「スマートオフィス」とは、インターネットやデジタル・ツールを積極的に活用して、仕事をラクにし、どこからでも働くことのできる環境を整えたオフィスのこと。
私たちダンクソフトが提唱している、これからの企業の在り方です。
これまで何回かお話をしてきましたが、今日はもう少し踏み込んで、実践に向けてのファースト・ステップを紹介します。
┃ペーパーレス化のはじまりは、紙類の分類から
「オフィスのスマートオフィス化」をしようと思い立った時、皆さんなら、どこからはじめますか。ダンクソフトは、「ペーパーレス化」からはじることを、おすすめしています。
「ペーパーレス」というと、その言葉の響きから、何もかも紙をオフィスからなくすものと考え、たいへんそうに思う人も多いかもしれません。しかし、職場にあふれる紙は、実際にはいくつかのタイプに分類されます。段階的に手をつけていくことで、スムーズにスマートオフィスへと変身します。
手始めに、オフィスにある紙類を見渡してみてください。
オフィスの紙類は、大きく2種類に分けられます。ひとつは「書類」。日々いろいろな文書を作成していますよね。もうひとつは、「伝票類」です。この2つのうち、大事なのは「伝票類」のほうです。
伝票とは、入金伝票・出金伝票・振替伝票・仕入伝票・売上伝票など、金銭の出入や取引内容などを記入する、一定の様式を備えた紙のことです。取引についての責任を明らかにして、後の証拠ともなる、経営にとって大事な書類です。見積書・納品書・請求書・領収書など、取引先とやり取りする帳票類も含めます。
これらが、なぜ企業にとって大事な紙類かというと、企業を存続していくために大事な情報だからです。また最終的に税務署に証明するため、トレイサビリティを高めて、わかりやすくしておかないといけないですよね。
「書類」ももちろん大事で、スマートオフィスにするためには、インターネット上にのせていく必要があります。ですが、今回は、より重要で、スマートオフィス化の入り口に最適な、「伝票類」をどう扱えばいいかについて、お話ししていきます。
┃「伝票類の一元化」が、成功の秘訣
情報理論のなかに、「Integrity(インテグリティ)」という考え方があります。データを正確にそろった状態にしておくことをいいます。
しばしば完全性と訳されますが、いうならば「一元化」です。情報を扱うときには、「Integrity」(一元化)を最初から念頭において、情報の構造をつくることが大事です。
どういうことでしょうか?
21世紀に入って、会社内でも、ひとり1台のパソコンが持てるようになりました。つまり、一人ひとりExcelやAccessなどが使える環境ができました。
ただ、これによって逆に、データが一元化されず、バラバラになる現象が加速したともいえるんですね。この結果、経理システムはなんとなくあっても、それぞれが手元で作ったデータをまとめる作業に手間がかかることになりました。
(ちなみに、もし、ファイルが電子化されていないこと、つまり伝票類を「紙だけ」でやり取りをしていて、デスクの周りや棚に積み重ねているとしたら、これは要注意です。)
ためしに、皆さんが取り扱う伝票を集めて、見てみてください。実は、入力されている情報は、似ている情報ばかりだということに気が付きませんか。
お客様の名前、社内担当者の名前、何にお金を使ったのかという情報。
これらには、品目がでてきて、いくつあったのか、それらがいくらだったのか、単価がいくらで、掛け合わせるといくらで…、という情報が複数行あって、日付が添えられます。
つまり、人・モノ・金・時間に関する情報です。社内の経費精算についても大体同じような表現ですし、見積書や請求書も同様です。
さらに、伝票そのものが、社内外のあちらこちらに伝わっていきます。たとえば、見積書の内容が、のちに納品書になり、請求書にかかれて、領収書が作られます。
伝票の名前はそのたびに変わっていきますが、基本的に入力されているデータは、「同じ」データです。最初に入れたデータがのちにも使われることさえわかれば、最初から構造を考えてデータの一元化をしておけば、とても楽になるわけです。
┃「ペーパーレス、キャッシュレス、サインレス」の、セットで解決できる
ところが、インテグリティ(一元化)を意識していない会社は、とても面倒な作業に悩まされています。そのうえ、データの集計を誤る可能性もあります。
たとえば、期末になると部門ごとにデータを集めて合計しますよね。このとき、合わないデータ・正しいデータを精査する作業に、数週間かかってしまったりもします。
最近では、RPAというロボットが登場しています。 Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、人間に代わって高度な作業をするものです。
例えば、RPAを導入すれば、情報を持ってきて転記するようなこともできるという話がありますが、これを企業が導入するには、高度な運用ための人材が必要になるので、まずはどなたでもできる取り組みやすい一元化から着手するほうが賢明でしょう。
ということで、日ごろの業務のなかで、一人ひとりが、伝票をいかにひとまとめにしていくか、意識することがミソ。もともと一元化されていたら、データは二重化、三重化することはありません。
このように、伝票を一元化すると、保管する紙類が大幅に減って、オフィスが見違えるようにすっきりしてきます。
それだけではありません。社員たちがこれまで手間暇かけてやっていた大量の作業が減り、クリエイティビティを発揮する仕事により多くの時間を使うことができます。
これが、「スマートオフィスは伝票のペーパーレス化から始めよう」と日頃からお話ししている1番の理由です。
また、デジタルによってできることは、ペーパーレスだけではありません。キャッシュレス、サインレスも同時に実現できます。
私は、この3つ「ペーパーレス、キャッシュレス、サインレス」は、スマートオフィスを実現する上では、ワンセットだと考えています。
仕事のなかの手間やムダをとりのぞき、その分の時間を、もっと必要なこと、もっと創造的なことに使えるようになるからです。もちろん、仕事を早く終え、その分、休暇や自由な時間も楽しむというメリットもあります。
┃日本でよくある光景(1):データのばらつき(マイナンバー・カードを例に)
ただ、実際には「一元化」が阻まれるケースもあります。ここには、日本特有の事情がいくつか見られます。
ひとつは、日本語表記です。文字データを扱う人やモノのデータは、慎重な配慮が必要です。これには、日本のコンピュータ環境ならではの問題があります。
もしも、「田中一郎」という同姓同名の社員がいる場合、各人を明確に分けられるようにする必要がありますよね。
また、「タナカイチロウ」「タナカイチロウ」といったように、全角・半角の両方で表記できてしまうので、これも統一する必要があります。
特に「人」についての情報は、データの根幹となるものですから、徹底した管理が求められます。
わかりやすいやり方が番号を用いるもの。政府が進めているマイナンバー・カードがよい例ですね。もっともマイナンバー・カードについては、その番号と情報の紐付けをめぐって、いろいろなトラブルが起こっていますが……。
日本特有のコンピュータ環境を理解して、データのばらつきを抑え、一元化されたデータ基盤をしっかりつくっておかないと、デジタル化を進めたつもりでもすぐに頓挫したり、思わぬトラブルに直面してしまうことがあります。
┃日本でよくある光景(2):Accessの光と影
Excelよりも大量のデータを扱える、かつて爆発的に流行ったデータベースソフトがあります。それが、マイクロソフトのデータベース管理ソフト「Access」(アクセス)です。
実は、世界的に見ると、Accessは、日本ばかりでもてはやされたソフトウェアだったんです。
日本語環境で使い勝手がよかったですし、素人さんでもデータベースのアプリを自分のパソコンでつくることができました。そのためか、今でも利用している会社が日本では多いのではないでしょうか。
最近、ある中小規模の会社から相談をうけました。
スタッフの中ではITにたけた人が、かつて十数年前に、Accessによる顧客管理データベースをつくったそうです。
その後、その担当者が退職してからは、別の人が、わからないながらも機能を拡張してしまい、今では詳しく構造を把握する人がおらず、とても重くて使いづらいデータベースになってしまったとのことでした。要するに、簡単なデータ抽出をするにも時間がかかる事態になっているのだそうです。
しかし、今もそのAccessベースのデータベースを使い続けていて、大事なお客様情報が何万件も保存されています。
さらに、別の部門ではまた別の顧客データベースを使っていて、会社として、「一元化」ができていない状況とのことでした。うちも同じような状況だ、という会社さんも、多くいらっしゃるのではないかと思います。
また、これはExcelでもいえることですが、こういうビジネス・ソフトで大切なデータを保管していると、セキュリティ面で重大な問題が起こる可能性があります。
インターネットで社内システムと社外が簡単につながるような現代では、個人情報が盗まれたり情報が漏えいしたりするリスクが、あちこちに潜んでいます。
これでは業務の合理化どころか、会社として社会的な信頼を失ってしまう、深刻な事態になりかねません。
┃ダンクソフトは実際、どんな風に一元化しているか
かくいうダンクソフトは、1998年に日本で初めてAccessが登場した時に、マイクロソフトと組んで、「義理かんり」という顧客データベースのソフトをつくりました。
これが爆発的に広がったんですね。ソースコードを公開したこともあり、当社の「義理かんり」をベースに、自社でデータベースをつくった方々も多かったんです。
Accessムーブメントの一端をつくったのは、ダンクソフトかもしれません。
当時はそれが最先端でしたが、今では、時代にあわせて、企業の社会的信頼を守れるようなシステムの在り方を、皆さんに提案しています。
実際、世の中では、プライバシーマークの取得などもすすみ、プライバシーマークがないと取引ができない案件も出てきています。
ただ、特に小さな企業や団体は、こうした大事な分野に予算を使うことを渋ります。
デジタル化は、目になかなか見えづらい部分なので、後回しになりがちです。事故が起こってからでは遅いため、早めに対策することがよいでしょう。
ダンクソフトの「未来かんり」というソリューションでは、人・モノ・金・時間を安全に「一元管理」ができます。
仕掛・見積から受注、納品、請求、入金回収までの流れを、ビジネス案件ごとに一気通貫に見える化できます。
伝票に含まれる情報をどれだけ再利用できるか。またそうすることで、これまで当たり前だと思っていた作業時間をどれだけ短縮できるか、ということを考慮して、開発されています。
目に見えないところで、みなさんの作業を肩代わりしてくれる縁の下の力持ちです。
「未来かんり」の大きな特徴は、未来の予定を入れられるということです。お客様のなかに、2年先、3年先の予約をとるビジネスをされている企業様があるため、単年度のみならず、未来のデータを入れられる仕組みとして開発しました。
1998年にお客様の社内システムとして開発したものをベースに、何段階かの開発フェーズを経て、2008年から「未来かんり」として製品化しました。
┃小さな企業や団体こそ「スマートオフィス化」でクリエイティブな経営を
スマートオフィスが目指すのは、日々のムダを省き、働き方を新しくし、社員たちの意識を新しくし、誰もが快適に、やりがいを持って仕事に取り組める「環境づくり」にあります。
確かに、ペーパーレス化によって、大量の紙がなくなり、オフィスの景観が一変しますが、スマートオフィスづくりは、そうした景観や空間デザインの話にとどまりません。
どこから手を付けていいか、あきらめている方も多いかもしれませんが、ご関心のある方は、ぜひダンクソフトにご相談ください。
今後は、今よりもっと採用難・人手不足になっていくことが予想されますね。そんななかでも、デジタル化された、これからの働き方ができるスマートオフィスに変身しておけば、若いマインドを持った方々に興味をもってもらえる機会が増えると考えています。
少ない人数でも、効率よく仕事にあたり、一人ひとりがクリエイティビティを発揮できる余地が生まれます。
規模が小さい企業や団体こそ、これからますますクリエイティブな経営が求めると考えています。自分たちの現在と未来のために、ダンクソフトと一緒に、スマートオフィス化の流れをつくっていきましょう。
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