自然×人×デジタルが協働する未来へ

自然×人×デジタルが協働する未来へ

▎時代がダンクソフトに急接近してきた

  ダンクソフトでは、3月からオフィス内に「ダイアログ・スペース」を新設しました。ここをデジタル拠点として、去る3月7日~14日に、8日間にわたるオンライン・イベント「森林と市民を結ぶ全国の集い」が開催されました。東日本大震災から10年、コロナ禍のいま、森林と市民を結ぶあらたなかたちを模索しようと、企画されたものでした。

 振りかえれば、震災当時のダンクソフトは創業28年を迎えたころで、テレワークを実装する「これからの働き方」を実証実験しているところでした。

 はじまりは2008年、当時、私たちは伊豆高原でサテライト・オフィスの実験を試みました。豊かな大自然のなかで、環境についても学びながら、首都圏の仕事をテレワークで行うことができるリモートワーク拠点をつくろうとしたのです。今でいうワーケーション、避暑地などで休暇をとりながら働くスタイルです。ただ、当時の伊豆高原はまだ通信環境が脆弱で、実用レベルには達しませんでした。その後2010年に、育休明けスタッフが社内第1号のテレワーカーとして自宅から仕事をはじめ、これがテレワークの先鞭となりました。

 ▶テレワーク ──2008年から始まった取り組み
  
https://www.dunksoft.com/message/2019/8/1/-2008

 震災があったのは、その1年後です。首都圏への一極集中によるリスクを痛感しました。震災後、BCP(事業継続計画)の観点からも代替地を求め、ダンクソフトは徳島県神山町に本格的なサテライト・オフィスを設けます。伊豆高原では得られなかった、地元とダンクソフトを結ぶインターミディエイターの存在にも、大いに助けられました。

 このとき、川の中でパソコンを使って仕事をしている映像がNHKの「ニュースウオッチ9(ナイン)」で紹介されました。これが大きな話題となりました。

川の中でパソコンを使って仕事をしている様子は、当時社会に驚きとなった

川の中でパソコンを使って仕事をしている様子は、当時社会に驚きとなった

 インターネット環境さえ充分整っていれば、森や川や海辺といった大自然のなかで、都会とも世界とも直結したビジネスができる。いま私たちが「スマートオフィス構想」のなかで提案している「インターネットにあらゆるものをのせていく」という未来の働き方は、その頃すでに始まっていました。

 以来10年、デジタル・テクノロジーはめざましい進展を遂げました。ポスト・コロナ時代の今、この10年でダンクソフトが一歩一歩進めてきたことが、一挙に時代の潮流になってきました。時代がダンクソフトに急接近してきた。そのように感じています。

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5Gが切り拓く新たなインターネット社会 

 劇的な展開を呼びこんだのは、通信環境の驚異的な進化、やはり何と言っても、これが大きいです。ダイヤルアップからADSLを経て光ファイバーの時代になり、最大通信速度は、1980年からの30年で約10万倍になったと言われます。 

 そしてここにきて到来したのが、「5Gの時代」です。第5世代移動通信システム(5G)の通信速度は、現在使われている第4世代(4G)の実に100倍以上も高速です。この5G通信網で、離島や山間部をふくむ日本全域を覆う計画があります。総務省では大型予算を組んで、5Gインフラ整備を急ピッチで進めています。

 5G構想のすごいところは、これまで取り残されがちだった離島・半島・山間部・僻地・地方こそ網羅し、文字通り日本中をカバーしようとしている点です。今後は、人間が住んでいない地域にも、インターネットが行き渡ります。人間・自然・機械(デジタル)が協働する時代が、情報インフラの面で、いよいよ本格始動するのです。 

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人間・自然・機械が協働する「未来」はすでに到来している

  人間・自然・機械(デジタル)が協働する未来は、じつはすでに始まっています。それを、ダイアログ・スペースをデジタル拠点として行った「森林と市民を結ぶ全国の集い」でも、実感しました。

 スマートオフィス構想を実践する新拠点
  https://www.dunksoft.com/message/2021-03

 ▶第25回 森林と市民を結ぶ全国の集い2021
  https://www.moridukuri.jp/forumnews/tsudoi2021.html 

  NPO法人「森づくりフォーラム」が長年、年に 1 度開催してきた集いです。が、2020年はコロナ禍で開催できず、今年はオンライン開催となったため、ダンクソフトとして初めて実行委員として参加しました。

  今年は震災から10年目にあたります。コロナ禍ということで、宮城、福島、岩手の東北3拠点のほか、東京・栃木・群馬などの各拠点をオンラインでつなぎました。スピーカーも全国各地、そしてドイツからもメンバーが集いました。海外もふくめて、のべ800人が参加する大きなイベントとなりました。

リコーの360度カメラTHETA(シータ)を使った自然体験デモ(サシバの里自然学校 遠藤 隼 氏)

  今回、25年にわたる開催史のなかで、初めてのオンライン開催となりました。くわえて、デジタルの可能性が分科会のテーマとして初めて着目されたことは、ひとつのニュースでした。このエポック・メイキングな場に、デジタルとオンラインの担い手として、ダンクソフトが協働力を発揮できたことを嬉しく思います。

 実際に開催してみて、神田オフィス内に新設したダイアログ・スペースの価値を、皆さんに体感していただくことができました。通信が安定していること、音が良いこと。オンライン・オフラインを超えた場づくりに必要なデジタル環境が整っていること。だからこそ、対話に注力でき、コミュニケーションがより活性化するのです。

 遠隔拠点の機材アドバイスや良質なスピーカーの貸し出しも行いました。複数拠点を網の目状につなぎつつ、安定したコミュニケーション・ネットワークの実現によって、ストレスなく、各メンバーがすぐそばに集っているかのように、参加いただけたようです。

ダンクソフトのオフィス内にある「ダイアログ・スペース」がデジタル拠点となって、オンライン・オフラインを問わず、参加者間での対話が深まるイベントとなった

ダンクソフトのオフィス内にある「ダイアログ・スペース」がデジタル拠点となって、オンライン・オフラインを問わず、参加者間での対話が深まるイベントとなった

▎「協働」と「コ・ラーニング」がこれからの価値観 

 自然 × デジタルの可能性についても、大きな手応えがありました。森づくりの担い手や後継者の人材不足、高齢化、専門性の高さ、都会との距離、ビジネスの創出といったトピックが話し合われました。これらの課題に対して、デジタルを取り入れるからこそ解決できることがたくさんあります。 

 たとえば、ドローンで森を俯瞰する、集まったデータで森を見える化する、荒れた森林をロボットで維持・管理する、熱センサーで木の健康状態を判断する……などなど、環境保全としても、ビジネスとしても、実にこれからの可能性にあふれています。自然との貴重な個別体験があって、それを互いから学び合えるような、これからにふさわしい学びの場の提供も可能です。深い森、遠い森に行かなくても、あるいは行けない方でも、オンライン配信による新たな学習機会を創出できます。自然との関りを、より多くの人々に広げることになります。

 じつは、2017年に徳島県神山町で開かれた世界構想プログラム「物語の結び目会議」で、ダンクソフトの未来構想を描きました。その時にダンクソフトの竹内が描いた未来像が、まさにこうしたデジタルで森とともに生きる・暮らすというものでした。当時はまだ技術が追いついていませんでしたが、5G通信網で日本全国が覆われようとしている今、これはもう、間もなく到来する現実だと言えるでしょう。

 ポスト・コロナ社会の新しい価値観のもと、競争ではなく「協働」の概念が、今後ますます大事になります。本社という一か所に人間を集約するのではなく、人や拠点が多中心に、分散型で、地域を超えて、網の目状につながる。人と人はもちろん、人と自然、人と技術、自然と技術もまた協働の場を必要としています。

 ダンクソフトはその実践者であり、モデルケースでもあります。私たちがデジタルに長けたインターミディエイターとして、人と技術、人と自然、技術と自然のあいだを丁寧に媒介していって、さまざまな協働作業をうながす役割は大きいと考えています。

 異なる価値観どうしが出遭ったり、会話・対話が生まれやすい場をホストできたり、新しいエクスペリエンスの提供・向上に寄与できたり、共に学び合うコ・ラーニング(Co-learning/共同学習)の環境が生まれる一助になっていれば、とても嬉しいことです。

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一極集中を超えていく

2021年4月1日より、徳島オフィスに、地元・阿南工業高等専門学校の卒業生・山本さん(左前)が、新卒社員として入社しました。デジタルを活かせば、地元の地域社会に残りたい若い世代が、地元でやりたい仕事につくことができます。

2021年4月1日より、徳島オフィスに、地元・阿南工業高等専門学校の卒業生・山本さん(左前)が、新卒社員として入社しました。

デジタルを活かせば、地元の地域社会に残りたい若い世代が、地元でやりたい仕事につくことができます。

 この10年、デジタル・テクノロジーはめざましい進展を遂げてきました。これからは、もっとデジタルを活かすことで、都市部への一極集中から、各地に分散的に広がていく時代です。

いつも話していますが、昨今、生まれ育った地域に残りたい若者たちが増えています。すでに授業はオンラインで受けられるようになりました。仕事も同じです。テレワークなら、どこにいても都会の仕事ができます。場所に縛られず働くことができるので、住みたい場所に住み、地元の地域社会に残ることができます。

 これは高齢化問題の解消にもつながっています。地域に若い世代が残ることで、高齢者と若い人たちが地域で協働することができます。森づくりの場合も、環境保全に関わる人を増やせるし、若い参加者が森に入って行って、それを高齢の匠たちが遠隔でアドバイスするということもできるようになります。高齢化をネガティブにばかりとらえるのではなく、可能性に着目すれば、新たなビジネスの仕方も、社会的関わりも生まれていくでしょう。

 このように、日本各地に分散拠点、すなわち「スマートオフィス」が増え、お互いに連携し、社会的協働の機会が増えていくほど、日本は地域からそうとうに変わっていきます。技術力と協働力をいかして、日本は世界に先駆けて新しい姿をみせるときです。より明るい未来に向けて、日本が世界を変えていく。これが、「スマートオフィス構想」を通じて実現できる未来像です。

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 ▶ご参考:総務省 令和3年 予算
 テレワークや遠隔教育、遠隔医療を支える情報通信基盤の整備: 219.5億円
 Beyond5Gや5Gの高度化等の実現のカギを握る先端技術の研究開発:507.6億円
 詳細はこちら 
https://www.soumu.go.jp/main_content/000742163.pdf