“Co-learning”が、一人ひとりを成長・進化させる ―50周年に向けて「学習する組織」へ


■ダンクソフトが最も大事にする「コ・ラーニング」とは

 

ダンクソフトでは、「コ・ラーニング(Co-learning)」を重視してきました。コ・ラーニングとは、ともに学びあうこと、つまり、共同学習です。2008年の全社会議で話題にして以来、学びあいの文化、学びあいの場づくりを大事にしてきました。

 というのも、ダンクソフトはデジタル企業だからです。デジタル・テクノロジーは、40年で1億倍も性能が良くなりました。これからも驚異的なスピードで、新しい技術が登場し、発展します。連動して、私たちが学ぶことはどんどん増えていきますから、もう到底ひとりでは対応できなくなります(すでにそうです)。ですから、互いに学びあうことがますます大事になってきます。

テクノロジーの進化だけでなく、私たちを取り巻く環境も劇変しています。特に企業に求められることは、40年のあいだに大きく変化してきました。上司・部下という上下2分の関係を超えて、いかに目線をあわせて建設的な「対話」ができるか。社内外との横断的な協働を通じて、さらによりよい成果や意外な効果を生み出せるか。どうやって、よりよい地域社会の先導者になるか。どんなテーマでも、「Co-learning」の考え方が必要不可欠です。  

■「学びあう」ことで高めあうスポーツの現場

 

私はスポーツが大好きなのですが、最新のスポーツ界を見ていると、「コ・ラーニング」がよく実践されているのをたびたび見かけます。 

今年のWBCがそうでした。アメリカで経験を積んできたダルビッシュ選手に、日本のピッチャーはスライダーの投げ方を学んでいましたね。スライダーといえば、ダルビッシュが2009年のWBC決勝戦で最後の三振を打ちとった球種。その投げ方を、彼は若い選手たちとシェアしたのです。その成果でしょうか、大谷選手が決めた最後のボールはスライダー。そして日本はふたたび、世界一になりました。あのときは興奮しましたね。

 

かつてスポーツといえば、チーム内の全員がお互いのライバル(競争相手)でした。ですから互いに「学びあう」ことはなく、自分の技は盗まれないようにする、競争そのものの世界だったと思います。でもその文化が、いま確実に変わってきました。

 

スポーツ・クライミングという競技がありますよね。垂直に反り立つ壁をよじ登っていくもので、ボルダリングとも言われます。このスポーツでは、試合前に、どのように登るのか、その作戦を選手同士で相談するのです。このオブザベーションという時間では、各国の選手たちが、敵味方を超えて話し合っています。そのシーンがとてもおもしろいんです。

 

最近のスポーツでいえば、スケートボードも学びあう文化があります。誰かがいいスピードに乗ったり、技が決まったりしたら、それを見ている選手全員が喜び、賞賛しあいます。日本は女子も男子もかなり強い競技ですよね。

 

スポーツの世界では、コ・ラーニングしている場が目に見えて増えています。共同学習によって、互いに高めあっているわけです。  

■河原でパエリア。それが「体験学習」の始まりだった

 

ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場さまとのプロジェクト事例『事例:楽しさの「背景」までも伝え共感を生むWEBサイトで、閲覧数も売上も120%増』も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/casestory-kfv 

10年ほど前でしょうか、ダンクソフトでは、特別な共同学習の機会をもうけました。

舞台は埼玉県飯能市のキャンプ場。そこへ、ダンクソフトのスタッフやパートナーさん、大切な知り合いの方々もお誘いして、一緒にツアー・バスで行きました。皆で集まったキャンプ場は、ケニーズ・ファミリー・ビレッジさんという、ダンクソフトのお客様でもあります。川を堰き止めた天然のプールがあるような、自然いっぱいの環境です。

 

その河原で、パエリアを炊くことに挑戦したんですよ。バレンシアのパエリア・コンテストで第4位の腕を持つシェフに同行してもらい、チームに分かれて、実際に自分たちで、いちから焚火でパエリアを炊いてみました。

 

そのプロセスで、社内・社外という垣根を超えて、さまざまな立場の人たちと協働関係を模索しながら、ひとつのものを作りあげることを体験しました。多様な人々がかかわるとイノベーションが起こることを実地に体験したわけです。

 

十分に手足を動かしたあとで、座学のレクチャーの時間を用意しました。そこでは、「開かれた対話と創造の場」を重視する、これからのビジネスの考え方を学びました。チームでのパエリアづくりを通じて、横断的な対話や小さな創造活動を体験した直後なので、話がよく身に沁みこみますよね。

 

それ以前から、外部講師を招いた社内セミナーは開催していました。でもそれは座学的なので、このような機会、つまり、身体を動かした「体験学習」の場を最新のビジネス論と連動して行ったものは、このときが初めてでした。ただ話を聞くだけではなく、実体験がともなうと、理論的な話について理解の深さが段違いなんですよね。みんなで自然のなかで食べるパエリアは絶品でしたしね。でも、それにとどまらない時間を経験しました。

 

「学ぶ」ということは、知識を増やすことではなく、行動パターンが変化すること。頭だけで理解するにとどまらず、行動まで変わるには、身体が関わる学習、つまり体験学習がおおいに有効です。そこに、反復学習することも欠かせませんが。  

■「教える/教わる」関係が解消されると、積極性がアップする

 

「学習」と聞くと、堅苦しいものを思い浮かべる人もいるかもしれないのですが、「共同学習」や「体験学習」は、実際、すごく楽しいものです。多様な立場の人たちが集まると、自分の目の前で面白いことが起きますから。先月、それを「実感」する機会がありました。

 

神田藍の会とのプロジェクト事例『事例:神田藍プロジェクト 〜ソーシャル・キャピタルを育む藍とデジタル』も合わせてご覧ください。
https://www.dunksoft.com/message/case-kanda-ai 

本社のある東京・神田のコミュニティ活性化のために参加している神田藍の会で、小学生といっしょに、藍の生葉染めを体験しました。そこに集まったのは、1年生から6年生までのお子さんとその親御さん、そしてボランティアでサポートしてくれる大学生や私たちのような年長者まで。幅広い世代が集いました。

 

参加した小学生も大学生スタッフも、親御さんも、藍染めは初めて。でも、藍の会メンバーは「教える」ということはしません。楽しく説明をした後は、ただ見守って、失敗することも含めて、あれこれと挑戦してもらう場でした。

 

すると、子どもたちがとても楽しそうにしているんですね。子どもたちは、まわりの参加者やスタッフたちとどうやったらいいのか、話し合って進めていきます。藍染めは、染めの回数が増えるほどに色が濃くなります。1回だけ染めると、美しいエメラルド・グリーンの色が一瞬出ます。私がよく染める時には、染めは1回にとどめて、あとは色を止める作業をして、水色のハンカチをつくります。

 

けれど、小学生たちは、染めの回数をどんどん重ねていきました。「もっと染めたらどうなるんだろう」と、好奇心に突き動かされているようでした。しつこく回数を重ねた子どもは、ジャパン・ブルーといわれる藍色に近い色にまで染め上げていました。そこまでやるのか、というほどの、のめり込みっぷりでした。

 

「学習」というと「教育」(教えること)の一部だと思われていますが、そうじゃないんですね。「教える/教わる」という関係をなくし、みんなが積極的に学びあえるようにすると、ここまで楽しい学びの場ができるのかと感激しましたね。事後アンケートでは、ほぼ100%が「とってもおもしろかった」「またやってみたい!」という回答でした。  

■グループで熱心に協働する、ハイレベルな高校生

 

最近の若い人たちは優秀です。変化・進化するのがあたりまえ、と考えているように見えます。とても素直ですし、学んだことをぐんぐん吸収する力もあります。阿南高専を卒業して新卒で入社したスタッフたちは、最近も、どんどん資格を取りにいって、自律的に学びを進めています。

 

先日、ID学園高等学校の生徒さんを対象にしたインターンシップ・プログラムを実施しました。「WeARee!(ウィアリー!)」というソフトウエアを使って、デジタルを活かした地域のスタンプラリーを作ってもらいました。これも体験学習ですね。

 

生徒さんたちはグループであれこれ話し合いながら、よりよいものを作ろうと一生懸命でした。その純粋な積極性がすばらしいと感じましたし、ダンクソフトのスタッフも、高校生のレベルの高さに驚いていました。チーム単位で熱心に協働する姿は、トルコやフランスなど海外出身のスタッフもびっくりするほどでした。  

■インターネット時代に必須の「リバース・メンタリング」

 

いまの若い世代は、デジタル・ネイティブです。彼らはインターネットを使って、どんどん自発的・自律的に学んでいます。

 

インターネットは、「知と人」のあり方を変えましたよね。これまで専門家しか知らなかったような情報に、誰でもアクセスできるようになったからです。かなりの部分において、知りたいことを自分で取りに行くことができる時代になりました。

 

そうなると、かつてのように、先生と呼ばれる物知りが、何も知らない生徒に上から「教えてあげる」という構図はもう成り立たないわけです。むしろ、ネット世代の若い人たちから学ぶ「リバース・メンタリング」で、ともに学んでいくスタンスが大事だと思います。

 

ただ、いくらインターネットに情報があるといっても完全ではありませんから、年長者が積み上げてきた経験も意味のあるものです。しかし、大事なのは、年上/年下、上司/部下などの上下関係をなくして、多様なバックグラウンドをもつ人たちがフラットに、インタラクティブに学びあうということです。

 

ダンクソフトでは、できるだけそういう環境を生み出すことを目指しています。そのために、様々な工夫もしています。たとえば、私とスタッフの皆さんが対話する機会を、定期的につくってきました。また、誰もが自由に発言できるよう、年齢や役職に関係なく、お互いに「さん付け」で呼びあうよう推奨しています。  

■「時速80kmは遅すぎる」:ヨーロッパ旅行で体感した変化

 

インターネットの発展によって、多くの人たちが学びを深められるようになりました。これまで語ってきたように、使えるツールや環境が変わると、人の能力が引き出されていきます。 

1998年、ヨーロッパへ旅行したときのことです。ドイツの高速道路、アウトバーンを走りました。そこは制限速度がありません。時速300kmで走る車もいるほどです。旅行中、私は時速160kmで走りました。相当な速度です。でも、周りの車もそれくらいで走行しているからでしょう、とくに恐怖を感じることもありませんでした。

 

驚いたのは、帰国したときです。成田に降り立って家に向かうとき、高速道路を時速80kmで走りました。これがあまりにも遅く感じたのです。止まっているのと同じじゃないかと思ったほどでした。

 

このとき私は、ドイツの「アウトバーン」を経験して、自分のポテンシャルがぐんと引き出されたんだなと感じたものでした。道具や環境が変わると、人はそれに対応・適応しようとすることによって潜在能力が引き出されるようなのです。  

■“アウトバーン”が、人の未知なるポテンシャルを引き出す

 

私たちはふだんからパソコンやスマホなどを使いますよね。デジタルも、さきほどお話ししたように、40年で1億倍も性能がよくなっています。新しいデバイスを使うと、もう昔のものには戻れませんよね。私たちの判断力や反応速度が、性能の高いデバイスによって、知らず知らず引き上げられているからです。

 

最近では、パソコンだけでなく、同時にスマホやタブレットも使うなど、マルチ・デバイス化も進んでいますから、並行処理する力も自然と身についています。デジタル・ツールによって、私たちのポテンシャルを引き出してもらっているわけです。

 

ですから、ダンクソフトでは、できるだけ最新のパソコンやモニターなどのデジタル環境を導入することにしています。最新型の環境を整えることで、ワークプレイスに“アウトバーン状態” をつくっています。学習のスピードもアウトプットの質も、格段に変わりますよ。 

■ダンクソフトという「学習する組織」

 

いま、いろいろなデバイスがインターネットに接続される時代になりました。そうすると、インターネット上で、国境を超えた多様な人たちと出会えますよね。国も違う、文化も違う、まったく異なる環境で育った人同士が出会い、ともに学びあうと、成長の仕方も大きく変わります。

 

ひとりで学ぶだけでなく、インターネットを使って様々な人たちとチームを組み、コ・ラーニングすること。これができれば、一人ひとりの能力はますます伸びていくでしょう。

 

スタッフにとっても、ふだんから関わってくださるお客様やパートナーにとっても、ダンクソフトとの関わりを持てば、「自ずとコ・ラーニングできる」し、ともにバージョン・アップ、グレード・アップができるような会社になっていきたいと考えています。ダンクソフトは「学習する組織」。50周年にむけて、アウトバーンをばんばんつくっていきます。「時速80km企業」で満足しないために、日々、楽しい「学びあい」を続けていきましょう!