インターネットに あらゆるものを のせていく −「リ・クリエイター」編

もくじ

■「スマートオフィス構想」の“担い手”はどんな人?

■ これからの価値創造を担う「クリエイティブ・クラス」とは

■ こんな人が、「リ・クリエイター」として活躍する

■ どうすれば、「リ・クリエイター」と出会えるのか

■ 生産性というメガネで見ていると見えないこと

■「スマートオフィス構想」の“担い手”はどんな人?

 ポスト・コロナ社会で、ビジネスの可能性を劇的に広げる秘訣があります。

 それは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことです。

 インターネットによって、場所や時間の制約がなくなり、居場所は自由に、仕事はクリエイティブに、人びとの活躍の場は世界へと広がります。1社だけがテレワーク環境を整えるだけでは、もったいない。テレワークできるようにした先に、社内外のさまざまなアクターと連携・協働して、次の需要や展開をつくっていくのが、「スマートオフィス構想」です。この「スマートオフィス構想」が、これからの難しい課題解決や価値創造を、可能にしていきます。12年前からテレワークを実証実験してきたダンクソフトが、いま、積極的に提案している方向です。

◆「スマートオフィス構想」とは? 

https://www.dunksoft.com/message/2020-06

 では、「スマートオフィス構想」のもとで、人はどんなふうに才能をのばしていけるのか。どんな担い手が「スマートオフィス構想」のもとで共に活躍し、アイディアを形にし、働き方やビジネスの進化を加速させていくのか。新たなはじまりをつくっていくキー・パーソンとは、どんな人たちなのでしょうか。

 今回は、「スマートオフィス構想」の“担い手”について、話をしたいと思います。

■これからの価値創造を担う「クリエイティブ・クラス」とは

 「クリエイティブ・クラス」という考え方をご存知ですか。アメリカの社会学者リチャード・フロリダが提唱した概念です。情報社会で活躍する、創造的な課題解決と価値創造を担う人を総称するものです。著書には、なるほどと感じるところも多く、ダンクソフトが大切にする「人」の見方とも重なります。

 ダンクソフトは、これから大事なのは、「リ・クリエイター」(Re-creator)だと考えてきました。

 クリエイティブ・クラスと共通する特徴として、「自分の頭で考え、判断ができる」、「自律的に時間設計ができる」、「趣味や遊び心を仕事に活かせる」、「新しい価値観やライフスタイルを創りだす」、そして「未来を創る推進力になる」などがあります。くわえて、「さまざまな人やモノの“あいだ”を結び、次の展開をうみだす」というインターミディエイターの役割をあわせもつ人が、「リ・クリエイター」として活躍していきます。

 たとえば、自分で考えて判断する力や、自律的に時間設計する力は、テレワークでも欠かせない能力です。身近なところでいえば、今回、コロナのことで急に在宅テレワークが必要になった方もいるでしょう。そのなかには、突然自宅で仕事をすることになり、時間設計にとまどった人も多かったのではないでしょうか。私はかねがね「時間は人生のために」と言っていますが、人間にとって時間はとても貴重なリソースです。自分の大切なリソースである時間を、何にどう使うかに意識的になることは、リ・クリエイターとして必須です。

 また、遊び心や面白い発想は、これからの価値創造に欠かせません。いままでは、それは趣味でしょうと言われて、職場では表立って語ってこなかったことが、むしろ新たなビジネスのきっかけを拓くことも多くなるでしょう。

■こんな人が、「リ・クリエイター」として活躍する

 こうした特徴のいくつかを満たす人が、これからの課題解決や新たな価値創造を進めていく担い手になります。かならずしも一人で全部を満たす必要はなく、いくつかを満たしていれば充分です。すべてを満たすような人がいれば、もうスーパー・リ・クリエイターですね。

 実際、ダンクソフトで活躍しているほとんどのメンバーは、これらの特徴をいくつかあわせ持っています。

 たとえば、何度かコラムに登場している開発チームの竹内祐介も、そのひとりです。彼は、まだサテライトオフィスの実証実験が始まったばかりの頃に、「実証実験で成功しているのだから、遠隔地に常駐する社員がいてもいいのではないか」と、私に直談判しに来たのです(笑)。わざわざそのために徳島から東京へ2泊3日で訪ねてきたのは、自律的に時間設計ができ、自分で意思決定できるからこそ可能だったと思います。その結果として、彼が起点となって、ダンクソフト徳島オフィスが誕生することになりました。

 また、同じく徳島・阿南市の久米まつり。在宅で育児をしながら仕事をしており、2019年8月のテレワークについてのダイアログにも登場しています。子育てを大事にしたいこともあって、当時はアルバイトとして働いていましたが、今は社員としてテレワークで活躍しています。実は、去年ダイアログの時点で、「子どもがもう少し大きくなって、時間の融通がきくようになったら、将来的には社員になりたい」と話していました。まさにそのとおりになったわけで、彼女もやはり上記の特徴を複数あわせ持っています。

 2人の事例で共通して言えるのは、ともすれば制約や制限とも思える条件を逆にいかして、課題解決から新たな価値を創造していることです。竹内はふるさとに住み続けたかったし、やりたい仕事もあきらめなかった。久米は子育てを優先しつつ、キャリアも志向した。どちらも強い意志と柔軟な発想が、新しい価値観やライフスタイルを創りだし、未来を創る推進力になったのです。経営者は、こうしたこれからの芽を見逃さないようにしなければなりません。

■どうすれば、「リ・クリエイター」と出会えるのか

 大事なのは、「誰もがリ・クリエイターになれる」ということです。気づいていないだけだったり、本来のポテンシャルを眠らせていたりするだけで、誰もが、リ・クリエイターの資質を開花させていくことができます。

 では、どうやってリ・クリエイターや、リ・クリエイターの卵を見出すのか。実は、これについては、ダンクソフトならではの知見があります。

 それは、ダンクソフトのフィロソフィーや想いを、さまざまなメディアでコミュニケーションすることです。物語を語り続けると、わたしたちが思い描いている方たちが自然と集まり、結果として、リ・クリエイターたちに出会えます。

 たとえば、それまで縁もゆかりもなかった地域で活動をはじめる場合、まずその地で、とにかく多様なコミュニケーションを図ります。現地の方々に知っていただくために、説明会、セミナー、交流会やワークショップ、地域ラジオ等のコミュニティー・メディア、SNSをつかった地域限定投稿など。また、首都圏など都市部の方へは、首都圏でのセミナー、現地視察ツアー、ウェブでのリアルタイム・レポートなど。そして地域と首都圏を結ぶ仕組みも用意します。現地視察ツアー、両者をオンラインでつないでのセミナーやイベント、写真を多用した報告書、ウェブでのレポートなど。セミナーは開催場所や対象者によって内容を変えて、何度も開催します。また、視察ツアーをコーディネイトすることで、ダンクソフト自身も地元地域との関係が深まり、人を良く知るきっかけにもなります。

 こうした一連の活動についても、「あらゆるものをインターネットにのせていく」ことを、積極的にしています。インターネットにのせることで、複合的なコミュニケーションが実現し、地域や企業に眠る意外なポテンシャルを秘めた人たちとの関わりが生まれます。そうした人は、ちょっとしたきっかけでリ・クリエイターとして目覚め、いきいきと輝きはじめます。そのきっかけづくりが、はじまりをつくることになります。

 思いがけない人や組織からアプローチがきて、どうしてそんな人が…? と思ったら、もう何年も前にセミナーに参加してくださっていたという事例は数え切れません。先述の竹内もダンクソフトを知ったきっかけは、ダンクソフトの活動を知る地元の先輩からでしたし、久米はもともと私たちが地域で開催した講座への参加者でした。最近では、昨年、阿南市長になられた表原立磨市長がダンクソフトをよくご存知で、聞けば、ごく初期に徳島で開催した催しにお越しになっていたということでした。

■“生産性というメガネ”で見ていると見えないこと 

 新たな価値創造は、効率化の延長線上にはありません。まったく違う見方ができる人や遊び心から生まれます。“生産性というメガネ”だけで見ていると、見えないことがあります。たとえばですが、竹内や久米のケースのような、未来に向けた動きを見落としてしまいます。

 ポスト・コロナ社会は、首都圏一極集中から、多様な場所への分散が進むでしょう。AIの進歩も止まりません。そのような状況下ですから、AIができることはAIにまかせ、うまく協働して、人間だからできること、楽しめることに、よりいっそう注力していくべきです。

 この20年で劇的に進化したテクノロジーを、今こそフル活用するときです。時間・空間をこえてコミュニケーションを取ることが可能になりました。オープンソース化が進んで、いろんなアイディアが使えるようになり、枠を越えた動きが活発になっています。さらにスピードを上げて、変われるチャンスがきています。あとは、そこに意識が向くか、向かないか。気づいた人は、すでに動き始めています。

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