#2021

ポスト・コロナの「人新世時代」、もとに戻らずデジタルで“はじまり”を

2021年最後のコラムとなる今回は、代表取締役 星野晃一郎と取締役 板林淳哉が対談しました。ポスト・コロナ社会、そして「スマートオフィス構想」の未来に向けて、「インターネットにあらゆるものをのせていく」を軸に、今年1年を振り返りながら、40周年を迎える2022年以降を見据えます。



 ▎2021年、多くの新たなはじまりが生まれた

 

星野 ダンクソフトにとっての2021年は、いい1年でした。デジタル活用の波が広がっていったからです。距離や空間を超えて、人と人が出会い、少しずつ関係が生まれていく。こうして新しいプロジェクトが始まり、多くの新たなはじまりが生まれました。そのような良い流れが連鎖していく1年でしたね。  

右:ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎
左:ダンクソフト 取締役 板林淳哉

▎「できない」を「できる」に変えるデジタルの力

 

星野 さて、今年の板林さんといえば、やはり「WeARee!」(ウィアリー)。かなり面白いプロジェクトがいろいろと展開しましたね。

 

リコーのTheta(シータ)で撮影した、「縁庵」のバーチャルツアー

板林 中でもご紹介したいのが、今年10月に「WeARee!」を使って開催したオンライン・イベントです。東京・湯島にあるギャラリー縁庵 様で、愛媛にある砥部焼の窯元4か所とつないだ展示会を行いました。
 

星野 東京のギャラリーで作品の展示を行いつつ、遠く離れた愛媛の窯元とインターネットでつなげたんでしたね。

 

板林 はい。今回は、窯元ツアーをインターネット上に用意したんです。ウェブ上の入り口から窯元に入っていき、まるで実際に訪れているかのように作業場や窯を見学することができます。ポイントは、これらの画像を現地の窯元の作家さん自身が撮影したところにあります。リコーのTheta(シータ)という360度カメラで撮影していただきました。

 

星野 自分たちで撮影してもらって、映像を送ってもらったんだね。

 

リコーのTheta(シータ)で撮影した、「器屋ひより」のバーチャルツアー

板林 そうです。従来は、僕らが撮りに行ってコンテンツを作成するやり方が一般的でした。ところが、コロナ禍や緊急事態宣言の影響で現地に行けない。そこで遠隔でご支援しながら、窯元の皆さんに撮影してもらうことにしました。一種の分散作業ですね。これによって、ご自身たちでデジタルに触れる機会をもっていただけましたし、そうすることで「やってみたらできた」という経験をしていただきました。自然とデジタル・リテラシーを高めていただけましたし、その上、距離を超えて、ご一緒にギャラリー来訪者の「新しい体験」をつくりあげることができて、これがとてもよかったのです。

 

星野 このプロジェクト自体がデジタルに親しみ、デジタルを学ぶ機会にもなっているのですね。

 

板林 もとに戻らず、デジタルではじまりをつくるというのは、ひとつはこういうことかもしれません。  

▎あなたの「体験」もインターネットにのせられる

 

星野 これまでデジタルを使っていなかった人が、チャレンジしてやってみたということがすばらしい。その成功体験やノウハウは、必ず今後に生きてきますね。「デジタル・デバイドの解消」から、「コミュニティの活性化」へ。ダンクソフトが目指すモデルのひとつです。

 

板林 企業活動のための情報だけでなく、あなたの「体験」もインターネットにのせていく。この試みが形にできたことは、今年の大きなトピックのひとつだと思います。「コロナだから」デジタルを使うのではなく、コロナはあくまできっかけで、デジタルの強みを活かした時間や場所を問わない働き方や暮らし方を、今後もどんどん広げていきたいです。

 

Googleが検索という新しいツールを開発したとき、様々なユーザーが参加することで、新しい使い方が発見されていきました。「WeARee!」を使っていただいていると、まだまだ潜在的な可能性がありそうです。さらに多くの方々にご参加いただいて、皆さんと新しい使い方を発見していきたいと思っています。  

▎日本人は変化を嫌う国民性?

 

星野 そんな新しいチャレンジが見られる一方で、日本全体で見れば、思ったほどマインドセットは変わっていませんね。せっかくのチャンスなのに、変化の機会にできなかったと感じています。ここまで追い込まれているのに変われないというのは、やはり変化を嫌う国民性なのでしょうか。

 

板林 2021年は、世間ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)元年と言われたり、デジタル庁が開設されたり、デジタル化推進に注目が集まったのにですね。

 

河野大臣へ直接提言するダンクソフト星野

星野 まったくです。実際、急激な進展もあったんですよね。印鑑はなくなりましたし、河野太郎大臣のファックス廃止宣言も記憶に新しいところです。私も河野大臣に直接提言させていただきました。来年1月には、改正電子帳簿保存法が施行されます。世の中がデジタル化に舵を切りだしているにもかかわらず、企業人のマインドセットは新しくならずに、都会はもう満員電車の通勤生活に戻ってしまっています。

▎「人新世時代」の働き方へ

 

板林 そうですね。緊急事態が明けて、もう大丈夫という風潮になりつつあります。11月に経団連がテレワーク削減の提言を出しましたが、「元に戻る」になってしまっては……。

 

星野 よくないですよね。時代に逆行していますよ。東日本大震災後もそうでしたが、仮にコロナが収束したとしても、働き方やライフスタイルが元に戻っても何もいいことはありません。特にこの「人新世」(じんしんせい)の時代にあって、自然から人間に警告が突きつけられていると思うのです。人新世というのは、地質学上の新しい時代区分のことですが、要するに人間の活動が地球に多大な影響を与えているから、ビジネスの仕方、暮らし方の発想を変えようということですね。こうした言葉が出てきたのに、ビジネスや暮らしの実態が変わらないのは残念です。

 

本当は、東京の一極集中をどうするのかだったり、地方に住む若者の働き方の可能性をどう広げていけるのかを考えないといけません。国や組織が動くのを待つというより、課題に気が付いた人からやっていくことが大事です。

 

東京2020大会のボランティアに参加した、ダンクソフト星野

今年はオリ・パラでのボランティア体験は大きくて、ボランティア仲間は、やる気のある、未来を見ている人ばかりでした。同じ方向を見ている人たちがこんなにもいるんだと実感できる、いい体験でした。こういう人たちが一方にはいて、しかも変われるところから少しずつでも変わっていける、やればできる時代になっているわけですから、チャレンジしていく人たちと一緒に未来をつくっていくタイミングなんですよ。

 

参考情報:経団連も提言

https://www.asahi.com/articles/ASPC85STNPC8ULFA00H.html 

▎「インターネット」を分母として考える

 

板林 とはいえ、やはり「何から始めたらよいのかわからない」という人も多いです。ダンクソフトはそういう方や組織や企業へのサポートをしていて、「DXについて教えてほしい」という星野さんへの講演依頼もあいかわらず多いですね。

 

星野 どのように進めていけばいいのか。何から始めればよいのか、よく聞かれます。最近の講演やレクチャーでは、こんな資料を使っています。「インターネットにあらゆるものをのせていく」ためにするべきことを視覚化したものです。

 

星野 これは、分母がインターネット、分子がそこにのせる情報、という形になっています。あらゆるものを「インターネット」という分母にのせて考えてみる。これを今、辞書のように「A to Z」方式でまとめています。たとえば「A」は、Accounting(会計、経理)の「A」。人、モノ、金、時間の情報で、キャッシュレスやペーパーレスに関わります。「B」は「Business Rules(ビジネス・ルール)」で、就業規則に対応した申請など。サインレスや印鑑廃止に関わってきます。A・Bの特徴は、定形で、数値で、計算可能な情報であることです。

 

また、定型の数値情報は、情報の形が決まっているので、何十年経っても変わりません。20世紀型のコンピュータが扱える情報です。大事なのは、単にパソコンに入れるのではなく、分母にインターネットがあること。そして、情報を使える状態に整頓しておくことです。

 

板林 データをインターネット上に保存しておくと、検索性が高く、活用しやすいですね。データ・リテラシーは必要ですが、社内ルールなどをつくって、それらにそって整理しておけば、アクセスした誰もが使えるものになります。

 

星野 作業に要する時間を短縮して効率化し、あいた時間をクリエイティブなものに向けることができます。働く場所を問わなくなるため、テレワークの前提でもあります。ダンクソフトの方法でもあります。

▎すばらしい未来はもう始まっている

 

「学童保育サポートシステム」を導入し、勤怠管理から児童情報の共有、経理書類作成などの業務をアプリで一括管理している、はなまる学童クラブ様

星野 インターネットにあらゆるものをのせていく先には、「スマートオフィス構想」があります。元に戻るのではなく、いける人、気づいた人から前に進んでいけばいいんですよ。デジタルには「できない」を「できる」に変える力があるんですから。最近事例として公開した石垣島の放課後学童クラブの話などを見ていると、すばらしい未来がもう始まっていることが実感できますよね。ここから変わっていけるのだという希望が見えるケースだと思います。

 

板林 ダンクソフトの支援でkintoneを使った学童システムを開発・導入いただいている石垣島の、はなまる学童クラブ様ですね。

 

星野 詳しくはまた改めてご紹介しますが、次のアクションを起こしていくのは、こういうところで育った子どもたちですね。彼らこそ未来の担い手です。そのような組織や団体のサポートをしていることに大きな意義を感じています。

 

参考:「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に

https://www.dunksoft.com/message/case-hanamaru-kintone

 

来年、ダンクソフトは40周年を迎えます。こうした動きをさらに加速させ、「スマートオフィス構想」を実現し、展開していきましょう。皆さんとともに、また新たなはじまりの年にしていきます!

対談:地域イノベーションが生まれる協働のしくみとは──徳島でACT倶楽部が始動

共同研究、特別講演、非常勤講師、ACTフェローシップ……。徳島県阿南市の阿南工業高等専門学校(阿南高専)とダンクソフトは、多岐にわたるプロジェクトを通じて協働を重ねてきました。そして今年「ACT倶楽部」が新たに発足。企業・学生・研究者たちが関わりあう活発な対話と協働の場が動き始めています。 

 

今回のコラムでは、阿南高専 創造技術工学科の杉野隆三郎教授をゲストにおむかえし、地域と企業との協働、地域のイノベーションについて対話しました。 

 

阿南工業高等専門学校 創造技術工学科 教授 杉野隆三郎 

株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎  



▎なぜ異例のスピード・スタートが切れたのか? 

 

ACTフェローシップのメンバー

星野 今年8月、阿南高専教育研究助成会(ACTフェローシップ)に、新たに「ACT倶楽部」が設立されました。設立からわずか2ヶ月で、現在、早くも5つのプロジェクトが始動しているのは驚異的なスピードです。杉野先生、これは快挙ですよ。 

 

杉野 ACTフェローシップは、サイエンスと産業連携により地域課題解決にチャレンジするプラットホームです。1995年に発足しました。本校を支援する卒業生や経営者や企業約100社からなる多様なステイクホルダーが参加しています。 

 

星野 ダンクソフトもACTフェローシップのメンバーです。 

 

杉野 このACTフェローシップから今年新たに生まれたイニシアチブが、「ACT倶楽部」です。企業が抱える課題を持ち込み、企業・学生・教職員・行政や地域社会が連携して課題解決に取り組む仕組みです。イノベーションが生まれる共創の場をつくっていこうとする、新たなチャレンジです。 

 

星野 ACT倶楽部が発足したことで、25年の実績あるACTフェローシップが、ここにきて新たな局面に入ったことを強く感じています。 

 

杉野 そうですね。ACT倶楽部はいいスタートを切れたと思います。その要因のひとつに、人と人とのあいだを結んで協働を推進する「インターミディエイター」を新たな役割として導入したことがあると思います。 

 

星野 目覚ましいスピードと成果ですね。企業、経営者、地域社会と、学生や研究者といった異質なステイクホルダーを、柔軟かつクリエイティブに結んで、よりよい協働関係をつくりだす役割ですね。 

 

杉野 よき共創の場を意図的にデザインできたことが奏効したのだと見ています。昨年2020年11月の計画スタートから1年、設立から2ヶ月。いよいよ本格始動です。  

▎協働を加速させるデジタル・テクノロジー 

 

星野 ACT倶楽部内のコミュニケーションを活性化することが、協働のうえでは重要ですね。今回、倶楽部を支えるコミュニケーション・ツールとして、ダンクソフトのバザールバザールが使われています。スピーディーでスムーズな情報共有はもちろん、コミュニティそのものの活性化が期待できますね。 

 

杉野 バザールバザールは、デジタルで共創場を創出していかれるすぐれたシステムだと期待しているんです。教育現場のIT化を進めるなか、さまざまなシステムやサービスを使ってきました。ですが、経験上、重かったり使い勝手が悪かったりと、負荷の大きさにストレスを感じるものが多くて。その点、バザールバザールは非常に軽快で、使いやすいです。 

 

星野 ありがとうございます。デジタルが苦手な方でも参加できるよう、使いやすさを重視しています。なので、アプリにはせず、ウェブ・ブラウザで使えることもポイントです。 

 

杉野 フル・オープンでないことも大きな魅力ですね。親密なコミュニティが成立するには、いい意味でクローズドな場である安心感が必要です。その方針からもバザールバザールが最適だと考え、採用しました。 

 

星野 安心して発言できるコミュニケーション・ツールとするため、クローズドであること、そこに集まる大事な情報を商用利用しないことは不可欠と考え、そのように設計したのがバザールバザールです。そう言っていただけると嬉しいですね。 

 

杉野 多様な人びとの協働を支え、加速させてくれるデジタル・テクノロジーの好例ですね。全国に同様のコミュニティが今後できていくと思いますが、ぜひ導入されていくと良いと思います。  

▎魚群の数理モデルを人間社会に応用する!? 

 

星野 杉野先生との出会いは、今から6年前、2015年の秋でした。ACTフェローシップで私が講演をさせていただき、その後の交流会、そして徳島までの帰路も通して、幅広く深く話し込みましたね。印象深い出会いでした。 

 

杉野 ええ、阿南市から徳島まで、汽車のボックスシートで膝を突き合わせて。その日の講演のこと、ダンクソフトさんのサテライト・オフィスやさまざまなプロジェクト、それに私の研究テーマなど、非常に意気投合して多岐にわたってお話ししました。 

 

星野 ちょうどその頃ダンクソフトは、サテライト・オフィスやウェブ・ライター養成講座など、徳島でいくつかの協働プロジェクトを進めているところでした。動物の群れ行動の研究から、人間界でイノベーションを生む共創プロジェクトへと発展してきたという杉野先生の研究テーマが興味深くて、すっかり惹き込まれました。 

 

杉野 私はもともと数理工学を専門としていて、魚の群れ行動を数値化する研究をしていました。群れの動きが環境や刺激によってどう変わるかを調べ、数理モデル化して応用していこうという研究です。徳島県水産研究所と10年にわたって共同研究をしていました。 

阿南高専 杉野教授の魚の群れ行動を数値化する研究。

水槽のマアジに当てる光の色を変え、群れ行動の変化を観測。カオス・フラクタル理論に基づき数学的法則性を導き出して数式化する。結果を比較することで、場が作用して行動が変化していることがわかる。これが人間にも当てはまるのではないかという仮説から、杉野先生の現在の研究へと発展した。 

 

杉野 ですが、私が考えたい究極のテーマは、やはり「人間って何だ? 人間社会はどこに向かうべきか?」でした。群れ行動の数理モデルを人間社会に応用していきたいと考えていました。数学と社会を結ぶよきパートナーを探していたときに、星野社長と出会ったのです。 

▎「開かれた対話と創造の場」がイノベーションを生む 

 

星野 出会いから半年後に共同研究のご提案をいだきました。 

 

「共創場」のイメージ

杉野 依頼に快諾いただき、2016年に「共創場」の共同研究が始まったんですよね。あれから5年。IT企業であるダンクソフトとの共同研究のおかげで、学問的な領域に深みと拡張性が出てきました。 

 

星野 ぜひ詳しく聞かせてください。 

 

杉野 キイワードは「自他非分離」です。自分と他人を切断していない。それが創造性に寄与していると考えています。清水博著『場と共創』に大いに影響を受け、イノベーションが生まれる「共創場」の創出についての研究を続けています。まだ研究途上ではありますが、環境が生物の群れ行動に作用することは確実です。 

 

星野 2016年から共同研究を開始し、2018年には早稲田大学で開催された情報処理学会の全国大会にも一緒に出席しました。 

 

杉野 通常、科学や技術は最適性に向かうことが多いのですが、この研究では関連性(relevancy)を重視しています。関係の中から何かよきものが出てくると考えるサイエンスです。 

 

星野 貴重なスタンスだと感じます。コンピュータを使うと、どうしても生産性や効率性にいきがちです。ですが、大事なのは「クリエイティビティ」ですから。クリエイティブなイノベーションが起きる場づくりを追求する杉野先生の研究は、ダンクソフトがまさに得意とするところでもあります。 

 

杉野 星野社長ご自身が人間同士の関係に関心を持っていることもあって、閉じた方向に向かったりしないのですね。人間の可能性や能力を拡張する方向を見ておられる。実際に、ウェブ・ライター養成講座をはじめ、複数の共同学習プロジェクトにも取り組まれていました。そうした新しいビューポイントを具体的な活動のなかで得られたことは、研究者として大きな成果です。ダンクソフトとの共同研究だからこそ得られた結果ですね。 

 

星野 私から見ると、阿南高専で動き始めていたACTフェローシップの動きが面白かったですね。やはり杉野先生が「協働」のイメージをもっていることが大きいと思っています。 

 

ダンクソフトでは、「開かれた対話と創造の場」を重視しています。共創とは、つまり、多様な人たちと開かれた状態で対話をするなかで、予期しなかった新しいことが創造されて、イノベーションがおこっていくことですよね。また、最近はやはり「主客未分」ということを考えており、非常に近いものを感じています。 

 

その杉野先生がつくる場は、他にはない柔軟でクリエイティブな人のつながりで構成されています。高専の教員の方でこんな方がいるのかと驚きました。 

 

杉野 イノベーションを起こせる場づくりをまさに始めようというタイミングでした。その中に共通の知人や友人がいるというご縁もありましたね。 

 

星野 そこから5年で、よくぞここまで来ましたよね。すばらしい成果と速度です。よくダンクソフトを選んでいただいたと感謝しています。  

▎阿南高専と「スマートオフィス構想」の未来 

 

星野 この先に向けて、どのような展望や未来構想をお持ちなのですか。 

 

『阿南にクリエイティブなイノベーションがどんどん生まれる「共創の場」をつくりたい』と語る杉野教授。

杉野 私は以前スタンフォード大学に客員研究員として在籍していたことがあります。その時に見ていたシリコンバレーには、多様な地域クラブが多数あり、企業経営者から青少年まで幅広い人々が集まって、さまざまなプロジェクトが実践され、そしてイノベーションが生まれていました。 

 

星野 Appleもそのようにして生まれた企業でしたね。 

 

杉野 まさにですね。あのころ世界を牽引していたシリコンバレーのようにクリエイティブなイノベーションがどんどん生まれる「共創の場」を、阿南につくりたいのです。そこから第2、第3のジョブズやAppleが生まれて、世界にはばたいていく。10億円規模の事業にも発展する。そんな大きな夢を思い描いて、このACT倶楽部を展開しています。 

 

星野 ダンクソフトが推進する「スマートオフィス構想」の将来像と重なります。私達は、どうすれば愛着のあるふるさとに若者が定着していけるかを重視しています。学生と企業の協働から新たなイノベーションが生まれていく。ここで育った若者が、暮らしたい場所で暮らしながら仕事ができる。愛着のあるふるさとに暮らし、地域社会のための活動もできる。そんなプロジェクトが、数十、数百、千と増えていけば、徳島の未来が見えてきます。長期で見れば、日本の未来を変えていく動きになっていくでしょう。 

 

杉野 ACT倶楽部での関係や学びを生かして、学生が在学中にどんどん起業していくといいですね。失敗は成功の母というとおり、失敗なしに良いものは生まれません。世の中にサービスやプロダクトを出してビジネスを生み出していくのは大変なことです。早く始めて、失敗も経験して、どんどんチャレンジしていくのが何よりです。 

 

星野 そのとおりだと思います。 

 

「共創の場」の準備をする学生

杉野 ですから、始めるのはやはり若いほうがいいですね。高専生は15歳で入学し、20歳で卒業します。在学中から起業してチャレンジしはじめれば、まだまだ何度でも失敗できます。ACT倶楽部というコミュニティのなかでトライ・アンド・エラーを繰り返していけることが、イノベーションを育むよい環境となります。 

 

星野 まずは事例をつくっていくこと、ひとりの成功例を生み出していくことが大事ですね。目の前に実際に実現している人がいる。そういう人が確実に地域に増えている。成功事例が増えていくことで、他地域のモデルにもなっていきます。高専で5年かけて技術や経験を積んで卒業していく若者が、地域の外に出ざるをえない状況はもったいないです。 

  

▎「コ・ラーニング」なくして先に進めない時代 

 

星野 日本は課題先進国です。地域の課題をどう解決していくか。協働の場からどのようにイノベーションを生み出していけるか。そのためのメソッドと可能性を、今、世界中が必要としています。コロナ禍によってその必要性はさらに高まっています。 

 

杉野 首都対地方、若者対高齢者、男対女……。なんでも二項対立の対立構造で捉えがちな世の中です。その呪縛から解放され、役割を担いあえる「自他非分離の共創の場」をつくりたい。ITベースのスマートオフィスなら可能なのではないでしょうか。 

 

また、人的環境は、より多様で多年代であるほど良いと考えています。人それぞれに得意なことがあり、異なるものを持っています。多様な人々による自他非分離のよき場をつくることは、「スマートオフィス構想」の真の姿でもあるのかもしれません。 

 

ダンクソフト 星野晃一郎

星野 おっしゃるように、多様な人たち同士での「コ・ラーニング」(共同学習)なくして先に進めない時代です。各自がイノベーションを担うためには、マインドセットを切り替えることがますます重要になっていきますね。 

 

杉野 私自身も痛感していますが、人間、年齢を重ねると身体的な課題が必ず出てきます。それでもなお、すべての人が受容されるべきだと私は思うのです。一人ひとりが秘めている未知の可能性は必ずあります。ITベースのスマートオフィス構想は、それを可能にしてくれると確信しています。そういう意味では、「スマートオフィス構想」とは、ある種の社会運動なのかもしれませんね。 

 

星野 日本が直面する多くの困難や課題を越えていく、小さくても確かな事例を広げていきたいですね。人間の可能性から、ひいては社会の未来、人類の未来まで見据えるような広く深いお話をありがとうございました。 


 [voice] 

ダンクソフト 竹内祐介

竹内祐介(開発チーム マネージャー、インターミディエイター、徳島サテライト・オフィス勤務) 

 

 2018年度から私は阿南高専で非常勤講師として授業を受け持っています。情報コースの学生を対象に、最新技術など実践的なテクノロジーを担当しています。 

 サテライト・オフィス、人も技術も多様である状態、そして、対話と協働からイノベーションを起こしていくという考え方は、ダンクソフトが文化として以前からもっていた特性です。そこに、杉野先生との連携によって、学術的な見地からの裏付けが付加されたことは大きいです。 

 ITの分野は、学びつづけないと仕事ができません。学び直しの必要性はどんなエンジニアもよく理解しています。「ACT倶楽部」のように、学生たちと協働できる未来志向のコ・ラーニングの場はとても重要で、エンジニアにとって有意義で有益です。企業や先輩が学生に一方向に教えるということはもはやなく、むしろ、コ・ラーニング型で進めていかないと、学生は参加意欲が削がれ、企業の側もやっていけなくなる時代です。ACT倶楽部やACTフェローシップの価値は、今後ますます高く認識されていくでしょう。 

 

 

事例:「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に

お客様:はなまる学童クラブ 様

はなまる学童クラブは、沖縄県石垣市にある宮良地域初の放課後学童クラブだ。2020年春、学童立ち上げにあたり、ダンクソフトの支援でkintoneを使った「学童保育サポートシステム」を開発・導入した。実はスタッフのほとんどがタブレットとスマホのみで暮らしている、デジタル活用とは程遠い環境にいた。それが、勤怠管理から児童情報の共有、経理書類作成などをスマホのアプリで楽に運用できるようになり、学童業務の効率化を実現。捻出できた費用や時間は、児童一人ひとりの個性が尊重され、可能性を引き出せる理想の学童づくりのために、活かされている。

 

■東京から2000キロのアナログ地域ではじまった、子供たちの居場所づくり

 

「学童設立のきっかけは、70代のある女性でした」と語るのは、はなまる学童クラブ立ち上げメンバーの一人で、運営者である松原かい氏だ。「かつえばぁば」の愛称で親しまれるかつえ氏は、中学校教員を引退後、民生委員として地域を長年見守っている。

 

当時、宮良地域には放課後学童クラブはなく、子どもたちが学校内で遊べるのは4時半まで。かつえ氏は、地域で行き場のない子供たちの姿を見るにつけ、「放課後も児童が安心して過ごせる場所が不可欠だ」と、学童づくりの必要性を感じていた。

 

はなまる学童クラブの松原かい氏(右)

3児の母でもある松原氏は、本職であるフリー・アナウンサー業のかたわら、石垣市で唯一の児童館設立に携わるなど、これまでも子育て支援に情熱を注いできた。同じ宮良地区に住むこの2人が村の読み聞かせボランティア・サークルで出会い、地域内に学童クラブの設立を目指して数名のメンバーとともに活動を始めることになった。それは2019年8月、オープンからわずか半年前のことだった。そこから猛スピードで動きはじめ、地域の親御さんたちのニーズや要望をリサーチし、対話を重ねた。その後、2020年3月末、ついに市から地域での必要性を認められ、石垣市教育委員会、宮良小学校、はなまる学童クラブの三者が正式に協定を結んだのだ。

  

■アナログ人間が「学童保育サポートシステム」の導入に踏みきったわけ

 

はなまる学童クラブのスタッフ

大急ぎで設立準備を進めていた矢先、コロナの影響により、始業式つまり学童開所日の前日に、しばらくの学校休校が知らされる。これに伴い、急遽、放課後だけでなく丸1日学童をオープンすることとなり、倍のスタッフ人数が必要となった。そんな中での一番の課題が、勤怠管理をはじめとする運営管理の仕組みづくりだった。松原氏によれば、知る限りでは宮良地域ではパソコンがそれほど普及していないようだ。現に、かつえ氏はそろばんを使って運営費を試算していたほどのアナログ度合である。スタッフや保護者も例外ではなく、アナログ環境で暮らしている。

 

そんな折に松原氏が紹介を受けたのが、東京にあるダンクソフトだった。松原氏は、ダンクソフトはデジタルがうとい方でも頼りになる存在だと聞き、まずは急務だったスタッフのシフトづくりから相談を始めた。初めてのZoom会議にはタブレットを使って接続し、テクノロジーに驚きながらも、困りごとをいちから相談していった。手厚いヒアリングを経て提案されたのが、kintoneによる「学童保育サポートシステム」だった。そして、協働プロセスが始まった。パソコンを使わずにも、スマホやタブレットであらゆる記録・管理・情報共有ができるように、ダンクソフトが伴走しながらシステムをつくりあげていく。

 

当初はデジタルに半信半疑だったという松原氏にとって、担当者であるダンクソフト 中香織の存在が大きかったという。「2児の親でもあり、学童を利用したことがある働くお母さんであるなど、中さんとは共通点が多く、深くしゃべらなくてもお互い頑張っているのだという信頼感がありました」と、松原氏は笑顔で話す。「デジタルが分からない人にとって、まず導入した際の効果の想像がつきません。何ができるのかについて想像が及ばないので、それを導入したらいいのかどうか判断がつきません。お話をする前は市販のシフト表アプリを使おうかと考えていましたが、中さんを頼りに、やってみようと思えました」。

  

■初心者にも使いやすいアプリで、業務が効率化、スタッフ間連携もスムーズに

 

「学童保育サポートシステム」の主な内容は、スタッフの「勤怠管理」や児童情報を記録する「児童日報」、「出席簿」、市に毎月提出する「収支報告書」や「保育料管理帳」「給与台帳」などだ。

 

入力に不備があると、赤字でエラーメッセージが出るようになっている

ヒアリングを踏まえて中が重視したのは、デジタルに不慣れな方でも利用できるユーザー・インターフェイスである。例えば、入力に不備があると、赤字でどうすればいいか表示を出したり、不足がある場合は保存ができないようにしたりなど工夫した。kintoneのノウハウをいかしつつ、「初心者でもわかる、利用者視点のシステムづくり」を徹底した。実際に、今では10名のスタッフ全員がkintoneを使って業務連携を行っている。

 

お話をうかがった、はなまる学童クラブの仲間 巳賀 氏(左)と中藤 詩織 氏(右)

スタッフのひとりである仲間 巳賀(みか)氏は、自身の子育てがひと段落した後、地域の子供たちのために活動したいと、はなまる学童クラブに参加した。kintoneアプリの使い方を覚えるには、それほど時間がかからなかったという。「出欠簿や児童日報など、あらゆる記録がスマホでできるので助かっています。場所や時間を問わず利用できてありがたい」と、kintoneを評価する。また、「入力した情報をスタッフみんなで共有できることも魅力のひとつ。週に数回現場に入るスタッフにも、不在時に起ったことを伝達できるので」と、スタッフ間連携を重視するうえでのアプリの活躍を語った。

 

スマホで簡単に入力

また、同じくスタッフの中藤 詩織氏は、パソコン以外の端末で利用できるメリットを強調する。「以前勤めていた学童では、子どもたち全員の情報を数台のパソコンのみで入力・管理していました。そのため学童の施設内にいるときにしか記録ができず、入力待ちの列ができて業務に滞りがでたり、残業が発生したりすることもありました。はなまる学童では、kintoneの仕組みがあるので、時間を問わず、複数人が自分のスマホから同時に、どこにいても入力できることが魅力です。また、手書きで書類をつくるときの書き損じが発生することもありません。業務の進み具合が全然違います」。

 

「中さんは私のような“できない人”の声に耳を傾け、困りどころに新しい機能を一つひとつ追加してくださいました。こうしたきめ細やかなコミュニケーションを積み重ねるうちに、ダンクソフトさんへの安心感が自然とうまれてきました」と、松原氏は今までのプロセスを振り返る。

  

■行政への書類報告も、学童アプリがすべて解決

 

保育料を管理するページ

はなまる学童クラブが絶賛するのが、石垣市へ毎月提出する書類手続きの効率化だ。「保育料」にまつわる業務を例にとると、学童の利用料金体系は多岐にわたる。「ひとり親割引」「兄弟姉妹割引」「2つの割引の併用」などがあり、児童一人ひとりの利用料は異なる。そのため、手動では計算が煩雑になっていた。

 

今では、kintoneに基本情報さえ入力しておけば、各自の利用料が正確に算出できるようになっている。さらにそれらの情報が、石垣市へ毎月提出する書類のひとつである収支集計にも、自動で反映される。市が指定する書類に合わせて、中がkintoneをカスタマイズしたことが功を奏した。

 

松原氏は、「毎月の石垣市への書類提出は相当大きな負担になりますが、日々入力した情報がほぼそのまま提出できるフォーマットになっていて助かっています。市の担当者さんからも、書類の正確さや明確さを評価いただけています」と、業務の効率化の恩恵を痛感している。

  

■効率化で生まれたリソースを有効活用し、子供の可能性をひらく学童づくりへ

 

このようにスタッフ一人ひとりが自分で操作し、情報をいつでもどこでも入力できるようになったことが、業務の効率化に大きく寄与。そこからうまれた時間や費用は、今、様々に活用されている。その筆頭は、はなまる学童クラブが何より大切にしている、児童へのケアの充実である。

 

出席簿・児童日報のページ

仲間氏は、これまではどうしても低学年やサポートを必要とする児童に付きっきりになりがちだったが、日々の業務の効率化によって、より多くの時間を子どもたち一人ひとりに充てることができるようになったと語る。また、児童日報をはじめとするスタッフ間での情報共有によって、週1回・月1回勤務のスタッフが、学童にいなくても子どもたちの最新状況を把握できるようになった。これが、より手厚い児童のケアにつながっている。

 

さらに、保護者とのコミュニケーションも改善した。中藤氏によると、過去に勤務した学童では、保護者から「学童の中で子どもがどのように過ごしているのかわからない」という声が多く届いたという。はなまる学童クラブでは、kintoneによる学童アプリでのスタッフ同士の情報共有に加え、グループLINEで保護者とのコミュニケーションをとっている。子供たちの活動写真を共有したり、こまめに連絡ができる環境を用意した。また送迎時には、アナログでの会話を大切にすることで、対面での親御さんとの関係も少しずつあたたまっていると、中藤氏は顔をほころばせる。

 

はなまる学童クラブを支えるスタッフ

スタッフへ還元もできていると、松原氏はシステム導入の効果を実感している。多くの学童では、運営者とは別に、煩雑になる管理業務のために事務員を雇うことが必要だ。しかし、はなまる学童クラブは、kintoneがあるため、事務員を雇わずに、本来事務員が担うはずの業務一切を松原氏が引き受けることができている。事務員分の人件費を、今いるスタッフに還元することで、島の学童水準よりプラスαの時給を実現できているという。「パソコンがない私ひとりで事務員分の仕事ができるのも、kintoneアプリがあるからこそ。スタッフも『超ホワイト企業!』と喜んでくれています。学童の子供たちが、毎日すてきに働く女性スタッフたちの姿を見て、女の子も男の子も、女性が働くことはすばらしいことだと思ってくれたら……」。そう語る松原氏は、子供たちが未来を担う頃には島にも男女共同参画社会が実現しているようにと、島の未来へ思いをはせる。

  

■学童アプリでひろがる事業運営の可能性と子供たちの未来

 

タブレットでも簡単に、児童の様子を入力できる

ゼロからのkintone導入の効果は、はなまる学童クラブから他の学童へも波及している。隣村で新たに開所された放課後学童クラブでは、やはりダンクソフトのシステムが選ばれた。学童クラブ運営者が、はなまる学童クラブの元副主任であり、アプリの便利さを肌で感じていたことが採用の決め手だったという。

 

また、中は自らの学童利用経験から、今後は保護者や学校も含めたkintoneの利用を視野に入れている。「私が利用していた学童で、親が翌月の予定を紙で提出し、スタッフが手間をかけてそれらをパソコンに入力している現場を目の当たりにしました。ここもデジタルを活用することで、スタッフのシフトと同じように、リアルタイムで児童のスケジュールを共有できるようになります」。ほかにも、学校と学童で2度行われている児童の検温情報も、学校の理解が得られれば共有することがシステム上は可能だ。デジタルを活用することで、今までにない学校や保護者、地域との連携の可能性が、まだまだ眠っている。

 

「いよいよ石垣の小学校でも、一人1台のタブレットを利用した授業が始まります。これからもダンクソフトさんからデジタル面の支援を受けながら、デジタルをうまく使っていきたい。はなまる学童クラブが保護者にとって安心して子供を通わせられる学童に、また子供たちにとって可能性を伸ばせるよりよい居場所となれるように、活動していきます」と、松原氏はこれからの熱意を語った。

 

はなまる学童クラブでは、すでに来年度の入所希望も出てくるなど、保護者や地域からの反響もあるそうだ。学童支援システムとともに始まった学童運営も、4月からは3年目に入る。児童たちが楽しく生き生きと過ごせる学童クラブが、実現できつつあるようだ。


■導入テクノロジー

kintone

kintone学童保育サポートシステム

※詳細はこちらをご覧ください。https://www.dunksoft.com/kintone/gakudo

 

■ はなまる学童クラブ(放課後児童クラブ @宮良小学校 家庭科室)とは

 石垣市の宮良地域初の放課後学童クラブ。2021年10月現在、小学校全校生徒100名強のうち、23家庭・27名の児童が利用している。児童一人ひとりや保護者や地域とのコミュニケーションを重視した安心・安全な居場所づくりを心がけている。目指すは子どもたちにとっての「第2のおうち」。

 

https://www.dunksoft.com/hanamaru/200617 (はなまる学童レポートURL)

ダンクソフトの“さきがけ文化”を体験するインターンシップ


▎コロナ禍でもフランスからテレワークで5週間の学生インターン 

左上から時計回りに、インターン生のルカ、ダンクソフト 代表取締役 星野、ダンクソフトのウムト、ダンクソフト 取締役 板林

左上から時計回りに、インターン生のルカ、ダンクソフト 代表取締役 星野、ダンクソフトのウムト、ダンクソフト 取締役 板林

この夏、フランスの大学院生をインターンとして受け入れました。フランスのエクス=マルセイユ大学のビジネス法研究所で修士に在籍する学生で、名前をルカといいます。コロナ禍のなか、5週間にわたるテレワークでのインターンでした。ルカからの最終レポートを引用しながら、紹介します。 

 

いつか日本で仕事をするためには、法律以外のスキルを身につけたほうがいいと考えました。そこで、夏休みを活かして、日本のIT企業でインターンをすることにしました。ダンクソフトのことは、日本政府が発表した「高度外国人材活躍企業50社(※)」のリストに掲載されていたことで知りました。もちろん、COVIDの問題から、日本に移住することは不可能ですが、すべてのことを遠隔地でスムーズに行うことができました。 

  ※「高度外国人材活躍企業50社」(経産省)

コロナ禍で中小企業の採用やインターン受け入れが難しくなっています。しかし、ダンクソフトの場合、整ったテレワーク環境があります。テレワークでも社員がプロジェクトを遂行し、学びあうことに慣れていますから、インターンシップも可能です。期間終了後、日英仏3ヶ国語での充実したレポートが届きました。彼にとって良質なインターン経験となったことは私達にも嬉しいことです。 

 

インターンシップのプログラムは非常によく構成されていました。市場調査からテスト、HTMLの開発まで、さまざまな仕事に挑戦しました。日本のデータ・コンプライアンスやウェブ・デザインについての説明も受けました。私の国では、インターンとしてこのような配慮を受けることは結構稀なことなので、嬉しい驚きがありました。私は日本で働くことに自信が持てるようになりましたし、ダンクソフトで働くこと以外に、この2ヶ月間をより良く過ごすことはできなかったと確信しています。 

ITではなく法律を専門とするヨーロッパの若者と一緒に働く経験は、受け入れ側である私達にとっても新鮮でした。やはり価値観や文化の違う人が入ると、視点が変わって面白いですね。ダイバーシティ(多様性)の価値や重要性もより深いレベルで認識できましたし、スタッフにとっても非常に有意義な体験でした。  

 

▎海外からエンジニアがインターンを経て入社 

 ルカのインターンシップをホストとして受け入れていたのは、ダンクソフトに在籍するトルコ人スタッフのウムトです。じつはこのウムト自身が、ダンクソフトが最初に受け入れた第1号のインターンでした。 

ダンクソフトに在籍するトルコ人スタッフのウムト

ダンクソフトに在籍するトルコ人スタッフのウムト

ダンクソフトでは、80年代から海外エンジニアと活発に交流していましたが、インターンシップというスキームで学生を受け入れたのは、このときが初めてのこと。面接は当時主流だったskypeで行いました。その後、2011年3月に東日本大震災が起こり、来られないかと懸念しましたが、こういう時だからこそ日本のために貢献したいと、6月ごろに2名の大学生が来日しました。ご存じの方も多いと思いますが、明治時代、和歌山沖でトルコ船が遭難した際、現地の日本人が乗組員を献身的に救助したという話があります。彼らはそれを忘れていないのですね。 

 

当時ウムトはトルコの大学で学ぶ学生で、来日後はサテライト・オフィスの実証実験に役立つツールを開発するなど、才能を発揮しました。その後トルコに戻り大学を卒業後、再び来日してダンクソフトに就職しました。現在はエンジニアとしてバリバリ活躍しています。 

 

▎マイクロソフト社とのニート支援プログラム 

その頃から、ダンクソフトでは、さまざまな形でインターンや研修生を受け入れてきました。  

就労支援プロジェクトに参加したのテレワークインターン達

就労支援プロジェクトに参加したのテレワークインターン達

2014年には、マイクロソフト社および若者支援のNPO法人育て上げネットと連携し、若年無業者(いわゆるニート)の就労支援プロジェクトを実施しました。プログラミングの学習からインターンまで、すべてオンラインで行いました。  

この取り組みは、その後も数年にわたって継続しました。その結果、今は退職しましたが、2名の若者がダンクソフトに就職しています。 

 

総務省のテレワーク実験も兼ねた北海道での合宿研修、全国規模でのオンライン研修など、さまざまな取り組みを重ねていき、「通わなくてもオンラインでインターンができる」という手応えは、2014年時点で確かなものになりました。他より動きがかなり早いと思います。 

 

ひとくちにニートと言われる若年無業者ですが、それぞれの長所や個性が活かせる、働きやすい環境があるのです。オンライン、テレワークという働き方には、彼らを含め、人間の可能性を引き出すポテンシャルが確実にあります。 

 

▼テレワークインターン修了式の様子 

https://www.dunksoft.com/news/news/20180327.html

  

▎経産省若手官僚が驚いたダンクソフトの先進性 

 経済産業省官僚のインターンを受け入れたこともあります。若手官僚に「先進性のある企業で就労体験をさせたい」ということで、当時、「中小企業IT経営力大賞」、「テレワーク先駆者百選」、「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」、「ダイバーシティ経営企業100選」等、さまざまな賞を受賞していたダンクソフトに白羽の矢が立ったのだそうです。  

ダンクソフトのサテライトオフィス

ダンクソフトのサテライトオフィス

研修期間は約2週間。出社して仕事をしたり、地域で展開していたサテライト・オフィスに出張したり、テレワークの実際を経験したり。離れて仕事をしているテレワークや、ファックスもコピー機もないペーパーレス・オフィスを体験して、「こんな働き方があるのか」と、ずいぶんカルチャー・ショックを受けていました。 

 

昨年、ワシントンDCに留学中の際に、向こうからダンクソフトのオンライン・コミュニティに参加したりもしてくれました。こうした経験を生かして、あっと驚くような面白いことを実現してくれるでしょう。楽しみにしています。 

 

▼ダンクソフトの受賞歴等 

https://www.dunksoft.com/award 

  

▎徳島の学生がテレワークでインターン  

阿南工業高等専門学校のインターン生

阿南工業高等専門学校のインターン生

近年は、徳島県阿南市の阿南工業高等専門学校(阿南高専)から毎年インターンの受け入れをしています。徳島サテライト・オフィスの竹内祐介(開発チーム マネージャー)が講師として授業を担当しているご縁もあり、継続的な関係を築いています。 

 

最初の年は、実際に東京にやって来て就労体験をする、ごく一般的なインターンでした。その後、サテライト・オフィスとテレワークを併用したスタイルになり、現在はコロナ禍でほぼテレワークのみとなっています。 

 

毎年ブラッシュアップを重ね、遠隔形式でもきわめて充実したインターン経験ができる確信ができました。社会に出る前の学生、特に地方在住の若者が、テレワークの可能性を実感する。その経験は、大都市圏に住んでいない彼らの将来の可能性を大きく広げてくれます。ひいては日本の未来をよりよくするためにも、一人でも多くの若者たちにそうした体験を提供していきたいものです。 

 

▼阿南高専 インターン生の声 

https://www.dunksoft.com/message/2020-11 

  

▎受け入れ側にとっても、さまざまなプラス効果 

 インターンの受け入れは面倒だと躊躇する中小企業は多いかもしれません。しかし、こうしたインターンの受け入れは、ダンクソフトにとっても、プラスとなっています。 

 

外国人、若年無業者(ニート)、官僚、学生(非首都圏在住)。さまざまな属性の人が来ることで、異質な考え方に出会うことができます。社内だけで閉じているとどうしても考え方が似てきます。彼らの参加によって、スタッフの視点が変わり、発想が刺激されます。「開かれた対話」を通して意外なアイデアを受け入れる素地が、ますます整っていきます。 

 

採用にもよい影響があります。阿南高専のインターン経験者も、2名が卒業後ダンクソフトに入社。お互いをよく知ったうえでの良質な採用につながっています。また、新しい人たちを受け入れること自体に慣れ、関わり方も上達していきます。たとえば、新しく入ったスタッフへのカリキュラムが洗練されました。また、新しく入ったスタッフに次の人の受入をホストしてもらうことで、さらによいコ・ラーニング(共同学習)の循環が生まれています。 

 

▼スタッフ全員がバージョンアップしていく 

https://www.dunksoft.com/message/2021-07 

  

▎ダンクソフトに“留学”? 

 「ダンクソフトの働き方やオフィスを見たい、知りたい」という視察のニーズは多いです。大企業から公共機関、NPOまで、さまざまなところから来られます。 

 

「イノベーションの場」である、ダンクソフトの神田オフィス

「イノベーションの場」である、ダンクソフトの神田オフィス

ダンクソフトは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことで、新しい働き方をいちはやく実践してきました。ペーパーレス、テレワークといった、インターネット時代のオフィスのあり方と働き方。それを見たいとおっしゃるのですね。コロナ以前から多かったですが、現在は「スマートオフィス構想」を実践する拠点として、さらに注目いただいているようです。これからテレワークやペーパーレスを考えている企業や団体は、当社の神田オフィスに、ぜひ視察にいらしていただきたいと思っています。 

 

ただ、やはり外側から見るだけではわからないことが多々あります。インターンとして実際に体験し、実感をもって知ることは、「ダンクソフトの“さきがけ文化”に触れる」絶好の機会として、刺激的な学びとなるでしょう。そういう意味では、ダンクソフトでのインターン経験は、異文化体験、留学に似ているかもしれません。デジタルを上手に取り入れて、温かくてクリエイティブな先進的ワークスタイルを実現しています。 

 

▼スマートオフィス構想を実践する新拠点 

https://www.dunksoft.com/news/2021/3/8 

  

▎異文化と協働する「スマートオフィス構想」 

 今後ダンクソフトがめざすさらなる未来、「スマートオフィス構想」は、こうした経験の受け皿になる場でもあります。インターネットにあらゆるものをのせていくことで、国内外を問わず人々が結びついていく。関係の網の目を広げていける。ダイバーシティと開かれた対話による未来志向の協働の場、イノベーションの場です。 

 

ダンクソフトは、企業、団体、学生のインターンを歓迎します。また、ダンクソフトのデジタル文化を短期的に体験していただけるプログラムも考えていく予定です。 

 

▼スマートオフィス構想とは 

https://www.dunksoft.com/message/2021-04

価値創造は「驚き」からはじまる─東京2020大会のボランティア現場から─ 


▎ボランティア現場から見た東京2020大会 

9月5日、代々木のオリンピックスタジアムでパラリンピック閉会式が行われ、東京2020大会が閉会しました。コロナ禍が続くなか、人類史上初めての無観客開催という挑戦でした。  

実は私は、安全に気を付けながらもオリ・パラの大会ボランティアをしていました。おかげで、多くの驚くべきシーンや瞬間に立ち会う機会を得ました。 

 今回のコラムでは、ボランティアという“中の人”として実感した「驚きの体験」を中心にお話します。今回のオリ・パラで見聞し感じたこと、そこから見えてきた人間とデジタルの協働、そしてダンクソフトの未来について、考えたことをお話ししていきます。 

開催を巡ってはさまざまな意見や議論もありました。ですが、アスリートが人類の可能性を超えていく姿はやはり純粋に素晴らしい。私はあらためてそのことに感動しました。また、テクノロジーの進化がはっきりと可視化された大会でもありました。 

 

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▎はじまりは2002年の日韓ワールドカップ 

 世界規模で行われるスポーツ大会のボランティアをするのは、これが2度目になります。初めてボランティアを経験したのが、2002年のFIFAワールドカップ日韓大会の時。有意義な体験でした。そうした経緯があったので、今回もこれは経験しておきたいと考え、応募しました。 

今回のポジションは、幕張メッセ(千葉市)フェンシング会場でのメディア・サポートでした。自宅から往復2時間、日によっては朝5時起きで出かけ、帰宅は夜10時を回ることも。しかも持ち場の一部は40度を超える屋外という厳しいコンディションでした。 

結論として、やはりやってよかったです。素晴らしい体験でした。チャレンジすることで得難い「驚き」が得られました。「驚き」には「発見」があります。新しい世界との出会いがあります。クリエイティブな可能性の入口となります。 

▎日本フェンシング初の金メダル、その歴史的瞬間に立ち会う 

忘れられない場面のひとつは、日本フェンシング初の金メダル、男子エペ団体優勝の瞬間に立ち会えたことです。なんといっても、私の持ち場である会場での出来事です。空気の変化を肌で感じていました。 

一瞬で流れが変わったのは、準々決勝で日本がフランスに勝った瞬間でした。世界ランキング8位の日本が、4連覇を狙う世界ランキング1位のフランスを下したのですから、大ニュースです。 

一気に注目が集まったため、即時対応で殺到するメディアの受け入れ体勢を整え、決勝が始まるまで対応におおわらわでした。そして、日本優勝、国歌斉唱、記者会見。優勝した日本チーム自身が驚いたかもしれません。この先のパリ大会での活躍がさらに楽しみです。これほどの瞬間に立ち会えたことは、忘れられない経験となりました。 

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▎デジタルを駆使した大会運営とメディア・センター 

 デジタルの進化と浸透ぶりにも驚きました。今回、ボランティア・チーム運営の連絡や情報共有に使っていたのは、ビジネス・チャット・ツールです。進んでいますね。メディア・センターはもちろんインターネット完備で、メディア・クルーは皆パソコンを持ち込んでいました。 

 19年前、2002年の日韓ワールドカップでは、まだ複合機がメディア・センターに並び、手書き原稿をFAXで送っている人がいました。この20年の変化を思うと、技術の進歩は圧倒的です。 

また、映像は4Kでめざましくきれいになりました。一方で、現状では通信速度がまだ追いついていないため、生放送映像に一瞬の遅れが生じます。今の技術段階はそういう時代なのだと、これは現場にいたからこそ気づいたことでした。 

▎ボランティア・チームは「コ・ラーニング」だった 

 ボランティア・チームの動きに「コ・ラーニング」を感じたことも印象深いことでした。異例づくしの大会で、人も不足がち。誰かが教えるマニュアル通りにやればいい、という状況ではありませんでした。 

そんな中、「楽しもう」と多くのボランティアが言っていました。そして、楽しみながら、言われなくても自分で考えて動いていく。現場・状況に応じて柔軟な判断ができていく。少なくとも、私のチームでは、対話を通して互いに学びあいながら遂行する、コ・ラーニングの現場が生まれていることが見て取れました。  

▎13歳の金メダリストに見た新しい価値観と可能性 

 ボランティアとして関わってはいませんが、スケートボード、スポーツ・クライミング(ボルダリング)の選手達に見られる価値観の新しさにも、目を見張りました。他の選手を「敵」とみなして競うことをしません。一緒に目標に向かい、さらなる可能性に挑戦していく「仲間」として応援しあっているようです。 

 だからこそ、次のレベルにチャレンジしていける。皆で飛躍し全体のレベルをあげていけるんですね。史上最年少の金メダリストとなったスケートボード女子ストリートの西矢椛選手は13歳。新しい技を出せる瞬間を、純粋に仲間と楽しんでいるように見えます。その結果、世界1位となりました。オリ・パラが見せる、これからの人類の可能性を象徴する、驚きの出来事でした。   

▎パラリンピック記録が世界新を更新する 

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最後に強調したいのが、パラリンピックへの大きな期待です。一部では有名な話ですが、義肢の進化はめざましい。走り幅跳びでは義足ジャンパーがオリンピック超えの記録を出すと期待されています。

今回のパラリンピックでは、ドイツのマルクス・レーム選手が8メートル18を飛びました。8月のオリンピック優勝記録(8メートル41)には届かなかったものの、わずか23センチの差まできています。 

 道具やトレーニング方法が変わって飛躍していく。これは、パラリンピックに限りません。肉眼での判定が難しい場合のビデオ判定は、テニスやサッカーをはじめ、各種スポーツ競技で使われるようになりました。さまざまなテクノロジーが媒介することで、できることが広がっていくのです。 

▎オリ・パラがひとつになるとき 

 スポーツ以外でもそうです。将棋やチェスは、AIが人間に勝つ段階に入りました。そうすると、今度はそのAIを相手に人間が学ぶことで、次の次元の棋士が生まれる。そのような方向に、学び方が変わったわけです。人間が機械に敗北したのではなく、人間と機械との協働が、これまでより一段高い所で起こり、人類の成長につながっていく流れだと私は思います。 

 ダンクソフトが扱う「デジタル・テクノロジー」も、これに通じるものがあります。人間の可能性を引き出す媒介となるものと捉えています。 

 今大会でも、性の多様性についての話題がありました。過去3倍の182人がLGBTQであることを公表しました。またパラリンピックの理念は、常に多様性に挑戦してきました。将来、オリンピック・パラリンピックが現在の「男と女」「健常者と障害者」という分け方をしなくなる日も、遠くないのではないでしょうか。 

▎人類は、人類の可能性を超えていく

東京2020大会でのこうした驚くべき体験を振り返って思うのです。たとえばウサイン・ボルト選手の世界新記録更新を人々が喜べるのは、そこに人類の可能性を見ているからです。陸上だけでなく、これまでの記録を超えていく人が、皆から称賛される。そういう世界です。私達ダンクソフトも、そこに挑戦していきたいと思います。 

40周年に向かう今年、皆さんにもっと「驚き」を提供していきたいと考えています。対話を通して、楽しみながら、ともに高め合う「コ・ラーニング」の時代へ。デジタルで広がる可能性をさらに進化させ、期待をより上回る新しい価値をご一緒に創出する存在でありたいと考えています。 

 

「コ・ラーニング」という考えで仕事をすれば、仕事はもっと楽しくなる


 ▎コ・ラーニング:「仕事を楽しく」進めるカギ

 

ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎

ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎

星野 前回7月に、新年度のはじまりとして、「コ・ラーニング元年」のお話をしました。

 今回はその続きで、「コ・ラーニングという考え方で仕事をすれば、仕事はもっと楽しくなる」という話をしたいと思っています。

今日は、当社の新たなプロジェクトに取り組んでいる板林淳哉と一緒です。さまざまな現場で起きる、実際のエピソードを交えながら進めていきましょう。

ダンクソフト 取締役 板林淳哉

ダンクソフト 取締役 板林淳哉

板林 今日は、ダンクソフトが大事にする「コ・ラーニング」や「対話の文化」が、プロジェクト現場での「楽しさ」につながっていることを、少しでもお伝えできたらと思っています。

 

▎コミュニティの活性化には、ARサービス「WeARee!(ウィアリー!)」

 

板林 早速ですが、まず、ある現場でのエピソードからお話したいと思います。新製品開発のプロジェクトです。

 

ダンクソフトは、2020年11月に、ARサービス「WeARee! (ウィアリー!)」をリリースしました。これはコミュニティづくりを促進することができるツールです。簡単な操作で、ARコンテンツをインターネットにのせることができます。そしてウェブページを作成し、参加者と交流することができるというものです。

機能的なメリットとしては、GPSの位置情報を紐付けるのはもちろん、3Dモデルが使えること、手頃な価格帯、専用アプリ不要の使いやすさなどがあります。

 

手軽で使いやすいツールなので、これまでデジタルに馴染みの薄かった人にこそ楽しんでいただけると嬉しいです。誰にでも使ってもらえるツールを目指しています。

 

星野 そうそう、そこは常々ダンクソフトでも考えていることですよね。この神田オフィスにあるダイアログ・スペースにまつわる情報を WeARee! にのせたいですね。お客様やスタッフがバーチャルで訪れて、見学をして、楽しくコミュニケーションができるようにしたいなと。先日は北海道からも WeARee! への引き合いがありましたね。

ダンクソフト神田本社内のダイアログ・スペース

ダンクソフト神田本社内のダイアログ・スペース

 板林 参加者同士で継続的にコミュニケーションがとれる状態をWeARee!でつくれることもポイントですね。これからはビジネスにせよ、コミュニティの活性化にせよ、一方向ではなくて、コミュニケーションがカギですからね。

 

参考記事:WeARee! 導入事例:上野動物園で実施した実証プロジェクト

▎美術館 × WeARee! のアート・プロジェクト

 

板林 今、このWeARee! を使ったユニークな取り組みが、現在進行形で進んでいます。まちなかのパブリック・アートを対象として、屋外オープン・スペースで鑑賞イベントを開催しようというものです。

東京都美術館と東京藝術大学が「とびらプロジェクト」というソーシャル・デザイン・プロジェクトを実施しており、「とびラー」と呼ばれるアート・コミュニケータたちが活躍しています。広く一般から集まったメンバーの方々で、3年の任期後も有志でさまざまな活動を続けています。この活動は、その「とびラー」OB・OGチームとの協働プロジェクトなんです。

 

星野 当初は美術館での館内イベントを考えていたんですよね?

 

板林 そうなんです。ですが、撮影条件や現場のオペレーションなどを具体化しながら話し合うなかで、まちなかのパブリック・アートを対象として屋外でやってはどうかという、アイディアが思いがけず浮上しました。

 

いろいろ考えていくと、その方が、制約が少なく、参加者が楽しめて、WeARee!の機能もフル活用できるね、と。主催者の「かなえたいこと」を聞くことで、私たちダンクソフトのメンバーにも新たなアイディアがわきました。最新の技術やツールをどう使えるか、何ができるか、もっと面白い可能性はないか。相互の対話の中から、どんどんよりよい意見が出てきました。

▎「コ・ラーニング」が新たなアイディアを生む

 

星野 双方のプロジェクト・メンバーのあいだで思いがけない見方が生まれたというのは、対話の効果ですね。

 

板林 はい、まさに対話を重ねて、お互いにイメージや理想を出し合うことで生まれる相乗効果でした。誰かがアイディアを出すと、別のメンバーから「それならば」とさらなる発想が飛び出してきます。その繰り返しでした。結果、当初は誰も想像もしていなかったグッド・アイディアが生まれたのです。

 

星野 いいですね。そのプロセスは、まさに「コ・ラーニング」が起こっていますね。

 

板林 WeARee!の開発チームには、トルコ人のメンバーも参加しています。多様性のあるチーム・メンバーから、いろいろな見方が入ることも、プロセスを楽しくしていると思います。

 

星野  結果として“誰も予期していなかったこと”が起こっているのが、大事なポイントですね。予定したことを予定していた通りにやることは誰でもできるし、案外簡単です。そうではなく、予定調和ではなくて、予期していなかった成果・効果が生まれるコミュニケーション・プロセスは、ダンクソフトならではですね。

 

お客様との関係が、発注・受注の関係ではなく、お客様・サービス提供者という立場を超えて、パートナーとして「一緒になって取り組む姿勢」がプロセスを楽しくしますね。これが「コ・ラーニング」のはじまりです。どちらかが相手の上に立とうとすると、この関係は生まれません。

 

目線を合わせて、一緒になって考えることができるから、お客様が求めていたことがよく見えてきますし。多様な人たちがお互いに対話するなかで、新しい発見がありますから、おのずとイノベーションが生まれやすい。お客様も、何が課題で、そのためにデジタルで何ができるのかを、よくご自分で理解できるようになっていただけます。

  

▎コミュニティが活性化すれば、日々の業務連絡さえ楽しくなる

 

星野 日頃の職場でのちょっとしたやりとりも同様ですね。対話の文化があれば、コミュニケーションにストレスが少なく、事務的なコミュニケーションにさえ楽しさが生まれたりもします。

 

板林 それでいうと、最近のダンクソフトでは、スタッフが日々の仕事を報告する「日報」が割に面白いんです。一般的な、形式的な日報とは印象がずいぶん違います。たとえば「今日のBGM」を書き添える人がいたり、毎回なぜかラーメン店情報をつけていたり。高専(高等専門学校)を卒業したばかりの新入社員が入ったことによる新しい風も感じています。

 

星野 徳島の山本君ですね。彼の日報は、ちょっとしたショート・コントになっている気がしますよ。先日のは、チョコボールの“当たり”が出た小話でしたね。話にオチがあるのは関西文化圏だからかな?(笑)

 

板林 なるほど(笑)。読んでいて楽しい空気が出てきたのは確かですよね。だからでしょうか、思わず反応を返す人もいますし。

 

星野 ただの事務連絡に見えて、実はちょっとした雑談も交えた会話のいとぐちになっている。ささやかに思えるかもしれませんが、コミュニティの活性化にとって、情報共有の仕方ににぎわいがあることは、とても大切なことですね。業務連絡といいながら、ゆるやかなコミュニケーションが生まれ、人間関係を確実に豊かにしてくれていますよ。

  

▎「ダンクソフトと仕事をすると楽しい」:その意味

 

星野 お客様から「ダンクソフトと仕事をすると楽しい」という褒め言葉をいただくことがよくあります。ビジネスやプロジェクトが、対話重視、コ・ラーニング重視の現場になりつつあるからだと考えています。こうした「仕事の楽しさ」は、単にオモシロ・オカシイということではありませんね。むしろ一方向ではない楽しさや、一緒に学び続ける楽しさ、また、見たことのないものに向かう楽しさや、ともに変化・成長する楽しさなのでしょう。

 

板林 そう思います。そのためにも、社外のお客様にとってもコミュニケーションしやすいパートナーになれているなら嬉しいです。

 

ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場  川口泰斗氏

ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場 川口泰斗氏

以前、ウェブのリニューアルで大きな成果を出されたケニーズファミリービレッジさんから、「同じ船に乗ったクルーのよう、仲間のようだ」といっていただきました。

 星野 あのプロジェクトもよかったね。大きな相談事ではなくても、スタッフに気軽に連絡してきてくださるお客様がいるとも聞いています。大事なお知り合いや関連企業をご紹介いただくことも多くなってきました。技術面だけでなく、ダンクソフトのヒューマンな部分も、徐々に信頼いただけるようになってきたからではないか、と考えています。

 

イノベーションは、地道な取りくみの果てにしか生まれません。日々の小さな改良の積み重ねが、やがてある時大きな変化を生み出します。もちろん、大変なことはありますが、一緒に課題を設定し、大変さを乗り越えるのも、また楽しいこと。

 

ただし、対話型、コミュニケーション型であることが条件ですね。ダンクソフトとプロジェクトをご一緒した方たちは、そのあたりを実感して、「仕事の楽しさ」を感じていらっしゃるのだろうと思います。これからも、皆さんとさらに楽しくプロジェクトを進めて、世の中をもっと便利に、よりよくしていきたいものですね。「コ・ラーニング」という考え方で仕事をすれば、仕事はもっと楽しくなると、強調したいです。

 

「コ・ラーニング」で人が育ち、ビジネスも追い風に ~39期目を迎えて


▎もう「教える」時代ではない

 

ダンクソフトは7月から新年度に入りました。40周年という節目に向けて、ダンクソフトは、この新年度を「コ・ラーニング元年」と位置づけます。

 

「コ・ラーニング(Co-learning)」とは、共に学びあう、共同学習のこと。対話と協働を重視するダンクソフトがここ数年目指してきた姿であり、チャレンジと実践を重ねてきたことでもあります。

 

もう「教える」時代ではありません。知識のある人がない人に一方的に教える教育から、共同学習へ。今年度は、この「コ・ラーニング」をより一層重視し、社内外に広げていく年にしていきます。

▎スタッフ全員がバージョンアップしていく

                                                                                   

現在のダンクソフトは、全体としていい流れにあり、おかげさまでビジネスも好調に推移しています。

 

2021年4月に行われたオンライン入社式。徳島と全国をつないで実施。

2021年4月に行われたオンライン入社式。徳島と全国をつないで実施。

とりわけよいのは「人」です。この半年で4人の経験者を採用しました。4人とも素晴らしい人ばかりで、大いに期待しています。また、5年ぶりに新卒採用を行い、今年4月に1名、来年4月に2名がメンバーに加わります。新卒スタッフは、ダンクソフトがオフィスをもつ徳島での採用です。かねてから連携してプロジェクトを実施してきた阿南工業高等専門学校の卒業生たちです。テクノロジーに強い人たちです。都会に出てくるのではなく、地元にいながらにして、もっとクリエイティブに才能をいかした働き方ができるよう、これまで提唱してきました。これが、今年、実現しました。

新スタッフが加わることで、既存スタッフを含め、ダンクソフト全体の意識が高まり、成長します。よく言われる、「人を育てることで、教える側が育つ」というようなことではありません。

 

最初に触れたとおり、これからは、もう「教える」時代ではなくて、共に学びあう「コ・ラーニング」の時代です。新スタッフの存在は、既存スタッフに刺激を与え、私たちに新しい学びをもたらしてくれます。それによって、私たちはこれまでつちかった知識や考え方を、さらにバージョンアップしていくことができるのです。

 

もちろん、実践の場で学びあうことで、新しく入ったスタッフにとっても、ダンクソフトが新たな発見と成長の機会になることは、言うまでもありません。

▎「対話の風土」ができてきた

 

社内の対話文化もいよいよ醸成されてきました。ダンクソフトでは、2年前から、私と社内スタッフとの「対話の時間」を設けています。年2〜3回のペースで、チームごとに、定期的にグループ対話を重ねてきました。

 

もっとも、最初は「対話」と言えるようなものにはなりませんでした。十数人のチームなのに参加者が1人しかいなかったこともありました。業務面談かヒアリングのようなものと誤解されたのかもしれません。「対話」というもの自体になじみが少なかったのでしょうね。

 

それが今では、それぞれが自分の声で、自分の考えを言えるようになってきました。たいていのメンバーは、もう当てられなくても自発的に発言します。人と異なる考えでも口にします。チームを超えたコミュニケーションも生まれています。

 

「コ・ラーニング」にとって大切な「対話の風土」が、社内にできてきたのです。とても素晴らしい、誇らしいことだと嬉しく思っています。

 

数年来、星野とスタッフたちとの対話を意識的に増やしてきたダンクソフト。

数年来、星野とスタッフたちとの対話を意識的に増やしてきたダンクソフト。

▎多様性こそがパワーになる

 

こうした「コ・ラーニング」の環境は、メンバーが多様であればあるほどよいものです。住む地域、年齢、性別、国籍、考え方や趣味や生活スタイル……。もちろん働き方もそうです。いろんな人がいることで、相乗効果が高まります。そして、対話的に学びあうことで、イノベーションが起こってきます。

 

ダンクソフトにはトルコ人スタッフが働いています。また、現在、フランス在住の学生をインターン生として受け入れています。言葉も文化も風土も異なる人がいることはやはりよいですね。日本の中にばかりいるとどうしても視野が狭くなりますが、異なる文化を知ることで、仕事にフィードバックがかかります。

 

他にも、ダンクソフトで長く働いている人、新しく入った人。都市に住む人、地方に住む人。50代、60代もいれば、新卒採用の若者もいる。多様なメンバーが関わることで、互いに学びあい、より高め合うことができるのです。その結果、さまざまな新結合がおこり、イノベーション、つまり、新たな「はじまり」が生まれるのだと考えています。 

▎「コ・ラーニング」がビジネスの追い風に

 

社内で対話が浸透するにつれ、お客様との関係も、さらに良好になってきました。受注する・発注するだけの間柄を超えた、対話関係を築いて、一緒に次を創れるお客様がいらっしゃるのは、ありがたいことです。

 

現在ダンクソフトのビジネスが良好なのも、このようにしてお客様との対話関係が育ち、現場でも「コ・ラーニング」がすでに生まれ始めていることと無関係ではないでしょう。むしろ大きな一因として、プラス効果をもたらしていると見ています。 

▎効率化で生まれたリソースで、コミュニケーションに注力

 

ダンクソフトは、今年度も引き続き「デジタル・デバイドの解消」、そして 「コミュニティの活性化」 を、色々な方々との連携・協働で実現していきたいと考えています。さまざまなサービスや製品を、そのためのツールとして活かしていきます。

 

しくみは小さく、シンプルにして、まず効率化します。そして、余った時間やリソースで、コミュニケーションに注力する。未来への準備は、できるだけ早くするべきです。今はまさにその好機なのです。

 

たとえば、新しいお客様を取り入れたければ、窓口はインターネットやアプリの中にあるべきです。電車や車にのってわざわざ窓口に行かなくても、インターネット上に窓口があれば、シンプルにコミュニケーションがはじめられます。

 

情報を囲い込んで複層化させるよりも、クラウドにのせ、お客さんも含めた外に開いていく必要があります。基本の情報基盤もシームレスにインターネット上にあることは、BCP対策にも有効です。

 

「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことがビジネスを加速させる、これがこれからの時代です。 

 ▎しくみは小さく、シンプルに

 

なぜ今、好機なのか? シンプル化が必要なのか? それは、ITのとらえ方そのものが変わるタイミングに来ているからです。サービスが変わっていく時だからです。

 

ダンクソフトのお客様の中にも、シンプルで使いやすいシステムを導入して、デジタル・デバイドの解消に成功されたケースが多々あります。

 

たとえばNPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様は、クラウド型のシステムを導入し、手書きとエクセルが混在する煩雑な情報管理を卒業していこうとされています。

 

また、石垣はなまる学童クラブ様では、子育て経験のあるダンクソフトのスタッフが、その知見を生かして、学童保育運営のさまざまなアプリをクラウド型システムで構築しました。タブレットやスマホだけで使える、現場に即した情報環境を実現し、快適にお使いいただいています。

石垣はなまる学童くらぶから定期的によせられるKintone通信。

石垣はなまる学童くらぶから定期的によせられるKintone通信

 ▎知らないうちに「デジタル・デバイド」になっている基幹システム

 

また、今の時代、組織内にある身動きのとれない古い基幹システムが、逆にデジタル・デバイドになってしまっているケースもあります。導入当時の技術と環境では良かったインフラも、今となっては、刷新が必要になっています。

 

最近は、こうした基幹システムの見直し・刷新のご相談が多くありますが、これも次の動きをいち早くつくるためには、企業・団体にとって急務です。 

▎対話と学びあいがコミュニティを活性化する

 

できるだけシンプルに、簡便に、効率的に「デジタル・デバイドの解消」をしていきましょう。そして より注力すべき「コミュニティの活性化」に向けたしくみづくり、対話、運用にこそ、リソースをつかっていきましょう。

 

ビジネスはやはり「人」です。企業の枠にしばられず、お客様、その先にいるお客様、ノンユーザーも含めて、多様なメンバーが出会い、実践の場で対話を通して互いに学びあう「コ・ラーニング」が、ますます重要になっていきます。今年度も、皆様とともに停滞を打ち破り、次を拓く「はじまり」をつくっていきたいと考えています。 


経営者対談:ともにちからを合わせ、デジタルで人々を幸せに

今回のコラムでは、リコージャパン 代表取締役である坂主智弘さんをゲストにおむかえし、コロナ禍を経て見えてきたこれからのビジネスについて、「デジタル」がもたらす未来について、対話しました。

 

リコージャパン株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO 坂主智弘

株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎



 ▎「この人だ!」と直感した

 

坂主 星野さんと出会ったのは、2016年でしたね。一般社団法人マーチング委員会(※)のイベント「マーチングEXPO2016」で、星野さんの講演をお聞きしたことがきっかけです。講演テーマは「IT企業が田舎でまちおこし」。星野さんは、講師として、神山をはじめITを活用した地域創生の事例を紹介されました。

 

そのお話がとても興味深く、「この人だ!」と直感したのです。自分の知りたいことがここにある、こんな人はそういない、このチャンスを逃してはいけない、という印象でした。そこで、講演後すぐにご挨拶に行きました。

 

星野 この日の会場は、神奈川県海老名市にある「リコーフューチャーハウス」でした。海老名はリコーさんの最大の研究開発拠点。そこに新たにつくられたビジネス共創のコミュニケーション・スペースでした。その施設のことや、リコーさんの地方創生の取り組みなどについてお話ししましたね。

 

※マーチング委員会:日本のまちなみをイラストで伝え、地域の魅力を再発信する団体。

左:株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎 右:リコージャパン株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO 坂主智弘さん

左:株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎
右:リコージャパン株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO 坂主智弘さん

▎徳島県視察ツアーで見た「これからの働き方」の衝撃

 

坂主 その後すぐに、当時は日本橋にあったダンクソフトさんのオフィスにお邪魔して。翌2017年3月には、徳島県神山町を訪ねるサテライト・オフィス視察ツアーにも参加しました。

 

星野 懐かしいですね。ダンクソフトでは、「徳島サテライト・オフィス視察ツアー」を毎年実施してきました。2011年に始まり、コロナ以前は、毎年2回ほど開催していました。

 

坂主 なかでも、大自然の中でノート・パソコンを開いて仕事をしている。そんな情景に「こんな働き方があるのか」と衝撃を受けました。

坂主さんが衝撃を受けたという情景

坂主さんが衝撃を受けたという情景

星野 坂主さんご自身が、お一人で参加されていましたね。あの時も、首都圏をはじめ全国から多様なメンバーが集った視察でした。

 

坂主 そうですね、視察先はもちろん、参加者も刺激的な方ばかりで、懇親会も有意義でした。その後のつながりも生きています。以来、星野さんとは、さまざまなところでご一緒してきました。あとはパエリアでしょうか(笑)。

 

星野 ははは。二人とも食いしん坊ですから(笑)。コロナ禍の前は、会えばおいしいものをご一緒していましたね。

  

▎コロナ禍をへて見えてきた未来──リコージャパンの場合

 

坂主 コロナ禍をへて、大きく変わったことが2つあります。まずは、「働く場所を選ばない働き方」が、すでに実態のなかにあることです。4年前に神山を視察した頃を思うと、今ようやく、時代が追いついてきたなと感じます。

 

次に、コミュニケーションのあり方です。私たちリコージャパンは複合機をはじめとする事務機器の製造・販売・保守を行う会社です。訪問サポートの比重は高く、何があっても「まずは足を運ぶ」という考えが主流でした。

 

「リコーさん最近来ないから、他社に変えちゃったよ」というようなことも少なくない業界です。フェイス・トゥ・フェイスでないと取り合わないという傾向は、とくに地方において、強かったのです。

 

ところが、コロナ禍以降、リモートの商談がすっかり浸透しました。以前は商談によっては商品担当者がリアルに同行していましたが、今はお客様担当者だけが現場に行き、商品担当者は現地へ行かずにオンライン参加が可能です。お客様にタブレット1枚を見せて「連れてきました」と言える世界になりました。

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▎「もう戻れない」──どこにいても働ける時代へ

 

星野 飛躍的な変化ですね。

 

坂主 今回のこの変化は、「ジャンプした」という印象をもっています。一部展開にとどまっていたものが、もう使わざるをえない状況になり、ためらいの小川を飛び越えたと言いますか。

 

リコージャパンは、2011年の東日本大震災を契機に働き方改革を進め、リモート・ワークを推進してきました。2019年には、総務省のテレワーク先駆者百選に選ばれ、賞もいただきました。その時点で、ノート・パソコンとWi-Fiルーターは、たしかに支給していました。ですが、実際の使用頻度や使用率は、必ずしも高くはなかったのです。今回、それが一気にジャンプしました。もう戻らないでしょう。

 

星野 このコロナ禍で、テレワークに切り替えるたくさんの社員の方に「テレワーク検定」を活用いただきました。現在のテレワーク状況はいかがですか?

 

坂主 私のいる本社は、約430席の事業所です。増減はありますが、おおよそ約70〜100人が出社しています。全体の4分の1弱です。

 

今回のことで、作業場所としてのオフィスは必要なかったと、よくわかりました。変わらずリアルに集まることが必要なのは、会議や意思決定、コミュニケーションの場面です。

 

▎コロナがもたらした変化──ダンクソフトの場合

 

星野 ダンクソフトの場合、社内のことより、周りの変化が大きかったです。とくに、出向先クライアントの方針ですね。これまで出向先の意向や環境が理由となってテレワークが難しかったクライアントも、今回は対応せざるをえない状況でした。

 

ダンクソフトは、2008年からテレワークを導入しています。震災後の2011年には、徳島にサテライト・オフィスを開設。リモートで働くことが普通な環境が、比較的、早くからありました。コロナ禍では、2020年3月25日の都知事による自粛宣言の翌日から、出向スタッフを含め、全員が在宅テレワークを始めました。そのまま1年以上が経過し、今も徹底したテレワークで円滑に仕事を続けています。

 

坂主 ほとんどのビジネス・パーソンが、一度はリモート・ワークを実際に体験した。このことの意味は大きいですね。

 

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星野 そうですね。アタマで知っているのと、実際に「やったことがある」のとでは、次元が違いますから。コロナ禍で、まったくのアナログ運営をしていたフラメンコ・スクールがデジタル化に挑戦して、リコーさんの360度カメラ「THETA(シータ)」を取り入れた実験なども行いましたね。そういう意味でも、先程おっしゃった「時代が追いついてきた」という印象は、私もまったく同じ感覚を、周りから受けています。まさに「ジャンプ」ですね。たった1年でこれだけ変わるんだと感慨深いです。

▎「真のデジタル化」へ──リコージャパン「Empowering Digital Workplaces」の挑戦

 

坂主 しかし、ビジネスの現場では、仕事のワークフローがリモート・ワークに対応してないケースが少なくありません。発注書がオフィスにFAXで届く、書類にハンコが必要、などです。デジタル・サービスを使うために紙や人の介在が、どうしてもまだあるのです。

 

リコージャパンはドキュメントに関わってきた会社です。もともとの出発点もそこにありました。しかし、もうデジタルの時代です。リモート・ワークの障害となるドキュメントの課題を改善し、本当の意味でのデジタル化を推進していきたいと考えています。

 

そこで、リコージャパンでは、複合機などのハードウェアとクラウドをつなげ、そこにAIを導入。「人にやさしいデジタルを全国の仕事場に」と掲げて、「Empowering Digital Workplaces」の展開を進めています。( 参考情報:リコージャパンのサステナビリティ トップ・メッセージ

 

ここでいうデジタル化は、情報がパソコンで表示できる状態を意味しているのではありません。FAXで届いた書類の数値や文字が、または録音データが自動的に認識され、コンピュータで処理できるようになっていることを「デジタル化」と呼んでいます。

 

FAXで届いた注文書を手入力するとか、音源をテープ起こしするといった、人に負荷のかかる単純作業は、機械にやってもらいます。知的労働のなかでも「力仕事」にあたるものです。それによって、人にしかできない、より創造的な仕事に集中できる環境をつくります。

  

▎ユーザーを交えた対話の場をつくる

 

星野 30年前から比べると、OCR(紙面に書かれた文字を認識する技術)の認識率は大きく高まりました。さらに、AIと出会ったことで、一気に化けましたね。オリンピック・パラリンピックの影響もあり、翻訳も飛躍的に進みました。

 

リコージャパンさんはこうした最新技術を使って新しいサービスを展開されているわけですが、そのプラットフォーム上で、パートナー企業とともにコミュニティをつくろうとされていますね。

 

私は、ここにとても期待しています。また、そのコミュニティに製品を実際に利用しているユーザーも入ると、さらに加速するのではないでしょうか。

 

坂主 なるほど、ユーザーも。たしかに、それはいいですね。いいヒントをいただきました。

 

星野 さらにいえば、ノンユーザー(nonuser)も入るとなおよいですね。多様性の中のチームができて、活発な対話の場を生み出すことが大切だと思います。

  

▎ダンクソフトの「SmartOffice構想」が描く未来

 

星野 ダンクソフトでは、「インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」を合言葉に、「SmartOffice構想」を推進しています。「SmartOffice構想」は、場所を選ばずに、一人ひとりが、よりクリエイティビティを発揮できる働き方の未来です。

 

そこでは、いろんな人やグループが柔軟なつながりを持つ。対話し、連携し、協働して、社会課題の解決や新たな価値創造があちこちで生まれる。「SmartOffice構想」は、このような連携・協働が多方向で広がっていく未来をめざしています。

 

▎エンプロイー・ハピネスのために

 

星野 デジタル社会で大事なのは、やはり「人」ですね。とくに次の2つがこれからのキイワードだと考えています。ひとつは「ポリバレント」。一人ひとりが多様な役割を持ちあわせ、柔軟に動ける人のことです。もうひとつは「インターミディエイター」です。「あいだ」を結び、地域やビジネスを活性化し、それまでにない価値を生みだす役割です。

 

坂主 私はかねがね「エンプロイー・サティスファクション(働く人の満足度)」でなく「エンプロイー・ハピネス(働く人の幸福度)」でなければならないと考えてきました。一緒に働く時間が、その人の人生にとって幸せなものであってほしい。満足でなくハッピーでなければと。そのように考えています。

  

星野 ダンクソフトも、『「 Digital Re-Creation 」で人々を幸せに!』を、掲げています。重なりますね。

 

また、「楽」を大事にしています。仕事を楽に楽しくし、効率化して捻出した時間で一人ひとりが充実した人生を楽しむことを大切にしています。そうでないと、クリエイティブな発想も生まれにくいでしょう。遊び心や面白い発想が新たな価値創造に欠かせないのは言うまでもありませんしね。

 

▎最後に残る「人にしかできない仕事」とは?

 

坂主 リコーは2036年に創業100年を迎えます。その時どんな会社になっていたいかというと、働くことに喜びを感じる。人間が人間らしい仕事をして喜びを感じる。そんな環境づくりのお手伝いをできる会社になっていたいと考えています。

 

ただ、言葉ではそう言えるのですが、じゃあ実際に「人にしかできない仕事」「人間らしい仕事」って何? となると、どういう仕事なのでしょうね。自動化が進むと、労働の対価にお金をもらうという働き方がなくなってしまうかもしれません。そのとき、人間は何ができるのか。「人間ができること」が問い直されているのではないでしょうか。

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星野 効率化や生産性向上の先に、どんな未来を見たいのか、ですね。

 

坂主 人間にしかできない仕事。その多くは社会課題と直結しているでしょう。私たちリコージャパンは、本業でもって社会課題の解決をしていきたい。社会課題の解決とは、つまり、その先にある新たな価値創造も意味します。社会課題の解決と価値創造はもともと同軸だと考えていますので。

 

星野 ダンクソフトは、デジタルで効率化の先にある未来を応援し、人と場をリ・クリエーション(再創造)したいと考えています。人にしかできない仕事は、「リ・クリエーション」。いかにクリエイティビティを高めるかにかかっているのではないでしょうか。

 

▎ 「参加とつながり」から生まれる次のビジネス

 

坂主 ところで、星野さん、ワーケーションをどう見ていますか?

 

星野 大きな可能性があると思いますよ。技術的には、すでにできて当たり前です。私自身も、そう呼ばれはじめる以前から、国内だけでなく、ブラジルでのワールドカップや、ウィンブルドンで観戦をしながら海外でもワーケーションしてきています。ただ、単に「休暇を楽しみ、仕事もする」という使い方ではもったいないと思います。そうではなく、行った先で、地域や人につながらないと意味がありません。地元の人と出会ったり、社会課題の解決や新たな価値創造につながる活動に参加したりしてこそ、ワーケーションの可能性も生かせるというものです。

 

坂主 まさにそうですね。「つなぐ」ことは大事です。つなぐだけで変わるものもある。最近、自治体等からワーケーションのニーズを聞くことが増えました。しかし、課題を感じてもいました。単なる休暇ではもったいない。そこですね。その地域の課題解決につながっていてこそ、価値がありますね。

 

星野 ワーケーションは、IターンやBCPのトライアルとしても有効でしょうね。都市と地域を結ぶという意味でも、人と人、人と地域を結ぶという意味でも。また、事業継承の可能性も広がります。一次産業の飛躍も後押しできるでしょう。

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坂主 最終的に、人が何に幸福や喜びを感じるかといえば、やはり「人と人のつながり」だと思います。チームの連帯を感じたときの喜びはかえがたいものです。そういう意味では、人と人のつながりをつくることが、喜びにも、新しいビジネスにもなっていくと言えるでしょう。

 

星野 そうですね、インターミディエイターの考え方が、まさにそのものでしょう。分断されているところに結び目を作っていく役割です。あいだを丁寧に結ぶ存在がなければ、都市と地方のように本来異質なものが再結合されることは難しい。新しいタイプの媒介者がいなければ新結合はありえず、企業にも地域にも社会にも、イノベーションは起こらないままです。特にポスト・コロナ社会、デジタル社会といった多様性が重視される社会では重要になりますね。

  

▎「自然・機械・人間の協働」で、新たな価値創造へ

 

坂主 デジタル化を活用した農業や一次産業の新たな価値創造は、我々も大いに注目しているところです。ユーザーとダイレクトにつながって、一緒に価値創造ができる時代になりました。

 

星野 坂主さんも話されていたとおり、5G網の拡充により、今後、自然の中へも、インターネットが急速に拡張していきます。私は少し前から「自然と機械と人間の協働」に注目しているのですが、これがますます重要になっていくのは間違いありません。

 

それをビジネスにしていく上で求められるのが、感性でしょう。豊かな感受性。クリエイティビティです。あまり言われませんが、クリエイティビティがもっとも求められるのは経営者でしょうね。新しいものをつくっていくしかありませんし。

 

坂主 「つくっていく」ってわくわくしますね。フリー・ハンドで生み出し、つくりこんでいく。楽しいですよね、やっぱり。

 

星野 そのためには時間と刺激が必要ですね。経営者こそワーケーションをするといいかもしれません。

 

坂主 ははは、たしかに。私もワーケーションしようかな(笑)。

 

星野 いいですね(笑)。リコージャパンさんの若手スタッフの皆さんとお話したときに、これは未来への可能性だと感じました。ぜひ彼らともワーケーションをご一緒に!本日はありがとうございました。

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理想的で機能するテレワーク環境づくり:発想転換のポイント


▎河野大臣に脱FAXを直接提言 

 

河野太郎 行政改革担当大臣と、ダンクソフト代表 星野晃一郎

河野太郎 行政改革担当大臣と、ダンクソフト代表 星野晃一郎

「霞が関でFAX廃止へ。テレワークの阻害要因。」──河野太郎 行政改革担当大臣が「脱FAX」の方針を表明したことが報じられました。4月13日の記者会見でのことです。

 

実は、これに先立つ3月9日、私から河野大臣に質問をする機会がありました。「そろそろFAXやめませんか?」と、ずばり申し上げたのでした。

一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC)のオンライン・イベントに、河野大臣をゲストとしてお呼びしていたのです。その中で私は、Internet Society研究部会長として質問を担当しました。河野大臣は、2015年にもダンクソフトの神山オフィスに視察に来られたことがあり、私はその折にもお話ししていたので、6年ぶりにお会いしたことになります。 

 

3月のイベントは、「ビジネス・シーンでのFAXは廃止できるのか?」を検証する連続企画の第1回でした。主な話題は、日本企業の「脱FAX」が進まない現状。それがいかにビジネスやテレワークの阻害要因になっているか。また海外では、FAXはすでに過去のもので博物館レベルだという状況と、いまだに日本では現役で日常的に使われているガラパゴス現象。これに海外の人がいかに驚くか、などでした。 

 

私が「脱FAX」を河野大臣へ直接提言した約1ヶ月後、河野大臣による記者会見での発言を聞きました。FAXを廃止し、テレワークしやすい状況をつくるために、いよいよ霞が関が動き出したと、感慨深く受け止めました。 

 

▎スタッフを在宅にするだけで、他は変えない「形だけのテレワーク」になっていないか? 

 

コロナ禍が続くなか、この1年、テレワークの推進が叫ばれてきました。4月27日には、NTTが従業員の出社比率を3割から2割に下げるなど、企業の在宅勤務が拡大していると、日経新聞が報じています。

 

ですが、「形だけのテレワーク」になっていないでしょうか? オフィスに、まだFAXが置いてある企業も多いでしょう。在宅勤務のために書類やデータを手で持ち帰って仕事をしているようでは、アナログ時代の“持ち帰り仕事”とまったく変わりません。人を在宅にするだけでなく、オフィスやデータの在り方をしっかり見直さないと、残念ながら「形だけのテレワーク」になります。

▎継続的なテレワークができる理想的なビジネス環境をつくる 

 

徳島市、高知市、阿南市、藤沢市からオンラインで集うスタッフた ち。各自の働く場所が「スマートオフィス」になっている

徳島市、高知市、阿南市、藤沢市からオンラインで集うスタッフた ち。各自の働く場所が「スマートオフィス」になっている

スマートオフィス時代のテレワークでは、仕事に必要な情報は、インターネット上にあります。オフィスのキャビネットに保管しているわけではありません。出社してであれ、在宅であれ、同じように必要な情報にアクセスできる環境が整えば、理想的なテレワーク環境に近づきます。つまり、。これが、「テレワーク」のメリットを最大限に享受できるビジネス環境といえます。

 

ただ、日本企業の現状は、情報のデジタル化も、テレワーク環境も、まだまだ未整備と言わざるをえません。とにかく人を在宅にさせただけのテレワークに留まっていませんか。テレワークは、もっと便利で、快適で、大きな可能性を秘めています。

 

河野大臣の発言を聞くと、国はオフィスの「脱アナログ」に踏み切ろうとしているようです。昨年の「脱ハンコ」に続く、今回の「脱FAX」。ビジネスにおける脱アナログのスピードは加速度的に上がり、今後はさらにあっという間に進みます。「そうは言っても、現場ではFAXがまだまだ現役。廃止は難しいだろう」と、旧態依然の現状にあぐらをかいていると、気づけば自社だけが時代に取り残されていた、ということになりかねません。時代と対話しましょう。オフィスの「脱アナログ」化に向けて、今すぐ動きたいものです。

▎ダンクソフトが手放した&ほぼ使わない9つのもの 

 

では、脱アナログ化されたスマートオフィスとは、具体的にはどんなオフィスなのでしょうか。スマートオフィスでの働き方は、どのようなものになるのでしょうか。3月に移転したダンクソフトの新・神田オフィスをモデルケースとしてご紹介します。違いがよくわかるのが、「スマートオフィス構想」の実現を提唱するダンクソフトが「手放したもの」と、それぞれの廃止年です。

 

【ないもの:手放した時期】

・モノクロ・カラー複合コピー機: 1990年代後半

・個人デスクの袖机(引き出し): 2007年

・ファクシミリ(FAX): 2010年

・プリンター: 2021年

 

【ほぼない/使わないもの】

・書類キャビネット: 2021年4月現在、ハンギング・フォルダーで契約書200-300枚のみストック

・電話: 2021年(電話機は所有しているが、回線につながずしまってある)

・名刺: 2020年。ダンクソフト「バザール・バザール」上で電子名刺が持てるように。

・文房具: 個人では持たない。1 箇所にまとめ、全員で共有。

・印鑑: 契約・申請等のため、一応ある程度

 

いまやオフィスに保管してある文書はハンギング・フォルダー2つ だけ。

いまやオフィスに保管してある文書はハンギング・フォルダー2つ だけ。

1990年代から、紙を減らし、アナログ情報をデジタル化していくことには取り組んでいました。個人デスクの袖机をなくしたのも、オフィスの紙を減らす取り組みの具体策です。これはスタッフからの発案でした。しまう場所があるから、ついしまってしまう。ならば、収納場所を最低限に減らしてしまえばよい、という逆転の発想です。これが大成功で、オフィスのペーパーレスが加速。現在は、書類保管場所は、ハンギング・フォルダー2つ分のみになりました。

 

オフィス移転のたびに、いわばスリム化と、さらなるデジタル化を重ねてきたわけですが、今年3月のオフィス移転では、とうとうプリンターを手放しました。もしどうしても必要があれば、コンビニ出力で対応します。逆に言えば、それでまかなえるくらい、諸々の申請を含め、もうビジネスに紙はほとんど不要になってきているのです。 

 

プリンターを置かないオフィスのため、プライバシーマーク申請書類をコンビニエンスストアで PDF 印刷。「紙を要求しない世の中になればいいだけなのです が」(星野談)

プリンターを置かないオフィスのため、プライバシーマーク申請書類をコンビニエンスストアで PDF 印刷。「紙を要求しない世の中になればいいだけなのです が」(星野談)

ちなみに、3月の移転後初の大量印刷案件は、4月19日、約60枚にのぼるプライバシーマーク更新のための提出書類でした。ダンクソフトにとって、約60枚は“大量”です。インターネット時代に不可欠な制度がいまだに電子化されていないというのも皮肉なものですが、これに限らず、早く紙を要求しない世の中になってほしいものです。  

▎「データの持ち方」がカギを握る 

 

次は、いろいろ断捨離をしてきたダンクソフトにも、まだ「あるもの」という視点から、スマートオフィスのあり方を考えてみましょう。デジタル化、スマートオフィス化のために、新たに必要になるものもあります。

 

【あるもの】

・スキャナー

・カメラ、スピーカー

・ダブルモニター

・クラウド・サービス

 

スキャナーは情報を電子化するため。カメラとスピーカーは、オンライン通話やウェブ会議等、離れた場所にいる人たちと自在にコミュニケーションするため。ダブルモニターは、作業時にモニターを 2 枚使うことを言います。1 枚は参照画面と、1 枚は作業画面。大画面なら、1 画面を左右で使い分けることもできます。

 

ここまでが、仕事を効率化して余暇時間を生み出すためのツールです。加えて、より重要な、情報インフラとも言えるのが、最後に挙げたクラウド・サービスです。ダンクソフトで導入・活用しているのは、「未来かんり」、「日報かんり」。これらは自社製品です。そして、Microsoft 「Teams」、「Office 365」、「kintone」、「Backlog」(プロジェクト管理)、デザイナー用のアドビ等。これらは、場所を選ばずどこでもクリエイティブに働けるためのツール群です。

 

在宅勤務も、遠隔拠点でも、まったくストレスなく、どこにいても同じように働けるように、オフィスの在り方やデータの持ち方を再点検して、発想転換してみましょう。そうすることで、スタッフ同士のみならず、多様な社外メンバーとの協働プロジェクトが進むようになるでしょう。20年にわたってインターネット時代のオフィス環境を追求してきたダンクソフトのメソッドをすべて共有し、皆さんと一緒に「スマートオフィス構想」を加速させていきたいと考えています。あらゆる情報をインターネットにのせ、データの持ち方やあり方を進化させれば、スマートオフィス化に大きく前進できます。

「イノベーションの場」として2021年3月に生まれ変わったのダンクソフトの神田オフィス

「イノベーションの場」として2021年3月に生まれ変わったのダンクソフトの神田オフィス

 

自然×人×デジタルが協働する未来へ

自然×人×デジタルが協働する未来へ

▎時代がダンクソフトに急接近してきた

  ダンクソフトでは、3月からオフィス内に「ダイアログ・スペース」を新設しました。ここをデジタル拠点として、去る3月7日~14日に、8日間にわたるオンライン・イベント「森林と市民を結ぶ全国の集い」が開催されました。東日本大震災から10年、コロナ禍のいま、森林と市民を結ぶあらたなかたちを模索しようと、企画されたものでした。

 振りかえれば、震災当時のダンクソフトは創業28年を迎えたころで、テレワークを実装する「これからの働き方」を実証実験しているところでした。

 はじまりは2008年、当時、私たちは伊豆高原でサテライト・オフィスの実験を試みました。豊かな大自然のなかで、環境についても学びながら、首都圏の仕事をテレワークで行うことができるリモートワーク拠点をつくろうとしたのです。今でいうワーケーション、避暑地などで休暇をとりながら働くスタイルです。ただ、当時の伊豆高原はまだ通信環境が脆弱で、実用レベルには達しませんでした。その後2010年に、育休明けスタッフが社内第1号のテレワーカーとして自宅から仕事をはじめ、これがテレワークの先鞭となりました。

 ▶テレワーク ──2008年から始まった取り組み
  
https://www.dunksoft.com/message/2019/8/1/-2008

 震災があったのは、その1年後です。首都圏への一極集中によるリスクを痛感しました。震災後、BCP(事業継続計画)の観点からも代替地を求め、ダンクソフトは徳島県神山町に本格的なサテライト・オフィスを設けます。伊豆高原では得られなかった、地元とダンクソフトを結ぶインターミディエイターの存在にも、大いに助けられました。

 このとき、川の中でパソコンを使って仕事をしている映像がNHKの「ニュースウオッチ9(ナイン)」で紹介されました。これが大きな話題となりました。

川の中でパソコンを使って仕事をしている様子は、当時社会に驚きとなった

川の中でパソコンを使って仕事をしている様子は、当時社会に驚きとなった

 インターネット環境さえ充分整っていれば、森や川や海辺といった大自然のなかで、都会とも世界とも直結したビジネスができる。いま私たちが「スマートオフィス構想」のなかで提案している「インターネットにあらゆるものをのせていく」という未来の働き方は、その頃すでに始まっていました。

 以来10年、デジタル・テクノロジーはめざましい進展を遂げました。ポスト・コロナ時代の今、この10年でダンクソフトが一歩一歩進めてきたことが、一挙に時代の潮流になってきました。時代がダンクソフトに急接近してきた。そのように感じています。

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5Gが切り拓く新たなインターネット社会 

 劇的な展開を呼びこんだのは、通信環境の驚異的な進化、やはり何と言っても、これが大きいです。ダイヤルアップからADSLを経て光ファイバーの時代になり、最大通信速度は、1980年からの30年で約10万倍になったと言われます。 

 そしてここにきて到来したのが、「5Gの時代」です。第5世代移動通信システム(5G)の通信速度は、現在使われている第4世代(4G)の実に100倍以上も高速です。この5G通信網で、離島や山間部をふくむ日本全域を覆う計画があります。総務省では大型予算を組んで、5Gインフラ整備を急ピッチで進めています。

 5G構想のすごいところは、これまで取り残されがちだった離島・半島・山間部・僻地・地方こそ網羅し、文字通り日本中をカバーしようとしている点です。今後は、人間が住んでいない地域にも、インターネットが行き渡ります。人間・自然・機械(デジタル)が協働する時代が、情報インフラの面で、いよいよ本格始動するのです。 

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人間・自然・機械が協働する「未来」はすでに到来している

  人間・自然・機械(デジタル)が協働する未来は、じつはすでに始まっています。それを、ダイアログ・スペースをデジタル拠点として行った「森林と市民を結ぶ全国の集い」でも、実感しました。

 スマートオフィス構想を実践する新拠点
  https://www.dunksoft.com/message/2021-03

 ▶第25回 森林と市民を結ぶ全国の集い2021
  https://www.moridukuri.jp/forumnews/tsudoi2021.html 

  NPO法人「森づくりフォーラム」が長年、年に 1 度開催してきた集いです。が、2020年はコロナ禍で開催できず、今年はオンライン開催となったため、ダンクソフトとして初めて実行委員として参加しました。

  今年は震災から10年目にあたります。コロナ禍ということで、宮城、福島、岩手の東北3拠点のほか、東京・栃木・群馬などの各拠点をオンラインでつなぎました。スピーカーも全国各地、そしてドイツからもメンバーが集いました。海外もふくめて、のべ800人が参加する大きなイベントとなりました。

リコーの360度カメラTHETA(シータ)を使った自然体験デモ(サシバの里自然学校 遠藤 隼 氏)

  今回、25年にわたる開催史のなかで、初めてのオンライン開催となりました。くわえて、デジタルの可能性が分科会のテーマとして初めて着目されたことは、ひとつのニュースでした。このエポック・メイキングな場に、デジタルとオンラインの担い手として、ダンクソフトが協働力を発揮できたことを嬉しく思います。

 実際に開催してみて、神田オフィス内に新設したダイアログ・スペースの価値を、皆さんに体感していただくことができました。通信が安定していること、音が良いこと。オンライン・オフラインを超えた場づくりに必要なデジタル環境が整っていること。だからこそ、対話に注力でき、コミュニケーションがより活性化するのです。

 遠隔拠点の機材アドバイスや良質なスピーカーの貸し出しも行いました。複数拠点を網の目状につなぎつつ、安定したコミュニケーション・ネットワークの実現によって、ストレスなく、各メンバーがすぐそばに集っているかのように、参加いただけたようです。

ダンクソフトのオフィス内にある「ダイアログ・スペース」がデジタル拠点となって、オンライン・オフラインを問わず、参加者間での対話が深まるイベントとなった

ダンクソフトのオフィス内にある「ダイアログ・スペース」がデジタル拠点となって、オンライン・オフラインを問わず、参加者間での対話が深まるイベントとなった

▎「協働」と「コ・ラーニング」がこれからの価値観 

 自然 × デジタルの可能性についても、大きな手応えがありました。森づくりの担い手や後継者の人材不足、高齢化、専門性の高さ、都会との距離、ビジネスの創出といったトピックが話し合われました。これらの課題に対して、デジタルを取り入れるからこそ解決できることがたくさんあります。 

 たとえば、ドローンで森を俯瞰する、集まったデータで森を見える化する、荒れた森林をロボットで維持・管理する、熱センサーで木の健康状態を判断する……などなど、環境保全としても、ビジネスとしても、実にこれからの可能性にあふれています。自然との貴重な個別体験があって、それを互いから学び合えるような、これからにふさわしい学びの場の提供も可能です。深い森、遠い森に行かなくても、あるいは行けない方でも、オンライン配信による新たな学習機会を創出できます。自然との関りを、より多くの人々に広げることになります。

 じつは、2017年に徳島県神山町で開かれた世界構想プログラム「物語の結び目会議」で、ダンクソフトの未来構想を描きました。その時にダンクソフトの竹内が描いた未来像が、まさにこうしたデジタルで森とともに生きる・暮らすというものでした。当時はまだ技術が追いついていませんでしたが、5G通信網で日本全国が覆われようとしている今、これはもう、間もなく到来する現実だと言えるでしょう。

 ポスト・コロナ社会の新しい価値観のもと、競争ではなく「協働」の概念が、今後ますます大事になります。本社という一か所に人間を集約するのではなく、人や拠点が多中心に、分散型で、地域を超えて、網の目状につながる。人と人はもちろん、人と自然、人と技術、自然と技術もまた協働の場を必要としています。

 ダンクソフトはその実践者であり、モデルケースでもあります。私たちがデジタルに長けたインターミディエイターとして、人と技術、人と自然、技術と自然のあいだを丁寧に媒介していって、さまざまな協働作業をうながす役割は大きいと考えています。

 異なる価値観どうしが出遭ったり、会話・対話が生まれやすい場をホストできたり、新しいエクスペリエンスの提供・向上に寄与できたり、共に学び合うコ・ラーニング(Co-learning/共同学習)の環境が生まれる一助になっていれば、とても嬉しいことです。

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一極集中を超えていく

2021年4月1日より、徳島オフィスに、地元・阿南工業高等専門学校の卒業生・山本さん(左前)が、新卒社員として入社しました。デジタルを活かせば、地元の地域社会に残りたい若い世代が、地元でやりたい仕事につくことができます。

2021年4月1日より、徳島オフィスに、地元・阿南工業高等専門学校の卒業生・山本さん(左前)が、新卒社員として入社しました。

デジタルを活かせば、地元の地域社会に残りたい若い世代が、地元でやりたい仕事につくことができます。

 この10年、デジタル・テクノロジーはめざましい進展を遂げてきました。これからは、もっとデジタルを活かすことで、都市部への一極集中から、各地に分散的に広がていく時代です。

いつも話していますが、昨今、生まれ育った地域に残りたい若者たちが増えています。すでに授業はオンラインで受けられるようになりました。仕事も同じです。テレワークなら、どこにいても都会の仕事ができます。場所に縛られず働くことができるので、住みたい場所に住み、地元の地域社会に残ることができます。

 これは高齢化問題の解消にもつながっています。地域に若い世代が残ることで、高齢者と若い人たちが地域で協働することができます。森づくりの場合も、環境保全に関わる人を増やせるし、若い参加者が森に入って行って、それを高齢の匠たちが遠隔でアドバイスするということもできるようになります。高齢化をネガティブにばかりとらえるのではなく、可能性に着目すれば、新たなビジネスの仕方も、社会的関わりも生まれていくでしょう。

 このように、日本各地に分散拠点、すなわち「スマートオフィス」が増え、お互いに連携し、社会的協働の機会が増えていくほど、日本は地域からそうとうに変わっていきます。技術力と協働力をいかして、日本は世界に先駆けて新しい姿をみせるときです。より明るい未来に向けて、日本が世界を変えていく。これが、「スマートオフィス構想」を通じて実現できる未来像です。

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 ▶ご参考:総務省 令和3年 予算
 テレワークや遠隔教育、遠隔医療を支える情報通信基盤の整備: 219.5億円
 Beyond5Gや5Gの高度化等の実現のカギを握る先端技術の研究開発:507.6億円
 詳細はこちら 
https://www.soumu.go.jp/main_content/000742163.pdf 

スマートオフィス構想を実践する新拠点

▎オフィスの再定義が必要だ 

 

ポスト・コロナ社会において、オフィスの役割は大きく変化します。ここ1年で、オフィスを手放す選択をとった企業も多いようですが、ダンクソフトは違います。 

オフィスを残し、この場を、単なる「業務遂行の場」ではなく、「イノベーションの場」として再定義しました。 

 

この新・神田オフィスですが、3月1日に、フロア移転しました。同じビルの10階(最上階)にあります。7階にいたときより、ずっと見晴らしがよくなり、全面の窓から神田の街なみが一望できます。 

「イノベーションの場」として生まれ変わったダンクソフトのオフィス

「イノベーションの場」として生まれ変わったダンクソフトのオフィス

 しかし、こうしたロケーション以上に、このオフィスの特徴は、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことにあります。後で述べるように、ここは本当にモノが少ないオフィスです。つまりここは「スマートオフィス構想」のショーケースであり、同時に、この構想をさらに加速し、全国各地に展開していく場として位置づけています。 

ダイアログ・スペース

ダイアログ・スペース

オンラインとオフラインをあわせた、良質なハイブリッド型イベントやダイアログが行える空間を、オフィス内に新設しました。テレワーク、クラウド、ウェブ、デジタル・コミュニケーションの組み合わせで、スタッフと、お客様と、地域と、世界と、より連携を拡げ、もっと協働していくために、世の中に先駆けた、新たな試みをしていきたいと思っています。 

 

もう一点。「イノベーションの場」としての新・神田オフィスは、2つの方向での役割を持っています。 

ひとつは、テレワークが加速するなかでも、スタッフが安心・安全に集うことのできる、働きやすい「みんなのオフィス」であること。 

カフェ・スペース

カフェ・スペース

もうひとつは、人とビジネスと地域をつなぐ役割です。ここは、当社のスタッフ以外の人たちも参加しながら、ネット上であれ近隣社会であれ、コミュニティを活性化していく重要な結節点でもあるのです。 

▎議論ではなく、対話を重視。そのための音響と通信環境 

 

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重要なのは、質の高い、より豊かな「対話」を生みだすことのできるオフィスかどうかです。議論ではありません。それでは勝ち負けを意識したやりとりになってしまいます。そうではなく、多様な人々が集い、関わり、対話を重ねることで、次に向けた新しいアイディアやプロジェクトを生みだす時です。インターネットで日本各地とも世界各地ともつながり、そのたびに新しいビジネスが広がっていきます。 

 

今回、そのために必要な設備を、無駄なくしっかり備えました。音響と通信環境、つまり「音場」によって、オンラインとオフライン両方からの参加者同士で対話をする際のクオリティに違いがでます。 

 

貸出可能な、高品質の会議用マイク 

貸出可能な、高品質の会議用マイク 

そこで、高品質のマイクと厳選したスピーカーを導入し、超高速インターネットを引いています。オンライン上の個別対話やグループ対話で、もっとも大きなストレスになるのが、じつは音響・音声の悪さです。声が途切れたり、ニュアンスが聞き取りにくかったりすると、対話の質やリズムに影響します。みなさん映像を過度に気にしがちですが、大切なのは音響や音声といった「音場」のほうなのです。これらの音響セットは2セット用意しており、貸し出しも可能です。 

 

また、4K時代をふまえ、4K対応パネルも約10台。カメラは、4K相当が出る秀逸なウェブカメラを採用しました。通信回線は、セキュリティ面を考え、2つの回線を引き、分けて使っています。ひとつは、クライアント業務専用の回線で、もうひとつは、外部からダイアログに参加する方々に使っていただけるものになります。 

 

オープンで、フレキシブル。それでいながらハイリー・セキュアード(highly secured)な、守るところは守るオフィスです。  

▎Digital、Diversity、Dialogueの相乗で、新たな価値を創造する 

 

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こうした優れたデジタル環境に包まれた、新設の「ダイアログ・スペース」で、さまざまな活動を進めていく予定です。たとえば、オンライン・イベントの主催や、コミュニティ・ラジオのスタジオにもなりますし、もちろん、日々の会議やビジネス・カンファレンス、シンポジウムなども、ストレスなくできる環境が整っています。 

 

貸出可能なスピーカー、M’s system

貸出可能なスピーカー、M’s system

今回、特徴的なスピーカーを採用しました。演奏家や作曲家も好んで使っていて、ラグジュアリー・ホテルなどでも多く取り入れられているものです。音質がナチュラルで、リアリティ溢れるサウンドが特徴です。 

 

深みがあって、柔らかく豊かな音色が空間に広がり、からだ全体を包み込みます。音楽を聴くと、とてもリアルなライブ感があります。オンライン会議の音も、このスピーカーを通すと、気持ち良く響いて、長時間聞いていても疲れないんです。 

 

昨年、約10時間のオンライン・フォーラムを、このスピーカーで実施してみました。オンライン参加した方から、長時間で疲れるのではないかと心配したが、自然な音で聞きやすく、他の参加者が近くにいるように感じて、ストレスなく過ごせたと好評価をもらいました。 

 

新オフィスは天井が高いので、音が広がって圧巻です。いい音が、オンラインからの参加者にも響きます。参加する場所を問わず、隣にいるようなライブ感で対話ができる音場になっています。 

▎「スマートオフィス構想」のモデルとしての新拠点 

 

ダンクソフト代表 星野のデジタル名刺

ダンクソフト代表 星野のデジタル名刺

今回のフロア移転では、オフィスのペーパレス化もさらに徹底し、モノを減らしました。今回、ついにプリンター(複合機)をなくしたのです。もともと、FAX、電話、書類保管庫、袖机等は、ダンクソフトのオフィス内にはありません。以前から、文房具も個々で持つのをやめ、オフィス全体で共有できるコーナーをつくってセンタリングしました。モノが減るほど、オフィスの引っ越しも身軽になります。印鑑、名刺も早くなくしたいところです。ちなみに、私はもう紙の名刺を持つことは辞めました。直接会えなくても誰もがアクセスできるよう、デジタル名刺にしています。 

 

スマートオフィスの醍醐味は、「インターネットにあらゆるものをのせている」状態であることです。情報は紙ベースではなく、インターネット上にありますから、どこにいても同じ環境でアクセスできます。ですから仕事も、work from home (WFH)に限らず、どこにいてもできるわけです。 

 

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そうなると、オフィスに出社することの意味が変わります。今までは、作業・業務を遂行するために通勤していました。しかしこれからは、積極的なコミュニケーションや対話のために、出社することになるでしょう。そこから生まれる気づきや発見が、つまり新鮮な認識の変化が、スタッフ一人ひとりのクリエイティビティを刺激します。新・神田オフィスは、安全に配慮しつつ、人が気持ちよく滞在できる環境です。社内メンバーは必要に応じて出社し、ダンクソフトが社内外のメンバーと日々創りだしている新しいビジネス・シーンに触れることもできます。 

 

こうしたデジタル・メディアに支えられた対話の場を、どう有効に活用していくか。カギは「多様性の中の対話」です。この可能性を、みなさんともっともっと広げていきたいと思っています。お客様たち、その先のお客様たち、社内メンバーたち、地域の方々、遠く離れていても同じ未来を見ている方々など、さまざまなみなさんと一緒に、クリエイティブな未来を、ここから切りひらいていきたいと考えています。 

 

 


★ダンクソフト 「ダイアログ・スペース」 仕様・設備 

【通信環境】 

・NURO光 約 1 Gbpsの超高速 

・Bフレッツ セキュリティ重視(600-700Mbps) 

・有線で屋上まで敷衍可 

【音響・音声】 

・高品質 会議用マイク 5台 :貸出可能 

・スピーカー(M’s system) :貸出可能 

【モニター】 

・55インチ 4K 有機LED大モニター 

・30インチ弱 高解像度 PCモニター 12台 

【カメラ】 

・ウェブカメラ(4K相当)Microsoftライフカム 3台

 

●ダイアログ・スペースのご利用・同環境の導入支援について、いつでもご相談ください。 

ポスト・コロナ社会で“次を創るテレワーク”を

▎テレワークを、次を創るために活かすには

 

今月は改めて「テレワーク」についてお話しします。

これからの社会インフラは「インターネット」です。年頭所感でもそこを強調しました。ビジネスも、働き方も、暮らし方も、根本的に変わりました。

インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」流れは、ますます加速していきます。再度、緊急事態が宣言され、再びテレワークが注目されています。ですが、非常時だけでなく、今後はつねに、テレワークを前提とした、よりクリエイティブな働き方がデフォルトになっていきます。

今月はテレワークの課題をまとめました。この1年、ダンクソフトで実践して見えてきた実際の話です。テレワークの効果や見落とされがちなこと、そして、ダンクソフトならではの“次を創る”ためのテレワーク導入支援について。

 テレワークのさらなる活用のために、このコラムを参考にしていただければと思います。 

▎ポスト・コロナ社会をみすえた環境整備

 

2020年3月25日、東京都知事が自粛宣言を出しました。その日のうちに、ダンクソフトでは、全社テレワーク化を即断します。翌日から、出向スタッフも出向先に行くことなく、全員が在宅でのテレワークに切り替えました。それから約1年。この期間の本社オフィスへの出社人数は、のべ10人未満です。それくらい徹底してテレワークで円滑に仕事を続けています。

●参考情報:

2020年8月に一度、その時点でのリアルタイム情報をお届けしました。

 https://www.dunksoft.com/message/2020-08

 

その後、ポスト・コロナ社会をみすえて、さらに環境整備を続けています。たとえば、テレワーク環境向上のため、スタッフが日々使用する一部のPCを刷新し、ストレスなく在宅ワークできるように整備しました。また、神田オフィスを、ポスト・コロナ時代の「イノベーション装置」として再定義し、オフィスの一部をリデザインしています。さらに、次の需要創造に向けて、新スタッフの募集もはじめています。

▎改めて、テレワークの効能

ダンクソフトはもともと2008年からテレワークを推進してはいました。それを、昨年は約半数のスタッフがオフィスに出社して仕事をしている状態から、全社完全テレワーク化しました。

スタッフは、この1年、通勤による時間的・精神的・体力的消耗から解放されています。子育て中の方は特に、家族のそばにいられる安心感が得られるようです。生まれた余裕は、それぞれスキルアップや家族との時間にあてることができています。この結果、実際、徹底して全社的なテレワークを実践してみると、チームの集中力、生産性はやはり上がっています。

また、クライアントへの波及効果も大きなものでした。ダンクソフトが「テレワーク先駆企業」(中央区ワーク・ライフ・バランス推進企業(2009年)、テレワーク推進賞 優秀賞(2014年)、テレワーク先駆者百選(2016年)、テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)(2016年)、平成29年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業 (2017年))として提唱しつづけてきたワーク・スタイルが、いまや、皆さんの現実となりました。今までは、そうはいっても在宅勤務なんて、と思われていた方もいらっしゃいました。が、この1年で、やはり大事なことだったと認識していただいたようです。ダンクソフトと関わりをもつ企業や団体が、その価値に気づき、デジタル化へのシフトがはじまっています。 

▎1年の経験から、見えてきた課題

全社的なテレワークを進めていく中で、いくつかの課題も見えてきました。

自分のペースで仕事ができる環境は集中力を高めます。ただ当初は、逆に集中しすぎて、息抜きがうまくできないという問題が生じました。やがて慣れてくると、自分なりのペースができ、皆、息抜きのしかたもうまくなっているようです。休憩時間に好きなピアノを弾いて過ごしているスタッフもいます。

また、通勤をはじめとする運動量や生活パターンが変わるため、太ったり痩せたりした人もありました。体型・体力・健康の維持にも自律的な工夫が必要です。

実験的に、2020年12月には、スタッフが林野庁事業に参加しました。森林の中で働くことをモニターするツアーでした。ストレス軽減のために自然に触れ、自然の中でデジタルを活かして仕事をする機会も、これから重視されていくでしょう。 

ここにきて、状況を見ながらですが、輪番制でオフィスに通って仕事をすることを望む声が出ています。通勤時間をうまく有効活用していたスタッフや、家庭の事情でオフィスにいるほうが集中できるスタッフからの声です。ポスト・コロナ社会のオフィスの使い方を、スタッフとともに、さらに検討する時期に来ています。 

スタッフが参加した林野庁事業「森林×SDGs ポスト・コロナ時代のNew Standard探求モニターツアー」。森林の中でテレワークする機会も増えていくでしょう。

スタッフが参加した林野庁事業「森林×SDGs ポスト・コロナ時代のNew Standard探求モニターツアー」。森林の中でテレワークする機会も増えていくでしょう。

▎テレワーク中の「雑談」をどう起こすか

全員がテレワークという状態でうまくいくかどうかは、やはり「コミュニケーション」にかかっています。目的と場面に応じたツールの選択と使い方が大事です。

たとえば、ダンクソフトでは、こんなケースがありました。

全員テレワークになって「雑談」がしづらくなっていたのですが、「あった方がいい」「多少の雑談もしたい」と感じる人が出てきました。「雑談・会話・対話」のことです。この3つのモードを適宜切り替えながら、あらゆるプロジェクトは展開し、新しい発想やイノベーションの芽が生まれます。ですから、テレワーク中に雑談の機会をどうつくるかは、プロジェクトを活性化する上で大事なテーマです。

ちょっとした雑談の場になっています「日報かんり」

ちょっとした雑談の場になっています「日報かんり」

私たちの場合、意外なところから雑談が生まれています。日々の業務内容を集約し、共有するために使用している「日報かんり」というソフトがあるのですが、その報告欄が、ちょっとした雑談の場になっているのです。“かんり”と言いながら、その日のBGMを必ず記載する人、サッカーの話題を欠かさない人、ブームの鬼滅トークで盛りあがる面々。中には「昼食を簡易にしすぎて栄養不足」とこぼした人がいて、他のメンバーからアドバイスが届いたこともありました。「日報かんり」に書きこんだ内容が自動でMicrosoft Teamsへ共有されるので、いいねや、絵文字を付けたり、チャット欄は日々にぎわっています。

 ●参考情報:

在宅勤務をサポートする日報かんり

http://service.dunksoft.com/nippoukanri/

 

こうしてみるとツールの力のように見えますが、実はもうひとつ大事なのは、メンバー間の「互恵的関係」(助けあう関係)を日ごろから培っておくことです。どんなよいシステムも、効果を発揮するには、前提として社内にソーシャル・キャピタルが醸成されている必要があることを、改めて実感しています。

 

▎日本の会社は、オフィシャルとプライベートを分けすぎている

メンバー間の「互恵的関係」をつくるには、あるていど情報をオープンにしておくことが不可欠です。そこが、日本の会社風土の中で大きく欠けていると思う点です。多くの場合、会社はオフィシャルな場であり続けているので、実は会社では建前で過ごしている人が多いと思います。

そこがダンクソフトは違っていて、ある程度の情報をそれぞれがオープンにしている。建前ではない風土があります。そうしておかないと、子育てや介護をしながらのメンバーもいるため、チームで連携・協働がしづらくなります。必要に応じてプライベートの状況を提示することは、「おたがいさま」の助けあいのためにも欠かせません。この10年でその風土がじわじわとできてきました。

他社の状況を見ていると、個々人の事情を共有するところまで、まだできていなかったり、抵抗があったりするようです。でも、これから在宅勤務をうまく続けようとするなら、オフィシャルとプライベートという考え方ではなくなっていきます。もっとブレンドされて、交ざりあっていくでしょう。

今は、夜でも休日でも、スマホに刻々とビジネスの話が飛び込んでくる時代です。また、逆に、日中の業務中に、子供の用事で少し抜ける分を、夜にカバーすることもあるでしょう。昭和・平成時代の働き方には、もう戻らない。これからは業務時間とプライベートと呼ばれる領域を切り離しすぎないことが必要です。

▎Zoom会議ができただけで終わらずに、その先のテレワークへ

テレワーク化のための助成金制度も多くなっています。ただ難点は、範囲が限定的で、大事な部分が抜け落ちている場合が多いことです。本来、E-learning、セキュリティ対策、BCP(事業継続計画)、ペーパレスによる環境配慮などを合わせて考えることで、テレワークの真価が発揮されます。これらが含められない助成金があることは、大変残念なことです。

テレワークをはじめることで、デジタル・デバイド(情報格差)を、まずは解消できます。ただ、Zoomでオンライン会議ができるだけにとどまるなら、まだまだです。デジタルをもっと活用していくために、情報をインターネット上にのせていきましょう。そして、社内であれ、お客様との関係であれ、地域であれ、コミュニティを活性化していくことに、目を向けたいものです。こうすることで、自社の次なる展開が生まれていきます。

ダンクソフトは、クライアントの状況に応じたテレワーク導入をお手伝いしています。助成金の申請にあわせた短期間での支援実績もあります。アドバイザーとしてご支援したある団体では、1ヶ月半で導入から報告書の完成までをスピード実施。見事、令和2年度の総務省「テレワーク先駆者百選」に選定されました。

“次を創るテレワーク”の輪を、引き続き広げていきたいと思っています。


●いつでもご相談ください。

テレワークの円滑な導入・定着・さらなる展開に向けて、丁寧にサポートしていきます。

 

参考情報:

・テレワーク検定 https://www.wnw-academy.com/ 

・テレワーク導入支援 https://www.dunksoft.com/129573523721 

・日報かんり http://service.dunksoft.com/nippoukanri/ 

2021年 年頭所感


新年あけましておめでとうございます。

2021 年の年頭にあたり、ご挨拶申し上げます。


▎2021年、「インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」

 2021年は、コロナ後の社会を創る時です。

 そして、コロナ後のビジネスを創るときです。

 そのカギは、「インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」ことだと考えています。

 この流れは加速するでしょうし、加速させていきます。

 インターネットが、これからの社会インフラです。そこにようやく気づいた人も、あらためて気づいた人もいたと思います。ともあれ、ビジネスも、働き方も、暮らし方も、根本的に変わりました。

▎需要創造のパートナーへ

 コロナ禍は、各分野で需要の蒸発を生みました。ならば他方で、需要を創造しなくてはなりません。ひとつ、私たちのクライアントの話をご紹介します。長年の付きあいのある方々です。

 昨年、スマートフォンで完結できる資産運用サービスがはじまりました。数百円、数千円という少額で株式投資ができ、書類郵送は不要。取引はスマホアプリのみで行います。若者向けを想定していたのですが、少額、手軽、操作がわかりやすい……といった長所が支持されて、それまで株式投資に縁のなかったさまざまな方たちが使いはじめています。

 このように対面での窓口業務を減らし、オンラインで手続きできるようにすることで、需要の裾野が広がりました。「インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」ことで、単に効率化することを超えて、新たな需要創造につなげていくご支援を、2021年も加速していきます。

▎“3つのD”――コロナ後における地域とビジネスのカギ

  デジタル化のはじまりは、対話のはじまりです。ウェブは本来双方向の場で、一方的なメッセージを押しつける場ではないからです。きれいにお化粧された情報だけ出していても始まりません。多様な相手に応じた質の高いコミュニケーション、つまり「対話する関係」を、いかにウェブ上で実現するかが問われる時代なのです。要するに、「デジタル」「ダイバーシティ(多様性)」「ダイアログ(対話)」。この“3つのD”が、これからの地域社会を創り、これからのビジネスを創っていきます。

▎効率化を超えて

 それから、ふたこと目には、デジタルで「効率化したい」という声も依然として多いですね。これは、一種の“効率化マニア”です。たしかに、デジタルを上手に使えるようになると、生産性や効率性は上がります。ですが、デジタルの効果は、それにとどまりません。

 デジタル化によって対話が生まれ、互いの関係が豊かになることが、デジタルがもたらす大事な効果です。デジタルは、なんとなく冷たい、非人間的というイメージが一部にありますが、まったく逆なのです。

 デジタルをうまく活かしてデジタル・デバイド(情報格差)を解消する。そして、効率性や生産性向上の実現とともに、連携と協働があちこちで進んで、人間のポテンシャルがもっと引きだされる。この過程で、ソーシャル・キャピタルが醸成されていくと、地域とビジネスも活性化していきます。ダンクソフトは、デジタルで効率化の先にある未来を応援し、人と場をリ・クリエーション(再創造)していきたいと思います。

▎「ポリバレントなひと」と「あいだを結ぶひと」

 デジタル社会で大事なのは、やはり「人間」です。とくに次の2つが、これからの人を語るキイワードです。

 ひとつは「ポリバレント」。一人ひとりが多様な役割を持ちあわせ、状況や場面におうじて柔軟に動ける人のことです。私の担当や専門はこれだから、そちらのことは知りません、という態度とは真逆です。

 もうひとつは「インターミディエイター」です。社会や関係の分断が進むなか、「あいだ」を結び、地域やビジネスを活性化していく役割です。この2つを兼ね備えていたら、なおいいですね。今後、ますます必要とされていく動きですから。

▎「イノベーション装置」として、オフィスを再定義

 さて、ダンクソフトの東京オフィスは、2019年に移転した新オフィスです。場所は神田の駅前で、大きな窓から光がよく入る、快適な新築ビルです。だれも出社しなくなった後、オンライン化が進むポスト・コロナ社会をみすえて、オフィスの一部を改装しました。

  そこは、高速・高品質のインターネット環境と音響がある、コミュニティ・スペースです。多様な人々がここに集って、出会い、対話が始まることでイノベーションが起こりつづける「イノベーション装置」としてのオフィスと再定義しました。

 冒頭にも触れたように、ダンクソフトでは2020年3月から全スタッフがリモート・ワークを継続しています。スタッフ同士あるいはお客様と会いたい気持ちが増してきて、最近では、恋しいよね、という会話も聞かれます。人は集うことで次の時代を創ってきた、と言います。2021年以降、社内外のたくさんの方々と、次を創るプロジェクトを起こしていくためにも、「集う価値」を重視しようと思っています。もちろん安全には十分に配慮しながらです。ここでは、オンラインとオフラインのハイブリッド型の集いやイベントができるので、もっと面白いことが起こる場になるだろうと期待しています。

▎ウェブ会議の質は「音」で決まる 

 そのための環境も整えました。安定した接続ができる有線の高速インターネット回線。高性能の集音マイク。そして、最大の特徴は、場の息遣いまで伝わる波動スピーカーです。空気全体を震わせることで、サントリーホール全体を心地よい音で満たすことができるというもので、世界的ミュージシャンやホテルに選ばれています。 

 オンライン・イベントやウェブ会議では、コミュニケーションの質を左右するカギは、実は「音の質」にあります。音声がクリアでなかったり、途切れがちだったりすると、ストレスが大きく、参加していて疲れますし、内容もなかなか入ってきません。質の高いインターネット・コミュニケーションをつくるうえで、「いい音づくり」が、とても大事なのです。ダンクソフトの神田オフィスがホストになればクオリティが保てるということは、配信スタジオとして大きな可能性をもっていると思います。

 すでに先日、パイロット・ケースにあたるフォーラムを行いました。上々の手応えがありました。この先行事例を実績として、2021年は、このオフィスを、人々が出会える場、イノベーションが起こる場として、皆さんと一緒に育てていきます。

▎2021年は「自然×デジタル」が飛躍する

 2021年の大きな変化として、インターネットでつながる先が、どんどん自然の中へと拡張していくでしょう。コロナ禍の動きを見ても、森、山、海といった自然界に、以前に増して人が足を運ぶようになっているようです。そこで、自然のなかに、どうデジタルをもっていくか。映像品質、通信速度などのインフラが豊かに整ったいま、もしかしたらインターネットから届く情報による体験が、アナログの、いわゆる現地での体験を越える可能性も出てきたわけです。私は少し前から「自然と機械と人間の協働」に注目しているのですが、この動きがこれからますます進むのは間違いありません。

 都市部への一極集中を軽減する意味でも、すでに人が動き始めています。BCP(事業継続計画)やリスク回避の観点からも、分散・拡散の流れが見られます。人が動けば、新しい情報も動きます。ダンクソフトでは、昨年から森林再生の取り組みや、新たな森林価値の創造に向けたプロジェクトに関わり始めました。ポスト・コロナ社会では、インターネットやデジタルの舞台は、大都市や都会から、日本全国のさまざまな地域、そして自然の中へと、さらに加速しつつ広がっていきます。

▎「SmartOffice構想」で、ともに未来へ 

 ビジネスは市場で完結しません。地域へ、自然へと広がっています。こうした複雑化し、多様化する社会の動きをみすえて、ダンクソフトはかねてから「SmartOffice構想」を推進しています。

 「インターネットに“あらゆるもの”をのせていく」を合言葉に、いろんな人やグループが柔軟なつながりを持つ。対話し、連携し、協働して、生活課題の解決や新たな価値創造が進んでいく。このような連携・協働の広がりをめざすのが「SmartOffice構想」です。

 全国各地、自分のいるところがオフィスになりますから、この動きはやがて、“脱一極集中の社会”へとつながっていきます。

 ところで、そこでは全員が「一丸となる」のではなく、それぞれが異なるキャラクターやポテンシャルを発揮しています。ダンクソフトのスタッフたちは、日ごろから一丸となることはありません。それぞれに自律し、連携して動いていくことが大事です。もう「選択と集中」の時代ではありません。「自律・分散・協調」から、イノベーションも生まれていくことになります。協働意識の中から、生活コミュニティを形成し、一人ひとりが豊かさを実感できる未来をつくっていきましょう。

 

株式会社ダンクソフト

代表取締役 星野 晃一郎