インターネットに あらゆるものを のせていく ─ テレワーク実際編

もくじ

■ 全スタッフによるテレワーク開始から4ヶ月

■ ダンクソフトが実践するテレワークの実際

■ 入社当初はあまりの先進性に衝撃の連続

■ 現場で感じるテレワークのデメリットとは?

■ テレワークから「スマートオフィス」へ

 

[参加者]

代表取締役 星野 晃一郎

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

ウェブチーム 谷原 理恵



■ 全スタッフによるテレワーク開始から4ヶ月 

──今回のコラムでは、ダンクソフトがいま経験している「テレワークの実際」を、ダンクソフトのメンバー2名も交えてご紹介します。いい話ばかりではなく、過去の失敗や課題にも触れながら、テレワークの過去・現在・近未来を考えていきます。まずは、星野さん、ダンクソフトの現在のテレワーク状況について聞かせてください。

星野 最近では、3月26日から、新型コロナウィルス感染症対策として、ダンクソフトでは全社テレワーク体制となりました。東京都知事が自粛宣言を出した翌日です。オフィスに人が集まらなくなって、そろそろ4ヶ月。仕事はまったく問題なく進み、現在も引きつづき全員テレワークでプロジェクト進めています。


──ダンクソフトにとっても、これだけ大規模な全社テレワークは初めての経験ですか?

星野 そうですね。ダンクソフトでは、2008年からテレワークの取り組みを始め、すでにテレワークは当たり前の働き方となっていました。ただ、東京・神田や徳島のサテライト・オフィスをはじめ、やはり「オフィス」という物理的空間があり、多くのメンバーは出社して仕事をしていました。それが今回、新型コロナウィルス感染症対策として、全員が完全にテレワークとなりました。これだけ長期にわたって全員がテレワークで仕事を続けるのは、ダンクソフトにとっても初めての経験です。

 

──ウェブチームの谷原さん、コロナ以前の働き方についてお聞かせください。

谷原 コロナ以前は、基本は神田オフィスに電車通勤というワークスタイルでした。テレワークは必要に応じて、頻度は月に数回程度。子どもの体調が悪いときなどに在宅ワークをしていました。神奈川県在住で、小学生と幼児の子ども2人を育てながら働いています。


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──同じくウェブチームの野田さんはいかがですか。

野田 私はお客様先に出向していますので、コロナ以前は、都心にあるクライアント企業のオフィスに常駐していました。その企業様では、社員のテレワークを導入していなかったかったため、出向のスタッフについては在宅ワークも前例がなく、毎日出勤していました。紙の印刷物が多いオフィスで、連絡手段は主にメール・電話と、口頭でのやり取りでした。


星野 ダンクソフトが全社テレワークに切り替えたのは、3月26日からです。3月25日に東京都知事が、不要不急の外出自粛と在宅勤務を要請しました。ダンクソフトでは、移動を避けるための「全員在宅勤務」を、その日の夜にSNSで外部の関係者や一般の皆さんにも伝え、翌26日から完全テレワーク体制に入りました。

 

■ ダンクソフトが実践するテレワークの実際

──実際やってみてどうでしたか? 不都合や不便はありませんでしたか?

谷原 ありませんでした。実はそれ以前に、試験的にチーム全員が在宅ワークをするテレワーク実験をしていました。いわば避難訓練のようなものですね。そういった経験をして準備が整っていたこともあり、物理的にも精神的にも、ハードルを感じることなく切り替えることができました。


──試験導入を実施されていたのですね。

星野 そうですね。もともとはBCP対策の一環として、社内で実証実験的にテレワークを実施したもので、まさに避難訓練です。2015年1月8日に初開催しました。2015年の1月8日でした。全国17か所から、20名が参加しました。それから全社で何度か実施しています。直近が2020年3月でした。

2015年1月8日に行った初の実証実験の様子 (Skype for Businessで撮影)

2015年1月8日に行った初の実証実験の様子 (Skype for Businessで撮影)

──オンサイト勤務の野田さんも、同じタイミングでテレワークに?

 野田 そうです。前日にダンクソフト本社に必要なものを取りに行って、パソコンをさっと設定してもらえて、翌日から在宅ワークになりました。さっきも話したように、私の出向先はそれまでまったくテレワークをしていません。それが、この緊急事態に対応して実現できたことには感動しました。もともと東京オリンピックの準備のため、在宅やテレワークを導入しなくてはいけないという意識は高くなっていました。デスクトップ・パソコンからノート・パソコンへの切り替えなど、準備が進んでいた成果とも言えると思います。

──実際どんなふうにテレワークをしているのですか? 離れた場所にいるメンバーとのコミュニケーションはどのように?

 谷原 会社から支給されているパソコンを使っています。主なコミュニケーション・ツールとしては、Microsoft Teams(グループ・チャット・ソフトウェア)とBacklog(プロジェクト・マネジメント・ツール)にログインして、仕事を始めます。メンバーとは、常にインターネットでつながっているので、やりとりの気軽さやスピード感はその場にいるのと変わりません。主にはチャットで、詳細説明が必要な場合や認識の確認、デザインを見てもらうときなどは、状況に応じてオンライン通話もします。

星野 こうしたコミュニケーション・ツールは、今回はじめて導入したわけではなく、以前から社内で日常的に使っているものです。あわせて、日報と予定表の連動を「日報かんり」で、経理関連手続きの効率化などを「未来かんり」というツールで行います。

「あらゆるものをインターネットにのせていく」ことで、社内では、事務や雑務に要する時間を大幅に減らせます。同時に、どこにいても仕事ができる環境も整っていました。

野田 私は入社して、1か月弱でオンサイトとしてクライアント先に常駐になったので、ダンクソフトの働き方自体、未体験でした。もちろん、テレワークも未体験でした。今回、初めてグループ・チャットなどでのコミュニケーションを実際にやってみて、コロナ在宅1日目にして「これならいける」と、快適さに驚きました。

自粛要請期間中のニュースで、日本でテレワークができている企業がたった「5%」だと聞きました。ダンクソフトは、その5%に入っているのだなと、身をもって実感で。これだけ進んだ環境があり、それに日頃から馴染んでいたから、「明日から在宅で」と言われても、全員が翌日から何の支障もなく、一斉テレワークができているんだと。あまりに自然すぎて衝撃でした。

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

■ 入社当初はあまりの先進性に衝撃の連続 

谷原 実はウェブチームは、メンバーの1人である久米さん(※)が徳島在住で、普段から完全に離れたところで一緒に仕事をしています。ビデオカメラに向かって入社挨拶をしたのは初めてで、驚きました(笑)。 ですから、グループ・チャットもオンライン通話も、もともと日常的に使っていました。そのようにして「離れて一緒に働く」経験をしていたことも大きかったと思います。

──久米さんは、以前このコラムでも登場いただいています。お二人にとっては先輩にあたるわけですね。

野田 はい。谷原さんも私も2019年1月の同じタイミングでダンクソフトに入社しました。入ってまず驚いたのが、いま話題に上がった久米さんの働き方、つまり、「チームメンバーの1人が徳島の自宅からテレワーク」という進んだ環境です。私は将来やってくるだろう介護のことも考え、いずれこういう時代がくると思ってダンクソフトに入社しました。実際に中に入って体験すると、やはり外で想像しているだけではわからない、驚きの先進性でした。

──谷原さんも驚きましたか?

 谷原 はい、もう本当にびっくりしました。そんなに離れていてほんとに一緒に仕事ができるの? と。でもやってみればなんの問題もなくて、新しい働き方を目の当たりにして、「こんな働き方があるんだ」から「できるんだな」へと、変わっていきました。今ではすっかり普通の、そして理想の環境と捉えています。

 

──他にはどんなことに先進性を感じましたか?

野田 いろいろあります。ダンクソフトに入った当初はとにかく衝撃の連続でした。テレワークの他に、やはり、「ペーパーレス」の徹底ぶりですね。ペーパーレスといっても「紙を少なくしているんだろうな」くらいにしか思っていなかったのですが、プリンターで印刷している姿を全くといっていいほど見ないのです。本当に全然紙を使っていなくて・・・それでも仕事ができるんだということを知りました。

 

──やはり紙がいいと感じる場面はありませんでしたか?

野田 あえて言えば、それまで出力紙にメモ書きをする習慣があったことくらいですが、それもデータ上に打ち込んで記録するという方法に変わっていきました。ツールに応じた方法を選ぶということですね。結果、検索性も高まり、やはりメリットしかありませんでした。

■ 現場で感じるテレワークのデメリットとは?

 ──テレワークで感じるデメリットを教えてください。

 谷原 デメリットですか。それが本当になくて。ほぼメリットしか感じていないのです。よかったと感じるのは、まず、やはり子どものことですね。子どもが小さいので、具合が悪くて幼稚園に預けられないときなどは、家で少し様子を見ながら仕事をしたり、昼休みに家のことができたりして助かります。

 

野田 私も、デメリットが見つからないですね。今までは、ずっと外で働いている母親でしたが、帰ってきたときに私が家にいると、子どもは安心していますし、うれしいようですね。あえて言うなら、運動不足になることくらいでしょうか(笑)。

 

谷原 以前は、常に気持ちが焦っているところがありました。子どものお迎えに間に合うかな、とか、電車が遅れたら間に合わないな、とか。いつも走っていました。慣れるまでは気持ちも、体力にも余裕がなくて、ずっと何かに追われている感覚でした。それが、テレワークをして、柔軟な働き方ができることで、余裕が生まれました。そのおかげで、仕事にも気持ち的に余裕がもてて、家族にも余裕をもって接することができるように思います。

──いい話すぎます (笑)。あえてデメリットを挙げるとすると?

谷原 うーん、むずかしい……(笑)。あえて言えば、パソコンや通信機器の調子が悪いと自分で対処しなきゃいけないですが、対応方法がわからないと慌てます。あと、周りの気配や空気を「察する」ということが難しいくらいでしょうか。顔が見えないぶん、相手の忙しさやあせり具合を、察しきれないところがあります。でもそれも、本人にたずねて解決しようと思っていて、やはり私は恩恵を受けている実感しかないですね。

──野田さんはいかがでしょう。不便を感じる場面はありませんか?

野田 私の場合は、できればクライアント企業様も同じような環境になるといいな、と思います。ダンクソフト社内と同じように、効率よく成果もあがるテレワークができるのが理想です。まずはチャットが使えるようになればと思います。今はメールと電話なので、コミュニケーション・ツールが変われば、かなり仕事のスピードもあがると思います。

──ダンクソフトとクライアント先、両者の環境ギャップが大きそうですね。

 野田 そうですね。紙資料の量が断然違いますし。ただ、これは自分ひとりで始められることではないので、やはり会社でこうした先進的な仕組みを整えていただけると、働く人間はより快適に、クリエイティブに働けるようになりますね。みんながそれをできるようになると、もっと仕事が速く進んで、早く終わるようにもなるでしょう。多くの大企業や官公庁こそ、仕事をオンライン化して、もっと連携しやすくしてもらえればと思います。

星野 それぞれの企業の業態に応じてご事情あってのことではあるのですが、それでもコロナを経て、少しずつ進んできたと思います。今回、スタッフたちが実際にやってみられた経験は大きいと思います。ぜひこれを機に、ダンクソフトだけでなく、まわりのみなさんもテレワークを取り入れて、柔軟でクリエイティブな働き方と、これができる情報環境の整備が進むといいですね。

そのためにも、まず、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことです。優秀な方たちが、さらに優秀になって、仕事ができるようになりますので。  

どうしても残ってしまう押印や郵送のため、ひとり出社し、星野が対応する。全員テレワークのため、スタッフは不在。

どうしても残ってしまう押印や郵送のため、ひとり出社し、星野が対応する。全員テレワークのため、スタッフは不在。

 

■ テレワークから「スマートオフィス」へ

──ダンクソフトでは、テレワークの取り組みは2008年にスタート。12年の間には失敗もあったと聞いています。どう克服してこられたのでしょうか。

星野 最近新しくできる会社は、最初から、ペーパーレス・アドレスフリーを前提に仕組みを構築しているところも多いです。ですが、ダンクソフトは設立が1983年。当時は、会社がそのようにはつくられていませんでした。だから最初は本当に紙だらけでしたし。寝袋で床に寝ているエンジニアもいましたし。コンピュータやインターネット回線の性能も、今のように快適ではなかったです。

それが、スタッフが就業規則を自分たち自身でつくったりするなかで、徐々に環境整備も進み、あらゆるものがインターネットにのるようになっていきました。ペーパーレスもキャッシュレスもクラウド化も、スタッフ自身が働きやすさを考えて、自ら実現してきたところも大きいです。素晴らしいスタッフたちだなあと感謝です。

──スタッフの皆さんの協力も、失敗の克服や、それを次に展開するためには、重要ですね。 

星野 冒頭で話したとおり、3月末に全社一斉テレワークになって4ヶ月になりますが、社内業務はまったく支障がありません。支障がないどころか、この状況になってから、スタッフの仕事ぶりは明らかに上がっています。“避難訓練”こそしてきましたが、いきなりこんな非常事態に直面して、全員がパニックになってもおかしくない状況でした。それが、パニックに陥らないばかりか、これまで以上の力を発揮して、いい仕事ができて、スピードも上がっています。自画自賛のようで恐縮ですが、素晴らしいスタッフたちだと誇らしいかぎりです。

──ダンクソフト内のテレワークがそれほどにうまくいっている要因は、どこにあるのでしょうか。 

星野 メンバーのマインドが、「オープンである」 ということが重要だと考えています。それぞれの状況がわかると、お互い助け合えますし、補完しあうことができます。また、助け合おう、補完しあおうという気持ちを皆がもち、積極的に関与しようとする、とてもいい循環が成立しています。

──テレワークの今後、近未来のビジョンを聞かせてください。 

星野 ポスト・コロナ社会のビジネスは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことで飛躍していきます。テレワークに欠かせないペーパーレス、キャッシュレス、コミュニケーション・ツールの活用も、すべて、この「インターネットにあらゆるものをのせていく」の一環です。これにより、仕事はよりクリエイティブに、活躍の場はより広がり、ビジネスの可能性は劇的に高まります。

──社内環境を整えることで、よりよい働き方ができるわけですね。

 星野 そうですね。そして、1社だけがこうしたテレワーク環境を整えるのではなく、関係する企業や組織や個人が、皆それぞれテレワークできるようになり、さらに社内外のさまざまなアクターが連携・協働できる環境になっていけば、さらなる需要や展開がうまれていきます。これがダンクソフトの考える、これからのテレワーク、すなわち「スマートオフィス構想」です。

──最後に、野田さん、谷原さん、テレワークで余裕がうまれることで、新たにできるようになったことがあればお聞かせください。

 野田 子どもが受験期ということもあり、家族の時間を大切にしています。じっくり話を聞いたりと、子どもと向き合うことができています。今が大事なときなので、とてもありがたいですね。

谷原 私は前からやりたかった勉強を始めました。新しいプログラミング言語がわかると、忙しくしているメンバーをサポートもできるかなと。あとグラフィックのデザインをもう少し突き詰めたいなと思っています。

──ダンクソフトが、テレワークから「スマートオフィス」へ、という構想をお持ちであること。そして、いま実際にテレワークによる余力がクリエイティビティを生んでいることが、よくわかるお話ですね。今日はありがとうございました。

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