ダンクソフトの進める顔の見えるコミュニティ活動 ─楽しいソーシャル・キャピタルづくり─

ダンクソフトの本社がある東京・神田は、都会的な街並みでありながら、江戸時代からの伝統を受け継ぐエリアです。今年5月には江戸三大祭りのひとつ、「神田祭」が開催され、ダンクソフトも町内会の一員として参加しました。この「神田祭」に加え、「神田藍の会」、「中央エフエム」など、地元コミュニティとともに推進する活動を、ダンクソフトは重視しています。地域コミュニティに温かい関係が生まれることで、防災にも耐えうるソーシャル・キャピタル豊かな地域ができると考えています。  



┃地元町内会のメンバーとして「神田祭」に参加 

 

すでにこのコラムでも紹介していますが、江戸三大祭りのひとつ、「神田祭(かんだまつり)」が5月に開催されました。延べ30万人以上の人が訪れ、なかには訪日外国人観光客も多く、大盛り上がりでした。 

ダンクソフトは地元の「神田須田町二丁目町会」の一員として、今年からこの神田祭に参加しています。私を含めて、5人のメンバーがお神輿を担ぎました。 

 

お祭りは5月9日(金)に始まりました。この日は、徳島オフィスからのメンバー3人、東京オフィスのメンバー1名と、高知のパートナー1名が、東京でのお客様との打ち合わせ終了後に、オフィスに立ち寄りました。その流れで、そのまま御神輿を担いでみることになりました。 

 

参加したメンバーは、ジャケットを脱いで、その代わりに、町内会オリジナルの揃いの半纏(はんてん)を羽織りました。私は、半纏に加えて下半身に纏う股引(ももひき)も新調して、本格的な出で立ちで臨みました。夜も担いだのですが、お神輿がLEDでライトアップされるなど今風の仕掛けも取り込んでいて、とても面白く楽しかったですね。 

 

なかには神輿の重さで肩がすりむけたメンバーもいて、数日はカバンを肩にかけられなかったようでした。最近ではニュースで見る程度しか接点のないお祭りに飛び込めたことは、スタッフにとっては、楽しく貴重な経験だったようです。徳島から参加した若手メンバー2人は、地元の阿波踊りにも参加したことがなく、この神田祭がお祭りデビューだったそうです。 

 

┃見ているだけでは知ることのできなかった「神田祭」の現場 

ちょうど金曜日は、一般の人たちにも開かれた祭りの日でした。ですので、飛び入り参加しても、その場で半纏の貸し出しがあり、神輿担ぎに参加できるわけです。この町内の昼間の人口は6000人弱。それに対して、夜間人口が600人ほど。町内会の方も、本当は町内に住んでいる人たちやオフィスの人たちで全部仕切りたいんだけどね、というようなことをおっしゃいます。ですが、今のところ、まだそれは不可能です。本来は地下足袋で担ぐ神輿を、スニーカーでも、革靴でもよいという緩やかなルールになっています。さすがにハイヒールはやめてほしいな、とのことでしたが。ダンクソフトのメンバーはお客様を訪問したいでたちでしたので、革靴でしたね。 

 

神田祭の中でも、担ぎ手が足りない町内会では、神輿を車に乗せて牽引して街を練り歩くようになっています。最近では、地方のお祭りでも、山車にして引いているところがありますね。コロナがあって以来、いったんいなくなってしまった人たちが、なかなか戻らないこともあるようです。 

 

今回、お祭り用語というか、新しい言葉にいくつも出会いました。 

たとえば、半被ではなく、半纏と呼ぶんですよね。半被は位の高い人が着るもので、自分たちの着るものはへりくだって半纏と呼ぶ風習が江戸時代からあるそうです。他には、お神輿を担ぐと、30分ごとなどに休憩が入ります。そのときに、お水やお神酒などが出て休息をとりますが、休息して飲んだり食べたりすることを給与と呼ぶのだそうです。では給与しましょう、といわれて最初は何を言われているのかが分かりませんでした。他には、帯の結び方の用語や、御神輿の部位で花棒という言葉も覚えました。花棒は、御神輿を担ぐときに一番前に位置する棒で、花形だったり、地位の高さを表したりするそうです。初心者の私はそれを知らずに、その位置で担いだのですよね。写真をFacebookに掲載したところ、お隣の町内のベテランさんたちが、花棒を担いだのですね!と、コメントを寄せてくださいました。 

 

私自身は今回、事前の勉強会から参加してきましたが、学ぶことが多かったです。いつも慣れ親しんでいるビジネス用語とはまた違う言葉のコミュニティに参加したことで、刺激が多くありました。ぜひオフィス・ワーカーとしてこの地域にいる人たちにも、輪が広がっていくことを願っています。   

┃濃密な時間を共にするお祭りは、地元コミュニティへの大切な入口 

 

翌5月10日(土)には、「神田須田町二丁目町」に加え、「神田東松下町」と「岩本町三丁目」という近隣の3つの町会のお神輿が集まり、地元である「柳森(やなぎもり)神社」の宮入りが行われました。柳森神社は、ダンクソフトのオフィスから500メートルほどのところにあります。 

 

3つの神輿が神社に宮入りするときに、神社までのラスト500メートルほどの距離に限って、3町会の氏子が入り交じって、どの神輿を担いでもよいという昔からの取り決めがありました。神田祭では、町内会ごとに半纏の色が異なります。神田須田町二丁目は白地に青色の半纏、他の町内は青だったり、緑だったりします。色の違う半纏を着た人たちがまじりあい、熱気ある雰囲気を醸し出していました。これは実によかったですね、町会の枠を超えて神輿を担ぎあうという、境界を超える工夫がされているところが、注目のポイントでした。 

 

私は、この宮入りにもぜひ参加しようと思っていました。というのも、「神田東松下町」には私が関わっている「神田藍の会」のメンバーが何人もいて、さらに「岩本町三丁目」には「神田藍の会」で知り合った保育園があるのですね。地元のお祭りという特別な場で、ぜひ顔を合わせてみたいと思っていました。 

 

実際、ふだんとは違う話題でいろいろ話がはずみました。経験してみてわかったのですが、お神輿を担ぐのはかなりヘヴィーですから、たとえ短い時間でも、そうしたたいへんな時を共有することで濃い絆が生まれます。地元コミュニティのさまざまな人たちと関係を広げていくうえで、お祭りは大切な入口になる。それが私の実感でした。   

お祭りの様子を街からライブ中継、全社ミーティングで共有 

 

この5月10日(土)は、ダンクソフトでは「DNAセミナー」を開催しました。神田のオフィスに多くのスタッフがリアルに集まり、東京には来られないメンバーともリモートでつないで、年に2回実施している全社会議です。 

私は、午後の部を少し抜けさせてもらい、柳森神社の宮入りに参加してきました。その様子をiPhoneで撮影して、DNAセミナーの最中にリアルタイムで中継し、お祭りの空気をみんなに共有しました。ガラス張りのオフィスからは、街の賑わいも見えたようで、スタッフみんなが、神田の盛り上がりを経験してくれました。 

 

神田祭への関わりは、ダンクソフトのメンバーたちにとってもたくさんの刺激があったようです。ダンクソフトでは、目指すべき未来の姿を描いた「グランド・ナラティブ(大きな物語)」のひとつとして、「地域づくりと関係づくり」を掲げています。ダンクソフトが地元コミュニティにこんなふうに溶け込むまで、地域との関係が進んだのだなと実感できた、という声も聞かれました。来年は、もっと多くのメンバーたちに参加してもらおうと思っています。   

地元コミュニティと共に育む、藍のプロジェクト×デジタル 

 

よい機会なので、地元コミュニティにおけるダンクソフトの活動について、まとめて紹介してみたいと思います。 

 

このコラムでもしばしば登場する「神田藍の会」は、古くから染料を得るために栽培されてきた植物「藍(あい)」に関わるコミュニティです。藍の種蒔きから栽培、収穫、そして藍の葉を使った生葉染めまで、地域の人々が体験できる活動を行っています。そもそも神田には、かつて染物屋が軒を連ねていた「紺屋町(こんやちょう)」があり、藍染めにゆかりの深い地域でした。「神田藍の会」では、神田明神や柳森神社での藍の奉納といった行事にも関わっています。 

 

「神田藍の会」が立ち上がったのは2021年で、ダンクソフトはその当時から参加しています。今では、ダンクソフトの神田スマートオフィス(本社)が、藍の会の集いの場になっています。現在では、数十の個人・法人が活動に参加しています。千代田区まちづくり協議会からは過去3年連続で賞をいただくまでに育っています。藍の栽培場所も神田エリアばかりでなく、お隣の千代田区、遠くは香川県や徳島県にまで広がり始めています。 

 

ダンクソフトでは現在、「神田藍の会」のホームページのリニューアルに携わっています。このコミュニティでは、参加者同士のコミュニケーションを楽しくする「WeARee!(ウィアリー)」や、円滑にする「ダンクソフト・バザールバザール」など、ダンクソフトのサービスを活用しています。これからは、たとえば会合の様子を録画・公開したり、リアルタイムで共有しながら議事録をその場で作成したりといった便利な方法なども、地域づくりを行う団体を中心に提案していこうと考えています。たとえデジタルが苦手なご年配の方でも、そのやり方を覚えて手軽にできますから、地域コミュニティの運営は、今より楽になり、楽しくなっていくのではないでしょうか。   

防災・防犯・災害対策も視野に入れ、ラジオで顔の見える神田をつくる 

 

もうひとつの地元コミュニティ活動が「中央エフエム」です。これは、中央区を拠点とするコミュニティFM。当時、ダンクソフトの本社が中央区にあったことが縁になって、2011年からオフィスを使って生放送の番組を始めました。その生番組が、千代田区須田町二丁目にある現在のオフィスに移転してきてからも続いています。 

 

中央エフエムのメインスタジオは、中央区の京橋にあります。これに対して、ダンクソフトのオフィスは「区」という境界を跳び越えた、いわばサテライト・スタジオのような存在です。現在、その機能をさらに強化するために、専門の放送機材などを設置し、このオフィスの一角を常設スタジオにする計画が進行中です。すでに始まっている部分もありますが、須田町二丁目にゆかりのある人物や「神田藍の会」のメンバーなどもスタジオにお招きしいて、この地元を起点とした情報発信に取り組んでいきます。中央区と千代田区の架け橋になるようなコミュニティづくりができたら嬉しいですね。  

┃企業が単独で利益さえ上げればよい時代は終わり、地域社会にも目を向ける時代へ 

「中央エフエム」のようなコミュニティFMが典型的な例ですが、地域コミュニティは、防災・防犯や災害時の支援において、とても重要な役割を果たします。 

都会は周囲に顔見知りがいないということが一般的で、どちらかというとお互いの関わりが乏しい空間です。そこに、日ごろの付き合いやコミュニティがあると、いざ災害が起こった時には、知っている人との会話で適切な情報が取れて、危険を回避することができます。また、一緒になってそこからリカバリーできるし、連携できれば回復へのスピードが上がります。平時にはあまり考えていないことですが、今は不確実性の高い時代ですから、こうしたことを考えておくことが大事な局面になってきています。 

 

防災をテーマにした代表コラム『BOUSAIFULNESS ──災害前提社会への備え』
https://www.dunksoft.com/message/2022-06 

防災・防犯や災害支援は、いまや規模の大小を問わず、すべての企業が担うべき役割です。企業は単独で利益さえ上げればよい、ということではなく、やはり地域・社会に対しての役割を持つようになりました。しかし、そうは思っていても実行できていない企業も多いと思います。社員たちも、会社で一生懸命に仕事をしていればよいだけの時代ではなく、家庭のことや、家庭がある地域のこと、その企業がある地域のことも一緒に考えていきながら行動していくことが求められる時代です。そういう意味で、お祭りという行事は、とても入りやすいですね。何よりも楽しいですしね。 

 

現代の地域企業として、地域社会とかかわりを持つアプローチはさまざまだと思います。ダンクソフトは、こうして地域コミュニティに実際に参加し、溶け込むことで、さまざまな人たちとコミュニケーションをとりながら、共に進めていくスタイルがよいと考えています。それに、地域社会でデジタルが寄与する余地は、非常に大きいと実感してもいます。 

デジタル・デバイドをつくらないこともそうですが、皆でデジタルを使えば、もっと楽に地域と人とがつながっていくことができます。デジタル活用によって、無駄な時間を確実に省けますから、こうして生まれた時間を使って、コミュニティの活性化という大事な部分に力を注ぐことができます。これは、都会のコミュニティでも、地域のコミュニティでも、同じことです。ダンクソフトでは、2011年から徳島・神山町を皮切りに、全国の地域コミュニティづくりを、スマートオフィスで支援してきました。近年では、今回取り上げた、神田のような都会のコミュニティでも実験を重ねています。ここで蓄積したデジタルとコミュニティと人間に関する多様な知見を活かして、全国各地のコミュニティをお手伝いしていきたいと考えています。