事例:「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に

お客様:はなまる学童クラブ 様

はなまる学童クラブは、沖縄県石垣市にある宮良地域初の放課後学童クラブだ。2020年春、学童立ち上げにあたり、ダンクソフトの支援でkintoneを使った「学童保育サポートシステム」を開発・導入した。実はスタッフのほとんどがタブレットとスマホのみで暮らしている、デジタル活用とは程遠い環境にいた。それが、勤怠管理から児童情報の共有、経理書類作成などをスマホのアプリで楽に運用できるようになり、学童業務の効率化を実現。捻出できた費用や時間は、児童一人ひとりの個性が尊重され、可能性を引き出せる理想の学童づくりのために、活かされている。

 

■東京から2000キロのアナログ地域ではじまった、子供たちの居場所づくり

 

「学童設立のきっかけは、70代のある女性でした」と語るのは、はなまる学童クラブ立ち上げメンバーの一人で、運営者である松原かい氏だ。「かつえばぁば」の愛称で親しまれるかつえ氏は、中学校教員を引退後、民生委員として地域を長年見守っている。

 

当時、宮良地域には放課後学童クラブはなく、子どもたちが学校内で遊べるのは4時半まで。かつえ氏は、地域で行き場のない子供たちの姿を見るにつけ、「放課後も児童が安心して過ごせる場所が不可欠だ」と、学童づくりの必要性を感じていた。

 

はなまる学童クラブの松原かい氏(右)

3児の母でもある松原氏は、本職であるフリー・アナウンサー業のかたわら、石垣市で唯一の児童館設立に携わるなど、これまでも子育て支援に情熱を注いできた。同じ宮良地区に住むこの2人が村の読み聞かせボランティア・サークルで出会い、地域内に学童クラブの設立を目指して数名のメンバーとともに活動を始めることになった。それは2019年8月、オープンからわずか半年前のことだった。そこから猛スピードで動きはじめ、地域の親御さんたちのニーズや要望をリサーチし、対話を重ねた。その後、2020年3月末、ついに市から地域での必要性を認められ、石垣市教育委員会、宮良小学校、はなまる学童クラブの三者が正式に協定を結んだのだ。

  

■アナログ人間が「学童保育サポートシステム」の導入に踏みきったわけ

 

はなまる学童クラブのスタッフ

大急ぎで設立準備を進めていた矢先、コロナの影響により、始業式つまり学童開所日の前日に、しばらくの学校休校が知らされる。これに伴い、急遽、放課後だけでなく丸1日学童をオープンすることとなり、倍のスタッフ人数が必要となった。そんな中での一番の課題が、勤怠管理をはじめとする運営管理の仕組みづくりだった。松原氏によれば、知る限りでは宮良地域ではパソコンがそれほど普及していないようだ。現に、かつえ氏はそろばんを使って運営費を試算していたほどのアナログ度合である。スタッフや保護者も例外ではなく、アナログ環境で暮らしている。

 

そんな折に松原氏が紹介を受けたのが、東京にあるダンクソフトだった。松原氏は、ダンクソフトはデジタルがうとい方でも頼りになる存在だと聞き、まずは急務だったスタッフのシフトづくりから相談を始めた。初めてのZoom会議にはタブレットを使って接続し、テクノロジーに驚きながらも、困りごとをいちから相談していった。手厚いヒアリングを経て提案されたのが、kintoneによる「学童保育サポートシステム」だった。そして、協働プロセスが始まった。パソコンを使わずにも、スマホやタブレットであらゆる記録・管理・情報共有ができるように、ダンクソフトが伴走しながらシステムをつくりあげていく。

 

当初はデジタルに半信半疑だったという松原氏にとって、担当者であるダンクソフト 中香織の存在が大きかったという。「2児の親でもあり、学童を利用したことがある働くお母さんであるなど、中さんとは共通点が多く、深くしゃべらなくてもお互い頑張っているのだという信頼感がありました」と、松原氏は笑顔で話す。「デジタルが分からない人にとって、まず導入した際の効果の想像がつきません。何ができるのかについて想像が及ばないので、それを導入したらいいのかどうか判断がつきません。お話をする前は市販のシフト表アプリを使おうかと考えていましたが、中さんを頼りに、やってみようと思えました」。

  

■初心者にも使いやすいアプリで、業務が効率化、スタッフ間連携もスムーズに

 

「学童保育サポートシステム」の主な内容は、スタッフの「勤怠管理」や児童情報を記録する「児童日報」、「出席簿」、市に毎月提出する「収支報告書」や「保育料管理帳」「給与台帳」などだ。

 

入力に不備があると、赤字でエラーメッセージが出るようになっている

ヒアリングを踏まえて中が重視したのは、デジタルに不慣れな方でも利用できるユーザー・インターフェイスである。例えば、入力に不備があると、赤字でどうすればいいか表示を出したり、不足がある場合は保存ができないようにしたりなど工夫した。kintoneのノウハウをいかしつつ、「初心者でもわかる、利用者視点のシステムづくり」を徹底した。実際に、今では10名のスタッフ全員がkintoneを使って業務連携を行っている。

 

お話をうかがった、はなまる学童クラブの仲間 巳賀 氏(左)と中藤 詩織 氏(右)

スタッフのひとりである仲間 巳賀(みか)氏は、自身の子育てがひと段落した後、地域の子供たちのために活動したいと、はなまる学童クラブに参加した。kintoneアプリの使い方を覚えるには、それほど時間がかからなかったという。「出欠簿や児童日報など、あらゆる記録がスマホでできるので助かっています。場所や時間を問わず利用できてありがたい」と、kintoneを評価する。また、「入力した情報をスタッフみんなで共有できることも魅力のひとつ。週に数回現場に入るスタッフにも、不在時に起ったことを伝達できるので」と、スタッフ間連携を重視するうえでのアプリの活躍を語った。

 

スマホで簡単に入力

また、同じくスタッフの中藤 詩織氏は、パソコン以外の端末で利用できるメリットを強調する。「以前勤めていた学童では、子どもたち全員の情報を数台のパソコンのみで入力・管理していました。そのため学童の施設内にいるときにしか記録ができず、入力待ちの列ができて業務に滞りがでたり、残業が発生したりすることもありました。はなまる学童では、kintoneの仕組みがあるので、時間を問わず、複数人が自分のスマホから同時に、どこにいても入力できることが魅力です。また、手書きで書類をつくるときの書き損じが発生することもありません。業務の進み具合が全然違います」。

 

「中さんは私のような“できない人”の声に耳を傾け、困りどころに新しい機能を一つひとつ追加してくださいました。こうしたきめ細やかなコミュニケーションを積み重ねるうちに、ダンクソフトさんへの安心感が自然とうまれてきました」と、松原氏は今までのプロセスを振り返る。

  

■行政への書類報告も、学童アプリがすべて解決

 

保育料を管理するページ

はなまる学童クラブが絶賛するのが、石垣市へ毎月提出する書類手続きの効率化だ。「保育料」にまつわる業務を例にとると、学童の利用料金体系は多岐にわたる。「ひとり親割引」「兄弟姉妹割引」「2つの割引の併用」などがあり、児童一人ひとりの利用料は異なる。そのため、手動では計算が煩雑になっていた。

 

今では、kintoneに基本情報さえ入力しておけば、各自の利用料が正確に算出できるようになっている。さらにそれらの情報が、石垣市へ毎月提出する書類のひとつである収支集計にも、自動で反映される。市が指定する書類に合わせて、中がkintoneをカスタマイズしたことが功を奏した。

 

松原氏は、「毎月の石垣市への書類提出は相当大きな負担になりますが、日々入力した情報がほぼそのまま提出できるフォーマットになっていて助かっています。市の担当者さんからも、書類の正確さや明確さを評価いただけています」と、業務の効率化の恩恵を痛感している。

  

■効率化で生まれたリソースを有効活用し、子供の可能性をひらく学童づくりへ

 

このようにスタッフ一人ひとりが自分で操作し、情報をいつでもどこでも入力できるようになったことが、業務の効率化に大きく寄与。そこからうまれた時間や費用は、今、様々に活用されている。その筆頭は、はなまる学童クラブが何より大切にしている、児童へのケアの充実である。

 

出席簿・児童日報のページ

仲間氏は、これまではどうしても低学年やサポートを必要とする児童に付きっきりになりがちだったが、日々の業務の効率化によって、より多くの時間を子どもたち一人ひとりに充てることができるようになったと語る。また、児童日報をはじめとするスタッフ間での情報共有によって、週1回・月1回勤務のスタッフが、学童にいなくても子どもたちの最新状況を把握できるようになった。これが、より手厚い児童のケアにつながっている。

 

さらに、保護者とのコミュニケーションも改善した。中藤氏によると、過去に勤務した学童では、保護者から「学童の中で子どもがどのように過ごしているのかわからない」という声が多く届いたという。はなまる学童クラブでは、kintoneによる学童アプリでのスタッフ同士の情報共有に加え、グループLINEで保護者とのコミュニケーションをとっている。子供たちの活動写真を共有したり、こまめに連絡ができる環境を用意した。また送迎時には、アナログでの会話を大切にすることで、対面での親御さんとの関係も少しずつあたたまっていると、中藤氏は顔をほころばせる。

 

はなまる学童クラブを支えるスタッフ

スタッフへ還元もできていると、松原氏はシステム導入の効果を実感している。多くの学童では、運営者とは別に、煩雑になる管理業務のために事務員を雇うことが必要だ。しかし、はなまる学童クラブは、kintoneがあるため、事務員を雇わずに、本来事務員が担うはずの業務一切を松原氏が引き受けることができている。事務員分の人件費を、今いるスタッフに還元することで、島の学童水準よりプラスαの時給を実現できているという。「パソコンがない私ひとりで事務員分の仕事ができるのも、kintoneアプリがあるからこそ。スタッフも『超ホワイト企業!』と喜んでくれています。学童の子供たちが、毎日すてきに働く女性スタッフたちの姿を見て、女の子も男の子も、女性が働くことはすばらしいことだと思ってくれたら……」。そう語る松原氏は、子供たちが未来を担う頃には島にも男女共同参画社会が実現しているようにと、島の未来へ思いをはせる。

  

■学童アプリでひろがる事業運営の可能性と子供たちの未来

 

タブレットでも簡単に、児童の様子を入力できる

ゼロからのkintone導入の効果は、はなまる学童クラブから他の学童へも波及している。隣村で新たに開所された放課後学童クラブでは、やはりダンクソフトのシステムが選ばれた。学童クラブ運営者が、はなまる学童クラブの元副主任であり、アプリの便利さを肌で感じていたことが採用の決め手だったという。

 

また、中は自らの学童利用経験から、今後は保護者や学校も含めたkintoneの利用を視野に入れている。「私が利用していた学童で、親が翌月の予定を紙で提出し、スタッフが手間をかけてそれらをパソコンに入力している現場を目の当たりにしました。ここもデジタルを活用することで、スタッフのシフトと同じように、リアルタイムで児童のスケジュールを共有できるようになります」。ほかにも、学校と学童で2度行われている児童の検温情報も、学校の理解が得られれば共有することがシステム上は可能だ。デジタルを活用することで、今までにない学校や保護者、地域との連携の可能性が、まだまだ眠っている。

 

「いよいよ石垣の小学校でも、一人1台のタブレットを利用した授業が始まります。これからもダンクソフトさんからデジタル面の支援を受けながら、デジタルをうまく使っていきたい。はなまる学童クラブが保護者にとって安心して子供を通わせられる学童に、また子供たちにとって可能性を伸ばせるよりよい居場所となれるように、活動していきます」と、松原氏はこれからの熱意を語った。

 

はなまる学童クラブでは、すでに来年度の入所希望も出てくるなど、保護者や地域からの反響もあるそうだ。学童支援システムとともに始まった学童運営も、4月からは3年目に入る。児童たちが楽しく生き生きと過ごせる学童クラブが、実現できつつあるようだ。


■導入テクノロジー

kintone

kintone学童保育サポートシステム

※詳細はこちらをご覧ください。https://www.dunksoft.com/kintone/gakudo

 

■ はなまる学童クラブ(放課後児童クラブ @宮良小学校 家庭科室)とは

 石垣市の宮良地域初の放課後学童クラブ。2021年10月現在、小学校全校生徒100名強のうち、23家庭・27名の児童が利用している。児童一人ひとりや保護者や地域とのコミュニケーションを重視した安心・安全な居場所づくりを心がけている。目指すは子どもたちにとっての「第2のおうち」。

 

https://www.dunksoft.com/hanamaru/200617 (はなまる学童レポートURL)