サイボウズの「kintone hive」は、kintoneユーザーにとっての一大ライブ・イベント。その2025年東京大会に、一般財団法人 地域活性化センターの西田周平さんが登壇して事例発表を行い、熱い注目を集めました。kintoneを活用して大幅なペーパーレス化を実現したこのプロジェクトは、じつはダンクソフトのサポートのもとに実現されたもの。そこで今回は西田さんをお招きし、「kintone hive」での様子や、ダンクソフトとの協働で実感したこと、デジタルを起点とした地域活性化への想いなどを語り合いました。
右:一般財団法人 地域活性化センター
総務課 副参事 西田 周平 氏
左:株式会社ダンクソフト
代表取締役 星野晃一郎
┃プレゼンターとして「kintone hive 2025 tokyo」の壇上に立つ
星野 サイボウズの「kintone hive 2025」(キントーン・ハイブ)でのご登壇、おめでとうございました。Zepp DiverCityで開催されたのですね。
西田 ありがとうございます。そうなんです、これまでライブをよく観に行ったところで、まさか自分がステージに立つ日が来るとは思いませんでした。おそらく700~800人くらい参加されていたのではないかなと思います。
kintone hive公式チャンネル https://www.youtube.com/@hivekintone8395
一般財団法人地域活性化センターの活用事例 西田 周平氏 https://www.youtube.com/watch?v=834TNjbHCzE&t=911s
星野 当日の様子を動画で拝見しましたが、西田さん、あんまり緊張していなかったんじゃないですか。どうでしたか、反響は?
西田 それが嬉しいことに、予想以上に大きくて(笑)。プレゼン直後に参加者と交流する場があるのですが、その時に名刺交換で行列ができました。50枚くらい名刺を交換したと思います。イベント後に会場の参加者から寄せられたコメントも70件以上。どれもポジティブなものでした。
星野 それはすごい(笑)。この「kintone hive」は、kintoneの活用アイディアをユーザー同士で共有するライブ・イベントなんですよね。多数の応募の中から選ばれたプレゼンターが登壇し、kintoneの導入事例を発表します。
西田 私が参加した東京大会は、いわば関東甲信越予選。今年も多くの応募があったようです。その中から書類審査で選ばれた7社9名が登壇して発表を行いました。私も、そのうちの1人に選ばれたわけです。残念ながら、全国大会への出場は叶いませんでしたが。
星野 それでも大したものですよ。東京は激戦区ですから、登壇者に選ばれること自体、とても名誉なことですよ。西田さんはそもそもどんなきっかけでチャレンジしてみようと思ったんですか?
西田 2年ほど前からサイボウズデイズというイベントに参加していて、発表する登壇者を見ていて、しだいに興味が湧いてきたんです。意外に自分たちが取り組んでいるプロジェクトも、発表する価値があるんじゃないかと。「kintone hive」の一番の目的が「kintoneユーザー同士のノウハウの共有」なので、活性化センターのプロジェクトを発表することで、誰かの役に立てるのではないかと思ったんです。
星野 プレゼンではすごく落ち着いているのが印象的でしたが、そうとう練習を積みましたか?
西田 ええ(笑)。自分で納得できるまで練り込みました。夜、幼い子どもたちを寝かしつけてから、カラオケボックスに行って声を出して練習したり(笑)。資料づくりでは、ダンクソフトの皆さんにも共有して、知恵をいただきました。
星野 反響ではどんなものが多かったですか?
西田 自分たちの組織での業務効率化だけでなく、そのノウハウを地域の活性化につなげていこうという姿勢に共感してもらえたものが多かったように思います。「何か一緒にできないか」とか、「kintoneの活用で相談に乗ってほしい」とか、イベント後にもいろいろ問い合わせをいただいています。私たちのプロジェクトが思いも寄らぬほど評価されて、私自身、大きな自信につながりました。
┃なぜ、ペーパーレス化による改革にチャレンジしたのか?
星野 話が前後してしまいましたが、地域活性化センターと西田さんの簡単な紹介をしてもらえますか?
西田 そうですね。地域活性化センターは総務省に関連した一般財団法人で、1985年に設立され、今年で40周年を迎えました。活動内容はその名のとおり、地域の活性化——なかでも「地域づくりは人づくりから」をモットーに、全国各地域で活躍できる人材の育成に力を入れています。
組織としては、職員の構成に大きな特徴があります。全職員のうち7割ちかくを地方公共団体からの出向職員が占めており、その任期が原則2年のため、毎年全職員のうち3~4割の職員が入れ替わるんです。
ちなみに私は、そのうちの数少ないプロバー職員であり、総務課に所属しています。今回のプロジェクトが動き始めた当時は、いわゆる「ひとり情シス」のような立場でした。
星野 なぜkintoneを活用した改革に着手したかという話もしてもらえますか?
プロジェクト実施前のオフィスの様子
西田 はい。私たちの組織は職員の出張も多く、当時からフリーアドレスやテレワークなどの制度を採用しており、一見イケてるような働き方でした。ところが、その働き方にワークフローがぜんぜん伴っていなかったんです。起案にしても決裁にしても、すべて昔ながらの紙ベースのため、あちこちで業務に支障が起こっていました。
そこでペーパーレス化による改革にチャレンジしようと考えたのですが、どこから始めたらよいかまったく見当がつかない……。
星野 そこでダンクソフトに相談がきたわけですよね。あれはいつ頃でしたか?
西田 当時の事務局長をはじめ何人かの人から推薦があってダンクソフトを知ったのですが、初めてダンクソフトの本社を訪れたのは2022年の夏頃だったと思います。あの時は驚きましたね(笑)。オフィスにいたのは社長の星野さんひとりだけ。あとの社員はみんなリモートで、テレワークで働いていたんです。こんな最先端の働き方をしている会社なら、一緒に新しいことにチャレンジできるのでは?と感じましたね。
星野 そこからトントン拍子で話が進み、秋にはもうプロジェクトが動き始めていましたね。
西田 そうですね。開発がスタートしたのが2022年11月。翌23年の2月に勤怠管理系アプリ、続いて4月にワークフロー系のアプリをリリースし、わずか5か月で開発を完了させています。
┃書類の印刷量を41.5%削減。デジタルへの意識にも大きな変化が
西田 そもそもアプリ開発にkintoneを採用することもダンクソフトからの提案だったんですよね。それまで私たちにはkintoneに関する知識はまったくありませんでした。
星野 ワークフローそのものを変えたいという要望と開発スピードを考えると、kintoneが最適なプラットフォームだと考えたんです。
西田 さらに新鮮だったのが、一緒になってつくっていくアジャイル開発というスタイルでした。それまでは、業者に発注したら、あとは成果が上がってくるのを待っているという、いわゆる昔ながらのウォーターフォール型の開発が当たり前だったので。
星野 僕たちダンクソフトとしては、アジャイルが以前からやっている当たり前の開発スタイルなんですよね。
西田 一緒に動いていると、楽しかったんですよね。私がとりあえずつくってみたアプリを、リモートのミーティングで共有しながらアイディアを出し合ったり、よいものを一緒になってつくっていこうという感覚が新鮮で、すごく面白かったです。あのスタイルがあったからこそ、5か月間というスピーディーな開発が可能になったんだと思います。
星野 僕としては、すごいスピードで成長していく西田さんの姿を見ていることも楽しいですよ(笑)。kintoneを利用するとノーコードでアプリを開発できるとはいえ、当然それなりの知識やスキルが求められます。西田さんは、僕らと一緒に仕事をする前は、ほとんど専門的な知識はなかったわけでしょう?
西田 そうですね。でも、勉強しようという意識はあまりなくって。こういうことをやりたいという感覚が先にあって、そのためにはkintoneでどうしたらできるかを考えているうちに、自然に身についていったような感じだったんです。
星野 なるほど。このプロジェクトについては、事例として別のページでも紹介しているので詳しいことは省きますが、素晴らしい成果をあげているのですよね。
西田 ええ。定量的な効果としては、書類の印刷量が全体で41.5%減りました。3台あった複合機も1台になったので、ランニング・コストも削減できています。
さらに大きいのは、電子化に合わせて、決裁の仕組みそのものも改善できたことです。決裁の階層を減らし、重要度に応じてスマホなどを利用して出先からでも決裁できるように工夫しました。その結果、業務も大幅に効率化しています。
星野 さらっとお話しされましたが、すごいことですよ。本気で改革を進めようとするならば、デジタル化だけではダメで、業務の仕組みを変えるとか全体で最適化を図らなければならない。それを実現できると短期間で驚くほどの成果を得られます。今回のプロジェクトは、まさにその好事例だと思いますね。
一般財団法人 地域活性化センター 様 プロジェクト事例はこちらhttps://www.dunksoft.com/message/case-jcrd-kintone
西田 このシステムがきっかけとなり、組織内でのDXへの認識も深まりました。私ひとりだった情報システム担当者も、兼任ではありますが、現在では3人になっています。私自身の業務も大きく改善でき、今年の6月には育児休暇を取ることもできました。
┃自分たちのチャレンジが、地域へと広がりつつある手応え
西田 このように、職員のマインドが変化したことも大きな成果だと感じています。kintoneを使って日々の業務も効率化してほしいという声があがり、kintoneでアプリを開発できる職員が増えています。たとえば、担当チームの発案で、セミナーの受付業務のデジタル化などが進行中です。
星野 ある程度の開発が進むと、守りに入る担当者の方も多いものです。そんななかで、西田さんは社内の課題を常に上手に取りまとめて、ダンクソフトのチームメンバーにうまく共有してくださるそうですね。
西田 私たちのチャレンジですが、さらに地方の公共団体まで広がる兆しが見られます。例えば、地域活性化センターでの出向を終えて地元の公共団体に復帰したメンバーから、戻った先の業務でkintoneを活用したいという相談がありました。実際に導入したという事例もすでにあがっています。同様の相談は他にもあり、最近では地方の公共団体から視察に訪れたいという打診も増えています。これこそが、私たちが目指している展開だなと思っています。
星野 デジタルによる業務効率化は、どこの自治体にとっても共通の課題ですからね。上の世代にはいまだに紙にこだわる人が多いなど課題もありますが、意識の若い人が増え、チャレンジを続けることによって、必ずよい方向へと進んでいくと思いますよ。
西田 確かに地方公共団体で、若い職員が改革を起こすのは簡単ではないと思いますが、地域活性化センターにいるあいだは、大胆なチャレンジも可能です。kintoneによるアプリ開発や生成AIの活用など、ここでの経験を地域に持ち帰って、活かしてもらえたらと考えています。組織内での改革だけでなく、彼らが起点になって、地域のNPOなどにDXが広がっていけば、地域全体の活性化につながるはずです。
星野 ダンクソフトでは、そのような地域の団体との協働を各地で進めています。労働者協同組合である「やさしいまちづくり総合研究所」(やさまち総研)とのプロジェクトもその一例ですし、和歌山県田辺市にある大塔中学校では、1年生の総合学習の授業として、ダンクソフトのサービス「WeARee!」を活用した地域発見プロジェクトを行い、注目を集めています。こうした取り組みと、西田さんたちの展開をリンクできれば、地域の活性化に向けていろいろ面白いことができそうですよね。
┃「インクリメンタル・イノベーション」で、デジタルによる地域活性化を
星野 ところで西田さん、デジタルについては、最近のスキル習得度合いはどうなんですか(笑)?
西田 kintoneについてはさらに深まり、おかげさまで、試作も含めると100以上のアプリを開発しています。ただ、実はプログラミングの勉強は、一時期していたのですが、これは思うところがあって中断しました。そういう専門的なことは、ダンクソフトの皆さんのようなプロフェッショナルに任せて、自分はもっと、中の業務を効率化したり改善することに力を入れた方が全体的によい方向に進むと考えたんです。
星野 なるほど、それは適切な考え方だと思いますね。
西田 それに、自分一人だけが分かっている状態はよくないですので、もし私に何かあっても、メンテナンスやカスタマイズはダンクソフトさんに頼れるようにしたほうが、長い目で見るといいと思っています。
星野 そういう意識を持てる人は意外と少ないですよ。自分ができることをどんどん突っ込んでやっていってしまう人をたくさん見てきました。そうすると、例えば、誰もわからない複雑なExcelやAccessが出来上がって、資産だったはずのものが陳腐化してしまい、連携も協働も生まれないということがよくありますからね。
西田 今日、星野さんと話をしていて、ダンクソフトが目指している未来と、私たちが進もうとしている方向性が、たくさんの部分で重なり合うことに改めて気づきました。若い人たちが思い思いに活躍できる地域づくりに貢献するために、新しいコラボレーションが何かできるかもしれませんね。
星野 ダンクソフトのプロジェクト・メンバーからは、地域活性化センターさんのDXプロジェクトでは、西田さんが情熱を持って担当され、社内の媒介役になっていることで、とてもよい協働が続いていると聞いています。イノベーションには、2つのタイプがあるんですよね。ひとつは、急進的にイノベーションを起こす「ラディカル・イノベーション」です。もうひとつは、少しずつじわじわとイノベーションを起こしていく、「インクリメンタル・イノベーション」(漸進的イノベーション)です。西田さんは、まさに「インクリメンタル・イノベーション」ですね。止まらずに少しずつ進めて、変化を創り出していますよね。これはダンクソフトが得意とすることでもありますから、ぜひこの先も共に進めていきたいものですね。これからの広がりがますます楽しみです。
「サイボウズデイズ2025」で会いましょう!
2025年も、ダンクソフトは「サイボウズデイズ2025」にブースを出展します。
今年は、このコラムの中で、西田様と星野が語り合った、ダンクソフトの「 kintone 顧問開発」をご紹介予定です。
ご担当者様のお困りごとをめぐって、ご一緒に対話してつくりあげていくアジャイル型の開発支援。発注者・受注者という肩ひじ張った関係を超えた「協働型」であることが特徴です。
年々盛り上がりを増していくサイボウズデイズの会場で、皆さんも一緒に熱気を感じませんか?
詳細・お申し込みは、サイボウズデイズ 公式サイト(https://days.cybozu.co.jp/ )へ。
日時:2025年10月27~28日(月・火)
会場:幕張メッセ 4-7ホール
過去のサイボウズデイズの様子、活動紹介ムービーはこちらをご覧ください!https://www.dunksoft.com/40th-project#AP_cybozudays