要性を認識しなければならない」というものでした。 

 

さて、これを実践するためにはどうすればよいでしょうか。 

社員の中でも情報管理に対して知識が薄いのは、入社したてのメンバーです。そこで、ダンクソフトでは、新しく入社したメンバーにプライバシーマーク業務を任せることにしました。 

この認証は2年ごとに更新が必要です。デジタル環境・オフィス環境も進化しているので、ルールも年々変わっていきます。そこにキャッチアップしていくことで、最先端のプライバシー保護について理解が深まります。 

その結果、2年ほど担当すると、誰もがプライバシーマークに精通し、詳しくなります。当然、ダンクソフト全体でのプライバシー保護への認識も高まります。 

 

余談ですが、更新時には、紙で印刷して資料を郵送するんです。当社のようなプリンターを持たないデジタル企業が、241ページの書類を印刷して郵送するので、毎年、滑稽に思っています。このプロセスをデジタル化してほしいと思っています。認証の審査員が、ダンクソフトのオフィスにくると、ペーパーレスなオフィスを見て、毎回驚かれますね。 

ともあれ、人材育成の観点も含め、個人情報のマネジメントは、経営者にとって重要な仕事であることを改めて実感しています。いまや取引先によっては、プライバシーマーク取得を義務付ける企業も出てきています。 

 

インターネット、ソーシャル・メディア、クラウド、生成AI…。様々なテクノロジーを活かしたビジネスが常識の時代になっているからこそ、リスクに備えたいものです。未来に向けて、ご一緒に、今から準備を始めることをお勧めします。 




スマートオフィスは「伝票」のペーパーレス化から:カギは「一元化」

「スマートオフィス」とは、インターネットやデジタル・ツールを積極的に活用して、仕事をラクにし、どこからでも働くことのできる環境を整えたオフィスのこと。

私たちダンクソフトが提唱している、これからの企業の在り方です。

これまで何回かお話をしてきましたが、今日はもう少し踏み込んで、実践に向けてのファースト・ステップを紹介します。 



ペーパーレス化のはじまりは、紙類の分類から 

「オフィスのスマートオフィス化」をしようと思い立った時、皆さんなら、どこからはじめますか。ダンクソフトは、「ペーパーレス化」からはじることを、おすすめしています。 

 「ペーパーレス」というと、その言葉の響きから、何もかも紙をオフィスからなくすものと考え、たいへんそうに思う人も多いかもしれません。しかし、職場にあふれる紙は、実際にはいくつかのタイプに分類されます。段階的に手をつけていくことで、スムーズにスマートオフィスへと変身します。 

 手始めに、オフィスにある紙類を見渡してみてください。 

オフィスの紙類は、大きく2種類に分けられます。ひとつは「書類」。日々いろいろな文書を作成していますよね。もうひとつは、「伝票類」です。この2つのうち、大事なのは「伝票類」のほうです。 

伝票とは、入金伝票・出金伝票・振替伝票・仕入伝票・売上伝票など、金銭の出入や取引内容などを記入する、一定の様式を備えた紙のことです。取引についての責任を明らかにして、後の証拠ともなる、経営にとって大事な書類です。見積書・納品書・請求書・領収書など、取引先とやり取りする帳票類も含めます。 

これらが、なぜ企業にとって大事な紙類かというと、企業を存続していくために大事な情報だからです。また最終的に税務署に証明するため、トレイサビリティを高めて、わかりやすくしておかないといけないですよね。 

「書類」ももちろん大事で、スマートオフィスにするためには、インターネット上にのせていく必要があります。ですが、今回は、より重要で、スマートオフィス化の入り口に最適な、「伝票類」をどう扱えばいいかについて、お話ししていきます。   

「伝票類の一元化」が、成功の秘訣 

情報理論のなかに、「Integrity(インテグリティ)」という考え方があります。データを正確にそろった状態にしておくことをいいます。 

しばしば完全性と訳されますが、いうならば「一元化」です。情報を扱うときには、「Integrity」(一元化)を最初から念頭において、情報の構造をつくることが大事です。 


どういうことでしょうか? 

21世紀に入って、会社内でも、ひとり1台のパソコンが持てるようになりました。つまり、一人ひとりExcelやAccessなどが使える環境ができました。 

ただ、これによって逆に、データが一元化されず、バラバラになる現象が加速したともいえるんですね。この結果、経理システムはなんとなくあっても、それぞれが手元で作ったデータをまとめる作業に手間がかかることになりました。 

(ちなみに、もし、ファイルが電子化されていないこと、つまり伝票類を「紙だけ」でやり取りをしていて、デスクの周りや棚に積み重ねているとしたら、これは要注意です。)

 ためしに、皆さんが取り扱う伝票を集めて、見てみてください。実は、入力されている情報は、似ている情報ばかりだということに気が付きませんか。 

 お客様の名前、社内担当者の名前、何にお金を使ったのかという情報。

これらには、品目がでてきて、いくつあったのか、それらがいくらだったのか、単価がいくらで、掛け合わせるといくらで…、という情報が複数行あって、日付が添えられます。 

つまり、人・モノ・金・時間に関する情報です。社内の経費精算についても大体同じような表現ですし、見積書や請求書も同様です。  

さらに、伝票そのものが、社内外のあちらこちらに伝わっていきます。たとえば、見積書の内容が、のちに納品書になり、請求書にかかれて、領収書が作られます。 

伝票の名前はそのたびに変わっていきますが、基本的に入力されているデータは、「同じ」データです。最初に入れたデータがのちにも使われることさえわかれば、最初から構造を考えてデータの一元化をしておけば、とても楽になるわけです。  

「ペーパーレス、キャッシュレス、サインレス」の、セットで解決できる 

ところが、インテグリティ(一元化)を意識していない会社は、とても面倒な作業に悩まされています。そのうえ、データの集計を誤る可能性もあります。  

たとえば、期末になると部門ごとにデータを集めて合計しますよね。このとき、合わないデータ・正しいデータを精査する作業に、数週間かかってしまったりもします。

 

最近では、RPAというロボットが登場しています。 Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、人間に代わって高度な作業をするものです。 

例えば、RPAを導入すれば、情報を持ってきて転記するようなこともできるという話がありますが、これを企業が導入するには、高度な運用ための人材が必要になるので、まずはどなたでもできる取り組みやすい一元化から着手するほうが賢明でしょう。  

ということで、日ごろの業務のなかで、一人ひとりが、伝票をいかにひとまとめにしていくか、意識することがミソ。もともと一元化されていたら、データは二重化、三重化することはありません。  

このように、伝票を一元化すると、保管する紙類が大幅に減って、オフィスが見違えるようにすっきりしてきます。 

それだけではありません。社員たちがこれまで手間暇かけてやっていた大量の作業が減り、クリエイティビティを発揮する仕事により多くの時間を使うことができます。 

これが、「スマートオフィスは伝票のペーパーレス化から始めよう」と日頃からお話ししている1番の理由です。  

また、デジタルによってできることは、ペーパーレスだけではありません。キャッシュレス、サインレスも同時に実現できます。 

私は、この3つ「ペーパーレス、キャッシュレス、サインレス」は、スマートオフィスを実現する上では、ワンセットだと考えています。 

仕事のなかの手間やムダをとりのぞき、その分の時間を、もっと必要なこと、もっと創造的なことに使えるようになるからです。もちろん、仕事を早く終え、その分、休暇や自由な時間も楽しむというメリットもあります。 

日本でよくある光景(1):データのばらつき(マイナンバー・カードを例に) 

 

ただ、実際には「一元化」が阻まれるケースもあります。ここには、日本特有の事情がいくつか見られます。  

ひとつは、日本語表記です。文字データを扱う人やモノのデータは、慎重な配慮が必要です。これには、日本のコンピュータ環境ならではの問題があります。 

もしも、「田中一郎」という同姓同名の社員がいる場合、各人を明確に分けられるようにする必要がありますよね。  

また、「タナカイチロウ」「タナカイチロウ」といったように、全角・半角の両方で表記できてしまうので、これも統一する必要があります。  

特に「人」についての情報は、データの根幹となるものですから、徹底した管理が求められます。  

わかりやすいやり方が番号を用いるもの。政府が進めているマイナンバー・カードがよい例ですね。もっともマイナンバー・カードについては、その番号と情報の紐付けをめぐって、いろいろなトラブルが起こっていますが……。  

日本特有のコンピュータ環境を理解して、データのばらつきを抑え、一元化されたデータ基盤をしっかりつくっておかないと、デジタル化を進めたつもりでもすぐに頓挫したり、思わぬトラブルに直面してしまうことがあります。   

日本でよくある光景(2):Accessの光と影 

Excelよりも大量のデータを扱える、かつて爆発的に流行ったデータベースソフトがあります。それが、マイクロソフトのデータベース管理ソフト「Access」(アクセス)です。  

実は、世界的に見ると、Accessは、日本ばかりでもてはやされたソフトウェアだったんです。 

日本語環境で使い勝手がよかったですし、素人さんでもデータベースのアプリを自分のパソコンでつくることができました。そのためか、今でも利用している会社が日本では多いのではないでしょうか。  

最近、ある中小規模の会社から相談をうけました。 

スタッフの中ではITにたけた人が、かつて十数年前に、Accessによる顧客管理データベースをつくったそうです。 

その後、その担当者が退職してからは、別の人が、わからないながらも機能を拡張してしまい、今では詳しく構造を把握する人がおらず、とても重くて使いづらいデータベースになってしまったとのことでした。要するに、簡単なデータ抽出をするにも時間がかかる事態になっているのだそうです。 

しかし、今もそのAccessベースのデータベースを使い続けていて、大事なお客様情報が何万件も保存されています。 

さらに、別の部門ではまた別の顧客データベースを使っていて、会社として、「一元化」ができていない状況とのことでした。うちも同じような状況だ、という会社さんも、多くいらっしゃるのではないかと思います。  

また、これはExcelでもいえることですが、こういうビジネス・ソフトで大切なデータを保管していると、セキュリティ面で重大な問題が起こる可能性があります。 

インターネットで社内システムと社外が簡単につながるような現代では、個人情報が盗まれたり情報が漏えいしたりするリスクが、あちこちに潜んでいます。 

これでは業務の合理化どころか、会社として社会的な信頼を失ってしまう、深刻な事態になりかねません。  

ダンクソフトは実際、どんな風に一元化しているか 

かくいうダンクソフトは、1998年に日本で初めてAccessが登場した時に、マイクロソフトと組んで、「義理かんり」という顧客データベースのソフトをつくりました。 

これが爆発的に広がったんですね。ソースコードを公開したこともあり、当社の「義理かんり」をベースに、自社でデータベースをつくった方々も多かったんです。  

Accessムーブメントの一端をつくったのは、ダンクソフトかもしれません。 

当時はそれが最先端でしたが、今では、時代にあわせて、企業の社会的信頼を守れるようなシステムの在り方を、皆さんに提案しています。  

実際、世の中では、プライバシーマークの取得などもすすみ、プライバシーマークがないと取引ができない案件も出てきています。 

ただ、特に小さな企業や団体は、こうした大事な分野に予算を使うことを渋ります。 

デジタル化は、目になかなか見えづらい部分なので、後回しになりがちです。事故が起こってからでは遅いため、早めに対策することがよいでしょう。  

ダンクソフトの「未来かんり」というソリューションでは、人・モノ・金・時間を安全に「一元管理」ができます。 

仕掛・見積から受注、納品、請求、入金回収までの流れを、ビジネス案件ごとに一気通貫に見える化できます。 

伝票に含まれる情報をどれだけ再利用できるか。またそうすることで、これまで当たり前だと思っていた作業時間をどれだけ短縮できるか、ということを考慮して、開発されています。 

目に見えないところで、みなさんの作業を肩代わりしてくれる縁の下の力持ちです。 

「未来かんり」の大きな特徴は、未来の予定を入れられるということです。お客様のなかに、2年先、3年先の予約をとるビジネスをされている企業様があるため、単年度のみならず、未来のデータを入れられる仕組みとして開発しました。 

1998年にお客様の社内システムとして開発したものをベースに、何段階かの開発フェーズを経て、2008年から「未来かんり」として製品化しました。  

小さな企業や団体こそ「スマートオフィス化」でクリエイティブな経営を 

スマートオフィスが目指すのは、日々のムダを省き、働き方を新しくし、社員たちの意識を新しくし、誰もが快適に、やりがいを持って仕事に取り組める「環境づくり」にあります。 

確かに、ペーパーレス化によって、大量の紙がなくなり、オフィスの景観が一変しますが、スマートオフィスづくりは、そうした景観や空間デザインの話にとどまりません。  

どこから手を付けていいか、あきらめている方も多いかもしれませんが、ご関心のある方は、ぜひダンクソフトにご相談ください。 

今後は、今よりもっと採用難・人手不足になっていくことが予想されますね。そんななかでも、デジタル化された、これからの働き方ができるスマートオフィスに変身しておけば、若いマインドを持った方々に興味をもってもらえる機会が増えると考えています。 

少ない人数でも、効率よく仕事にあたり、一人ひとりがクリエイティビティを発揮できる余地が生まれます。 

規模が小さい企業や団体こそ、これからますますクリエイティブな経営が求めると考えています。自分たちの現在と未来のために、ダンクソフトと一緒に、スマートオフィス化の流れをつくっていきましょう。 


CROSS TALK:ポリバレントで、学び続ける人に出会う場 ─ダンクソフトの人材ポリシー

ダンクソフトでは現在、Web開発に携わるメンバーを募集しています。そこで今回のコラムでは、Webチームの若手スタッフをはじめとするダンクソフト・メンバーがクロストークします。ダンクソフトならではの働き方や、やりがい、求める人材像など、ダンクソフトの考える採用について、語り合いました。 


<プロフィール>  

▎星野 晃一郎    

代表取締役 

星野晃一郎の未来の物語   
『SmartOffice Adventure ─ ぼくらは人がやらないことをやる ─ 』
https://www.dunksoft.com/40th-story-hoshino

▎竹内 祐介

開発チーム マネジャー  / 2012年入社 

徳島県出身。地元のソフトウェア会社に10年間勤務した後、ダンクソフトに入社。地元・徳島に拠点を置きながら、開発チームを統括する。 

竹内祐介の未来の物語
『ふるさとの未来を創る』 
https://www.dunksoft.com/40th-story-takeuchi 

▎尾形 祐哉 

Webチーム /2021年入社 

アパレル系企業に勤務した後、ダンクソフトに入社。以来Webエンジニアとして経験を積む。  


 ▎ダンクソフトの「多様性」を尊重するマインドに共感した 

 

星野 尾形さんはダンクソフトに入社して何年になりますか? 

尾形 2021年に入社したので、今は3年目です。 

2023年11月 神山まるごと高専の皆さんとダイアログ

星野 ダンクソフトの中では一番ファッショナブルだと評判です。昨年、徳島の神山まるごと高専の学生さんたちとダイアログした際に、ファッションをほめられていましたよね(笑) 

竹内 前職はアパレル系の会社だったのですよね。そもそもどのような理由でダンクソフトに入社したのですか。 

尾形 前職はファッション・ブランドの店舗で、店長を任されていました。業務の中で、販売管理のアプリケーションを使う機会があり、それがきかっけでWebサイト制作に興味を抱くようになりました。これから大きく伸びる分野で、自分の可能性を試してみたいなと。 

でも、ITについてはまったく経験がなかったので、前職を辞めてから自分なりにWeb制作を勉強し、フリーランスのような形で少しずつ仕事を始めました。その際に、自分で首都圏にあるWeb制作ができる企業をリストアップしたんです。そのリストにダンクソフトも入れていて、採用ページを見てコンタクトしました。いま思うと、運命的な出会いでしたね(笑)。 

星野 ダンクソフトのどんなところがよかったですか? 

尾形 前職を辞めたタイミングで実は体を壊してしまい、体力に少し自信がなかったんです。自宅で働けるような仕事を望んでいて、その点、ダンクソフトは、リモートワークについては、それこそ日本でも先駆け的な会社ですから。 

また、働き方も含め「多様性」を尊重する文化にも共感しました。採用サイトにかかれていたスタッフ・ダイアログのなかに、「プログラミングのスキルはもちろん大切だけど、自分たちは“人となり”を重視したい」という言葉があって、印象的でしたね。 

 

 ▎各人のスキルや特性、将来目指すことに合わせて、学びの場をつくっていく 

 

星野 尾形さんは入社以来Webチームにいて、短期間にめざましく成長している印象がありますね。どのようなステップで技術を学んできたのですか? 

尾形 Webについては、入社前にそれなりに自分で勉強してきたつもりでしたが、やはり最初はわからないことばかりでした。そんな自分のレベルに合わせて、入社後しばらくは通常の業務とは別枠で、業務時間内に新しいことを学ぶ時間を用意してもらえました。これはすごく心強かったですね。また、業務の方も私のレベルアップに合わせて、少しずつ難易度の高い開発を任されていく感じで、気を配ってもらっていたように思います。このように学びと実践の相乗で成長できたと感じています。 

竹内 ダンクソフトの場合、大きな企業と違って、画一化された研修制度はありません。むしろ、もっと柔軟な学習環境があります。入社してきた各人のスキルや特性、将来伸ばしていきたい方向性などに合わせて、学びの場をつくっています。それもダンクソフトのよいところだと思いますね。 

尾形 私の場合、先輩スタッフがぜんぶを伝授するのではなく、ヒントをもとに自分で考える機会をつくってくださったんです。自分は考えることが好きなので、このやり方がマッチして、それがまたレベルアップにつながったと感じています。 

竹内 「考えることが好き」というのは大事なポイントですね。ここでの業務は、ただ言われたことを考えずにやるだけということだと、物足りないと思います。プロジェクトを進めるうえで、自分から積極的に自律的に考えられる人はいいですね。 

尾形 入社して以来、楽しく学ばせていただいています。というのも、自分にとって、この学びのプロセスは何かゲームと似ている感覚があるんです。次のステージに行くためには、こんなスキルや能力が必要となる、ならば学ぼう。そしてステップ・アップして達成感を得て、さらに次のステージへ……。そんな感覚です(笑)。 

竹内 その感じ、私もわかります。仕事そのものが楽しければ、学ぶことも苦にならないですよね。例えば、趣味でも同じかなと。私はマラソンに、星野さんはテニスにずっと熱中していますが、上手になりたいと思って新しい道具の情報を集めたりすることは、“たいへん”というよりも“面白い”ですよね。ダンクソフトの仕事には、そんな感覚があるように思いますね。 

 

 ▎デジタルを活用して互いに支え合い、協働していく文化がある 

 

星野 先ほど尾形さんはダンクソフトの魅力として「多様性」をあげていましたね。 

尾形 ダンクソフトの多様性については入社してみて、また改めて驚かされました。想像以上でした。子育てをしながら仕事をしている人もいるし、それこそ星野さんや竹内さんのように趣味にも熱中していて、ワーク・ライフ・バランスよく働いている人たちもいます。 

星野 そもそも働いている場所も国籍も多様ですし。竹内さんは徳島ですし、実家に戻って香川から仕事をしているメンバーや、いまはフランス人のスタッフが日本で暮らしながらダンクソフトで仕事をしていますね。 

尾形 ダンクソフトでは、こうした多様な働き方をサポートする制度も整っているんですよね。これは自分にとって想定外なことだったのですが、入社してしばらく経ってから、家族の介助のために仕事を休まなければならない状況になりました。この時も、介護休暇制度を活用して上手く家庭と仕事を両立することができ、助かりました。 

竹内 このような福利厚生制度についてもダンクソフトはいち早く取り入れてきましたよね。 

星野 デジタルを活用して仕事を効率よく進め、その分で生まれた時間を充実させていこうというのは、そもそもダンクソフトの根本的な考え方なんですよ。生まれた時間を新しいものを見たり学んだりする時間に充てていただきたいと、いつも話しています。好きなことを追求する時間が増えれば、感受性が豊かになって、クリエイティビティがあがり、仕事にもよりよい影響を及ぼすと考えています。 

このようなダンクソフトのポリシーは、2010年に東京都から「ワーク・ライフ・バランス認定企業」に選出されるなど、社会からも注目されてきました。 

竹内 さらにスタッフ自らが検討して、就業規則を自律的にアップデートさせています。例えば、これまでは「育児介護休暇」といった枠組みでしたが、もっと適用範囲を広げようと、2024年4月から「家族支援休暇」という形に改善しました。今までは家族の病気や介護では休めましたが、お子さんの入学式や卒業式などは入りませんでした。これを見直して、家族にまつわるほぼすべての支援については、休暇が取れるようになりました。 

星野 制度もさることながら、ダンクソフトには、デジタル技術を上手く活用してお互いに支え合い、協働のもとに仕事を進めていこうという文化があります。これもダンクソフトならではの特徴だと思いますね。 

 

 ▎自らの可能性に挑んでいく「ポリバレントな人材」に出会いたい 

 

星野 今回、ダンクソフトでは、WebデザイナーやWebエンジニアを採用したいと考えていますが、Webチームにいる尾形さんとしては、どんな人と一緒に働いていきたいと思っていますか?  

尾形 そうですね。プログラミングのスキルといったものはあるに越したことはないですが、ダンクソフトの場合、しっかり学ばせてもらえます。ですので、入社してからいくらでも学ぶチャンスがありますから、それほど気にする必要はないかもしません。それよりも、先ほどから話題に出ている「学び続けること」や、「自分から積極的にコミュニケーションがとれる」前向きな人が向いている会社だと感じています。 

星野 仲間と仕事をするにしても、お客様とやりとりするにしても、コミュニケーションは基本となる能力ですからね。一方で、コミュニケーションのためのデジタル・ツールもどんどん進化しています。デジタルに興味を持って積極的に取り込んでいくことも、これから必要となるコミュニケーション能力の一環だと考えています。 

マネージャーという立場にある竹内さんはどんなダンクの人材像を思い描いていますか。 

竹内 私は、ダンクソフトの魅力のひとつに、「ポリバレントな働き方」ができる環境があると思っています。「ポリバレント」というのは、状況や場面に応じて、フレキシブルに多様な役割を果たせる人のこと。ダンクソフトにはWeb以外にも、システム開発のプロジェクトもあります。これからは、Webとデータベースがもっと融合したようなプロジェクトも増えていくでしょう。2つのチームの枠組みにとらわれない業務もたくさんあります。新しく入ってきたメンバーの意欲やスキルに応じて、新しいチームが誕生する可能性だってあるわけです。 

星野 そうですね、これまでチャレンジし続けてきたように、これからも、社会の動きに先んじて、またメンバーたちの成長をみながら、会社も働き方もさらにどんどん進化させていこうと考えています。 

竹内 むしろ、先にダンクソフトが好きで、気に入って入社して、あとから仕事の内容を相談して考え、対話しながら決めていくような入社の仕方があってもいいと思っていますし、そういう方に参加してもらえたらいいなと。 

尾形 いま「ポリバレント」という言葉が出ましたが、自分自身が目指しているのがまさにそんなキャリアアップです。現在はWebチームにいますが、もっと全社的な業務に携わるのも面白そうですし、将来はマネジメントにも関心があります。 

星野 それは頼もしいですね(笑) 。 

竹内 ダンクソフトは会社そのものが柔軟ですし、規模もさほど大きくありません。大きな企業にいると、部分だけ担当して定年まで過ごすこともあると思います。ここでは、経営者に近いような視点で会社運営を知ることができるんですよね。エンジニアとしてばかりでなく、全社的な仕事やプロジェクトに挑めるチャンスもあります。尾形さんにはぜひチャレンジしてほしいですね。 

星野 40周年を経て、さらに50周年に向けて、メンバーそれぞれが、さらにアップデートしていく局面にいます。ですのでダンクソフトに、多様な働き方をしながら、もっと各人の能力を存分に発揮できる環境をつくろうとしています。そうすることで、一人ひとりの集合態であるダンクソフトがより善くなっていくと考えています。私たちと一緒に新しい変化を生みだしてみたい意欲あふれる人との出会いを、楽しみにしています。 


Web開発に携わるメンバーを募集しています。
ダンクソフトの採用情報は
こちらをご覧ください。

スマートオフィス化を妨げる2、3の思い込み:スマホができれば誰でも実現できる

スマートオフィス化を妨げる2、3の思い込み:スマホができれば誰でも実現できる

デジタルに苦手意識を持つご年配の方の中には、スマートオフィスと聞くだけで敬遠しがちの人も多いのではないでしょうか。ですが、実は、日々使っているスマホを操作できるくらいの知識さえあれば、実現できるものなのです。 

なぜ、今、「スマートオフィス」なのか? 若い人たちを惹きつける未来のオフィス

私たちダンクソフトは、「スマートオフィスづくり」に先駆的に取り組んできた企業です。最近では、この言葉をだいぶ耳にするようになりました。2008年から実証実験をはじめた私たちの、豊富な経験や知見をもとに、スマートオフィスのつくり方を何回かのコラムにわけて紹介していこうと思います。 

 

第1回目は、なぜ今スマートオフィスなのか?という背景と、最初のステップとなる「ペーパーレス化」についてです。どの企業にとっても深刻な課題である若いスタッフの採用・定着においても、実はスマートオフィスはとても有効なチャレンジです。 



▎先駆者であるダンクソフトが考える「スマートオフィス」とは? 

 

「スマートオフィス」とは、インターネットやデジタル・ツールを積極的に活用して、どこからでも働くことのできる環境を整えたオフィスのことです。 

働く人がどこに住んでいても、たとえ子育てや介護で通勤が難しくても、まるで隣り合わせの机に座っているようにスムーズにコミュニケーションをとり、効率よく仕事をすることができます。 

 

この「スマートオフィス」の概念を、私が意識するようになったのは、今から20年近く前、2000年代の初めだったと思います。あの頃、私は中小企業の経営者が集まった勉強会に加わり、今でいう「サテライト・オフィス」のような試みを各地で行っていました。 

 

それがひとつの形になったのが2008年です。静岡県の伊豆高原に、若い人たちが自然の遊びを体験できるような拠点を設け、そこに私たちダンクソフトの社員が常駐して、テレワークの実証実験を始めました。 

しかし、当時はまだWeb回線が不十分で、ファイル送信すらじれったいような状況だったため、なかなか実用段階には届きませんでした。 

 

当時のサテライト・オフィス実証実験の様子

その後の歩みについては、他のコラムなどでも紹介しているので詳しくは触れませんが、2011年、徳島県神山町に本格的なサテライト・オフィスを開設するなど、ダンクソフトは「スマートオフィス構想」を実現するために、常に先頭を切って取り組んできました。 

創業から40年が過ぎた2024年現在、ダンクソフトは東京・神田にオフィスを持っていますが、ふだんここにいるのは私ひとりです。残り20名強のスタッフは、全員がリモートワークをコロナ後も継続しています。ときおり、リフレッシュのためにオフィスに来て仕事をするメンバーもいます。外国人スタッフも2人います。多様な個性と能力を持つメンバーたちが、さまざまな街で暮らしながら、一緒に働いています。 

 

このように先駆者として歩んできた私たちが感じていること。それは、今こそスマートオフィスを、全国の企業で実現すべきだということです。それが働き方を変え、企業を変え、さらには地域社会や日本の社会を前進させていくきっかけになると考えています。 

2024年は、その大きな転換点となるはずです。  

▎若い人たちの感覚とオフィスの実態とのギャップは深まるばかり 

 

では、なぜ今こそスマートオフィスなのか? その理由は、現在の若い人たちの感覚と、日本のオフィスの実態がかけ離れ、その乖離が限界近くにまで達してしまっていることにあります。 

そのギャップは、中小規模、あるいは地方の企業ほど深刻ではないのでしょうか。 

 

今の若い人たちは、デジタル・ネイティブと呼ばれるように、幼い頃からインターネットやスマートフォンを当たり前に利用してきた世代です。一方、今のオフィスはどうでしょうか? パソコンの利用が進んできたとはいえ、そのほとんどは個々の業務に限定され、デジタル化というには、ほど遠い状況です。管理職の人たちのリテラシーも高いとはいえません。 

 

そんな企業に、期待に胸膨らませて入社してきた若いスタッフの気持ちを想像してみてください。彼らは自分たちの能力が発揮できない環境を目の当たりにしてがっかりしてしまいます。ヤル気をなくすだけならまだよい方で、辞めてしまうこともよくあります。 

 

これは企業にとって大きな痛手です。デジタルに慣れ親しんだ若い世代からこそ多くを学ぶこと(「リバース・メンタリング」)、のみならず、お互いに学びあうことが、イノベーションへとつながります。そしてこれが、会社の成長の原動力となっていくわけです。 

 

私は現在、徳島県の阿南高等専門学校の生徒たちと、スマートオフィスをテーマとした勉強会をリモートで月に数回行っています。彼らと話していると、新しい働き方への期待をひしひしと感じます。特に地域の若者のなかには、地域にそのまま残って仕事をすることを希望している人たちもいます。 

 

少子高齢化が進む今、若いスタッフの採用や定着は、どの企業にとっても最優先で取り組まなければならない経営課題です。その課題を解決し、スタッフと事業の成長につなげていくために鍵を握るのが「スマートオフィス」です。   

▎スマートオフィスへの第一歩はペーパーレス化にあり 

 

スマートオフィスといっても、どこから手をつけてよいのかわからない……。そう悩んでいる経営者の方も多いかもしれません。しかし、第一歩を踏み出すことはけっして難しいことではありません。 

私は、このような相談に対して、まずはオフィスから紙をなくすこと、つまり「ペーパーレス化」から始めましょうと提案しています。なぜなら、紙が少なくなれば、オフィスの見た目が変わります。そこから働き方が変わり、社員の意識まで変化していくからです。 

 

あらためて目の前のオフィスの様子を見渡してみてください。 

デスクの上にはたくさんの書類が積み重なり、そのデスクを取り巻くように置かれた棚にも、さまざまな書類や資料であふれかえっている——。 

このような環境では、仕事の効率も高まりません。採用面接でオフィスを訪れた若い人たちが、その光景を垣間見て、果たして自分の将来を託せる会社だと思うでしょうか。 

 

『事例:「ペーパーレス化」で 6期連続の赤字からV字回復』はこちらをご覧ください。
 https://www.dunksoft.com/message/2019/7/22/-6v 

これもダンクソフトとゆかりの深い徳島県での事例ですが、デジタル化による業務改善を支援したことがあります。その会社は証券関係ということもあって、まさにオフィスは紙であふれかえるような状況でした。そこでまずペーパーレス化から始めたところ、最終的には自社ビルの1フロア丸ごとスペースを空けることができました。ペーパーレス化が業務改善にもつながり、業績も上向きになりました。 

 

「デジタル化は、エコノミーとエコロジーの両立を生みだす」と、私は機会あるごとに、そうお伝えしています。まさにそれを証明する事例だと思います。 

 

徳島合同証券株式会社 泊健一社長 のインタビューもご覧いただけます。

▎伝票や帳簿のデジタル化は、想像するよりもずっとカンタン 

 

ペーパーレス化について、もう少しだけ具体的な話をしたいと思います。なかでもまっ先に取り組むべきは、業務に関わる伝票や帳簿のデジタル化です。 

たとえば、経費の精算にしても、領収書を整理して申請書類に書き込み、上司の承認を得て、さらに経理担当者へ……というように、そのプロセスはたくさんの手間と紙を必要とします。これらを電子化することによって、業務は画期的に効率化し、オフィスの姿も変わっていきます。ペーパーレスばかりでなく、判子がいらなくなって、「サインレス」、さらには「キャッシュレス」も推進できるんですね。 

 

しかも、このようなデジタル・システムの導入は、想像するよりもずっと簡単です。最近では、使い勝手がよく、安価なクラウド・サービスが数多く提供されています。 

ダンクソフトでは、そのひとつである「kintone(キントーン)」を利用しています。その結果、20名強のメンバーがいる会社であるにもかかわらず、総務・経理の専任者は不要という仕組みをつくり出しています。  

キントーンを活用したプロジェクト事例『受注者・発注者という枠を超え、アイディアを出しあい実現した「働き方改革」』はこちらをご覧ください。

ある財団法人では、「キントーン」を活用してデジタル化を進めたところ、それまで煩雑だった、出張の申請・承認や経費の精算といった業務を大幅に効率化することができました。そればかりでなく、稟議の階層を減らすなど、組織のあり方とワークフローが変わることで、次第に個々人の意識まで変化していきました。これも、ダンクソフトが支援したスマートオフィスの事例のひとつです。  

▎ペーパーレス化が進めば、組織も意識も自ずと変化していく 

 

経費の精算をはじめ「社内稟議に関わる決済の仕組み」は、人・お金・情報という、企業の根幹に深く関わります。その根幹のところをデジタル化していくことで、まずは、「ペーパーレス」や「業務の効率化」がおこります。これにとどまらず、組織の構造も、オフィスの形も、そして風景も、働く人たちの意識に変化をもたらすことができます。実はこれら一連の変革こそが、スマートオフィスが目指す大きな目的でもあります。 

 

いくぶん改善されてきたとはいえ、日本企業の組織は、まだまだ階層の多いピラミッド型が主流です。一方、デジタルの世界はインターネットに象徴されるように、タテ構造や上下序列ではなく、ウェブ状、つまり多数多様なグループがつながりあう、柔軟な「アミの目の関係」が基本となります。社内でデジタル化に取り込んでいくことで、これをきかっけに、組織は自律・分散・協働型に、そしてコミュニケーションも自ずとフラットになっていくはずです。 

 

ダンクソフトのペーパーレス・ストレッチについては、こちらをご覧ください。
https://www.dunksoft.com/papaerless 

こうしたデジタル化の取り組みは、インターネットを介して社外と連携し、新しいビジネスを生み出していくためにも、もはや待ったなしの、とても重要なチャレンジとなります。その第一歩が、ワークプレイスのペーパーレス化です。 

 

とはいえ、長年慣れ親しんだ組織の形を変えていくことは簡単ではないと考える人も多いのではないでしょうか。そこで次回のコラムでは、スマートオフィスという変革に向き合うためのマインドについてお話したいと思います。 

 

 

A NEW HOPE(2024年 年頭所感):若い人たちとワークプレイスをデジタル化する未来


2024年の年頭にあたり、
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。


このたびの能登半島地震により被災された方々、そのご家族のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。

▎ワークプレイスのデジタル化を 

2021年9月、日本にようやくようやくデジタル庁がつくられました。同時期にオリンピックが行われ、コロナ禍を経て、日本企業にもデジタル化の大波がやってきたかのように見えました。 

 

しかし、総務省調査によれば、中小企業の約半数は、まだテレワークを導入していない状況です。また別の調査では、いまでもビジネス・パーソンの約半数が、日常的にFAXを使っているというデータがあります。その上、ポスト・コロナになって、テレワークをやめる企業も増えていると聞きます。 

 

昨今、DX、つまり、デジタル・テクノロジーを導入して、ビジネスや働き方を変革しようとする掛け声は大きくなる一方です。しかし実態は、思ったよりもデジタル活用が進んでいないようです。 

 

また、DXについて誤った考え方も散見されます。たとえば、コンピュータを使えばデジタル化が進んだといえるでしょうか。そうではありません。DXのためには、「アナログをやめること」がポイントです。複合機、プリンター、電話、FAXなどのアナログ機器をあいかわらず使い続けている限り、デジタル化したとは到底いいがたいのです。  

  

『理想的で機能するテレワーク環境づくり:発想転換のポイント』
https://www.dunksoft.com/message/2021-05 

私は2021年3月にあるシンポジウムで、当時は行政改革担当大臣だった河野太郎さんに、「もうFAXをやめませんか」と直接申し上げたことがあります。そのあと4月に国から、霞が関でのFAX廃止に向けて号令がかかりました。ただ、いまだに省庁の一部や地方自治体などで、根強くFAXが使われているようです。  

▎若い人たちの可能性をつんでしまわないよう、ご注意を 

大人たちがデジタル化に積極的に着手しないことが、これからを担う若者たちの入社やその後の定着を妨げる要因になっている。このことを認識できていない経営者も多いのではないでしょうか。 

 

若い人たちの声をきくと、デジタルを使わない大人と仕事をすることは「手間が増える」と感じているそうです。このため、思い描いていた仕事内容とのギャップから、入社してもすぐ退職してしまう人も多いようです。 

 

これから彼らが働いていく環境が、旧態依然としたものではいけないと、若い方々と話していると思えてきます。これからを担う若者たちはデジタル・ネイティブです。生まれたときからデジタルに親しんできた彼らが大人になったときに、企業に入社して、FAXを送る業務をされられている状況は、見たくないものだと思いませんか。海外では、もはやFAXは骨董品です。 

 

少子高齢化が進む中で、これからの若い人たちに選んでもらえる会社になるためにはどうしたらよいか。それには、いち早くデジタル化を進めることが必要です。若者たちの可能性の芽を摘んでしまうわけにはいきません。 

▎ “オフィス”を、“スマートオフィス”へと変身させる 

では、どうしたらいいのでしょうか。 

 

もし現在の職場環境が、紙にあふれていたり、印鑑で決済や回覧板を回していたり、FAXで連絡を取っていたりする従来型の“オフィス”だとすれば、“スマートオフィス”に変身させることで、解決できます。ダンクソフトは、2024年、“スマート・オフィス化”にとりくむ中小企業や団体をサポートしていきます。 

 

ダンクソフトの受賞歴はこちらをご覧ください。
https://www.dunksoft.com/award 

私たちダンクソフト自身が、2008年からテレワーク実証実験を始めている企業です。多くの企業に先んじて、様々な実験を重ね、成果をあげてきました。(総務省「テレワーク先駆者百選」、経済産業省「攻めのIT経営中小企業百選」、テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰など受賞歴多数) 

 

それらの取り組みから生まれたものが、「スマートオフィス構想」です。インターネットやデジタルを積極的に活用して、どこからでも働ける環境を備えたオフィスを「スマートオフィス」と名付けています。これまでにも、こうしたスマートオフィスを企業、自治体、学校、地域団体などとつくってきました。 

 

スマートオフィスでは、ペーパーレス化が進んでいて、インターネットで情報を共有できる職場環境が整っています。このため、働く人がどこに住んでいても、子育てや介護などで通勤が難しくても、仕事を続けることができるようになります。 

 

こうした場が増えていけば、若者たちが仕事をするために仕方なく都会へ出ていかなくても済み、地域に残れるようになります。 

 

そこでは、年齢を超えた「コ・ラーニング」や、逆に若い人たちの側から大人たちが学ぶ「リバース・メンタリング」が行われるようになります。結果として、職場や地域は多様性にあふれ、参加する人同士の活発な対話から、さまざまなアイディアやイノベーションがうまれる場になることでしょう。   

▎大事なのは、“モラル”を、より現代的にアップデートすること 

アナログからデジタルへ、ツールや環境を整えるときに、同時に見直していきたいものがあります。それは私たちの「モラル」です。 

 

これまで、日本の企業では、年功序列や男尊女卑といった儒教的な考え方がベースになっていました。若い人たちが活躍する文化をつくるには、こうした儒教的発想をそろそろ捨てたほうがいいでしょう。きつい上下関係は、しばしばイマジネーションを邪魔します。強いリーダーや教えたがりが集まる組織では、イノベーションが起こりにくくなります。それよりも、多様なメンバーたちが等しく発言しあえる柔軟なグループの集合体こそが、次をつくります。 

 

また、企業に求められることも、40年前とは大きく変化しています。環境問題、BCP、障がい者雇用、LGBTQ、SDGsなど、私たちを取り巻く環境も課題も、新しくなっています。変化する環境の中で、ダンクソフト自身が、自らの態度や慣行を常に見直し、モラルからアップデートしていく必要があります。同時に、お客様やパートナーや地域社会とともに、モラルをアップデートしていく役割があると考えています。 

 

デジタルは、40年で1億倍の成長を遂げました。これからも同じ勢いで成長していき、ツールはますます使いやすくなるでしょう。だからこそ、人間サイドの変化、それを使う人たちのモラルも、現代化していくことが重要です。    

▎デジタルと人が協働できれば、人の可能性がもっと拡がる 

ダンクソフトのスタッフは、デジタルを使って、効率的に、またクリエイティブに、日々の成果を出すことに慣れています。全社テレワークの体制や、新しい学びを重ねることで、チーム力も、ここ数年で格段にレベルアップしました。おそらく、一般的なビジネス・パーソンに比べたら、2倍、3倍はよりよい協働作業ができるメンバーたちでしょう。現に、ダンクソフトの「日報かんり」を活用した結果、スタッフが業務報告書を作成する時間が格段に減りました。全員にアンケートを取った平均で1ヶ月で8時間もの時間を効率化でき、その分を他の仕事・学習・連携のために活かしています。 

 

「デジタルをうまくいかして、デジタルと人が協働する」。この発想を持てば、人の可能性がおのずと開いてきます。行政系の財団法人では、ダンクソフトが開発したツールを使うことで、プログラミングを学び、自分でもプログラミングができるようになりました。 

  

企業に、デジタルを使いこなし、部門を超え、地域を超えて人々と連携・協働できる若者が1人いれば、これまでの10人分、100人分の力になるでしょう。若い人たちが集えるスマートオフィスが増えていきさえすれば、そんな明るい未来が期待できます。少子高齢化だといって暗くなる必要はないかもしれません。 

 

ダンクソフトの大事な仕事のひとつは、デジタルのよりよい使い方や未来のオフィス環境を、わかりやすく提案していくことです。従来型オフィスを、“スマートオフィスへ”。この考え方に賛同いただけるみなさんとともに学びあい、自分たちもレベルアップしながら、これからの若い方々が活躍できる地域社会をつくっていきたいと考えています。 

 

明るい未来はダンクソフトとともに。 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。 

 

40周年特設サイト https://www.dunksoft.com/40th

徳島ツアーで実感した、コ・ラーニングのおもしろさ 

今年も、ダンクソフトはさまざまな立場の人たちと対話し、協働してきました。2023年最後のコラムでは、11月に行われた徳島ツアーを振り返りながら、高校生や高専生など若い人たちと仕事をしてきた若手スタッフをまじえて座談会を行いました。  



■徳島ツアーで体感した、異なる立場が協働”する可能性    

  

星野 3年半ぶりの徳島ツアーが無事終わりました。とても充実していましたね。  

   

ウムト すごく楽しかったです。私は、2度目のツアー参加でした。最初の参加は、2011年のインターンのときです。私がダンクソフトに入社したのも、あのときの体験が楽しかったから。今回、12年ぶりに神山に行ってみると、以前よりもさらにオシャレになっていて驚きました。プライベートでも遊びに行きたいくらいです。  

   

星野 神山もどんどんアップデートされていますよね。  

   

神山まるごと高専のガラス張りの部屋

 僕は、神山まるごと高専がとくに印象に残っています。徳島県民ですが、神山には数回しか行ったことはなく、神山まるごと高専も中に入るのは初めてでした。内部を見てみるとガラス張りの施設があったりして、僕が卒業した阿南高専とは雰囲気がぜんぜん違いましたね。出会った学生さんも切れ者ですし、しかも他人と協力するオープンな気質が感じられました。  

   

濱口 高専の見学はおもしろかったですよね。ツアーでは、阿南高専も訪れました。7年も通った場所なので目新しさはないかなと思ったら大間違い。新しい設備も導入されて、少しずつ変わっているのを実感しました。  

   

星野 2つの高専を見学できたのは、とてもいい機会でしたね。阿南高専の設備は、とくにVRの環境などものすごかったですよね。中小企業が真似できないほどの設備を学生さんが使えるのは、すばらしい環境だと思います。  

   

阿南高専を見学

濱口 阿南高専が情報技術を突き詰める方向なら、神山まるごと高専は、情報技術を用いて問題解決をすることを主題においているように感じました。方向性が違うからこそどちらも重要なんだなと思いましたね。  

   

星野 高専というと、日本では建築や機械、最近なら情報など理系のイメージが強くあります。けれど、文系でもいいんです。神山まるごと高専はかならずしも理系ではない学生さんも集まっていることも大きな違いです。阿南高専と神山まるごと高専は、明らかに成り立ちから違います。だからこそ、協働するメリットが相当にあるのを感じます。     

■多様な立場の人が集うからこそ、深まる「対話」   

   

星野 今回のツアーは対話型「体験学習」の機会でした。高専生と対話するほかにも、多様な人たちとの出会いがありました。東京からは神田藍のメンバーやダンクソフトのスタッフが参加して、徳島では阿南高専のACT倶楽部関係者も合流。とても多種多様なメンバーでしたね。  

   

ツアー参加者と記念撮影

ウムト はい、いろいろな人の話を聞きました。懇親会では深夜1時、2時まで参加者さんたちと話しました。  

   

星野 3日連続で懇親会というのは、コロナ前にもなかったような充実度でしたね(笑)。  

   

ウムト コロナがあけたのを感じましたね。ふつう、ツアー中に真剣な話をしていたとしても、夜になるとくだけた話になることが多いと思うんです。でも、今回のみなさんは、深夜になっても「クリーンエネルギーを日本でどう使っていくか」といった未来の環境を考える話が白熱していてすごいなと思いました。  

   

星野 みなさん、問題意識をしっかりとおもちでしたよね。ウムトさんが環境問題について議論していたのは、永原レキさんという徳島県の方ですね。藍染めでいろいろな製品をつくっておられます。もともとはサーファーなので、環境への意識がおありなんだと思います。  

   

 僕は懇親会には参加しなかったのですが、永原さんとお話しする機会がありました。そのなかで、自分にはなかった視点を得られたんです。それは技術について。永原さんが藍染めの技術を継承しているということをお聞きして、僕は、技術が失われるのがもったいないから受け継いでいるのだろうと思っていました。けれど、永原さんは「人類の生存のために必要だ」と考えておられたんです。そんなに切実な思いがあることに心動かされました。  

   

星野 その人の信念に触れるような深い対話ができましたね。このような対話があちこちで起きていたと思います。これまでのツアーの参加者は、経営者などビジネス関係者がメインでした。ですが、今回はそれ以外の人たちも増えました。立場が違う人同士ですから、お互いに情報交換することも増えました。同じ場所をめぐっても、見え方もぜんぜん違いますし。多様な人たちが参加してくれたことで、人と人との結びつきも生まれ、イノベーションにもつながる予感があります。  

  

■「答えられない質問」から起こった阿南高専生とのコ・ラーニング  

   

星野 人とのつながりと言えば、今年、港さんや濱口さんは阿南高専で学生さんと学びあう機会があったのですよね。  

   

 はい、僕と濱口さんとで「ACT倶楽部」で学生さんと活動したり、「協働教育およびシステム設計」という授業のメンターを担当したりしています。授業では、名前のとおりシステム設計やシステム開発に関することを学んでいます。僕たちも4〜5年前に受けていた授業です。  

   

濱口 学生さんは意欲が高くて、質問してくる内容も高度なものが多いです。僕らはエンジニアとして働いて2年目なので、実務的な内容などはすぐに答えられないケースも正直あります。  

   

ウムト そういうときはどうしているんですか?  

   

濱口 学生さんといっしょに考えるようにしています。そうすると、僕にも発見があります。これの繰り返しですね。  

   

星野 阿南高専の授業で起きているのは、まさにコ・ラーニングであり、リバース・メンタリングですね。とてもいいですよね。こういう学びが、日本全国のあらゆる場面であたりまえになっていく必要があるなと感じます。     

■「1週間だけ社員として」仲間と協力してプロジェクトを進めたID学園の高校生  

   

ウムト 私も、今年は高校生のみなさんと学びあう機会がありました。ID学園さんという高校でインターンシップをおこないました。内容はWeARee!を使ったデジタル・スタンプラリーをつくるというものです。  

   

 生徒さんたちはどんな反応でした?  

   

ウムト 感動しましたね。最初の企画会議から、にぎやかに盛り上がっていました。みなさん、とても積極的でした。自分の考えをもっているのもすごいなと思いましたし、相手の意見を聞きながら協力して進めていこうという姿勢もすばらしかったです。  

   

ID学園の生徒さんたちと企画会議(ダンクソフト本社)

星野 ID学園さんでは、ふだんあまり授業には出ていないという生徒さんもインターンシップに参加してくれたんですよね。  

   

ウムト そう聞いています。高校生のみなさんには、ただ参加するのではなく「1週間だけ、ダンクソフトの社員としていっしょに働きましょう」と呼びかけました。実際、ダンクソフトのオフィスにも来て星野さんとも話したり、私たち開発者とともに活動したり。企業の人たちのプレゼンを一方的に聞くのではない、こういう場は初めてだったようで、とても楽しんでもらえましたね。  

   

星野 彼らとリアルに会ったときは、若い力の可能性を感じてワクワクしましたね。プロジェクト自体は、スピード感もあるし、クオリティも高かったです。WeARee!というサービス自体が、冒険しながら新しいものをつくる先駆的なものですから、この楽しさが伝わったのかなと思います。      

■高校生のフィードバックでWeARee!が変わった  

   

星野 ID学園さんでのインターンシップで、ウムトさんが高校生のみなさんから学んだことはなにかありました?  

   

ウムト たくさんありました。とくに印象的だったのは、WeARee!のなかにあるランキング機能についてです。私は、データを見せるのが大好きなので、WeARee!の機能のなかにランキングを表示していました。ユーザーのスタンプ取得数やタイムを順位付けしたものです。でも、生徒さんから「ランキングが見えるとレースっぽい」「ゆっくり遊びたい人もいる」という意見をもらって、なるほどと思いました。そこで、ランキングを非表示にできるような機能を実装しました。  

     

 生徒さんからのフィードバックが反映されるって、とてもいいですね。  

   

ウムトを囲む学生たち(ダンクソフト本社)

ウムト 意見をもらって、その場で開発を進めました。私が実際に開発している画面を見せると、生徒さんもテンションがあがるし、私もそれを見て嬉しくなりました。いまのWeARee!のログイン画面は、生徒さんからもらった意見を反映したものになっています。  

   

濱口 生徒さんから、サービスへの改善案がでるのがすごいなと思いました。ふつうは、使いにくい部分があっても「ふーん」って流しちゃう人が多いのかなと思います。意見を引きだす工夫は何かあったのでしょうか。  

   

ウムト 生徒さんは、実際の現場で開発がどのように進むのか興味があったようなのです。そこで、お客さんからフィードバックをもらったとき、どのように修正をかけていくか実際のプロセスを説明したんです。なので、生徒さんとしては自分の意見がしっかりと反映されるのだという手応えを感じてくれたのかなと思います。  

   

星野 生徒さんの声を聞いて、実際に開発が進む。そういう場面を体験してもらったのは、とてもよい機会でしたね。WeARee!は、ノー・コードでユーザーの求めている機能を作ってみせることができます。ノー・コードやロー・コード、少なめのコードで書ける製品やサービスがすごく増えてきています。そうすると、専門知識のある開発者だけでなく、ユーザーも開発に参加できるようになります。コ・ラーニングするほうへ、時代が進んでいるのですね。    

■社内で起こったリバース・メンタリング:孫ほど年齢が離れていても  

  

星野 学びあいといえば、思い出したエピソードがあります。ダンクソフト役員の渡辺さんは、濱口さんたちに対して業務内容のオーダーを口頭で伝えていたんです。でも、そうすると聞くほうは困りますよね。言われたことを、その場でぜんぶ記憶できるわけではない。記憶できないから、パソコンを使うわけです。そこで、濱口さんが口頭の伝達だと困っているということを伝えたんですよね。  

   

濱口 はい。文字で共有していただけるとありがたい、とお話ししました。  

   

星野 そうすると、テキストベースでの連絡へと切り替わりました。孫ほどの年齢が離れたスタッフからの意見を聞いて、行動が変わる。ダンクソフトでもリバース・メンタリングが機能していることを実感した例でした。  

  

■一瞬で時代は変わる。変化をキャッチし、変わり続けるダンクソフト  

  

星野 最近「茹でカエル」という言葉を知りました。自分が鍋のなかで茹でられているのに、変化がゆるやかなために気づかず、そのまま手遅れになってしまうということを指します。変化しない人たちへの視線は、ますます鋭くなってきています。  

   

時代は一瞬にして変わります。来年、再来年は、劇的に変わる可能性があります。たとえば、文字起こしの精度はいま、ものすごく上がっています。生成AIと連携することによって、要約もできるようになります。そうすると、会議しながらメモを取ることも楽になります。いま、電話を連絡ツールとしている業界なら、電話からTeamsなどのウェブアプリに変えるだけで、仕事の仕方も一気に変わるでしょう。  

   

私たちのようにプログラムを書く人は、つねに変化をキャッチしています。仕事の場面だけでなく、プライベートの時間もそうです。つねに新しいことに関心をもち、自分のお金を使って新しいことを試そうとする人も多いです。  

   

でもいっぽうで、技術の進化やまわりの変化に気づかない人もいます。そういう人たちも、ダンクソフトと関わることで学んでいけるようになっていってほしいですよね。  

   

2023年、コ・ラーニングやリバース・メンタリングの重要性を実感し、これからダンクソフトに関わってくれそうな若い方たちともコラボできたのは、とてもよかったと思います。いよいよ、50周年にむけてのスタートです。「学習する組織」を目指して、みなさん、ますます学びあっていきましょう。    










地方と都会が学びあう対話型「体験学習」:ダンクソフトの徳島視察ツアー

今月、4年ぶりに、ダンクソフト主催「徳島視察ツアー」を開催します。2011年に徳島・神山町でサテライト・オフィスの実証実験を行って以来、継続して実施してきたものです。都会と地方が自律・分散・協働する新しいワーク・スタイルを、時代に先んじて、多くの方々にご覧いただいてきました。今回のコラムでは、「学習する組織」をめざすダンクソフトが実施してきたツアーの経緯や意図、そして、11月の視察ツアーの狙いをお話しします。 

 

鍵となるテーマは、対話型「体験学習」です。ただ見て触れてという単なる体験学習から、対話型「体験学習」へとアップグレードすることが、この12年のダンクソフトの進化を表しています。 



┃東京のIT企業が、どうして徳島で活動することになったのか  

  

先月のコラムでお話ししたように、ダンクソフトは「学習する組織」を目指して、50周年に向けてスタートを切りました。「学習する組織」には「Co-learning(コ・ラーニング、共同学習)」が不可欠です。2023年11月には、もうひとつの拠点である徳島への視察ツアーをおこないます。視察ツアーにあわせて、全社会議DNAセミナーも徳島で開催することになりました。ダンクソフトが40周年を迎えた今年、この体験学習はひとつのターニング・ポイントになるだろうと考えています。  

  

なぜ、東京のIT企業が徳島でも活動しているのか。なぜダンクソフトは、徳島・神山でサテライト・オフィスの実証実験をし、最新のワーク・スタイルを知るための視察ツアーを重ねてきたのか。経緯をご存知ない方もいるので、まずは2007年の「伊豆高原での失敗」から、お話していきます。    

┃2007年、サテライト・オフィス実験は失敗から始まった  

  

東京ではない場所にサテライト・オフィスをつくったのは、2007年が最初でした。きっかけは社員の発案です。遊びをテーマにしたNPOを立ち上げたいというアイディアを採用し、伊豆高原の別荘を購入し、そこをオフィスとしてテレワークができるのか、実証実験を始めました。NPOでは、子どもたちとともに、カヌーとフライ・フィッシングを学ぶ活動をスタートしました。  

   

しかし、残念なことに、実験を開始してすぐにリーマン・ショックが起きました。伊豆高原を訪れる人も減り、NPOの活動は打撃を受けました。追い打ちをかけるように2011年、今度は東日本大震災が起こります。伊豆高原からはやむなく撤退することとなりました。東京以外の土地にスマート・オフィスをつくっていくという構想は、苦い失敗から始まったのです。     

┃「徳島はインターネットが速いらしい」:3.11直後、代替地を求めてふたたび動きだす  

   

東日本大震災のあと、世の中の動きはいったんストップしました。ダンクソフトの仕事も止まってしまいました。すると時間が生まれ、知り合いの経営者と話す機会が増えました。その時は、日本橋のオフィスをシェア・オフィスとして開放していたのですが、そこに集まる徳島県出身の経営者から意外なことを聞いたのです。「徳島県はインターネットが速いらしい」と。  

   

伊豆高原でのスマート・オフィス実証実験から、ネットの速さがとても重要だということを学んでいました。もし、ほんとうに速いならば、それは代替地になるかもしれない。そう思いました。当時は、東京でも計画停電があり、電車が間引き運転になっているような状態でした。その状況を見るにつけても、やはり安定的な代替地が必要でした。  

   

ダンクソフトの歴史を振り返る「HISTORY」も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/2022-11 

そこで、徳島のネット環境が実際どうなっているのか、オフィスの候補地はどんなところがあるのか、視察に行くことになりました。2011年5月のことです。    

┃限界集落で計測した驚異の200Mbps  

   

最初は、県や市の商工労働部の紹介で、オフィスの候補地を探していきました。しかし、なかなかうまくいきません。というのも、地方で企業を誘致する場合は、工場を建設するなど大規模な誘致のため、大人数での居住地確保が一般的です。しかし、私たちが考えていたのは、2〜3人のスタッフ常駐です。この規模だと、県も市もあまり乗り気ではありませんでした。  

   

それでも毎月、2泊3日ほどのスケジュールで徳島の視察を続けました。7月になって県の集落再生の部署を紹介されると、流れが変わりました。その部署の人たちは「IT企業が限界集落に来るとおもしろい」と考えていたようなのです。  

   

彼らの紹介で、香川県にほど近い三好の集落や、海辺の漁村・伊座利などを見てまわりました。三好や伊座利などでインターネットの速度を計測してみると、当時で200Mbpsが出ていました。東京では考えられない速さでした。徳島では、県全域に超高速ブロードバンドを整備するという施策を推進していました。インターネット環境は申し分ありませんでした。      

┃インターミディエイターが、ダンクソフトと神山を結んでくれた  

  

つぎに考えねばならないのが、オフィスの場所です。どこがよいのか、かなりの地域を探しました。というのも、伊豆高原では地元のコミュニティにうまく入っていけなかったことも、失敗の一因だったからです。  

  

インターミディエイターとして活躍する中川桐子さん

そんなとき、「ダンクソフトには神山が合うと思う」と神山町を紹介してくれた人がいたのです。それは、日本橋オフィスをシェア・オフィスとして開放していた時に、徳島企業の東京スタッフとして駐在していた中川桐子さんです。中川さんは徳島のことも、私たちのこともよくご存知でした。こうした、未来志向であいだを取り持ってくれるインターミディエイターがいると、事がうまく進むのですね。そこからスムーズに物事が進みだしました。 伊豆高原の時にはできなかったことでした。 

  

そして2011年9月、徳島の神山に古民家を借りることになります。私は、2〜3人のスタッフがそこで働くのだろうと思っていましたが、ふたを開けてみれば10名ものスタッフが合宿していました。社員の半分です。びっくりしました。でも、その光景を見たとき、徳島にダンクソフトのもうひとつのオフィスができるのだろうと感じたものです。      

┃世界に先駆け、古民家でのテレワークが2011年に実現。そして神山のブレイク。  

  

スタッフたちは、インターネット速度が上がることで何が起こるのか、とても興味があって徳島に来たようです。当時、東京ではYouTubeもカクカクしていましたが、徳島ではスイスイ動くわけです。ネットの速度が速いので、勤務中は、神山と東京のスタッフ同士がスクリーン越しに常時接続して仕事をしていました。  

   

東京と徳島という距離があっても、まったく問題なくプロジェクトは進みましたね。むしろ、ネット環境が良かったため、徳島のほうが作業効率がよいくらいでした。  

   

これが2011年9月の話ですから、日本のなかでも世界のなかでも、先進的な取り組みだったと思います。そうなると、新しいワーク・スタイルにスタッフもワクワクしますし、メディアも注目を始めました。  

   

そして2011年12月、NHK総合テレビ「ニュースウォッチ9」が、神山町をとりあげました。そのときは、川のまんなかでパソコンやタブレットを開いて仕事をしているスタッフたちの映像が流れました。そこで、神山町が一気にブレイクしたのです。     

┃「黒船」と呼ばれて:地域のみなさんの懸念を払拭するために  

  

しかし、かならずしも地域の反応が良かったわけではありません。東京から来た「黒船」と呼ばれたり、もっと直接的に「なにしにきよるん」と言われたりしたこともあります。自分たちのシェアを奪われると勘違いされてしまったようなのです。でも、ダンクソフトと地元のIT企業の仕事ではフィールドが違います。懸念を払拭するため、ていねいに説明していきました。  

  

2011年9月の段階で、県庁の隣にある大きなホテルの会議室を貸し切って説明会を行いました。地元のIT企業などをお招きし、メディアを呼んで、ダンクソフトが地域に入っていくことで、どんな良いことが起きるのか、明確にアナウンスしました。そのときは、Zoomがまだなく、Skypeを使って、県庁とホテルと神山をつないで、デモを行いました。  

   

Umut Karakulakのインターンシップ体験記も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/internship-umut 

そこでは、当時インターンシップ中だったトルコ出身のウムトさんが、マイクロソフトの「Kinect」というテクノロジーを使ってデモンストレーションをしました。これは、手の動きだけでパソコンなどの操作ができるというもの。この技術を使うことで、話せない人であってもコミュニケーションがとれること、高齢者の人であってもデジタル通信によって生活が便利になるということを、具体的に示しました。     

┃変化し続ける限界集落の“今”を体験する「視察ツアー」  

  

神山の古民家を借りてから、そこでは最新のワーク・スタイルが生まれていました。その様子を、東京の経営者のみなさんにも見ていただく機会を用意しました。視察ツアーを2011年9月から始め、コロナ禍の直前まで毎年開催してきました。これまでトータルで14〜15回実施したでしょうか。  

  

最大50名ほども参加者が集まるときもありました。徳島に来てもらい、テレワークが実際どのように行われているのかを見ていただきました。限界集落の現状もお伝えしました。懇親会ともなると、徳島駅前のお店に入り切らないほど。徳島の人も東京の人も、さまざまな立場の人たちが語り合う機会となりました。社会課題の解決こそがビジネス・チャンスですから、経営者にとっても多くのヒントがあったのではないかと思います。  

  

2012年3月には、神山町で、公民館の体育館を借りてイベントを行いました。そこには、東京から視察に訪れた日本マイクロソフトの樋口泰行社長(当時)や、神山の活性化をになうNPO法人グリーンバレーの大南信也理事長(当時)、徳島県庁の担当者などが集まって、パネル・ディスカッションを行いました。その様子はオンラインでも配信し、東京の人たちにも見てもらいました。このときは日本マイクロソフトの樋口社長が神山にいらっしゃるということで、大きな話題となりました。      

┃ダンクソフトが徳島に入って起きた変化とは  

  

いまでは、私たちが徳島で働きはじめたことで、県庁の方に「ダンクソフトとテレワークとワーク・ライフ・バランスがいっしょに来た」と喜んでもらえるほどになりました。  

   

私たちが実践していたテレワークという働き方を、徳島の人たちが初めて目にしたわけです。神山のサテライト・オフィスには電話機はなく、パソコン上に電話がかかってくる。限界集落にいながらにして、東京の仕事ができる。そういった新しい働き方がすでに可能だということを、見て知ってもらうことのインパクトは大きかったかなと思います。  

  

それに加えて、私たちはワーク・ライフ・バランスについての賞も多くいただいている企業なので、「仕事と生活を調和させながら働く」という考え方を広めるきっかけにもなったようです。       

ダンクソフトの受賞歴はこちら
https://www.dunksoft.com/award

┃多様な地域の人たちが協働することで、地域問題の解決が進む  

  

徳島とのつながりが深くなってきたからでしょうか、2013年4月から、私が徳島県集落再生委員として県の会議に参加することになりました。私は県民ではないので務まるかどうか不安もありましたが、委員として参加することで、地方で何が起こっているのかがよくわかるようになりました。  

   

たとえば、神山町では私たちが入る前くらいの段階で、きれいな道路が整備されました。道があれば、都心部から人が来やすくなるだろうとの判断でしたが、実際に起きたことはその逆。山のほうから都市部に出ていく人が増えてしまいました。神山町は、当時の人口は6000人を超えていましたが、いまは5000人。急速に減っています。東京にいると実感しにくいですが、地方だと人口減少という問題が差し迫ってきます。  

   

子どもたちも劇的に減っています。2011年に徳島に行ったときは、廃校が25もあると知らされました。遠距離の通学をする生徒が増え、しかしバスを出すほどの人数はいないため、タクシーで通学せざるを得ない生徒がいると聞きました。  

   

けれど、たくさんの学校がつぶされてしまう現状は、じつは都心のほうが先に進んでいる問題でもあると気づきました。私たちが40年前に都心へ出勤していたときには、すでに廃校はいくつもあったと記憶しています。子どもがいなくなるとコミュニティがなくなることを、私は東京でよく見てきました。ですから、徳島でこれから起きるであろうことも想像がつきます。東京の人が知らないこともあれば、逆に地域の人が知らないこともあります。多様な地域の人たちが連携・協働することで、よりよい問題解決のアプローチが生まれるのではないかと思っています。     

┃視察ツアーのテーマは「神山体験」と「藍」  

  

ではいよいよお待ちかね、今回2023年11月の視察ツアーの概要です。今回のツアーは、いまの神山を体験いただくだけでなく、「藍」もテーマにします。参加者は、ダンクソフトのスタッフやパートナーや大事なお客様、そして神田藍プロジェクトのメンバーです。  

  

「神田藍の会」については、こちらをご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/case-kanda-ai 

ダンクソフトは「神田藍の会」という活動に関わっています。何度もお話していることではあるのですが、この活動は藍を媒介に、社会関係が希薄になった都会で、地域コミュニティを再生していこうというものです。ダンクソフト本社のある東京都千代田区の神田エリアは、かつて「紺屋町」があり、藍との関わりが深い土地でした。ダンクソフトの本社ビルのベランダでも、3年前から藍を育てています。  

  

いっぽう徳島はといえば、江戸時代には藍染めの中心地でした。藍はキズを化膿させにくいという特殊な効果をもつので、職人から武士まで藍で染めたものを着たり、手ぬぐいとして持ったりしていました。日本中がそうでした。そんな状況で、徳島では藍を発酵させた「藍玉」の製法を門外不出にしていたのです。神田をはじめ全国にある「紺屋町」では、藍玉を仕入れた職人たちが染めものをしていました。  

  

つまり、徳島と東京・神田は、当時から藍で結ばれていたのですね。「神田藍の会」の活動では、藍の生葉染めをするなど、身近に藍のある暮らしを楽しみ、コミュニティが豊かになり始めています。しかし、徳島の人たちは、藍は名産品であっても、必ずしも藍を育てたり、染めを経験したりしているわけではありません。「神田藍」の活動が、いわば藍の本場である徳島に入っていくことで、専門的に藍を扱っていた人たち以外も藍に触れ、徳島のコミュニティが盛り上がっていくきっかけになればと想像しています。     

┃神山から、ダイアログとイノベーションが生まれる  

  

視察ツアーでは、いまいちばん新しい神山を体験しながら、多様な立場の人たちとのダイアログを楽しんでいただきたいと思っています。神山の活性化に長年尽力されてきたNPO法人グリーンバレーの視察も行いますし、「神山まるごと高専」という今年の4月に開校したばかりの高専の生徒さんとも、対話の機会を用意しています。 ここには、現在、富士通代表で高専と連携していると共に、インターミディエイターのおひとりでもある濱上隆道さんがいます。いろいろと一緒に企画を立てているところです。 

 

徳島のみなさんと神田藍のメンバー、グリーンバレーのみなさん、神山まるごと高専の生徒さん、そしてダンクソフトの若いスタッフたち。今回の視察ツアーでは、多様な立場の人たちが神山に集まります。都会や地方という垣根を超え、高専生から経営者まで、それぞれの知見や技能が交差したら、それが参加者や地域社会にイノベーションを生み出すきっかけにもなるでしょう。みなさんと未来志向でダイアログができることが、とても楽しみです。  

  

ダンクソフトが40周年を迎えたこの年に、コロナ禍を経てふたたび、徳島でコ・ラーニングできるのはうれしいことです。これからも「学習する組織」を目指して、ともに学びあい、高めあっていきましょう!  

 

“Co-learning”が、一人ひとりを成長・進化させる ―50周年に向けて「学習する組織」へ


■ダンクソフトが最も大事にする「コ・ラーニング」とは

 

ダンクソフトでは、「コ・ラーニング(Co-learning)」を重視してきました。コ・ラーニングとは、ともに学びあうこと、つまり、共同学習です。2008年の全社会議で話題にして以来、学びあいの文化、学びあいの場づくりを大事にしてきました。

 というのも、ダンクソフトはデジタル企業だからです。デジタル・テクノロジーは、40年で1億倍も性能が良くなりました。これからも驚異的なスピードで、新しい技術が登場し、発展します。連動して、私たちが学ぶことはどんどん増えていきますから、もう到底ひとりでは対応できなくなります(すでにそうです)。ですから、互いに学びあうことがますます大事になってきます。

テクノロジーの進化だけでなく、私たちを取り巻く環境も劇変しています。特に企業に求められることは、40年のあいだに大きく変化してきました。上司・部下という上下2分の関係を超えて、いかに目線をあわせて建設的な「対話」ができるか。社内外との横断的な協働を通じて、さらによりよい成果や意外な効果を生み出せるか。どうやって、よりよい地域社会の先導者になるか。どんなテーマでも、「Co-learning」の考え方が必要不可欠です。  

■「学びあう」ことで高めあうスポーツの現場

 

私はスポーツが大好きなのですが、最新のスポーツ界を見ていると、「コ・ラーニング」がよく実践されているのをたびたび見かけます。 

今年のWBCがそうでした。アメリカで経験を積んできたダルビッシュ選手に、日本のピッチャーはスライダーの投げ方を学んでいましたね。スライダーといえば、ダルビッシュが2009年のWBC決勝戦で最後の三振を打ちとった球種。その投げ方を、彼は若い選手たちとシェアしたのです。その成果でしょうか、大谷選手が決めた最後のボールはスライダー。そして日本はふたたび、世界一になりました。あのときは興奮しましたね。

 

かつてスポーツといえば、チーム内の全員がお互いのライバル(競争相手)でした。ですから互いに「学びあう」ことはなく、自分の技は盗まれないようにする、競争そのものの世界だったと思います。でもその文化が、いま確実に変わってきました。

 

スポーツ・クライミングという競技がありますよね。垂直に反り立つ壁をよじ登っていくもので、ボルダリングとも言われます。このスポーツでは、試合前に、どのように登るのか、その作戦を選手同士で相談するのです。このオブザベーションという時間では、各国の選手たちが、敵味方を超えて話し合っています。そのシーンがとてもおもしろいんです。

 

最近のスポーツでいえば、スケートボードも学びあう文化があります。誰かがいいスピードに乗ったり、技が決まったりしたら、それを見ている選手全員が喜び、賞賛しあいます。日本は女子も男子もかなり強い競技ですよね。

 

スポーツの世界では、コ・ラーニングしている場が目に見えて増えています。共同学習によって、互いに高めあっているわけです。  

■河原でパエリア。それが「体験学習」の始まりだった

 

ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場さまとのプロジェクト事例『事例:楽しさの「背景」までも伝え共感を生むWEBサイトで、閲覧数も売上も120%増』も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/casestory-kfv 

10年ほど前でしょうか、ダンクソフトでは、特別な共同学習の機会をもうけました。

舞台は埼玉県飯能市のキャンプ場。そこへ、ダンクソフトのスタッフやパートナーさん、大切な知り合いの方々もお誘いして、一緒にツアー・バスで行きました。皆で集まったキャンプ場は、ケニーズ・ファミリー・ビレッジさんという、ダンクソフトのお客様でもあります。川を堰き止めた天然のプールがあるような、自然いっぱいの環境です。

 

その河原で、パエリアを炊くことに挑戦したんですよ。バレンシアのパエリア・コンテストで第4位の腕を持つシェフに同行してもらい、チームに分かれて、実際に自分たちで、いちから焚火でパエリアを炊いてみました。

 

そのプロセスで、社内・社外という垣根を超えて、さまざまな立場の人たちと協働関係を模索しながら、ひとつのものを作りあげることを体験しました。多様な人々がかかわるとイノベーションが起こることを実地に体験したわけです。

 

十分に手足を動かしたあとで、座学のレクチャーの時間を用意しました。そこでは、「開かれた対話と創造の場」を重視する、これからのビジネスの考え方を学びました。チームでのパエリアづくりを通じて、横断的な対話や小さな創造活動を体験した直後なので、話がよく身に沁みこみますよね。

 

それ以前から、外部講師を招いた社内セミナーは開催していました。でもそれは座学的なので、このような機会、つまり、身体を動かした「体験学習」の場を最新のビジネス論と連動して行ったものは、このときが初めてでした。ただ話を聞くだけではなく、実体験がともなうと、理論的な話について理解の深さが段違いなんですよね。みんなで自然のなかで食べるパエリアは絶品でしたしね。でも、それにとどまらない時間を経験しました。

 

「学ぶ」ということは、知識を増やすことではなく、行動パターンが変化すること。頭だけで理解するにとどまらず、行動まで変わるには、身体が関わる学習、つまり体験学習がおおいに有効です。そこに、反復学習することも欠かせませんが。  

■「教える/教わる」関係が解消されると、積極性がアップする

 

「学習」と聞くと、堅苦しいものを思い浮かべる人もいるかもしれないのですが、「共同学習」や「体験学習」は、実際、すごく楽しいものです。多様な立場の人たちが集まると、自分の目の前で面白いことが起きますから。先月、それを「実感」する機会がありました。

 

神田藍の会とのプロジェクト事例『事例:神田藍プロジェクト 〜ソーシャル・キャピタルを育む藍とデジタル』も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/case-kanda-ai 

本社のある東京・神田のコミュニティ活性化のために参加している神田藍の会で、小学生といっしょに、藍の生葉染めを体験しました。そこに集まったのは、1年生から6年生までのお子さんとその親御さん、そしてボランティアでサポートしてくれる大学生や私たちのような年長者まで。幅広い世代が集いました。

 

参加した小学生も大学生スタッフも、親御さんも、藍染めは初めて。でも、藍の会メンバーは「教える」ということはしません。楽しく説明をした後は、ただ見守って、失敗することも含めて、あれこれと挑戦してもらう場でした。

 

すると、子どもたちがとても楽しそうにしているんですね。子どもたちは、まわりの参加者やスタッフたちとどうやったらいいのか、話し合って進めていきます。藍染めは、染めの回数が増えるほどに色が濃くなります。1回だけ染めると、美しいエメラルド・グリーンの色が一瞬出ます。私がよく染める時には、染めは1回にとどめて、あとは色を止める作業をして、水色のハンカチをつくります。

 

けれど、小学生たちは、染めの回数をどんどん重ねていきました。「もっと染めたらどうなるんだろう」と、好奇心に突き動かされているようでした。しつこく回数を重ねた子どもは、ジャパン・ブルーといわれる藍色に近い色にまで染め上げていました。そこまでやるのか、というほどの、のめり込みっぷりでした。

 

「学習」というと「教育」(教えること)の一部だと思われていますが、そうじゃないんですね。「教える/教わる」という関係をなくし、みんなが積極的に学びあえるようにすると、ここまで楽しい学びの場ができるのかと感激しましたね。事後アンケートでは、ほぼ100%が「とってもおもしろかった」「またやってみたい!」という回答でした。  

■グループで熱心に協働する、ハイレベルな高校生

 

最近の若い人たちは優秀です。変化・進化するのがあたりまえ、と考えているように見えます。とても素直ですし、学んだことをぐんぐん吸収する力もあります。阿南高専を卒業して新卒で入社したスタッフたちは、最近も、どんどん資格を取りにいって、自律的に学びを進めています。

 

先日、ID学園高等学校の生徒さんを対象にしたインターンシップ・プログラムを実施しました。「WeARee!(ウィアリー!)」というソフトウエアを使って、デジタルを活かした地域のスタンプラリーを作ってもらいました。これも体験学習ですね。

 

生徒さんたちはグループであれこれ話し合いながら、よりよいものを作ろうと一生懸命でした。その純粋な積極性がすばらしいと感じましたし、ダンクソフトのスタッフも、高校生のレベルの高さに驚いていました。チーム単位で熱心に協働する姿は、トルコやフランスなど海外出身のスタッフもびっくりするほどでした。  

■インターネット時代に必須の「リバース・メンタリング」

 

いまの若い世代は、デジタル・ネイティブです。彼らはインターネットを使って、どんどん自発的・自律的に学んでいます。

 

インターネットは、「知と人」のあり方を変えましたよね。これまで専門家しか知らなかったような情報に、誰でもアクセスできるようになったからです。かなりの部分において、知りたいことを自分で取りに行くことができる時代になりました。

 

そうなると、かつてのように、先生と呼ばれる物知りが、何も知らない生徒に上から「教えてあげる」という構図はもう成り立たないわけです。むしろ、ネット世代の若い人たちから学ぶ「リバース・メンタリング」で、ともに学んでいくスタンスが大事だと思います。

 

ただ、いくらインターネットに情報があるといっても完全ではありませんから、年長者が積み上げてきた経験も意味のあるものです。しかし、大事なのは、年上/年下、上司/部下などの上下関係をなくして、多様なバックグラウンドをもつ人たちがフラットに、インタラクティブに学びあうということです。

 

ダンクソフトでは、できるだけそういう環境を生み出すことを目指しています。そのために、様々な工夫もしています。たとえば、私とスタッフの皆さんが対話する機会を、定期的につくってきました。また、誰もが自由に発言できるよう、年齢や役職に関係なく、お互いに「さん付け」で呼びあうよう推奨しています。  

■「時速80kmは遅すぎる」:ヨーロッパ旅行で体感した変化

 

インターネットの発展によって、多くの人たちが学びを深められるようになりました。これまで語ってきたように、使えるツールや環境が変わると、人の能力が引き出されていきます。 

1998年、ヨーロッパへ旅行したときのことです。ドイツの高速道路、アウトバーンを走りました。そこは制限速度がありません。時速300kmで走る車もいるほどです。旅行中、私は時速160kmで走りました。相当な速度です。でも、周りの車もそれくらいで走行しているからでしょう、とくに恐怖を感じることもありませんでした。

 

驚いたのは、帰国したときです。成田に降り立って家に向かうとき、高速道路を時速80kmで走りました。これがあまりにも遅く感じたのです。止まっているのと同じじゃないかと思ったほどでした。

 

このとき私は、ドイツの「アウトバーン」を経験して、自分のポテンシャルがぐんと引き出されたんだなと感じたものでした。道具や環境が変わると、人はそれに対応・適応しようとすることによって潜在能力が引き出されるようなのです。  

■“アウトバーン”が、人の未知なるポテンシャルを引き出す

 

私たちはふだんからパソコンやスマホなどを使いますよね。デジタルも、さきほどお話ししたように、40年で1億倍も性能がよくなっています。新しいデバイスを使うと、もう昔のものには戻れませんよね。私たちの判断力や反応速度が、性能の高いデバイスによって、知らず知らず引き上げられているからです。

 

最近では、パソコンだけでなく、同時にスマホやタブレットも使うなど、マルチ・デバイス化も進んでいますから、並行処理する力も自然と身についています。デジタル・ツールによって、私たちのポテンシャルを引き出してもらっているわけです。

 

ですから、ダンクソフトでは、できるだけ最新のパソコンやモニターなどのデジタル環境を導入することにしています。最新型の環境を整えることで、ワークプレイスに“アウトバーン状態” をつくっています。学習のスピードもアウトプットの質も、格段に変わりますよ。 

■ダンクソフトという「学習する組織」

 

いま、いろいろなデバイスがインターネットに接続される時代になりました。そうすると、インターネット上で、国境を超えた多様な人たちと出会えますよね。国も違う、文化も違う、まったく異なる環境で育った人同士が出会い、ともに学びあうと、成長の仕方も大きく変わります。

 

ひとりで学ぶだけでなく、インターネットを使って様々な人たちとチームを組み、コ・ラーニングすること。これができれば、一人ひとりの能力はますます伸びていくでしょう。

 

スタッフにとっても、ふだんから関わってくださるお客様やパートナーにとっても、ダンクソフトとの関わりを持てば、「自ずとコ・ラーニングできる」し、ともにバージョン・アップ、グレード・アップができるような会社になっていきたいと考えています。ダンクソフトは「学習する組織」。50周年にむけて、アウトバーンをばんばんつくっていきます。「時速80km企業」で満足しないために、日々、楽しい「学びあい」を続けていきましょう!

「未来通帳®」─時間を生み出すコツとその恩恵とは─

ダンクソフトでは40周年を機に、「未来通帳®」の開発を、新たに進めようとしています。先月のコラムでは、青写真をみなさんと共有しました。今月は、未来通帳®をつかって「時間預金」をすると、どんな未来がまっているのか。時間預金するコツやそれによっておこる恩恵について、イメージをお話しします。 



■人にとって最大のリソース、それが「時間」   

「未来通帳®」については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。

『“時間預金”でウェルネス豊かな社会を ―「未来通帳®」の描く未来―』
https://www.dunksoft.com/message/2023-08

未来通帳®は「時間」にフォーカスするツールです。デジタルを使って人々の手間を省くと、その分、時間が生まれます。そして、その時間、つまり時間を未来に向かって何に使うか、あれこれ構想したくなるサービスです。資産運用というと、なにかと「お金」の話ばかりになりますが、時間もまた、私たちがもつ最大の資産です。 

でも、すべての人々が忙しく、速いスピードで動く現代社会です。日本は14年連続で人口が減少しています。今年は、初めて47都道府県すべてで人口減少が認められたそうです。これまでの量的拡大を前提とした社会に変わり、これからは一人ひとりの生活の質を豊かにするために、そろそろ「時間」というリソースについても、語られるべき時代です。 

 

多くの人は、お金は貯められても、時間は貯められないと考えているようです。でも、ほんとうにそうでしょうか。無駄な作業をそいで、時間を貯め、その時間をより有効に使う。「時間預金」というアイディアについて考えてみたいと思います。   

■効率化が時間を生みだし、提案の質を高める   

ダンクソフトのペーパーレス化について、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

『理想的で機能するテレワーク環境づくり:発想転換のポイント』
https://www.dunksoft.com/message/2021-05 

ダンクソフトは完全ペーパーレスです。紙の書類や印鑑を使わず、「日報かんり」など自社開発のソフトウエアを利用することによって、事務処理の時間は最小限に抑えられています。日報かんりを使用する前と比べて、事務処理にかける時間は10分の1以下になりました。 

 

これまで事務仕事にあてていた時間が大幅に削減されたことで、私たちはその時間をお客様への提案のブラッシュアップに充てることができました。以前なら、「完成した」と思って終えていたところから、さらにひと手間かけて、クオリティを高めることができます。そうしていくと、ウェブサイトもシステムも、お客様にとって、より使いやすいものになるのは明らかですよね。私たちの業界では、このように改善スパイラルをどれだけ繰り返せるかが、質を決める生命線。たいへん大事なことです。 

  

ダンクソフトが、お客様によい提案ができるのは、スパイラルを繰り返す「時間」があるおかげですね。何度も見直して、細かなところを改善することができます。創った時間を、一人ひとりの学びにあてることも、ダンクソフトでは推奨しています。デジタルの分野は日進月歩ですので、次のテクノロジーを常に学んでいくことはとても大切です。結果的に、お客様に喜んでもらえますし、他社とクオリティの面で違いを出せる。開発者も仕事にやりがいを感じることができます。  

■時間預金で、子育て・介護、そして地域貢献も可能に 

プロジェクトの充実だけでなく、それぞれがゆとりをもって子育てや介護などもできるようになるのもプラス面ですね。会社全体で見ても、一人ひとりに時間の余裕がある状況は、休暇の取りやすさと直結しているのが分かります。それぞれの事情にあわせて、働く時間をコントロールできるようになりますし、助け合う余裕も出てくるんですね。 

  

徳島オフィスの竹内 祐介の”物語”はこちらをご覧ください。
https://www.dunksoft.com/40th-story-takeuchi 

さらに、効率化で預金した時間を使って、地域との関わりにも参加できるようになります。徳島オフィスの竹内は、そのモデル・ケースですね。地元・徳島を離れずにダンクソフトで働きながら、徳島県主催の「未来創造のための若手部会」に参加したりしていました。今も、阿南工業高等専門学校(高専)で授業をうけもち、若手の、つまり未来人材の育成にたずさわったりしています。効率化して捻出した時間預金で、ダンクソフトのメンバーによる地域貢献が実現しています。 

 

このように、働く人たちそれぞれが“時間を生みだす”ことは可能ですし、またそうすることで、企業のなかだけでなく、家庭や地域にまで、いい影響が及びます。未来に向けて、いいサイクルがまわりだすことを実感しています。  

■人生を大事にするヨーロッパの文化 

 人として生きていくうえで、時間がいかに大事なのか ──。 

ワールドカップを見に行った時のエピソードはこちらのコラムをご覧ください。

『HISTORY3:「インターネット」をいち早く実験、フランスへの旅で可能性を確信(90年代後半)』
https://www.dunksoft.com/message/2022-05 

こんなことに気づいたのは1998年、フランスにワールドカップを見に行ったときのことでした。当時の日本チームは、まだ世界レベルではなかったので、日本が出場できるのは一生に一度の機会だろうと思い、気合を入れて2週間の休みを取りました。 

 

現地は、サッカー好きの人々が、さまざまな国から集まっていました。彼らと話していると、2週間の休みは短すぎると口々に言うのです。「もっと休みを取らなきゃダメだよ」と、どこに行っても言われました。このとき、ヨーロッパの人々は、人生を随分と大切にしているように思ったんですね。休暇をしっかり取って、のんびりと旅行したり、何もしない時間を楽しんだり。 

 

一方、日本はといえば、前回2022年のワールドカップのときに、スタジアムで「2週間の休暇をありがとう」と上司への謝辞を掲げた人が話題になりましたね。あれから20年以上たっても、いまだに日本では休みをとるのが難しいことがわかります。   

■時間的にも、空間的にも、「バッファ」を 

「バカンス(vacance)」とは、「何もない状態(vacant)」と語源が共通です。つまり、バカンスとは、何もしないこと。この「余白」が大事なんですね。現状を見直したり、新しいものを取り入れたりするためには、バッファ(buffer)が必要です。時間的にも、空間的にも、です。 

  

空間的なスペースが必要だと思ったのは、ペーパーレス化を一挙に進めたときです。当時のオフィスにはオープン・スペースがあったので、そこに書類や文房具のたぐいを全部集めたんですね。自分たちが何をもっているのか一覧して、必要なものだけを残しました。全体を見て、取捨選択するためには「スペース」が欠かせないと思います。  

■デジタル時代、「頭のスペース」は拡張した 

じつは、頭のなかも同じではないでしょうか。携帯電話が普及する前の私たちは、よく使う電話番号や取引先の住所など細かな情報を記憶していましたよね。そうすると、けっこう頭はパンパンな状態。かといって、脳のなかのいらないものを出すわけにもいきません。 

  

でも、いまは違います。デジタル・ツールを使うことで、単純な情報を覚えずに済むようになりました。昔と今では、頭のなかのスペースの量がぜんぜん違っているんですよね。ずいぶん広がりました。 

  

頭のなかにたくさんのスペースがあるので、新しいものをいろいろ取り入れることができます。「これとこれをつないでみようか」と新結合(イノベーション)を導く試行錯誤もできるようになります。    

■余白が生みだす、思いがけない次の展開 

このように、ちょっとした余白があると、思いもよらなかった活動が生まれてくることも実感しています。 

 

たとえば、私がオフィスで藍を育てられるのも、デジタル・ツールを使って仕事を効率化して、時間をつくりだしているからです。藍は生き物ですので、水やりを忘れると枯れてしまいます。藍の世話をするためにも時間をつくろうというモチベーションにもなります。 

  

また、神田藍の会では、月に1回の会合を開いています。ダンクソフトの本社ビルからZoomをつないでいますので、リアルに参加したい人は集まり、オンラインで自宅や職場からの参加も可能です。録画もしてありますから、日程が合わなくてもキャッチアップできます。議事録は私がその場で打ち込んで作成し、それを共有します。その議事録は保存しておき、助成金を申請するためのデータとしても活用します。 

 

このように、情報を効果的に活用していくことで、一人ひとりのメンバーに時間の余裕が出てきました。そのおかげでしょうか、いまでは神田藍の活動から、様々な展開が自然と芽吹いてきたところです。   

■デジタル × イマジネーションで進める災害対策 

時間的なスペースは、イマジネーションを働かせるためにも重要です。近年、企業には災害対策が求められています。スタッフの安全を守ったり、事業を続けたりといった社内のことだけでなく、地域における防災拠点を担うといったことも企業の責任です。 

 

ダンクソフトが考えるこれからの防災については、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

『BOUSAIFULNESS ──災害前提社会への備え 』
https://www.dunksoft.com/message/2022-06 

災害対策は、とくにイマジネーションを発揮することが必要です。災害はこれからやってくるものですから。どういう危機が起こりうるのか、あらゆる可能性を事前にイメージしておくということですね。それが備えにつながります。 

  

これからも予期せぬ災害は起こるでしょうが、いまの時代にはデジタルがあります。現代人は、そこが救いだと思いますよ。 

  

今年は関東大震災から100年。報道から当時の様子を見聞きしていると、現場が大混乱していて、情報が発信されないことが問題だと感じました。ですが、いまであればAIやIoTといった技術があります。人が動かずとも、プログラムで勝手に動くインフラが整っています。デジタル・テクノロジーを使うことで地域間の連携は進み、災害のときも、普段のときも、人々の生活はより良くなる時代になりました。 

 

私たちは災害が起こりうるということを、普段、つい忘れてしまいがちです。それでも、時間に余裕があれば、いざというときのことも考えられるようになるはずです。日ごろからの時間預金をすることで、災害対策に気を配ることもできる。そんな心の余裕も、持っておきたいですね。  

■地域全体で時間をつくり、ソーシャル・キャピタルを高める 

個人の時と同じで、地域全体で時間に余剰ができると、地域を今よりよくする可能性がでてきます。ですから、「未来通帳®」というデジタル・ツールを、地域全体で導入し、データを共有することなどもイメージしています。 

 

たとえば、ダンクソフトの学童支援システムを導入している はなまる学童クラブさんの現場に、「未来通帳®」というデジタル・ツールを導入したら、これまでの事務効率化に、さらに輪をかけて効率化できると思います。 

  

はなまる学童クラブさんのシステム導入事例はこちらをご覧ください。

『「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に』
https://www.dunksoft.com/message/case-hanamaru-kintone 

石垣島の はなまる学童クラブさんでは、毎月決まって行政に提出する報告書類があるそうです。未来通帳®を使えば、まず、パソコンを使わずに、スマホの音声入力で簡単に情報を入れられる。スマホを使うので、写真の添付にも手間がかかりません。その情報をクラウドにあげることで、家で事務作業する人たちも仕事に関われるようになります。スマホで入力したものが、そのままボタンひとつで日々の報告書に変わる。そして、それを役所への提出書類としても活用できます。デジタル・ツールによって、報告書をつくる時間を大幅に短縮することができるのです。 

 

地域全体で業務の手間や時間を省ければ、お子さんや高齢の方たちをコミュニティ全体で見守ることもできますね。安心・安全な社会がつくりやすくなります。 

 

また、今年の6月には、岐阜のいぶき福祉会(https://ibuki-komado.com/)さんを訪ねにいきました。そこでも、デジタルの力で可能性がひらける可能性を強く感じました。デジタルが進んでいけばいくほど、いぶきで仕事をしている仲間のみなさん(障害のある利用者さんたち)の「できる」が増えていくはずです。 

 

そして、スタッフのみなさんが事務処理にかける時間にしても、確実に大幅に省くことができます。いぶきのみなさんは、団体内に閉じるのではなく、地域に開かれた活動をなさっていますから、時間が余れば余るほど、岐阜ではソーシャル・キャピタルが高まっていくと想像しています。   

■未来通帳®が、事務を、暮らしを、地域を変えていく 

これからは、自分のため、地域のため、社会のために時間を使っていく時代です。一人ひとりが余剰時間をつくっていくことで、これからの日本が変わっていくことになります。学ぶ時間にあて、行動変化を起こすのもいいでしょう。家族と過ごす時間にするのも大事です。考える時間も大事ですから、何もしない余白の時間を確保するのもいいですよね。一人ひとりの地域での活動がもっと増えれば、ソーシャル・キャピタルが豊かな社会へつながるでしょう。「未来通帳®」をつかって時間を預金していくことが、未来をつくります。 

  

ダンクソフトは、この7月から、50周年にむけての10年があらたに始まりました。私たちはどんなふうに「時間」というリソースをつかっていくのか。どんな未来社会をつくっていくのか。あらためて考えるタイミングです。「未来通帳®」を使った地域構想とともに、人々の時間の見方や使い方を変えていきたいですね。