ダンクソフトの「インクリメンタル・イノベーション」が進む理由

■「人」から始まる。
─インクリメンタル・イノベーションの実際(1)─

 「その人」だからできることが、誰にもあります。ダンクソフトはデジタルで「はじまり」をつくる会社ですが、始めるのは「人」です。というよりも、「人」でしか始まらないと言ってもいいでしょう。

 たとえば、当社の開発チームに、竹内祐介というメンバーがいます。開発チームは文字通りシステム開発を担当するチームです。竹内は、もともとはプログラミングが本務です。ところが、お客様へ製品・サービスのサポートを行っているうちに、お客様との信頼関係が深くなり、やがて窓口的にお客様と対話をする役割を担い、さまざまな側面でお客様とのパートナーシップが生まれていきました。

 竹内は徳島在住で、徳島サテライト・オフィスで仕事をしています。彼が担当するクライアントのひとつに、徳島合同証券株式会社様があります。地元徳島のお客様を中心に、一緒に生きていくことを理念とし、日本株だけを対面で扱う、地域密着の証券会社です。ペーパーレス化の取り組みをご支援したのが、最初のプロジェクトでした。

 7トンもの紙類があふれるオフィスから、3.5トンを廃棄しました。ペーパーレスにして、きれいにすることで、社員の皆さんの意識が変わることを実感されたようです。オフィス環境が社員のマインドを刺激し、新しいマインドが結果を生み出します。年間700万円のコスト削減にも成功されました。そこからさらに、次はクラウドでのファイル共有、次はデジタル環境の整備……というように、デジタル・テクノロジーの活用によるオフィス改革が次々と進み、それにつれて業績も伸びていきました。これは、少しずつ、持続的に進める「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」の好例と言えるでしょう。

 関わりが深まるなかで、竹内がご支援する内容も幅が広がり、社内セミナーのご依頼をいただくようになりました。『クラウド環境でのファイルの使い方』に始まり、『情報セキュリティー』、『プライバシー・マーク』から『BCP(事業継続計画)』まで、竹内は、デジタル・テクノロジーに関する、さまざまなセミナーで講師をつとめるようになりました。徳島県内や四国地域へのご縁が広がり、ビジネス・パーソンを対象としたもののみならず、地元の阿南高等専門学校で授業を受け持つようになりました。OSとプログラミング言語についての授業を、2018年から担当しています。

 このような広がりは、ダンクソフトの製品やサービスがあるからだけでは起こりません。まわりの方々と関わり合うなかで、竹内という人間の可能性やチャームが、新たな活躍の領域をひらいたのだと言えます。一人ひとりが複数のポジションを担うことができる「ポリバレントなプレイヤー」をつねに目指す、ダンクソフトならではの活躍の仕方でもあります。

 徳島合同証券 様は、今では「うちのIT顧問はダンクソフトだ」とおっしゃってくださるようになりました。ペーパーレス化やデジタル・テクノロジーを活かした取り組み等が認められ、同社[A1] は「倫理的消費(エシカル消費)」普及・啓発活動」実践企業の事例として、消費者庁のウェブサイトに掲載されています。また年頭所感でお話しした、ご当地銘柄ファンドの取り組みを、徳島合同証券 様と一緒に進めています。[A2] 

 

■大手術をしなくても、現状は変えられる
─インクリメンタル・イノベーションの実際(2)─

 竹内のいる開発チームで開発した製品のひとつに「日報かんり」があります。社内のプロジェクト管理や商品管理と連動して、原価管理ができるしくみです。もとは25年以上前に、お客様のニーズから開発したシステムでした。その後、ダンクソフト社内でも実際に使いはじめました。IT業界では、製品を自分たちで使いながら、改良を重ねていく文化があります。というのも、やはり自分たちで使うと理解が進むもので、利点も新たな可能性も見えてきます。いまでは、こうして蓄積した実際的な知見をもとに、より使っていただきやすいものへとアップデートし、広くさまざまなお客様に提供しています。

 あるとき、「こういう機能があったらいいよね」と社員から声が上がりました。このリクエストについて、企画チームの中香織が、さっとプログラムをかいて、みんなの希望していた機能を実装してくれました。中は、開発チームではなく、企画チームのメンバーです。それが、javaScript(ジャバスクリプト)でさっと書いてくれました。

 また別の時に、神山サテライト・オフィスにいる新規事業開発チームの本橋大輔が、それまで手作業でしていた作業がシステム上でできるよう、さらに機能を追加してくれた、ということもありました。

 気づいた人が自発的にクリエイトするということは、ダンクソフト文化でもあります。ただ、このとき、前提にある「思い込み」に気づくことが大事で、気づく目を持っていることが大切です。「手作業で当たり前」「それはできないこと」など、いわば“あきらめられている部分“にこそ目を向ける。そして、気づいたらすぐにやってみることによって、人が困っているところにさっと手が届く。

「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」とは、まさにこういうことなんですね。小さなイノベーションを重ねて、少しずつ良くしていく。ちょっとしたひと手間で、「現状を変える」ことはできるのです。

 ダンクソフトでは、日々社内でこのような「インクリメンタル・イノベーション」が起きています。昨日より今日、今日より明日。チームを超えて、少しずつより良くしていこうという、文化としての「インクリメンタル・イノベーション」があります。大手術が要らないよう、日々少しずつ気をつけている、とも言えるでしょう。

 大切なのは、現状は「自分の手で変えられる」という実感をもつことです。小さなことであっても、これを続けていくことで、一人ひとりのマインドセットが変わっていく。クリエイティブな自己変容の体験です。やはり“思い込み”に気づく、“あきらめられている部分”に目を向ける、気づいたらすぐにやってみる、といったマインドセットが重要です。徳島合同証券 様もそうでしたし、ダンクソフトも、実際、意識することで少しずつ変わってきました。少しずつでいいんです。「明日に向かって歩を進めていく会社」が増え、働くこと、そして「自分の手で変えられる」ことが楽しい社会に、みんなで向かっていきたいものです。

“Smart” とは 「 3つのD 」

■ ダンクソフトは「Smart(スマート)」を提供する

 ダンクソフトでは、人びとの「Smart(スマート)」な働き方をエンパワーする製品やサービスを展開しています。また、東京本社オフィスのほかに、全国に7か所の拠点があり、これらを「スマート・オフィス」と名付けています。

では、「Smart(スマート)」とは何か。ダンクソフトが推進する「Smart(スマート)」は、「 3つのD 」で構成されています。

 「 3つのD 」とは、「Digital(デジタル)」、「Dialogue(対話)」、「 Diversity(多様性)」、のことです。日本のオフィスを、ビジネスを、人々の働き方を、もっとSmart(スマート)にするためには、これら「 3つのD 」が揃うことが大切なのです。

 まず、「Digital(デジタル)」は、私たちダンクソフトが創業以来ずっと取り組んできたことです。今年の年頭所感でも、ダンクソフトが「デジタル・テクノロジー」を重視していることをお話ししました。アナログに替わり、デジタル・テクノロジーを駆使して、働く環境を効率化する。そして、効率化によって生まれた時間を有効につかい、創造的なコト・モノ・サービスを考えだす。さらに、実験しながら精度をあげて提供しつづけることで、自ら未来を自在に創り出していく。Digitalを取り入れるのは、単なる効率化を超え、未来を「創造」していくことが真の目的です。「創造」とは、新たな はじまり をつくることです。

 そのために重要なのが、「Diversity(多様性)」と「Dialogue(対話)」です。たとえば日本、日本人といっても土地や地方や地域によって、じつにさまざまな個性があり、特長があり、ちがいがあります。多様です。ダンクソフトは徳島にサテライト・オフィスがありますが、徳島県には24種類もの方言があるのだそうです。ちょっと離れただけでニュアンスや言い回しがちがう。そして興味深いことに、言葉がちがうと、考え方や発想も少しちがう。川を隔てるとそれぞれ文化がちがうんですね。ちがいがあること自体がイノベーションの可能性です。多様であることは、とても刺激的で、新鮮です。

 ただし、ちがうもの同士が出会ってイノベーションが生まれるためには、対話が不可欠です。多様なものをそのままにしておくと、ただ単にばらばらになってしまうだけ。そこをきちんと対話でむすびます。それぞれが自分を開き、異なる価値観や他者をよく知り、多様性が混じり合って初めて、創発が起こります。それを、デジタル・テクノロジーが支え、イノベーションを加速させます。まとめると、こうなります。

  Digital(デジタル)  ×  Dialogue(対話)  ×  Diversity(多様性)  → Smart(スマート)

 これがダンクソフトの考える「Smart(スマート)」のあり方です。

■ Dialogue(対話)がチームを動かす

 ダンクソフトが提供するサービスのなかで、ウェブデザイン・運用コンサルティングなどを担っているのが、「ウェブ・チーム」です。最近はお客様のオフィスに常駐するサービスへのご依頼も増えていて、クライアント先にいるスタッフもいます。

 ウェブサイトの構築や運用は、クライアントとの長期にわたる協働プロジェクトになります。そこで大事になるのがお客様との「Dialogue(対話)」です。20年、25年と長きにわたりサポートし続けているクライアントがいることも、対話を重視していることの表れだと感じています。私たちは、依頼内容自体をよく吟味して、お客様の本当の願いはどこにあるのか、困りごとは何なのかを、「対話」を通して見極めていきます。

先日、まさに対話効果が表れた、よいエピソードがありました。オンサイトでご支援しているクライアントの部門内で、あるプロジェクト管理ツールの使用が始まりました。もともとダンクソフト社内では、そのツールを使っていました。進捗管理、やりとりの履歴、トラブル・シューティングなどをスタッフ間で共有しており、活用経験があったのです。そこで、クライアントとダンクソフトのやり取りにも、そのツールを導入することになりました。

その際に、先行して使っていた経験を活かし、対話しながら、そのツールのよりよい使い方などをクライアントにガイドしてさしあげることができました。今では個別のメールではなく、そのツールが情報共有の標準手段となっています。両社が共有できる形で履歴が残るので、情報がオープンになり、また属人的にならずにすむため、他の方がフォローもしやすい。人事異動のサイクルが早いクライアントにとっても、引き継ぎの負担も減りますし、先達のノウハウがきちんと蓄積されていきます。バックアップやリスクヘッジにもなります。

 紙で分散したり、個々に分断されたりしていた情報を、デジタルで共有してオープンにする。新しいツールや環境は、人や組織にも自然な変化を促してくれます。ダンクソフトの「ウェブ・チーム」は、クライアントとの対話を通じて、デジタル・コミュニケーションやスマート文化の橋渡しもしています。

■ Diversity(多様性)が豊かさをもたらす

 Diversity、人の多様性は「ウェブ・チーム」だけでなく、ダンクソフトの特長です。個性、特徴、スキル、地域、いずれも多様です。サテライト・オフィスのメンバーもいれば、エンジニア出身の人もおり、また他部門との行き来もあり、多彩多芸です。ポリバレントな人材を重視しているゆえんでもあります。

 ダンクソフトでは、約15年前に就業規則を刷新した際に、統括や総務や経理といった専属部門をなくしました。クラウド化が進めば、本務以外はアウトソーシングできるとわかっていたので、あとは相互連携でカバーできるからです。実際、専属部門をなくしたことでみんなが意識的になり、かえって全体に目が届くようになりました。

 「ウェブ・チーム」のメンバーは目配りがこまやかで、人が気づかないことに気づいて、いち早く行動するんですね。黙ってオフィスを整えてくれていたり、お互いの仕事をカバーしあう風土があったり。それぞれ異なる目線で周囲をよく見ていて、気配りに敏感です。

 こうした多様な視点の、対話を通したコミュニケーションがあるので、お客様から求められた通りのものを提供するだけでなく、お客様のさらに先にいるお客様や社会を見すえて、より広く深くご提案していくことができます。これがダンクソフトのサービスの特長を生みだしています。

 ウェブは便利な一方、自分で自分を守らなければならない世界です。国であれば政府や警察がありますが、ウェブにはありません。個人情報もフェイクニュースも、つまり、出ていく情報も入ってくる情報も、自分で守る必要があります。

 ダンクソフトはお客様にデジタル・サービスを提供しながら、まず自社をスマートにするべく、15年前からペーパーレス化、デジタル化に取り組み、オープン・コミュニケーションやサテライト・オフィスを進めてきました。デジタルの先をいっているささやかな自負があります。

こうして培ったデジタルの知見をもとに、ウェブ上での安全管理や、安心して使えるプラットフォームのしくみなどをお客様にご提案していくことも、ダンクソフトの役割だと捉えています。この流れでうみだしたのが「バザールバザール」という新しいコミュニティ・ツールです。このお話は、またいつかしたいと思います。

■ Digital(デジタル)だからできることがある

 ウェブには膨大な情報がありますが、いまやスマホで見られないコンテンツは存在しないも同然です。再生できないメディアは、メディアとして機能しない。その情報は死んでしまうのです。

 また「ネット・サーフィン」と言い「ブラウザ」と言うように、ウェブで見る情報は、表面上を流れていってしまいがちです。ブラウザの元になるブラウズ(browse)は、本に漫然と目を通す、店や棚をざっと見る、冷やかして回るというような意味ですね。ですが私は、見るべき情報をちゃんと残すことも、デジタルの使命だと思うのです。大事な情報を埋もれさせてしまってはいけないと。

 もともとそう考えるようになったきっかけは、実は書籍でした。デジタルの黎明期、まだITという言葉もなくプログラミングの本なども少なかった頃は、書店の棚には骨太な情報理論の本が並んでいました。ですが、技術書やハウツー本の新刊がどんどん出るにつれ、新刊におされて古典は書棚から消え、絶版になっていきました。時代を超えて必要な、古典や良書が読めなくなってしまう。大事なことが書かれているのですから、それではいけない、残さなくちゃ、と思うんですね。

 古典や良書といえば、50歳をすぎて『論語』(孔子BC6〜5世紀)を初めて読み、大きな学びを得ました。その後、同じ中国の春秋戦国時代の思想家である莊子(孔子BC4〜3世紀)に惹かれ、最近はスピノザ(1632〜1677)を興味深く読んでいます。なんとおもしろい偉大な人が古今東西にたくさんいるものです。こうして数百年、千年、二千年を隔てて私が先達の思想に出会えるのも、本という形で情報が残っていたからです。

 さて、冒頭でも触れたとおり、「デジタル・テクノロジー」はダンクソフトの事業・サービスの柱です。デジタルなら簡単に複製でき、その瞬間にシェアできると同時にバックアップがとれる。証拠も残る。圧縮して保管することもできます。翻訳も可能。誰かが入力した情報を死蔵することなく、とことん生かすことができる。人類にとって画期的な時間の節約のしかた、物理的空間の超え方でもあるのです。

 デジタルを有効活用できれば、未来を自分の手元に引き寄せられるという手応えがあります。未来は向こうからやってくるのではない。得たものを吸収していくと、それが未来になる。これからも製品やサービスを通して、ダンクソフトの考える「スマートな未来」を実現していきたいと思っています。

「 デジタル・テクノロジー 」を有効に活かすには、「 デジタル・テクノロジー 」だけにとらわれてはならない

■「その先」を見る

 人生100年時代、そしてAI時代が到来しています。自分たちが何を提供するのか、していくのか、個人も組織もいよいよよく考えなければなりません。

  社会においてもビジネスにおいても、「変わらないもの」と「変わっていかなければならないもの」の2つがあります。何が変わらずに残り続ける普遍で何が動くべきなのか、そこに発見的になり、広く深くやわらかく見ることが大切です。

  一般にシステム開発やウェブ・サービスを提供する場合、コンピュータ側の視点だけで考えていると、どうしてもプログラムやデザインに意識が向かいやすく、クライアント企業のあり方や価値観への探究が不足しがちです。

  私たちがプロジェクトで扱うのは、製品情報、ユーザー情報などの企業が持つ情報です。その情報を生かし、作業を身軽にし、人をより豊かにするものにするために、デジタル・テクノロジーを使う。私たちはデジタル・テクノロジーを突きつめると同時に、情報についても突きつめていくべきです。

 企業であれば、その企業が持っている情報をとことん突きつめていく。企業情報を突きつめるということは、その企業が提供しているサービスが何なのかを考えることです。どれだけクライアントの仕事を理解できるか。さらに言えば、その先を見ること。時代とともに、お客様のビジネスも変わっていきますから、そこを見る。

 そうでないと、デジタル・テクノロジーの本当の価値もわかりません。技術やサービスは年月とともに変わっていきます。今現在だけでなく、この先、さらにもっと先を広く見渡して、それを見越して提案していくことが大事です。私がこの業界で30数年以上にわたって一線で仕事ができている理由のひとつは、おそらくそういうところだと思います。

 

■ちょっとずつ良くしていこう

 最近の傾向として、オンサイトでの業務をご要望いただくことが増えています。IT業界で「オンサイト」といえば、「お客様のそばでデザインやエンジニアリングを行う」というほどの意味で使われます。一般的にはクライアントからのオーダー通りに行うのが業務委託/受託だとは思いますが、ダンクソフトの場合、一般的なオンサイトとはとらえ方が少し異なります。

 私たちは依頼内容自体をよく吟味して、お客様の本当の願いはどういうところにあるのか、何に困っておられるのかを、「対話」を通して見極めます。そして、お客様やお客様のお客様、あるいはその周囲に、より効果のある、インパクトのある、あるいはよりシンプルなソリューションを提供することを提案、実行するように活動しています。

  もともと何かしら提案をしながらより面白いもの、良いもの、便利なものをつくる、いわば「はじまりをつくる」のが当社の特徴で、いわゆる「オンサイト」であってもそのスタンスは変わりません。なにか新しいものを入れて結果がでれば、その次に、また一段上のステップに向かって課題が出てきます。そこを一緒になってつくり続けられるのが望ましいと考えています。

  年頭所感で「2019年をインターミディエイター元年に」というメッセージを掲げました。「インターミディエイター」とは「あいだ」をつなぎ、それぞれの価値を生かす関係の結節点となる役割です。ダンクソフトのオンサイト・サービスは、人と情報と技術のインターミディエイターとなって、デジタル・テクノロジーで日々の業務にインクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)を重ねていく、ダンクソフトならではのサービスです。

  デジタル・テクノロジーでお客様の困りごとに寄り添う。そして、対話の中から、よりよいものを一緒につくり、育てていける環境をつくる。そのため、極論をいえばプログラムをさわらないこともあります。ちょっとしたアドバイスひとつで大きく変わる場合もあるのです。

  デジタル・テクノロジーの考え方の基本にあるのが「同じことを2度3度と繰り返さない」ということです。インテグリティ(整合性)といって、システムのロバストネス(堅牢性)にとって非常に重要な考え方です。デジタルの世界では、例えば、カーボン複写を基本とする紙の伝票とは、情報を扱うルールの考え方が根本的に違うわけです。ですから、デジタル・テクノロジーを導入するときに、紙のルールを持ち込まないことは大切です。

  そうした基本のコツのようなものがつかめれば、ちょっとしたアイデアで業務がうんと楽になるということはよくあります。作業的にも心理的にも小さな負荷で、日々の業務のやりかたが少しずつアップデートできていく。徐々に身軽に快適になる。「インクリメンタル(漸進的)なイノベーション」ということです。

  それから、先述のとおり企業が扱う情報は、突きつめて考えればその企業のサービスや製品そのものの姿を映しています。本当に核になる部分はそうそう変わらない。情報の形、いわゆるマスター情報は変わらないのです。現にダンクソフトの長年の取引先のなかには、データベースの形が20年や25年にわたって変わっていない会社もあります。

  OSがセキュリティの要請でバージョンアップするとプログラムを書き換える必要はありますが、最初に情報を入れるハコをきちんと作ってさえおけば、マスター情報はそのまま引き継げます。あとは、年数が経つとどうしても劣化する部分もあるので、メンテナンスやケアを続けていけば、業務も情報も、シンプルに風通しよく保てます。

  

■ゆるくしておこう

 私の基本的な姿勢は、まずどれだけシンプルにできるか、何が省けるかということ。それと、できるだけ広く大きく考えておくこと。私はこれを「ゆるくしておく」とよく言うのですが、課題を見るときに、いまどうなっているのかを最大限にとらえ、余地、余白、遊びをもっておく。そうすることで、状況の変化や不測の事態にも対応しやすく、柔軟でいられます。新たな可能性、社会の変化の兆しにも機敏に動けます。

  これからはこうしたオンサイト・サービスを遠隔地から行うことが増えていくでしょう。いまちょうど、ある外資系クライアントでそういう取り組みが始まっています。システム自体は遠隔地のサテライト拠点で構築し、全国80の営業拠点にシステムのデリバリーをしていきます。

  現在のところ便宜上「オンサイト」と呼んでいますが、物理的に同じ場所にいなくてもできることが増えています。お客様もわれわれもいろんなところにいて、一緒に仕事ができる。それができるとお客様にもより便利になります。どういう業界・仕事であっても働き方を変えていかなければならない時代の要請に応えるものでもあります。

  また、少し見方を変えれば、これから企業と地域や社会との関わりがますます増え、重要になっていくでしょう。そういう視点をもって、「お客様と社会」への提案も出てくる可能性があります。プレイヤーが多様になっています。地域の課題も企業の課題も生活者や働き方の課題も、大きい視点で見ると解決しやすくなっている。その一部にデジタル・テクノロジーが使えると便利ですよ、ということなのです。

  オンサイトもテレワークもサテライト・オフィスも、要はもっと省けるところは省き、その分をよりクリエイティブになるための時間に費やしていくために有効です。でも、ただ効率化そのものが目的になってしまっては本末転倒です。何のための効率化か? そこが大切です。いろいろな地域でこうした動きに関われる人が増えていくイメージを拡げていきたいと考えています。

2019年 年頭所感

2019年をインターミディエイター元年に

新年あけましておめでとうございます。

 昨年は、ウェブチームの活躍、地方展開、クラウド・サポート推進などのハイライトが光る一年でした。一方、オフィスでの雨漏りからの業績鈍化、長年勤務した社員の離脱もありました。しかし、やはりピンチはチャンスでした。その後、採用活動は好転し、新たな優れたスタッフの参加にも恵まれました。そして、2019年5月には本社を移転します。よりよいDUNKSOFTへのチャレンジの機は、いままさに到来しています。

 元来、DUNKSOFTは、デジタルではじまりをつくる、「Digital Re-Creation(リ・クリエーション:再創造)」の未来を描くことに長年携わってきました。“デジタル・テクノロジー”を駆使して、人のポテンシャルを引き出す。コンピュータと人間と社会の“インターミディエイター”となって、ビジネスと暮らしを「楽」にする。“インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)”で、失敗も含めて小さな変革を積み重ね、新しい価値観をつくる。それを36年間続けてきました。この役割は、さらに進化しながら新たなステージに向かっていくでしょう。そういう流れが、いま、来ています。

 「インターミディエイター」とは、いろいろな人、モノ、地域などの「あいだ」に入り、それぞれの価値を見出し、次の新しい展開をつくる存在です。皆を牽引するリーダーではなく、関係の結節点を担う、「あいだ」を結ぶ役割です。目立たないけれど欠かせない、システムのかなめです。DUNKSOFTの風土で育くまれてきたこうした価値が、これからさらに評価される時代が来ています。

 2019年は、2020年東京オリンピックを目前に、さまざまな動きが加速します。なかでも喫緊の課題が、ハードとソフトの双方を含めたデジタル・テクノロジーの有効活用とその環境整備です。

 そうしたなか、DUNKSOFTの2019年は、地方も都市も含めて、助け合い、共に学び合う「Co-Learning」の環境づくりをしながら、パートナーや社員を増やし、より自在な働き方によって、未来への挑戦を推進する一年になります。

 少子高齢化は日本全体の課題ですが、東京など首都圏と地方では課題のあらわれかたが異なります。東京は人が足りない。地方は働き方の選択肢が少ない。私たちのサテライト・オフィス展開は、そうした相互のニーズをマッチングさせる取り組みとして徳島から始まり、他の地域にも拡がっています。地域活性化対策としての移住が注目されていますが、移住では競争が生じ、人の奪い合いになります。それは幸福ではありません。さまざまな地域にいる人たちが、DUNKSOFTとの出会いで、生まれたところでそのまま働ける。コミュニティーもできる。そういう生き方、働き方ができる。選択肢を広げ、人がより自由になれるしくみづくりが、サテライト・オフィスのひとつの意義です。場所は私たちが選んでいるのではなく運ばれてくるご縁を大切にしており、そういう意味では時代の風に乗っているとも言えるでしょうか。今年は中四国地方に複数拠点を展開していく見通しです。

 また、2019年は、子どもたちに私たちの働き方を見てもらう機会を増やしていきます。昨年おこなった遠隔イベントでは、高知の漁村とオンラインでつなぎ、中学生14名、そして先生たちに、デジタル・テクノロジーがもたらす未来を体感していただきました。これからの働き方は、もっと自由で流動的になっていきます。制約や束縛から解放されていきます。ただ、過疎地に限らず実際にはそれを体験したことのない大人がほとんどです。柔軟な働き方モデルの提示によって、子どもたちの将来の選択肢を増やし、子どもが未来を楽しみに思う社会になってほしい。そして、大人もその姿から学び、新しい環境をつくってほしい。DUNKSOFTとしても、もっとコミュニティー的なあり方に向かっていきたい。「CompanyからCommunityへ」ということを考えています。これからの時代に備えて、多様な人材を確保・連携しながら、新しいビジネスを共に学び、成果を出す風土とともに、カリキュラムも整備された次の組織形態に変化していくきっかけの年にできればと考えます。

 もうひとつ、今年、力を入れていきたい取り組みのひとつが「ご当地銘柄ファンド」です。たとえば環境保全やゴミ減量など、地域課題や社会課題の改善につながる地元企業を、地元の人びとに紹介する。地元に関係する方々が、共感する会社をファンドでサポートする。それによって企業の業績が上がり、地域内で、お金や価値観やつながりの循環が生まれます。子どもたちが地元企業をインタビューして紹介し、地域のライターやプログラミングができる人たちが関わってポータルをつくってもよいでしょう。「ご当地銘柄ファンド」は、投資を媒介とするローカルメディア機能を担っていきます。

 2020年に向けて、キャッシュレスが急速に進み、お金の流通はますます高速になります。それと並行して、贈与(gift)や互酬性(reciprocity)といった数字にあらわれない価値交換が活性化していくでしょう。「ご当地銘柄ファンド」では、目に見えて動くものはお金ですが、交換されるのはそれだけではありません。情報が交換され、アイデアが交換されます。「ご当地銘柄ファンド」が媒介となり、地域の関係が活性化され、より活発なコミュニケーションが起こっていきます。私たちが今まで培ってきたウェブ・テクノロジーの知見、地域で担ってきたインターミディエイターの経験を活かして、ケースをつくり、多地域展開していきたいと考えています。

 物質的価値よりも経験価値が重視される時代です。デジタル・テクノロジーではじまりをつくる「Digital Re-Creation」の未来を、DUNKSOFT自らが実現していく2019年にしたいと思います。

 本年が日本と世界の皆さんにとって、さらなる「Re-Creation」の一年となることを祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

株式会社ダンクソフト
代表取締役 星野 晃一郎