「 デジタル・テクノロジー 」を有効に活かすには、「 デジタル・テクノロジー 」だけにとらわれてはならない

■「その先」を見る

 人生100年時代、そしてAI時代が到来しています。自分たちが何を提供するのか、していくのか、個人も組織もいよいよよく考えなければなりません。

  社会においてもビジネスにおいても、「変わらないもの」と「変わっていかなければならないもの」の2つがあります。何が変わらずに残り続ける普遍で何が動くべきなのか、そこに発見的になり、広く深くやわらかく見ることが大切です。

  一般にシステム開発やウェブ・サービスを提供する場合、コンピュータ側の視点だけで考えていると、どうしてもプログラムやデザインに意識が向かいやすく、クライアント企業のあり方や価値観への探究が不足しがちです。

  私たちがプロジェクトで扱うのは、製品情報、ユーザー情報などの企業が持つ情報です。その情報を生かし、作業を身軽にし、人をより豊かにするものにするために、デジタル・テクノロジーを使う。私たちはデジタル・テクノロジーを突きつめると同時に、情報についても突きつめていくべきです。

 企業であれば、その企業が持っている情報をとことん突きつめていく。企業情報を突きつめるということは、その企業が提供しているサービスが何なのかを考えることです。どれだけクライアントの仕事を理解できるか。さらに言えば、その先を見ること。時代とともに、お客様のビジネスも変わっていきますから、そこを見る。

 そうでないと、デジタル・テクノロジーの本当の価値もわかりません。技術やサービスは年月とともに変わっていきます。今現在だけでなく、この先、さらにもっと先を広く見渡して、それを見越して提案していくことが大事です。私がこの業界で30数年以上にわたって一線で仕事ができている理由のひとつは、おそらくそういうところだと思います。

 

■ちょっとずつ良くしていこう

 最近の傾向として、オンサイトでの業務をご要望いただくことが増えています。IT業界で「オンサイト」といえば、「お客様のそばでデザインやエンジニアリングを行う」というほどの意味で使われます。一般的にはクライアントからのオーダー通りに行うのが業務委託/受託だとは思いますが、ダンクソフトの場合、一般的なオンサイトとはとらえ方が少し異なります。

 私たちは依頼内容自体をよく吟味して、お客様の本当の願いはどういうところにあるのか、何に困っておられるのかを、「対話」を通して見極めます。そして、お客様やお客様のお客様、あるいはその周囲に、より効果のある、インパクトのある、あるいはよりシンプルなソリューションを提供することを提案、実行するように活動しています。

  もともと何かしら提案をしながらより面白いもの、良いもの、便利なものをつくる、いわば「はじまりをつくる」のが当社の特徴で、いわゆる「オンサイト」であってもそのスタンスは変わりません。なにか新しいものを入れて結果がでれば、その次に、また一段上のステップに向かって課題が出てきます。そこを一緒になってつくり続けられるのが望ましいと考えています。

  年頭所感で「2019年をインターミディエイター元年に」というメッセージを掲げました。「インターミディエイター」とは「あいだ」をつなぎ、それぞれの価値を生かす関係の結節点となる役割です。ダンクソフトのオンサイト・サービスは、人と情報と技術のインターミディエイターとなって、デジタル・テクノロジーで日々の業務にインクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)を重ねていく、ダンクソフトならではのサービスです。

  デジタル・テクノロジーでお客様の困りごとに寄り添う。そして、対話の中から、よりよいものを一緒につくり、育てていける環境をつくる。そのため、極論をいえばプログラムをさわらないこともあります。ちょっとしたアドバイスひとつで大きく変わる場合もあるのです。

  デジタル・テクノロジーの考え方の基本にあるのが「同じことを2度3度と繰り返さない」ということです。インテグリティ(整合性)といって、システムのロバストネス(堅牢性)にとって非常に重要な考え方です。デジタルの世界では、例えば、カーボン複写を基本とする紙の伝票とは、情報を扱うルールの考え方が根本的に違うわけです。ですから、デジタル・テクノロジーを導入するときに、紙のルールを持ち込まないことは大切です。

  そうした基本のコツのようなものがつかめれば、ちょっとしたアイデアで業務がうんと楽になるということはよくあります。作業的にも心理的にも小さな負荷で、日々の業務のやりかたが少しずつアップデートできていく。徐々に身軽に快適になる。「インクリメンタル(漸進的)なイノベーション」ということです。

  それから、先述のとおり企業が扱う情報は、突きつめて考えればその企業のサービスや製品そのものの姿を映しています。本当に核になる部分はそうそう変わらない。情報の形、いわゆるマスター情報は変わらないのです。現にダンクソフトの長年の取引先のなかには、データベースの形が20年や25年にわたって変わっていない会社もあります。

  OSがセキュリティの要請でバージョンアップするとプログラムを書き換える必要はありますが、最初に情報を入れるハコをきちんと作ってさえおけば、マスター情報はそのまま引き継げます。あとは、年数が経つとどうしても劣化する部分もあるので、メンテナンスやケアを続けていけば、業務も情報も、シンプルに風通しよく保てます。

  

■ゆるくしておこう

 私の基本的な姿勢は、まずどれだけシンプルにできるか、何が省けるかということ。それと、できるだけ広く大きく考えておくこと。私はこれを「ゆるくしておく」とよく言うのですが、課題を見るときに、いまどうなっているのかを最大限にとらえ、余地、余白、遊びをもっておく。そうすることで、状況の変化や不測の事態にも対応しやすく、柔軟でいられます。新たな可能性、社会の変化の兆しにも機敏に動けます。

  これからはこうしたオンサイト・サービスを遠隔地から行うことが増えていくでしょう。いまちょうど、ある外資系クライアントでそういう取り組みが始まっています。システム自体は遠隔地のサテライト拠点で構築し、全国80の営業拠点にシステムのデリバリーをしていきます。

  現在のところ便宜上「オンサイト」と呼んでいますが、物理的に同じ場所にいなくてもできることが増えています。お客様もわれわれもいろんなところにいて、一緒に仕事ができる。それができるとお客様にもより便利になります。どういう業界・仕事であっても働き方を変えていかなければならない時代の要請に応えるものでもあります。

  また、少し見方を変えれば、これから企業と地域や社会との関わりがますます増え、重要になっていくでしょう。そういう視点をもって、「お客様と社会」への提案も出てくる可能性があります。プレイヤーが多様になっています。地域の課題も企業の課題も生活者や働き方の課題も、大きい視点で見ると解決しやすくなっている。その一部にデジタル・テクノロジーが使えると便利ですよ、ということなのです。

  オンサイトもテレワークもサテライト・オフィスも、要はもっと省けるところは省き、その分をよりクリエイティブになるための時間に費やしていくために有効です。でも、ただ効率化そのものが目的になってしまっては本末転倒です。何のための効率化か? そこが大切です。いろいろな地域でこうした動きに関われる人が増えていくイメージを拡げていきたいと考えています。

2019年 年頭所感

2019年をインターミディエイター元年に

新年あけましておめでとうございます。

 昨年は、ウェブチームの活躍、地方展開、クラウド・サポート推進などのハイライトが光る一年でした。一方、オフィスでの雨漏りからの業績鈍化、長年勤務した社員の離脱もありました。しかし、やはりピンチはチャンスでした。その後、採用活動は好転し、新たな優れたスタッフの参加にも恵まれました。そして、2019年5月には本社を移転します。よりよいDUNKSOFTへのチャレンジの機は、いままさに到来しています。

 元来、DUNKSOFTは、デジタルではじまりをつくる、「Digital Re-Creation(リ・クリエーション:再創造)」の未来を描くことに長年携わってきました。“デジタル・テクノロジー”を駆使して、人のポテンシャルを引き出す。コンピュータと人間と社会の“インターミディエイター”となって、ビジネスと暮らしを「楽」にする。“インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)”で、失敗も含めて小さな変革を積み重ね、新しい価値観をつくる。それを36年間続けてきました。この役割は、さらに進化しながら新たなステージに向かっていくでしょう。そういう流れが、いま、来ています。

 「インターミディエイター」とは、いろいろな人、モノ、地域などの「あいだ」に入り、それぞれの価値を見出し、次の新しい展開をつくる存在です。皆を牽引するリーダーではなく、関係の結節点を担う、「あいだ」を結ぶ役割です。目立たないけれど欠かせない、システムのかなめです。DUNKSOFTの風土で育くまれてきたこうした価値が、これからさらに評価される時代が来ています。

 2019年は、2020年東京オリンピックを目前に、さまざまな動きが加速します。なかでも喫緊の課題が、ハードとソフトの双方を含めたデジタル・テクノロジーの有効活用とその環境整備です。

 そうしたなか、DUNKSOFTの2019年は、地方も都市も含めて、助け合い、共に学び合う「Co-Learning」の環境づくりをしながら、パートナーや社員を増やし、より自在な働き方によって、未来への挑戦を推進する一年になります。

 少子高齢化は日本全体の課題ですが、東京など首都圏と地方では課題のあらわれかたが異なります。東京は人が足りない。地方は働き方の選択肢が少ない。私たちのサテライト・オフィス展開は、そうした相互のニーズをマッチングさせる取り組みとして徳島から始まり、他の地域にも拡がっています。地域活性化対策としての移住が注目されていますが、移住では競争が生じ、人の奪い合いになります。それは幸福ではありません。さまざまな地域にいる人たちが、DUNKSOFTとの出会いで、生まれたところでそのまま働ける。コミュニティーもできる。そういう生き方、働き方ができる。選択肢を広げ、人がより自由になれるしくみづくりが、サテライト・オフィスのひとつの意義です。場所は私たちが選んでいるのではなく運ばれてくるご縁を大切にしており、そういう意味では時代の風に乗っているとも言えるでしょうか。今年は中四国地方に複数拠点を展開していく見通しです。

 また、2019年は、子どもたちに私たちの働き方を見てもらう機会を増やしていきます。昨年おこなった遠隔イベントでは、高知の漁村とオンラインでつなぎ、中学生14名、そして先生たちに、デジタル・テクノロジーがもたらす未来を体感していただきました。これからの働き方は、もっと自由で流動的になっていきます。制約や束縛から解放されていきます。ただ、過疎地に限らず実際にはそれを体験したことのない大人がほとんどです。柔軟な働き方モデルの提示によって、子どもたちの将来の選択肢を増やし、子どもが未来を楽しみに思う社会になってほしい。そして、大人もその姿から学び、新しい環境をつくってほしい。DUNKSOFTとしても、もっとコミュニティー的なあり方に向かっていきたい。「CompanyからCommunityへ」ということを考えています。これからの時代に備えて、多様な人材を確保・連携しながら、新しいビジネスを共に学び、成果を出す風土とともに、カリキュラムも整備された次の組織形態に変化していくきっかけの年にできればと考えます。

 もうひとつ、今年、力を入れていきたい取り組みのひとつが「ご当地銘柄ファンド」です。たとえば環境保全やゴミ減量など、地域課題や社会課題の改善につながる地元企業を、地元の人びとに紹介する。地元に関係する方々が、共感する会社をファンドでサポートする。それによって企業の業績が上がり、地域内で、お金や価値観やつながりの循環が生まれます。子どもたちが地元企業をインタビューして紹介し、地域のライターやプログラミングができる人たちが関わってポータルをつくってもよいでしょう。「ご当地銘柄ファンド」は、投資を媒介とするローカルメディア機能を担っていきます。

 2020年に向けて、キャッシュレスが急速に進み、お金の流通はますます高速になります。それと並行して、贈与(gift)や互酬性(reciprocity)といった数字にあらわれない価値交換が活性化していくでしょう。「ご当地銘柄ファンド」では、目に見えて動くものはお金ですが、交換されるのはそれだけではありません。情報が交換され、アイデアが交換されます。「ご当地銘柄ファンド」が媒介となり、地域の関係が活性化され、より活発なコミュニケーションが起こっていきます。私たちが今まで培ってきたウェブ・テクノロジーの知見、地域で担ってきたインターミディエイターの経験を活かして、ケースをつくり、多地域展開していきたいと考えています。

 物質的価値よりも経験価値が重視される時代です。デジタル・テクノロジーではじまりをつくる「Digital Re-Creation」の未来を、DUNKSOFT自らが実現していく2019年にしたいと思います。

 本年が日本と世界の皆さんにとって、さらなる「Re-Creation」の一年となることを祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

株式会社ダンクソフト
代表取締役 星野 晃一郎