徳島ツアーで実感した、コ・ラーニングのおもしろさ 

今年も、ダンクソフトはさまざまな立場の人たちと対話し、協働してきました。2023年最後のコラムでは、11月に行われた徳島ツアーを振り返りながら、高校生や高専生など若い人たちと仕事をしてきた若手スタッフをまじえて座談会を行いました。  



■徳島ツアーで体感した、異なる立場が協働”する可能性    

  

星野 3年半ぶりの徳島ツアーが無事終わりました。とても充実していましたね。  

   

ウムト すごく楽しかったです。私は、2度目のツアー参加でした。最初の参加は、2011年のインターンのときです。私がダンクソフトに入社したのも、あのときの体験が楽しかったから。今回、12年ぶりに神山に行ってみると、以前よりもさらにオシャレになっていて驚きました。プライベートでも遊びに行きたいくらいです。  

   

星野 神山もどんどんアップデートされていますよね。  

   

神山まるごと高専のガラス張りの部屋

 僕は、神山まるごと高専がとくに印象に残っています。徳島県民ですが、神山には数回しか行ったことはなく、神山まるごと高専も中に入るのは初めてでした。内部を見てみるとガラス張りの施設があったりして、僕が卒業した阿南高専とは雰囲気がぜんぜん違いましたね。出会った学生さんも切れ者ですし、しかも他人と協力するオープンな気質が感じられました。  

   

濱口 高専の見学はおもしろかったですよね。ツアーでは、阿南高専も訪れました。7年も通った場所なので目新しさはないかなと思ったら大間違い。新しい設備も導入されて、少しずつ変わっているのを実感しました。  

   

星野 2つの高専を見学できたのは、とてもいい機会でしたね。阿南高専の設備は、とくにVRの環境などものすごかったですよね。中小企業が真似できないほどの設備を学生さんが使えるのは、すばらしい環境だと思います。  

   

阿南高専を見学

濱口 阿南高専が情報技術を突き詰める方向なら、神山まるごと高専は、情報技術を用いて問題解決をすることを主題においているように感じました。方向性が違うからこそどちらも重要なんだなと思いましたね。  

   

星野 高専というと、日本では建築や機械、最近なら情報など理系のイメージが強くあります。けれど、文系でもいいんです。神山まるごと高専はかならずしも理系ではない学生さんも集まっていることも大きな違いです。阿南高専と神山まるごと高専は、明らかに成り立ちから違います。だからこそ、協働するメリットが相当にあるのを感じます。     

■多様な立場の人が集うからこそ、深まる「対話」   

   

星野 今回のツアーは対話型「体験学習」の機会でした。高専生と対話するほかにも、多様な人たちとの出会いがありました。東京からは神田藍のメンバーやダンクソフトのスタッフが参加して、徳島では阿南高専のACT倶楽部関係者も合流。とても多種多様なメンバーでしたね。  

   

ツアー参加者と記念撮影

ウムト はい、いろいろな人の話を聞きました。懇親会では深夜1時、2時まで参加者さんたちと話しました。  

   

星野 3日連続で懇親会というのは、コロナ前にもなかったような充実度でしたね(笑)。  

   

ウムト コロナがあけたのを感じましたね。ふつう、ツアー中に真剣な話をしていたとしても、夜になるとくだけた話になることが多いと思うんです。でも、今回のみなさんは、深夜になっても「クリーンエネルギーを日本でどう使っていくか」といった未来の環境を考える話が白熱していてすごいなと思いました。  

   

星野 みなさん、問題意識をしっかりとおもちでしたよね。ウムトさんが環境問題について議論していたのは、永原レキさんという徳島県の方ですね。藍染めでいろいろな製品をつくっておられます。もともとはサーファーなので、環境への意識がおありなんだと思います。  

   

 僕は懇親会には参加しなかったのですが、永原さんとお話しする機会がありました。そのなかで、自分にはなかった視点を得られたんです。それは技術について。永原さんが藍染めの技術を継承しているということをお聞きして、僕は、技術が失われるのがもったいないから受け継いでいるのだろうと思っていました。けれど、永原さんは「人類の生存のために必要だ」と考えておられたんです。そんなに切実な思いがあることに心動かされました。  

   

星野 その人の信念に触れるような深い対話ができましたね。このような対話があちこちで起きていたと思います。これまでのツアーの参加者は、経営者などビジネス関係者がメインでした。ですが、今回はそれ以外の人たちも増えました。立場が違う人同士ですから、お互いに情報交換することも増えました。同じ場所をめぐっても、見え方もぜんぜん違いますし。多様な人たちが参加してくれたことで、人と人との結びつきも生まれ、イノベーションにもつながる予感があります。  

  

■「答えられない質問」から起こった阿南高専生とのコ・ラーニング  

   

星野 人とのつながりと言えば、今年、港さんや濱口さんは阿南高専で学生さんと学びあう機会があったのですよね。  

   

 はい、僕と濱口さんとで「ACT倶楽部」で学生さんと活動したり、「協働教育およびシステム設計」という授業のメンターを担当したりしています。授業では、名前のとおりシステム設計やシステム開発に関することを学んでいます。僕たちも4〜5年前に受けていた授業です。  

   

濱口 学生さんは意欲が高くて、質問してくる内容も高度なものが多いです。僕らはエンジニアとして働いて2年目なので、実務的な内容などはすぐに答えられないケースも正直あります。  

   

ウムト そういうときはどうしているんですか?  

   

濱口 学生さんといっしょに考えるようにしています。そうすると、僕にも発見があります。これの繰り返しですね。  

   

星野 阿南高専の授業で起きているのは、まさにコ・ラーニングであり、リバース・メンタリングですね。とてもいいですよね。こういう学びが、日本全国のあらゆる場面であたりまえになっていく必要があるなと感じます。     

■「1週間だけ社員として」仲間と協力してプロジェクトを進めたID学園の高校生  

   

ウムト 私も、今年は高校生のみなさんと学びあう機会がありました。ID学園さんという高校でインターンシップをおこないました。内容はWeARee!を使ったデジタル・スタンプラリーをつくるというものです。  

   

 生徒さんたちはどんな反応でした?  

   

ウムト 感動しましたね。最初の企画会議から、にぎやかに盛り上がっていました。みなさん、とても積極的でした。自分の考えをもっているのもすごいなと思いましたし、相手の意見を聞きながら協力して進めていこうという姿勢もすばらしかったです。  

   

ID学園の生徒さんたちと企画会議(ダンクソフト本社)

星野 ID学園さんでは、ふだんあまり授業には出ていないという生徒さんもインターンシップに参加してくれたんですよね。  

   

ウムト そう聞いています。高校生のみなさんには、ただ参加するのではなく「1週間だけ、ダンクソフトの社員としていっしょに働きましょう」と呼びかけました。実際、ダンクソフトのオフィスにも来て星野さんとも話したり、私たち開発者とともに活動したり。企業の人たちのプレゼンを一方的に聞くのではない、こういう場は初めてだったようで、とても楽しんでもらえましたね。  

   

星野 彼らとリアルに会ったときは、若い力の可能性を感じてワクワクしましたね。プロジェクト自体は、スピード感もあるし、クオリティも高かったです。WeARee!というサービス自体が、冒険しながら新しいものをつくる先駆的なものですから、この楽しさが伝わったのかなと思います。      

■高校生のフィードバックでWeARee!が変わった  

   

星野 ID学園さんでのインターンシップで、ウムトさんが高校生のみなさんから学んだことはなにかありました?  

   

ウムト たくさんありました。とくに印象的だったのは、WeARee!のなかにあるランキング機能についてです。私は、データを見せるのが大好きなので、WeARee!の機能のなかにランキングを表示していました。ユーザーのスタンプ取得数やタイムを順位付けしたものです。でも、生徒さんから「ランキングが見えるとレースっぽい」「ゆっくり遊びたい人もいる」という意見をもらって、なるほどと思いました。そこで、ランキングを非表示にできるような機能を実装しました。  

     

 生徒さんからのフィードバックが反映されるって、とてもいいですね。  

   

ウムトを囲む学生たち(ダンクソフト本社)

ウムト 意見をもらって、その場で開発を進めました。私が実際に開発している画面を見せると、生徒さんもテンションがあがるし、私もそれを見て嬉しくなりました。いまのWeARee!のログイン画面は、生徒さんからもらった意見を反映したものになっています。  

   

濱口 生徒さんから、サービスへの改善案がでるのがすごいなと思いました。ふつうは、使いにくい部分があっても「ふーん」って流しちゃう人が多いのかなと思います。意見を引きだす工夫は何かあったのでしょうか。  

   

ウムト 生徒さんは、実際の現場で開発がどのように進むのか興味があったようなのです。そこで、お客さんからフィードバックをもらったとき、どのように修正をかけていくか実際のプロセスを説明したんです。なので、生徒さんとしては自分の意見がしっかりと反映されるのだという手応えを感じてくれたのかなと思います。  

   

星野 生徒さんの声を聞いて、実際に開発が進む。そういう場面を体験してもらったのは、とてもよい機会でしたね。WeARee!は、ノー・コードでユーザーの求めている機能を作ってみせることができます。ノー・コードやロー・コード、少なめのコードで書ける製品やサービスがすごく増えてきています。そうすると、専門知識のある開発者だけでなく、ユーザーも開発に参加できるようになります。コ・ラーニングするほうへ、時代が進んでいるのですね。    

■社内で起こったリバース・メンタリング:孫ほど年齢が離れていても  

  

星野 学びあいといえば、思い出したエピソードがあります。ダンクソフト役員の渡辺さんは、濱口さんたちに対して業務内容のオーダーを口頭で伝えていたんです。でも、そうすると聞くほうは困りますよね。言われたことを、その場でぜんぶ記憶できるわけではない。記憶できないから、パソコンを使うわけです。そこで、濱口さんが口頭の伝達だと困っているということを伝えたんですよね。  

   

濱口 はい。文字で共有していただけるとありがたい、とお話ししました。  

   

星野 そうすると、テキストベースでの連絡へと切り替わりました。孫ほどの年齢が離れたスタッフからの意見を聞いて、行動が変わる。ダンクソフトでもリバース・メンタリングが機能していることを実感した例でした。  

  

■一瞬で時代は変わる。変化をキャッチし、変わり続けるダンクソフト  

  

星野 最近「茹でカエル」という言葉を知りました。自分が鍋のなかで茹でられているのに、変化がゆるやかなために気づかず、そのまま手遅れになってしまうということを指します。変化しない人たちへの視線は、ますます鋭くなってきています。  

   

時代は一瞬にして変わります。来年、再来年は、劇的に変わる可能性があります。たとえば、文字起こしの精度はいま、ものすごく上がっています。生成AIと連携することによって、要約もできるようになります。そうすると、会議しながらメモを取ることも楽になります。いま、電話を連絡ツールとしている業界なら、電話からTeamsなどのウェブアプリに変えるだけで、仕事の仕方も一気に変わるでしょう。  

   

私たちのようにプログラムを書く人は、つねに変化をキャッチしています。仕事の場面だけでなく、プライベートの時間もそうです。つねに新しいことに関心をもち、自分のお金を使って新しいことを試そうとする人も多いです。  

   

でもいっぽうで、技術の進化やまわりの変化に気づかない人もいます。そういう人たちも、ダンクソフトと関わることで学んでいけるようになっていってほしいですよね。  

   

2023年、コ・ラーニングやリバース・メンタリングの重要性を実感し、これからダンクソフトに関わってくれそうな若い方たちともコラボできたのは、とてもよかったと思います。いよいよ、50周年にむけてのスタートです。「学習する組織」を目指して、みなさん、ますます学びあっていきましょう。