#ダイアログ

やさまち総研 with ダンクソフト ─デジタルがつくる、あかるく・やさしい地域の未来─

「労働者協同組合」という新しい法人制度をご存じでしょうか?  

2024年7月に設立された「やさしいまちづくり総合研究所」(以下、やさまち総研)は、全国で95番目に設立された「労働者協同組合」です。この生まれたてのスタートアップ「やさまち総研」の日々の活動を、ダンクソフトではデジタルの面からサポートしています。そればかりでなく、地域とデジタルの未来に向けて、両者が一緒に取り組めることはたくさんあるはず。これからどんな協働を繰り広げていくのか、ダンクソフト代表の星野と、「やさまち総研」のメンバー3人とのダイアログをご紹介します。  

 【左から】   
労働者協同組合 やさしいまちづくり研究所

代表理事 中西大輔さん 
常務理事・主席研究員 前神 有里さん 
理事・主任研究員 加藤 翔大さん 

株式会社ダンクソフト 

代表取締役社長 星野晃一郎   



▎「労働者協同組合」として全国95番目に設立。 

「労働者協同組合」とは? なぜ3人で「やさまち総研」を始めたのでしょうか?  

 

星野 「やさしいまちづくり総合研究所」(以下、やさまち総研)は今年の7月に立ち上がったばかりの団体ですね。まず初めに概要を紹介してもらえますか? 

右:やさまち総研 中西大輔さん 
左:やさまち総研 前神有里さん 

中西 メンバーは私と前神さんと加藤さんの3人。私が滋賀県庁、前神さんが愛媛県庁、加藤さんが総務省と、みんな元公務員というところが共通項で、私と前神さんは古くからの知り合いです。では、なぜ「やさまち総研」を立ち上げることになったのか……。それは前神さんに話してもらった方がよいかな(笑)。 

前神 そうですね。私は2018年に親の介護を理由に愛媛県庁を退職し、その後しばらくフリーランスとして人財育成や地域づくりの仕事に携わっていました。けれども、フリーランスは自由な反面、1人であるため立場上弱いようなところがあり、活動も限られてストレスを感じる場面も多かったんです。 

でも、1人で創業するほどの勇気もない。そこで思い至ったのが「労働者協同組合」という法人制度でした。私はフリーランスの自由さも、組織で働く楽しさも知っています。私たちのような活動を進めていきたい人たちにとってぴったりのスタイルだと思いました。そこで、「ならば中西さんだ!」とまっ先に顔が浮かび、声をかけたのです(笑)。 

中西 私は長く滋賀県庁に勤め、2022年3月に定年退職して比較的自由な立場でした。一方、自治体職員の傍ら、地域づくりなどの活動にも長く携わってきたんです。前神さんとも、こうした活動で出会ったのですよね。 

その前神さんから「労働者協同組合を一緒にやろう」と相談があって。私自身もこれからの自分の働き方に合った法人形態だなと思っていたこともあり、前神さんとならやってみようかと、一緒に立ち上げることにしました。 

前神 ところが、「労働者協同組合」には3人以上の発起人が必要です。そこで声をかけたのが加藤さん。私も中西さんもまちづくりなどの活動についてはそれなりに経験も知識もある。けれども、法人をつくるとなると、会計や労務などの管理体制も整えないといけない。その足りないピースを補うためにも、事務ワークを得意とする加藤さんはうってつけの人なんですね(笑)。 

加藤 私は総務省で自治体や地域などに関連した仕事やDX推進に携わった後、総務省を退職したんです。東京を離れて暮らしたいと思ったときに、かつて赴任していた愛媛県の松山にまた住みたいなと思って、思い切って移住しました。 

ここでは塾の講師やそのほか短期的な仕事をいくつか複業していたのですが、そんな中でたまたま前神さんと再会したんですよ。私も、地域に根ざした拠点づくりをやってみたいと思っていたので、ぜひ!と参加することになりました。 

星野 ところで、「労働者協同組合」※1というのは、どのような法人格ですか? 

中西 2022年10月から始まった新しい法人制度ですね。介護・福祉や子育て、地域づくりなど地域におけるさまざまなニーズに応じた事業を実施できます。3人以上の発起人がいれば組合を設立でき、組合員の立場はみんな平等で、話し合いながら事業を進めていくところに特徴があります。ですので、「やさまち総研」も私が代表を務めてはいますが、3人でワイワイと話をしながら活動を進めています。 

前神 「労働者協同組合」は現在、全国で110法人※2が活動しており、「やさまち総研」は日本で95番目に設立した「労働者協同組合」なんですよ。 

※1:https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/  

※2:2024年10月1日現在  

▎「やさまち総研」にとってデジタルは必須の道具。 

その頼れるパートナーとしてのダンクソフト。 

 

やさまち総研 中西大輔さん

中西 私が京都、前神さんと加藤さんは愛媛に住んでいるため、普段の打ち合わせはすべてインターネットを介したWeb会議で行っています。このように「やさまち総研」の活動にとって、デジタル環境はなくてはならないもの。それをサポートしてくださっているのが、星野さんの会社、ダンクソフトさんです。 

前神 そう。私と星野さんが知り合ったのはもうずいぶん前ですよね。 

星野 僕は、前神さんのFacebookは以前からフォローしていたけど、最初に顔を合わせたのは10年前くらいでしょうか? 

前神 そうかもしれないです。けれども、今回の「やさまち総研」とダンクソフトの協働のきっかけとなったのは、今年5月に行われた「インターミディエイター」※3についてのオンライン・ダイアログのときです。「新しい働き方に“対話と協働”は必要か?」というテーマのもと、ダンクソフトの星野さんと竹内さんが登壇されたのですが、私、おふたりの話を聞いていて、「まさにこの働き方こそが私たちがやりたいことだ!」と興奮したことを憶えています。そこからトントン拍子で、ダンクソフトさんにデジタルの話を伺ってみよう、となって、ご相談に伺ったんですよ。 

星野 前神さんからお話を伺って、ダンクソフトも、労働者協同組合の仕組みに近いところがあると感じました。僕は社長という役割ですが、階層はほとんどなくて、フラットな組織です。これまでも、スタッフみんなで会社の就業規則をつくったり、お互いに話しながら、かなり積極的に変化していく会社なので、このあたりも、「やさまち総研」さんの考え方にも近い印象があります。これからは、自分たちで未来を切り開ける人たちが増えると思っています。そういう人づくり・地域づくりにたずさわる「やさまち総研」さんですから、連携するなかで、デジタルのところをダンクソフトが担えたら、地域の可能性はさらに広がるだろうと考えています。 

前神 大きい組織で働いていた時には、共有ツールというものがありました。でも、こうやって新しい団体をたちあげるとなると、デジタルまわりを自分で用意しないといけなくなります。大きな組織にいたときには、用意された環境を使いこなすユーザーで、使いこなすレベルは結構高いんですけれど、自分たちで一から準備するとなると、まったくわからない状況でした。それと、私の周りにはキントーンを使っている人が結構いるんです、愛媛県はサイボウズさんの発祥の地なので。使ってみたいなと思っても手探りだったので、素人3人組としては、ダンクソフトさんに色々アドバイスいただきながらやれるのが、今、とっても安心です。 

星野 今回、皆さんの業務の課題や将来やっていきたいことをお聞きして、最初に導入したのは「日報かんり」ですね。これは、サイボウズのクラウド製品「kintone(キントーン)」をベースにダンクソフトが開発した、便利なアプリケーションなんですよね。 

前神 「労働者協同組合」は非営利組織の区分になりますので、kintoneのチーム応援ライセンスを活用できたので、利用料を抑えることもできました。 

やさまち総研 加藤翔大さん 

加藤 「日報かんり」は、Microsoft Outlookの予定表に入れた情報から、ボタン一つで日報を簡単に作成できるアプリです。私たちは基本的にリモートで別々の場所から働いているので、団体としてではなく個人で受けている仕事もあったりと、勤怠管理や給与計算がたいへんなんです。 

前神 出張がすごく多くて、全国色々と飛び回っているので、何のために何時間働いたかを集計しなくてはいけないんですが、これが一苦労で(笑) 

加藤 その点、「日報かんり」は、Outlookに作成した予定データが「キントーン」に自動的に蓄積されるので助かっています。そこから勤務時間がすぐ集計できるので、それをもとに月末には給与計算がスムーズにできますし。 

中西 もうひとつ、「日報かんり」のユニークな機能として活用しているのが「所感欄」ですよね。 

前神 勤怠や経費に関わることなど硬いことだけでなく、なんでも自由にコメントを書き込むことができるんですよ。「やさまち総研」ではメンバー間の交換日記みたいな役割も果たしています(笑)。 

星野 離れていてもメンバーの様子が共有できるので、チームの連携力をあげるためにも有効です。実際に、ダンクソフト社内で長年活用しているなかでも実証されています。それと、もうひとつ、いま導入段階にあるアプリが「ダンクソフト・バザールバザール」ですね。これは事務作業というよりも、これからつくっていくコミュニティ運営をサポートするプラットフォームになるものです。さらにダンクソフトには、人、モノ、お金、時間などの情報を一元管理できる経営ツール「未来かんり」があります。現在、この「未来かんり」を「キントーン」と連携させるための開発を進めており、その実証実験を「やさまち総研」と一緒にやろうと考えています。 

中西 ダンクソフトのアプリを利用して改めて感じるのが、私たちのような組織におけるデジタルの重要さです。それは業務の効率化のような部分はもちろん、新しい働き方や地域づくりといった活動においても同じだと思います。 

たとえば「労働者協同組合」には、介護や福祉の事業を行っているところも多いのですが、介護などではスタッフの勤怠や報酬の管理が非常に複雑です。そういうことを考えても、「労働者協同組合」にとってダンクソフトとの協働はとても意義があると感じています。 

※3:https://www.intermediator.jp/   

▎やりたいことがどんどん膨らんできて、 

限られた時間をどう使っていくかが一番の悩みです。 

 

星野 まだ立ち上がったばかりですけど、「やさまち総研」ではどんな活動を進めていこうと考えているのですか? 

中西 そうですね。「働く」ことにこだわり、それを通じて地域と人をつないでいくために、さまざまな活動を考えています。研修やセミナー、イベントの開催、コンサルティング、元公務員という強みを活かした「労働者協同組合」の立ち上げ支援といった事務代行までいろいろですね。目指している社会をあえてあげるなら、厚生労働省が打ち出している「地域共生社会」と一番親和性が高いでしょうか。将来的には国の政策づくりにも関わるような提案もできたらいいなと思っています。 

このように3人で話し合っているうちにやりたいことがどんどん膨らんできて、限られた時間をどう使っていくかが、今のところの一番の悩みですね(笑)。 

星野 デジタルを導入するよさは、時間を余らせることができることなんですよ。日報かんりをダンクソフト社内で導入した結果、業務報告書を作成する時間がいらなくなって、あるスタッフは1か月で8時間もの時間が生まれました。日報かんりを使うと、皆さんがもっと有意義な活動に時間を使える状況になりますよ。 

やさまち総研 前神有里さん

前神 それは時間に追われることが多い私たちには魅力的ですね。私は、公務員時代から現在に至るまで人財育成や地域づくりまでいろいろな仕事に携わってきましたけど、ベースにあるのは、福祉という側面から地域を見るという視点なんですね。中西さんが言うように、やりたいことはほんとうにたくさんあって、1つの「業」だけでは収支が成り立たないようなことでも、3人が得意なことを合わせることによってやっていけるのではないかなと思っています。たいへんなこともありますが、それが「労働者協同組合」のよいところですよね。 

中西 加藤さんは、飲食に関わるような拠点をつくりたいと思っているのだよね? 

加藤 ええ。居場所づくりとして、バーのような飲食業をやってみたいと思っていて、現在、物件を探し中です。夜だけ使うのではもったいないので、昼間はシェア・オフィスにしてもいいし、私は子どもたちのための塾もやってみたいと思っています。 

前神 地域の人たちが食材を持ち寄る食堂みたいなこともできそうだし。 

中西 まだ妄想中ですが、バーの名前はもう決まっているのですよね。「バー・テンダー」(笑)。「やさまち総研」の英文名、“Tender Community Renovation Research Institute”に由来しています。 

星野 それは面白そうですね(笑)。僕も「日本パエリア協会」の理事をしていたり、飲食とも関わりが深いんですよ。デジタルばかりでなく、いろいろなコラボレーションができそうです。 

「やさまち総研」のオフィス。古民家を利用。

前神 私たちは、「やさまち総研」の拠点として、愛媛県伊予市の古民家を選びました。そこは国の登録有形文化財で、まちの縁側として人々をつなぐ場としてコーワーキング・スペースになっています。今後は、そこを使ってイベントもいろいろ考えていきたいんですよね。先日、東京・神田にあるダンクソフトの新しいオフィスを訪ねたのですが、とても快適で楽しそうな空間で、星野さんからもいろいろアイディアをもらえそうな予感がしています。 

星野 ダンクソフトは「神田藍の会」という地域プロジェクトにも参加していて、事務局を担当しています。ですので、ダンクソフトのオフィスでは関連イベントを開いたり、夜は地域の方たちと飲み会をしてみたり、「やさまち総研」が取り組もうとしているようなこととも重なりますね。僕は、会社というものはこの先、人々が集うコミュニティとしての場になっていくイメージがあります。そのなかで、デジタルが有効に活かされると、コミュニケーションの質も量もあがって、ソーシャル・キャピタルが豊かなコミュニティになっていきますのでね。  

▎デジタルで、働き方や地域のあり方を変えていく。 

「やさまち総研」とダンクソフトが協働することはたくさんある。 

 

やさまち総研が開催するセミナーの様子

前神 最近、新しい働き方を知りたいということで、「労働者協同組合」を紹介する勉強会を地域で実施しました。すると、募集を上回る参加者が集まって、なんとその半数が高校生でした。働くことに対する意識って、若い人たちの間では多様化しているのではないでしょうか。 

中西 それと同じようなことは私も体験しています。ある大学の寄付講座で講師を務めた際、学生たちと話をすると、彼らは就職に関して大企業を目指していたり、意識が固定化されていてやはり安定志向なんですよ。ところが、「労働者協同組合」のことを紹介すると意識が大きく変わりました。なかにはこの講座がきっかけになって人生観が180度変化して、全国を旅しながら働けるような仕事を探したいという学生も出てきました。 

星野 おもしろいですね。ダンクソフトは、以前から徳島県の阿南高専とのつながりが深く、この夏には何人かの学生がインターンシップとして来て、お互いに楽しく学び合いました。将来的には、こんな学生たちとダンクソフト、「やさまち総研」で、面白そうな協働プロジェクトもできそうですね。 

今日、皆さんと話をしていて改めて感じたのですが、ダンクソフトと「やさまち総研」はとても親和性が高いように思います。ダンクソフトが提唱している「スマートオフィス構想」は、まさに「やさまち総研」が目指しているような働き方をサポートするものですし、「労働者協同組合」という仕組みも私たちが目指している組織のあり方に共通するところが数多くあります。 

加藤 私たちも、デジタル・ツールを活用すればやれそうなことがたくさんあるのですが、まだなかなかそれを上手に言語化できない。理解を深めるためにも、今日はとても貴重な機会だと感じています。 

星野 ダンクソフトでは、今、「やさまち総研」と進めている取り組みを実証実験として、「スマートオフィス・パック」のようなソリューションにできないかと検討しています。けれども、私たちが目指しているのは、単に出来合のパッケージソフトを提供するのではなく、今回のように、お悩みやお困りごとが何か、どんな未来を創りたいのか、ていねいな対話を重ねて、それぞれの「労働者協同組合」ごとにベストな解決策を一緒に考えていくことなのです。 

前神 その言葉を聞くと、嬉しいですね(笑)。 

加藤 すでに、すごくお世話になっているんですよ。ちょっとした分からないことでも、問い合わせると、すぐに担当の竹内さんがチャットを返してくださって、すぐにわからないことが解決できています。 

前神 ほんとうにそう!デジタルに不案内な私たちでも、アシストいただいて一緒に歩めています。私たちのような労働者協同組合が全国にこれから広がりますので、そういう意味でも、ダンクソフトさんにはめっちゃ期待しています(笑)。 

中西 私もとても心強く思っています。星野さんがおっしゃるように、ダンクソフトと「やさまち総研」がこれから協働していくべきことはたくさんありそうです。今回のダイアログがその大きな一歩になると思っています。 

星野 我々は働き方の変化に対して、かなり積極的に取り組んできた企業です。創業42年目の企業が、「やさまち総研」さんのような、誕生間もない組織と出会いました。「やさまち総研」さんのユニークな挑戦を、もっと多くの人たちに知ってもらいたいですね。そこに、デジタルが関わることで、変化のスピードもあがるでしょうし、よりよい社会をつくれる期待感もふくらみます。これからも、明るく楽しい未来を、一緒に描いていけるといいですね。今日はありがとうございました。 


労働者協同組合 やさしいまちづくり総合研究所 

https://www.yasassii.or.jp/