#2020

事例:テレワークで実現したNPOの働き方改革と拡がる可能性

お客様:特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会様

介護のために仕事を辞めることになるかもしれない――職員からの相談をきっかけに、樹木・環境ネットワーク協会はテレワーク体制を導入した。導入直後に新型コロナウイルス感染症が拡大。しかし、いくつかの事業は休止や縮小を余儀なくされたものの、基本的な業務は継続することができた。テレワーク導入時に直面した課題、そして広がった可能性について、お話を伺った。

 

■事務所に縛られず、フィールドでの活動を増やしたい

フィールドでの活動風景

フィールドでの活動風景

 樹木・環境ネットワーク協会は、森や里山の保全活動と、そのための人材育成を主軸に置くNPOだ。「聚フィールド」と呼ばれる山林や里山、公共緑地を全国13カ所で管理する他、植物や生態系の知識を持つ人材を育てる検定制度「グリーンセイバー」も設立当初から運営している。検定に合格した人々が中心となってフィールドの保全活動を行っているのが特徴だ。

自分たちが保全してきたフィールドだから、自分たちしか手をつけられない……と閉鎖的になるのではなく、「もっと広くいろいろな方にかかわってもらうことで、自然との付き合い方や自然への関心を高める普及啓発活動を大切にしています」と語るのは、事務局長を務める後藤洋一氏だ。人と自然の関係がもっと近しいものとなり、「人と自然が調和する持続可能な社会」を目指すというのは、同協会の理念でもある。 

特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会 理事・事務局長 後藤洋一 氏

特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会 理事・事務局長 後藤洋一 氏

だからこそ、後藤氏は8~9年前に同協会にかかわるようになってすぐに、「事務所に縛られて行動が制限されてしまうことなく、もっと自由な働き方ができないだろうか」と考えるようになった。そうすれば、もっとフィールドでの活動を増やすことができるからだ。

 



■介護と仕事の両立を模索 

2018年春、後藤氏は「事務所に来るのが難しくなるかもしれない」と広報担当の石崎庸子氏から相談を受けた。両親の介護が必要になり、事務所に来るシフトを組みにくくなるかもしれないというのだ。実家は自宅から近いが、事務所から電車で1時間ほどかかってしまう。急用が発生しても、すぐに駆け付けることが難しい。これから状況がどのように変わっていくかが分からないため、仕事を続けられなくなるのではと不安を抱えていた。

実は後藤氏もかつて、実家の介護や通院を手伝いながら、仕事と両立させることの難しさを痛感した時期があった。そこで石崎氏の相談に背中を押され、「テレワーク」という働き方を選択肢に加えるべく動き出した。

ダンクソフト星野との打ち合わせの様子

ダンクソフト星野との打ち合わせの様子

テレワークについて、ダンクソフトの代表取締役 星野晃一郎に相談したところ、テレワークの助成金があることを知った。8月から情報収集を開始し、申請準備を10月から進めて12月に取得。その後に機器やシステムの導入を完了し、翌年2月には最終報告書を提出するというハードスケジュールを決行した。ダンクソフトには、申請書類の書き方や導入後のフォローまでを相談した。

 後藤氏と星野は、以前からNPOのためのクラウド勉強会を毎月共催してきた間柄だ。だがダンクソフトに支援を頼んだ理由は、他にもあった。「相見積もりを取るために来てもらった他社の方が、とても営業的だったのです。その点、星野さんはフレンドリーで、気さくにいろいろ話すことができました」

またダンクソフト自身がサテライト・オフィスやテレワークに取り組んできた実績や、さまざまなNPOとの協働経験が豊富なことも安心だった。「地域活動に積極的に取り組むダンクソフトは、NPOに対する理解が深いと感じました」

 

■わずかな準備期間で情報収集から導入まで

 テレワークの本格導入を始める前から、同協会では共有サーバーとメールを基盤に運営していた。皆で共有するデータは必ずサーバーに入れておき、メンバーは誰でも見られるようにしていた。この共有サーバーに外からアクセスできるよう、今回から安全性の高いネットワーク接続が可能な「VPN」を設定した。

左:自宅のテレワーク環境  右:オフィスのテレワーク環境

左:自宅のテレワーク環境  右:オフィスのテレワーク環境

 そして、テレワーク中はマイクロソフトのグループウェア「Teams」を常時接続することとした。画面には作業中のソフトウェアとTeamsが表示されるため、作業効率を上げるためのサブモニターも購入。会議用スピーカーやWebカメラも用意した。これらの機器は自宅でも必要になるが、個人負担で購入しなくても済むよう、協会から貸与することとした。

苦労したのは、助成金ごとに助成対象が異なることだ。例えば最初に申請した助成金では、サブモニターやWebカメラは助成対象だが、パソコン自体は対象外。業務を行いながらTeamsを常時接続すると、古いパソコンには負荷が大きいため、後に別の助成金を申請して購入することとなった。

ダンクソフト企画チーム大川慶一が、ダンクソフトでのテレワーク勤務体験談をお話しました

ダンクソフト企画チーム大川慶一が、ダンクソフトでのテレワーク勤務体験談をお話しました

12月半ばに助成金を取得してから、星野によるセミナーと体験会が実施された。スケジュールを組んでみると、セミナーを年内に始めておかなければ、2月の報告書提出には間に合わない。1回目のセミナーは年内最終営業日に、2回目と3回目は1月中に行った。東京事務所6名のうち、テレワークの対象となる4名が参加した。

 

「なんとなく理解しているつもりだったことを、きちんと体系立てて説明していただきました」と石崎氏は振り返る。「具体的に何をどのように進めていくか。その前段階として、世の中の流れや、テレワークの基本的な考え方を、この機会にひととおり教えていただけて、ありがたかったです」

 

■緊急事態宣言に間に合った、テレワークへの移行

 助成金のスケジュールの関係で、テレワーク環境を急ピッチで整えた直後に、新型コロナウイルスの感染が国内で拡大した。そのおかげで、3月末に第1回目の非常事態宣言が発令された頃には、事務所の作業の9割近くをテレワークに切り替えることができた。

だが、対外的な窓口である事務所を完全に閉めることはできないし、郵便物の受け取りや発送作業など、事務所での作業はゼロにはならない。「テレワークには合わず、休業状態になった仕事もありました」と後藤氏は打ち明ける。「それでも、基本的な業務は稼働していますし、テレワークに対するハードルはだいぶ下がったと感じています」 

スタッフとオンライン会議中の後藤氏

スタッフとオンライン会議中の後藤氏

これまでも共有サーバーを使っていたとはいえ、新しいツールに慣れるまでは若干の混乱が生じた。Teams内には、さまざまなプロジェクトごとのチャネルを設けているため、いつどこで話された内容だったのか混乱することもあった。Teamsを見られない環境にいる人には、メールで情報共有をすることもある。「Teams内に保存するのか、メールで送るのか、共有サーバーに置くのか。情報をきちんと一括して残しておくことが、慣れるまでは難しかった」と石崎氏は語る。

 Teamsを使って、常時接続の会議が毎日開かれているので、顔を見ながら話せる場がある。これにより、離れていても事務所にいる時と同じように、一緒に働いている感覚が得られる。それでも「もっと他愛のない雑談ができる場を作れないか」と石崎氏は考えている。「雑談が減って、何かが目に見えて滞っているということはありません。でも事務所では雑談をきっかけに何かが生まれたり、仕事がうまくまわっていくための種みたいなものが、もっとあったように思うのです。次は、テレワークの中でも、うまく雑談かできる工夫をしてみたいですね」

  

■介護しながらも働けることが、団体の価値を高める

特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会 広報 石崎庸子 氏

特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会 広報 石崎庸子 氏

 石崎氏には、気がかりなことがもうひとつあるという。出勤回数を大幅に減らし、基本的には在宅で勤務していることで、他のスタッフの負担が増えているのではないか、という点だ。「私は主に広報関連の仕事をしていますが、事務局に行けば電話応対や、発送の仕事が忙しいようならば手伝うこともできます。でも行かないと、自分の担当業務のみになってしまうので、申し訳ない気持ちになります」

この心配に対し、星野は「そこはお互いさまであって、これから介護は誰もが避けられないこと。石崎さんがそういう事情を抱えながらも働けるということ自体が、周りの人にとって、よい事例になっていると思います」と語る。

「今までは、そういう個人的な事情を隠すのが日本の企業文化でした。介護は結構大変なことなのに、自分だけで背負ってしまい、結果的に会社を辞めてしまっていました」。だが介護される側の人数が増え、公の部分だけでは支えられなくなり、民間の力で支えていく時代に変わってきているのだという。

「負担を組織としてシェアできるというのは、価値が高いこと。同じような課題を抱えた人にアドバイスできるということの価値は、今後高まっていくのではないでしょうか。お互いを尊重して、それぞれが助け合って、無理のないやり方で進めていくことの方が、成果が出やすいと思います」

  

■テレワーク環境整備の、その先に見える未来

テレワークのスピード導入と、その後の試行錯誤が功を奏し、2020年10月には、総務省の令和2年度「テレワーク先駆者百選」(注1)に選ばれた。「おめでとうございますという声はありますけど、今のところはまだ大きな反響はないですね」と笑う後藤氏だが、企業連携を推進する団体としては百選に選ばれたことが、企業との信頼づくり、新しい連携先企業との関係づくりにも通じるだろうと期待する。

また、「テレワークの導入に積極的に取り組んでいるNPOは、まだ多くありません。働き方を模索している団体に、何らかの刺激になれればと思います」と、NPO界全体のデジタル化推進に目を向ける。実際に、受賞をきっかけに、テレワーク環境の整え方や助成金の使い方について、さまざまなアドバイスを求められる機会が増えたという。

今回のテレワーク導入によって変わったのは、働き方だけではない。2020年12月には、大規模なオンライン・イベントも実現した。運営サポートとして携わっていた後藤氏は、事務局に「星野さんにアドバイスをしてもらってはどうか」と紹介。オンライン配信の機材や段取りのアドバイスだけでなく、シンポジウム会場としてダンクソフトのダイアログ・スペース(注2)を活用した。

「テレワークを導入して終わりではもったいない。さらに、オンライン・イベントを一緒に実施したり、セキュリティについて学びを重ねたりすることで、“Co-learning(コ・ラーニング/共同学習)”の関係を続けていくことが大事だと考えています。ダイアログ・スペースが、こうしたCo-learningの一助となれば」と、星野は今後の展望を語る。

 

「森林と市民を結ぶ全国の集い2021」

「森林と市民を結ぶ全国の集い2021」

3月には、1週間におよぶ『森林と市民を結ぶ全国の集い2021』も開催を予定している。第25回目となるシンポジウムだが、今年はオンラインでの配信となる。東日本大震災から10年という節目でもあり、オンラインでの自然体験やグリーンリカバリーといったタイムリーな話題も議論される。ダンクソフトのダイアログ・スペースの他、東北3県からも配信するということで、初めて尽くしの準備は佳境に入っている。

「今までリアルに実施してきたイベントがオンライン化していく中で、さまざまなアドバイスをいただいたり、イベント会場を借りることも今後増えていくのではないでしょうか。テレワーク導入を超えて、ダンクソフトさんと継続的に協働して、何か企画していきたいですね」。後藤氏は、テレワーク導入の経験から、この先の可能性に大きな期待を寄せる。後藤氏をモデルに、森林や自然に関わるNPO団体が、デジタル・テクノロジーを活かして、さらに躍進する未来が待ち遠しい。


 注1)総務省が平成27年度から、テレワークの導入・活用を進めている企業や団体を「テレワーク先駆者」とし、その中から十分な実績を持つ企業等を「テレワーク先駆者百選」として公表している。

 

注2)ダイアログ・スペースは、ダンクソフトの神田オフィス内に設けられた場。全社員がテレワークに移行し、誰も出社しなくなったオフィスの一部を活用しており、オンラインとオフラインのハイブリッド型のイベントを良質な環境で開催できる。


 ■ 導入テクノロジー

テレワーク導入支援テレワーク検定

  

■特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会とは

森づくりを通して環境を考える任意団体として1995年に設立され、1998年よりNPO法人として活動をスタート。各地で森づくりや里山再生に取り組みながら、グリーンセイバー資格検定制度を運営するなど、「森を守る・人を育てる・森と人を繋ぐ」をテーマに、活動の幅を広げている。

https://shu.or.jp/

 

対話と協働から、その先の未来をつくる ー 需要創造を担う仲間を募集します

もくじ

  • ダンクソフトが考える「需要創造」とは?

  • そのポジションが必要になる背景は?

  • どんな方が向いている?

  • 必要なスキル、条件は?

  • ダンクソフトが思い描く未来イメージとは?

  • ポジションに求める人物像は?


 現在、ダンクソフトでは、プロジェクトの拡大・増加にともない、新たな仲間を募集しています。今月は「需要創造の担い手」の募集について、代表取締役 星野晃一郎と取締役 板林淳哉がくわしくお話しします。


ー需要創造の担い手を募集するとのことですが、ダンクソフトが考える「需要創造」とは?

 星野 ひとことで言うと、対話の中から新たな価値を生みだしていくこと。もう少し言えば、外に出ていき、デジタルとインターネットを活用し、対話によって多様なかたたちと協働して、新たな価値を創造していくことと考えています。

シンプルに言えば、「デジタルで ‘はじまり’ をつくる」。それをビジネスにしていく、ともいえます。

コラムに関するオンライン会議の様子 上:株式会社ダンクソフト  代表取締役 星野晃一郎、下:株式会社ダンクソフト  取締役  板林淳哉

コラムに関するオンライン会議の様子 

上:株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎、下:株式会社ダンクソフト 取締役 板林淳哉

ーそのポジションが必要になる背景は?

 星野 創業当初、ダンクソフトはシステム開発の受注会社でした。10年が経つ頃から自社製品の開発をするようになります。そして90年代の終わりに、インターネットが登場してウェブ・デザインの仕事が増え、21世紀は圧倒的にウェブ・デザインが多くなりました。ところが、2011年の東日本大震災以降、地方・地域とのつながりができ、デジタルを使ったコミュニティづくりに関わるようになりました。とくにこの10年ほどは、今までまったくやっていなかったことにもチャレンジして、少しずつビジネスにすることを続けてきています。

板林 そうですね。震災をきっかけに、徳島や萩や北海道など日本各地にご縁をいただいて、地域の中で拠点づくり、場づくり、サテライト・オフィスの立ち上げなど、コミュニティの活性化をお手伝いするようになりました。それまではいわゆるシステム開発の会社でしたから、本当に手探りの、まったく新しいチャレンジでしたね。

星野 今回募集したいのは、こうしたこれからの需要創造を一緒に担える仲間です。

板林 従来のビジネスでは、発注する側、受注する側という関係が多く見られます。発注する側が一方的に要望を言い、受注する側がそれに応えるものです。そうではなく、受発注の関係を超えていくというか。クライアントと対話する。そして協働作業のプロセスをとおして、ともに新しい価値を生んでいく。そうした対話と協働による価値創造・需要創造を一緒にやっていけるかたを迎えたいと考えています。

地域でのサテライト・オフィス実証実験の様子

地域でのサテライト・オフィス実証実験の様子

 星野 今後、日本各地の地域コミュニティがますます重要になっていくでしょう。といっても、これは地方に限ったことではなく、都市部でも課題を抱えているとみています。そこでカギを握るのが、デジタル・テクノロジーの力です。「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことで、より豊かな未来が描けるようになっていくでしょう。最近は森づくりなど、自然環境問題に関わる人たちとの関係も増えています。インターネットが行き渡って、森のような自然と都会をインターネットでつなげるようになってきました。都会に人が集中しなくても仕事を続けていけるのです。たとえば、コロナ禍で環境汚染が抑えられ、インドで見えなかったヒマラヤ山脈が見えるなど、人間の移動が減ることで自然環境がよくなる現象もみられました。このまま、一極集中が解消されて、うまく分散と協調が進めば、自然環境問題も改善に向かうかもしれません。

板林 そうした新しい動きが増えていくことも見越して、さまざまなプロジェクトを一緒に担っていただける新メンバーを、中長期的に募集していく計画です。

ー「需要創造」担当には、どんなかたが向いていますか?

星野 まず欠かせないのは、「コミュニケーション力」です。私たちの仕事の基本は、クライアントの困りごとを丁寧に掘りさげて、デジタル・テクノロジーで解決していくところにあります。何に本当に困っているのか、自分でもわかっておられないことも多いわけです。とにかく「相手」に関心があることが大事ですね。

板林 モノを売ることを優先する発想や、数字を追いかけるような営業・セールスといった従来型のビジネスの考え方は、ダンクソフトには合わないと思っています。数字やエクセルの表がゴールになってしまうと、「人の顔」が見えなくなってしまいますので。数字が優先されると、クライアントと協働の関係にもなりにくかったり、対話が大事だという価値観が共有しにくかったりと、ミスマッチが多くなるんです。

星野 ダンクソフトという会社は、キャラクターの集合体のようなところがあるので、数値ゴールで誰かが誰かを統制しようと思っても、うまくいかないんですよ(笑)。ですからここでも、数値よりも、関わる「人」を重視できることは大事ですね。

板林 その意味で、効率化や最先端といったことではなく、「カスタマー・インティマシー」を高めていくことが、ダンクソフトの根底にありますね。お客様との親密度をどれだけ高められるか、またお客様がその先のお客様と関係を親密にできるデジタルを、大事にしています。

ー必要なスキル、条件などはありますか?

星野 配属ありきでは考えていません。プログラミングなり、ウェブ・デザインなり、その人のできること、得意なこと、したいことから入っていってもらう形になるでしょう。

板林 そうですね。ただ、やはり基本的に「デジタルが好き」であってほしいですね。デジタル関連の経験者や、IT関連のプロジェクト・マネジメント経験者も歓迎です。また、以前の星野さんの話にも出ているとおり、どんどん新しく出てくるテクノロジーを「学び続ける好奇心」がある人。社内の技術者とも地域の人ともコミュニケーションができて、それぞれの人の力を引き出せる。そんなかただとうれしいです。

星野 まさに「インターミディエイター」ということですね。多様な人々やものたちのあいだを結んで、次の展開をつくれるかた。

板林 はい。僕らが関心のあるのは「人」なので、人に興味があって、未来が語れる人であってほしいですね。ダンクソフトとお客さんの1対1だけでなく、周囲も含めて関係づくりをしていくようなところがありますので。

星野 あとは、ポリバレントであることは、ダンクソフトのスタッフとしては大事にしています。そして、変わりゆく状況にも臨機応変に対応できて、フレキシブルに考えたり動けたりできること。ただ、これは、このポジションにかかわらず、ダンクソフトの全員に共通する資質といえるでしょう。 

ポリバレントとは?

communication.jpg

 ーダンクソフトが思い描く未来イメージとは?

星野 先ほど触れたとおり、今後は都市部への一極集中が解消されていく流れになると思っています。その結果、地域社会もネット・コミュニティもますます重要になっていくでしょう。協働意識の中からコミュニティが形成され、協働が広がる中で、お互いの価値が交換されて、新たな価値創造があちらこちらで推進される。私たちが現在進めている「SmartOffice構想」の先にある未来のイメージです。

SmartOffice構想とは? 

板林 もう競争ばかりしている時代ではありません。競争すると、つい横ばかりを見てしまいがちです。その結果、同質化が進みます。こうした競争の限界を補いながら、これからの生活や地域社会、そして新たなビジネスのあり方を探ることが、私たちの仕事にとっても、より重要になっていくと考えています。競争至上主義という発想を超えて、連携・協働の新しいあり方を探るなかで、新たな価値が生まれ、需要も創造されていくのだと思っています。

星野 今はちょうど時代の節目。ここでパラダイム・シフトが加速してほしいところです。つまり、デジタルを活用するのはもちろん、対話と協働から未来をつくっていくことですね。

板林 実際、ダンクソフトがプロジェクトでご一緒する人は、自分たちの目前の利益や売上最優先というより、プロジェクトの関係者や社会課題を見すえながら、対話と協働ができている人たちが多い印象がありますね。

星野 かつてのCSRや、今のSDGsのブームもそうですが、株主資本主義や右肩上がりでないといけないという幻想を捨てないと、自然環境にもいいわけがないのはわかりきったことです。では、どうするのかと突きつけられているのが今なのではないでしょうか。 

ーこのポジションに求める人物像は?

星野 僕らはやはり未来が見たいし、つくりたい。そして「未来」はつくれるものです。とくにこの10年は、その手応えを実感してきました。コミュニティでの連携や相互作用の中から共感と納得が広がって、新たな価値が生み出されていく経験を何度もしました。

板林 失敗も楽しめるくらいのマインドがあれば、嵐も新型コロナも一緒に乗り越えていけそうです。とはいえ、それを糧にしてビジネスにしていく意識も大切です。まだ見ぬところに向かっていくので、凝り固まった頭だとダメだとは思いますが、あとはもう、どんな人をお迎えできるかが楽しみなだけですね。

 星野 今後も、今までやっていないことへのチャレンジが続きます。よくわからないものを面白がって楽しめる、そんな挑戦を共にできるフレキシブルな仲間を待っています。 

photo1.jpg

【プロジェクトの拡大・増加にともない、新たに複数名の仲間をお迎えします】

1.     企業ウェブサイトの運用サポート 

2.     ウェブ・デザイナー 

3.     プログラマー 

4.     需要創造 担当         など 

  • 雇用形態: 正社員(3ヶ⽉の試⽤期間があります)

※ 詳しくはお問い合わせください。 https://www.dunksoft.com/request





新時代をつくりだすポリバレントなプログラマー

 もくじ

[代表メッセージ]

株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎

 ■「はじまり」をつくり続けるダンクソフトの40年

 ■ 向かいたい未来像に向けて、プログラムを書く

[ダンクソフトで働くプログラマーの声]

株式会社ダンクソフト 開発チーム マネージャー 竹内祐介

 ■ プログラミングを中心に、両側に広がるグラデーションを幅広く担う

 ■ “一人十色”のポリバレントなプログラマーとして活躍できる

 ■「テレワーク」という新しい働き方をつくってきた

 ■ こんなプログラマーに来てほしい2つのこと  

[インターン生の声]

 阿南工業高等専門学校 創造技術システム工学専攻 電気電子情報コース 1年 港 左匡 さん

 ■ テレワークの最先端をいく理想の環境

 

[最後に:代表メッセージ]

 ■ このポジションに求める人物像


現在、ダンクソフトでは、プロジェクトの拡大・増加にともない、新たな仲間を募集しています。今月はプログラマー募集について、仕事内容と働く環境を詳しくお話ししていきます。


[代表メッセージ]

株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎

■「はじまり」をつくり続けるダンクソフトの40年

 ダンクソフトは、まもなく40周年。1983年の設立から38期目を迎えています。社名に「ソフト」とついてはいますが、仕事はソフトウェア開発だけではありません。ウェブ関係から、ネットワークやセキュリティなどインフラに近いものまで、またAIやARのようなものまで、幅広くさまざまなサービスを提供している会社です。今は、ポスト・コロナ社会での「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことの重要性を、みなさんと対話しながら、提案しています。

 ですが、もともとはプログラムが主な事業だった歴史があります。創業当初は、制御系システムのプログラムを多く手がけていました。まだOSも自分たちで書いていた時代もありました。その後、OSとしてはWindows、データベースとしてはMicrosoft Access、ネットワークOSとしてはNetWareなどを組み合わせて業務システムをつくったのが、今の流れのはじまりです。ダンクソフトは、日本でAccessやNetWareをつかってシステムをつくった最初の会社のひとつです。出たばかりのAccess を、わざわざロサンゼルスまで買いにいって、英語版でプログラム開発をスタートしたこともよく覚えています。ですから、ダンクソフトの「はじまりをつくる」というのは、その頃から変わらない姿勢なんです。

 ◆1992年、「義理かんり FOR ACCESS」リリース

 https://www.dunksoft.com/message/2019/12/2 



■ 向かいたい未来像に向けて、プログラムを書く

 私自身もプログラムを書いてきましたし、どんどん出てくる新しいものを勉強しながら、今でもやっています。やっぱり「つくる」って楽しいですし、プログラミングはおもしろい技術ですよね。ある意味、ひとつの世界を自分の手で生みだして動かすわけで、できたときの喜びは大きいものです。

 うまく仕上がってクライアントに喜んでいただけることは本当に嬉しく、プログラマーにとって大きなやりがいを感じる瞬間です。それと、ダンクソフトの場合、こんな未来に向かいたい、こんな世の中になっていけばもっと楽しい、という未来のイメージを描いて、テクノロジーの観点から提案していくのが特徴です。単にプログラムを作っているというより、クライアントと一緒に未来を創るようなイメージで仕事をしています。

hoshino-san2.jpg

 

[ダンクソフトで働くプログラマーの声]

株式会社ダンクソフト 開発チーム マネージャー 竹内祐介

■ プログラミングを中心に、両側に広がるグラデーションを幅広く担う

 ダンクソフトのプログラマーの仕事は、非常に多岐にわたります。プログラマーだからといって、プログラミングだけしているわけではありません。製品開発をコアとしつつ、前段となる企画段階から、ヒアリング、提案、それに開発後のサポート、更新、アップデートまで、業務内容はとても幅広いです。どまんなかは製品開発として、クライアントとのコミュニケーションやサポートといった“両サイド”もプログラマーが担っているわけです。ですから、クライアントと対話を重ね、サポートもし、企画からご提案していきます。開発領域を中心にグラデーションを描くように広がりのある業務全般に携わることができるのが、ダンクソフトのプログラマーの特徴と言えるでしょう。

 他社へのシステム提供も、自社サービスの開発も、両方あります。少数メンバーでやっていることもあって、どの製品も誰でも全員ができるような情報共有をしています。チーム全員がさまざまな役割を果たし、チームですべての仕事をしている、という考え方ですね。

スクリーンショット 2020-10-30 22.00.56.png

 

■ “一人十色”のポリバレントなプログラマーとして活躍できる

 前職の会社は分業化されていて、プログラマーはプログラミング業務に徹するのが方針でした。外に出ないので名刺もほとんど必要なく、前職では10年働いて10枚しか使いませんでした。それが2012年にダンクソフトに入って、最初の1年で100枚以上を使い切っていました。会社の方針が違うと、同じ職種でも働き方が大きく変わることがよくわかるエピソードだと思います。

 また、仕事内容は社外にも広がり、地元企業でのセミナー講師や、学校で授業まで担当するようになりました。私は3年前から、徳島県阿南市にある阿南工業高等専門学校(阿南高専)で、OSやプログラムの授業を担当しています。

 ダンクソフトは、このように、1人が複数のポジションや役割を担うことができる、“一人十色”の「ポリバレント」であることを重視しています。自分の可能性を広げ、新しい学びに挑戦したい人にぴったりの環境だと思います。

 ◆ポリバレント人材は「一人十色」

https://www.dunksoft.com/message/2019/06/03

 

■ 「テレワーク」という新しい働き方をつくってきた 

 働き方の大きな特徴として、場所にとらわれないことがあります。私自身も現在は、徳島で仕事をしていますし、開発チームのメンバーは、徳島、東京、高知など、それぞれの居住地にいて、仕事はテレワークで行っています。 

 ダンクソフト徳島オフィスの開設と私の入社が同時で、2012年。じつは私自身は、星野に直談判したことがきっかけで、徳島オフィスを創設していただいた経緯があります。今でこそ「テレワーク」という働き方も浸透してきましたが、私たちは、日本ではまだテレワークという概念すら確かでなかった頃から、「ITを使う職種であるプログラマーの仕事は、離れていてもできるはず」「それを当たり前としてやっていきたい」と考えて、挑戦してきました。「こうすれば離れて働ける」「やれるんだ」ということを示すために多少の苦難は自分たちで乗り越えてきた、そんなメンバーが今のダンクソフト開発チームのプログラマーと言えます。

 ◆ 徳島オフィスの誕生 ~ 都会と地方の新たな「結び目」~

  https://www.intermediator.jp/post/yusuke-takeuchi-01

■ こんなプログラマーに来てほしい2つのこと

 チームに新たに迎える仲間として、「こんな人に来てほしい」と思うことが2つあります。ひとつは、プログラミングが好きな人に来てほしいと思っています。私は今もプログラミングが大好きです。プログラムってすごくかっこいいし、没頭できる時間なんですね。だからやっぱりプログラミングが好きな人に来てほしいです。そして、ものづくりを楽しめる人に来ていただきたいです。

 一方で、とはいえ、プログラミングはあくまで道具であるとも考えています。

だから、ふたつめとして、ものをつくるだけでなく、「価値をつくる」ことを楽しめる人だといいなと思います。クライアントから、あるご要望があったとして、よくよく話を聞いてみれば、実はプログラミングが必要ない場合だってあります。プログラミング以外の手段でお困りごとが解決されてもいいと私は思っています。とにかくクライアントと私たちのあいだで、「新たな価値」が生まれることに喜びを感じられるような人と一緒に仕事がしたいと思います。

 

[インターン生の声]

阿南工業高等専門学校 創造技術システム工学専攻 電気電子情報コース 1年 港 左匡 さん

■ テレワークの最先端をいく理想の環境

 10月中旬からインターン生として、ダンクソフト徳島オフィスで4週間のインターンをしています。阿南高専の本科情報コースを卒業し、現在は専攻科の1年です。本科4年生のときに竹内さんの授業を受けたことをきっかけに、ダンクソフトを知り、インターンを希望しました。旅をするのが好きなので、将来は、場所に縛られずにどこででも働けるような働き方で、プログラマーとして活躍していきたいと思っています。ダンクソフトはテレワークが本当に進んでいて、ここはテレワークの最先端だと感動しました。こんな働き方を知れて、とてもよかったです。人生の選択肢が広がりました。インターンもテレワークで実施しており、月曜だけ徳島オフィスに出向き、火曜から金曜までは自宅からのテレワークです。 

 今ちょうど、あるクライアントのシステム更新の時期にあたるということで、大きなプロジェクトの一端に関わらせていただいています。これまで授業で扱っていたのとは桁違いに大規模なコードを目の当たりにして、とても貴重な経験をしています。1万行を超える、質の高いコードを初めて見ました。また、竹内さんの説明を聞いて、よくデザインされたプログラムなら、10年20年経ってもじゅうぶん通用することもわかりました。そんなプログラムが書けるってすごいなと憧れますし、ぼくもプログラミングの技術を磨いて、優秀なプログラマーを目指したいと思います。

スクリーンショット 2020-10-30 22.05.06.png

[最後に:代表メッセージ]

■ このポジションに求める人物像

 プログラミングの世界は時代がとても速くて、言語もどんどん変わるし、私が経験しているだけでもパラダイム・シフトが何回もあるわけです。OSはMS-DOSからWindowsになり、言語もベーシックからオブジェクト志向にかわっていって。一方で、プログラミングがわからないスタッフやお客様とも話ができないといけないし、インターネットやインフラやセキュリティの知識も必要になってきます。 

 知っておかないといけない範囲がそもそも広く、しかも、どんどん新しい技術が出てきます。新しいことを学びつづけなければなりませんから、そこに好奇心をもって向かっていける人、共に学び合っていける「Co-Learning」の仲間になれる人を迎えられるといいなと思います。

 それから、やはり「ポリバレント」を重視したいですね。人間は多面体なので、いろいろやった方が、いろんなところに埋もれている得意なところが見えてきます。それによって、人がより豊かになっていくんですね。

 そして、「あいだ」を意識すること。縦割りの中に埋没するのではなく、組織内外で切れ切れになっているものの「あいだ」に立つ視点がとても重要だと考えています。クライアントと私たちのあいだ、さらにクライアントのビジネスのさらに先にいるお客様をイメージする。そして、いろいろな人、モノ、地域などの「あいだ」に立って、デジタルを活かして、新しいはじまりをつくっていく。ダンクソフトという会社もですし、またそこで働く一人ひとりも、それぞれがインターミディエイターとして「あいだ」に立ってもらえたらと思います。

 そのためにも、「共感できる力」が大事だと考えます。プログラムのスキルはもちろん、仲間に対しても、クライアントに対しても、エンパシー(共感)をもって、困りごとをデジタルで超えていく。居住地や勤務場所はどこでもかまいません。今回登場した竹内は、転職を機に、「どうせなら新しい働き方をつくる側になる方がおもしろい」と思って、ダンクに飛び込んだそうです。しくみや制度が先にあるのではなく、やりたい人、動きだした人がいて、そこに新しいしくみや価値が生まれていく。ダンクソフトらしいエピソードです。社内外のさまざまな人と連携して、チームで一緒にやっていける仲間として、新たなメンバーを募りたいと考えています。

tokushimaOffice.jpg

【プロジェクトの拡大・増加にともない、新たに複数名の仲間をお迎えします】

  • 募集職種: 

  1. 企業ウェブサイトの運用サポート 

  2. ウェブ・デザイナー 

  3. プログラマー 

  4. 需要創造 担当 など 

  • 雇用形態: 正社員(3ヶ⽉の試⽤期間があります)

※ 詳しくはお問い合わせください。 https://www.dunksoft.com/request

 

事例:さまざまな部署との対話を重ね、進化し続けるウェブサイト改善プロジェクト

お客様:国際機関日本アセアンセンター 様

 注目が高まるASEAN地域の情報を提供して、経済や人々の交流を促進する日本アセアンセンター。膨大な情報を整理し、幅広い層の人々にとって情報を見つけやすいサイトの在り方を模索し続けている。

左から国際機関日本アセアンセンター事務総長室広報担当官の宮内智子氏、園屋恵美子氏

左から国際機関日本アセアンセンター事務総長室広報担当官の宮内智子氏、園屋恵美子氏

■ 多様な人々に向けた、情報量が膨大なサイト

 国際機関日本アセアンセンター(東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)は1981年、当時のASEAN加盟国政府と日本政府が設立した国際機関だ。貿易、投資、観光、そして人物交流の促進を目指しており、小学生向けのイベントからビジネス関係者に向けたセミナーまで、幅広いステイクホルダーへ事業を展開している。

「さまざまな層の方々へ、ASEANの情報を提供することを、とても大切にしています」と語るのは、広報の宮内智子氏だ。事業が多岐にわたるためウェブサイトの情報量が膨大で、訪れた人たちが接点を見出しやすい発信の仕方を模索していた。長い間使ってきたウェブサイトは、部署ごとに明確に分けて情報を掲載していた。ただ、「お客さまが探している貿易の情報が、当センターでは投資に分類されているなど、線引きが分かりにくく、すれ違いが生じていました」と振り返る。情報が多い上、検索サイトでは上位に表示されない構造になっており、使い勝手が悪いことも課題だった。

 当時は情報更新を各部署に任せていたが、これが運用上の課題となっていた。サイト制作ツールの知識を持たない人が担当すると、作業に時間がかかり効率が悪い。担当が変わると、引継ぎにも時間がかかる。一方で、詳しい担当者がいる部署では独自の改変を加え、統一感が崩れていくケースも見られた。運用が難しいと、日本語と英語の両ページの管理が非常に手間取り、英語版の更新が滞ってしまうこともあった。

 また、2018年に大幅な組織改編があり、縦割り型から横のつながりを強化した体制へと変わった。部署をまたいだ「センターワイド事業」が増え、ウェブ表現も、センターとしての統一感を持たせた見せ方へと変える必要があった。

 そこで2016年度に、ウェブサイトを大幅にリニューアルすることになった。担当したのは、以前から何度か修正作業などに携わったことがあったダンクソフトだ。「私たちの活動内容をよく理解した上で、仕組みや見せ方などを提案してくれる、貴重なパートナー」というのが、宮内氏の評価だ。

第74回ASEAN投資調整委員会(於:マレーシア)

第74回ASEAN投資調整委員会(於:マレーシア)

■ 部署間で異なる要望に応えた、1回目のリニューアル

 リニューアルに際してダンクソフトがまず実施したのは、センター各部署へのていねいなヒアリングだった。組織の外部にいるダンクソフトだからこそ、情報の断捨離や全体の交通整理がしやすいという側面がある。だが多忙なメンバーを集めての開催はスケジュール調整が難しく、完了までには実に約4カ月を要した。今年7月から参画したという広報の園屋恵美子氏も、ヒアリングの様子を聞いて「各部署の要望を直接聞いて形にしてくれる制作会社って、なかなかいないですよね」と驚く。

 「ヒアリングを重ねるうちに、部署ごとに要望が異なることが改めて浮き彫りになりました」とダンクソフトの大村美紗は語る。例えば、セミナーを多く実施する部署では、セミナーの案内に特化して、なるべく多くの件数を表示させたいと考えていた。一方で別部署では、事業についての情報を中心に出したいと望んでいた。「重要視しているのは、どこにゴールを持っていきたいかという点。部署ごとの思いがそれぞれあるので、なぜそのように考えているのか、お話を伺ってから提案するようにしています」(大村)

 また、外部の視点が入ることで、見る人の立場で分かりやすいサイトになっているか意識しやすくなった、と宮内氏は話す。「日本アセアンセンターの内部でよく使う用語も、外部から見ると堅苦しく感じられるのではないか、もっと分かりやすい別の言い方に変えた方が良いのではないかと、私たちのことをよく理解した上で見てくださっていますね」

日ASEAN女性起業家リンケージプログラム(AJWELP)(於:ブルネイ)

日ASEAN女性起業家リンケージプログラム(AJWELP)(於:ブルネイ)

■ 分かりやすさと統一感に力点を置いた、2回目のリニューアル

 各部署の要望を反映したサイトにリニューアルしたものの、「実際に運用が始まると、また新しい課題も出てきて、もう一度整理したくなりました」と宮内氏は振り返る。特定の活動目的に分類できない横断的な事業が今後増えてくることも想定された。

 そこで、リニューアル後に出てきた新たな課題の解決を目指し、2018年度にはトップページを中心にサイトの手直しを実施した。このときに重視したのは、センター全体で活動内容を整理し、統一感のある見せ方へと改善することだ。

 以前は部署ごとに更新していた新着情報は、事業部ごとのアイコンを付けてトップページに集約し、時系列に並べて見せるように変更した。トップページには常に最新情報が表示されるため、サイト訪問者にとって見やすくなり、部署ごとの更新頻度のばらつきも目立たなくなったという。トップページや、事業部ごとのページのレイアウトを変え、コンテンツ更新は広報がゲートキーパー(門番)となって目を配るよう運用方法を改めるなど、サイト全体に統一感を持たせる工夫を凝らした。

マレーシア企業と日本企業を対象にビジネスミーティング(於:マレーシア)

マレーシア企業と日本企業を対象にビジネスミーティング(於:マレーシア)

■ 信頼できるパートナーと共に、激変の時代を乗り切る

 2度のリニューアルを経たアセアンセンターのサイトだが、さらに改善したいポイントが出てきていると、宮内氏は考える。これまでは膨大な情報を抽出しやすいようロジカルに整理することに力点を置いてきた。今後は事業部横断型の事業の見せ方を工夫し、お客さまにとってセンターとの接点が分かりやすいようSEO対策にも力を入れていきたいという。

 特に注力したいと宮内氏が語るのは、日本アセアンセンターのブランド・イメージの構築だ。センター設立当時と比べると、情報の入手が容易な時代となり、ASEAN地域の専門家の数も増えた。そういう中で、日本アセアンセンターならではの特長を出していくことの重要性を宮内氏は感じている。日本とタイ、日本とカンボジアといった2国間の枠組みで情報発信している機関は他にもあるが、「ASEANという地域全体を対象として情報提供しているのは、日本アセアンセンターしかない。価値ある独自コンテンツをもっと強化していきたいですね」と展望を語る。

 また、昨今は人々がオンライン上にいる時間が長くなった。日本アセアンセンター独自のコンテンツ、特にオンライン・コンテンツの充実を検討しているという園屋氏は「今の時代に合った進め方をしていかないと、置いていかれてしまう。存在感を出すために、独自性を積極的に出していかなくては」と危機感を募らせる。

 さらに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、事業形態も変化を余儀なくされた。事務所に併設された多目的ホールに人を集めていたセミナーはオンラインで開催しているが、対面でのプログラムや、ASEAN各国に赴いてのワークショップは開催できていない。観光事業もプロモーション活動を思うように実施できない状況だ。

 一方、オンラインでセミナーを実施するようになった今は、さまざまな数字の把握が可能となり、効果的にデジタル・テクノロジーを活用したコミュニケーションを展開できる体制が整いつつある。園屋氏はダンクソフトに対し、「ウェブサイトのトレンドは何か、どのような見せ方が可能なのか、オンライン上で何ができるのかなど、今後もプロの視点でいろいろご提案いただけると大変ありがたいです」と、変化の激しい時代を共に乗り切るパートナーとして期待を寄せている。

 幸いなことに、日本アセアンセンターの広報とダンクソフトの間には、日ごろから思いついたことをチャットですぐ相談できる信頼関係が築かれている。「WEBサイト関連でわからないことがあると、すぐチャットで話しかけてしまう」と宮内氏は笑うが、肩ひじを張らないやり取りの中で「こんなことをしてみたい」と目的を伝えると、それが高い精度で実現していくのだという。

 注目度が高まるASEAN諸国の情報が集まる日本アセアンセンターと、デジタル・テクノロジーによる関係づくりを得意とするダンクソフトの協働は、今後ますます密度の濃いものとなりそうだ。ウェブサイトを、多様なステイクホルダーとの対話が、さらに促進される場となるよう、取り組んでいきたい。

4_Myanmar観光3MB.JPG

観光従事者を対象とした研修(於:ミャンマー)

 

■ 導入テクノロジー

 Webデザイン、運用コンサルティング、システム開発 

 https://www.dunksoft.com/web-t

  

国際機関日本アセアンセンターとは

 日本アセアンセンターは、ASEAN加盟国政府と日本国政府との協定によって1981年に設立された国際機関です。日本とASEAN諸国間の「貿易」「投資」「観光」という3分野における経済促進と、「人物交流」の促進を主な目的として活動しています。

 ASEAN諸国から日本への輸出の促進、日本とASEAN諸国間の直接投資、観光及び人物交流を促進するため、日本の関係各省並びにASEAN諸国の貿易・投資・観光促進機関や駐日大使館と密接な連携を保ちながら、日本・ASEAN双方のニーズを踏まえ、貿易・投資・観光促進のためのテーマ別セミナーやワークショップの開催、産業分野毎のASEAN各国高官と日本人投資家との政策対話、人的交流プログラム、各種情報提供など多岐にわたる事業を実施しています。

https://www.asean.or.jp/ja/

ポテンシャルを引きだす職場、その秘訣とは

 もくじ

■ ダンクソフトが大切にしていること

■「リ・クリエイター」たちが、新たな「はじまり」をつくる

■ ウェブ・チームで活躍する仲間を募集します

■ 全スタッフがテレワークでも、「チーム」で助けあう

■「ポリバレント」であることが、一人ひとりのポテンシャルを引きだす

  

■ ダンクソフトが大切にしていること

 ポスト・コロナ社会のはじまりとなった2020年。日本はもちろん、世界中が一斉に、目に見える形で変わりつつあります。移動に制限がうまれ、リアルに人と人とが会うことが難しくなりました。この状況は、まだしばらくは続くと言われています。大きな転換点になりました。

 その中で、インターネットやデジタル・テクノロジーの可能性を感じた方も多いでしょう。これから、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことが、もっともっと重要になってきます。その先に、ビジネスの未来も、地域の未来も、一人ひとりの未来も、つくっていくものだと確信しています。

 株式会社ダンクソフトは、デジタルで新しい未来の「はじまり」をつくることに取りくんでいる企業です。1983年の設立から38期目を迎え、まもなく40歳。これまでも、さまざまな「はじまり」をつくってきました。ウェブ・チーム、開発チーム、企画チームという3つのチームがあり、それらのどれもが、インターネットを活かして、ビジネスをよりよくし、人びとを幸せにするためのプロジェクトを行っています。

 そして、いま、ダンクソフトでは、さらに新しい「はじまり」を一緒につくっていく仲間を募りたいと考えています。

■「リ・クリエイター」たちが、新たな「はじまり」をつくる

「We are Re-Creators. はじまりをつくる」

 私たちは、ここ数年、この言葉をかかげて、プロジェクトを実施してきました。ダンクソフトのスタッフは、みな “Re-Creator(リ・クリエイター)” です。

 それは、変化に対して前向きである人。  好奇心が旺盛な人。  ダンクソフトが実践している画期的な働き方や未来志向の試みを、一緒におもしろがれる人。  よりクリエイティブな働き方を自分で実践していきたい人。  いろんなことに挑戦したい人。  目線を合わせて、対話できる人。  そして、時代の転換期を迎えたいま、さまざまな人やモノの “あいだ” を結んで次の展開をおこすことに長けた人。 

 要するに、混迷や停滞を打ち破って、再び新たな動きや変化をつくりだせる人、それを「リ・クリエイター」(Re-creator)と呼んでいるのです。

 ダンクソフトでは、こうした特長を兼ねそろえた「リ・クリエイター」(Re-creator)たちを、新たな「はじまり」をつくる担い手として、期待し、頼りにしています。

◆「リ・クリエイター」とは? (実例あり)https://www.dunksoft.com/message/2020-07

■ ウェブ・チームで活躍する仲間を募集します

 まず今回は、ウェブ・チームの話をしようと思います。ダンクソフトでは、企画から制作・メンテナンスやアドバイスまでの包括的なウェブ・コミュニケーション支援を行っていて、ウェブ・チームが担当しています。今回、ウェブを通じたコミュニケーション・デザインができる方や、ウェブのコーディング、フロントのスクリプトがかける方、また、サイト運営ができる方を歓迎します。

 クライアントのコーポレート・サイトやキャンペーン・サイト、ランディング・ページをつくるなど、情報の価値を何倍にも魅力的に表現するような、クリエイティブなご提案を続けてきました。さらに、クライアントが、その先にいるお客様とよりよい関係をつくり、コミュニティが醸成され、新たなビジネス機会への架け橋となるような、ウェブ・コミュニケーションを提案しています。大手企業をご支援する25年以上も続いているプロジェクトもあれば、家族や仲間が集うキャンプ場のウェブ・コミュニケーション、そして、これからのコミュニティ形成のためのウェブ開発など、様々なプロジェクトが並行して走っています。

◆ウェブ・チームはどんな仕事をしている? https://www.dunksoft.com/message/casestory-kfv

■ 全スタッフがテレワークでも、「チーム」で助けあう

 こうした様々なプロジェクトをチームで推進していくわけですが、3月に東京都知事から緊急事態宣言が発表された翌日から、ダンクソフトでは全員が在宅テレワークでの勤務をしています。オフィスに出社するように戻している企業もあるようですが、私たちは、当面は現在のテレワーク環境を続けます。スタッフ一人ひとりの生命を守ることが、いま一番大事なことだと考えているからです。 

 それに、ダンクソフトでは、12年前の2008年からテレワークの実証実験を重ねてきました。失敗もいろいろありましたが、今では、コロナ禍で全員在宅ワークになっても、プロジェクト推進は何の支障もないと言っていいほど、とてもスムーズに行われています。今回、クラアント先に常駐していたスタッフも、在宅ワークに切りかえて、プロジェクトを継続しています。オンサイトだったスタッフのひとりは、今回はじめてテレワークを経験して、ダンクソフトが先進企業だったことを改めて実感したと、感想を聞かせてくれました。

photo2.jpg

 このウェブ・チームには、もともと100%テレワークのメンバーもいます。徳島在住で、2017年にテレワークを前提にメンバーに加わり、ウェブ・チームの一人として活躍しています。 

◆テレワーク ─2008年から始まった取り組み

 https://www.dunksoft.com/message/2019/8/1/-2008

◆インターネットに あらゆるものを のせていく ─テレワーク実際編 https://www.dunksoft.com/message/2020-08

 来春には、徳島県阿南市にある阿南工専を卒業する学生が新卒で入社予定です。新卒でありながら、徳島からのテレワークです。新しい未来の「はじまり」をつくる会社として、こうしたデジタル・ネイティブ世代に選ばれているのは、とても嬉しいことです。

 全員が在宅ワークという状況が長期化すると、お互いに意識を払えるかどうかが、より大事になってきます。チーム・メンバーからのアウトプットを待つだけじゃなくて、隣にいない、離れた相手をケアして声をかけられるか。お互い様の気持ちで、助け合えるかどうか。結果的に、そういうことが、効率化やクオリティ向上につながって、スタッフがクリエイティビティを発揮できる時間や領域が増えていきます。

◆働き方改革とは──「クリエイティブ・ワークチーム」というビジョンhttps://www.dunksoft.com/message/creativeworkteam

■「ポリバレント」であることが、一人ひとりのポテンシャルを引きだす

 インターネットをフルに活かした柔軟な働き方は、ダンクソフトではコロナ前から通常に行われていたことでした。これができているのは、「チーム」としてメンバーどうしが有機的に動ける環境があるからです。チャット・ツールなども駆使して、チームでのコミュニケーションをあつくしています。また、お互いに仕事を学びあえる「Co-learning(コ・ラーニング/共同学習)」のしくみも大切にしています。

 ダンクソフトで大事にしていることのひとつに、「ポリバレント」ということがあります。これは、状況や場面に応じて、いろんな役割ができる人のことを言います。メンバーが一人ひとりポリバレントになっていくことで、何かあったときには誰かが代わりをでき、休みも取りやすい状態になっています。異なるタイプの仕事に挑戦するなかで、思いもかけなかった能力が発揮されることもあります。ポリバレントであろうとすることは、人のポテンシャルを引き出すことでもあるのです。

 加えて、定期的にチームごとに対話の時間をもち、社長である私もそこに入ります。よいことも、不安や懸念も、自分の言葉で直接私に提案してもらい、みんなが考えていることを共有します。私も、包み隠さず率直に考えをお話するようにしています。社長とスタッフというより、お互い、「人と人」としてコミュニケーションする関係を、居心地よく感じるからです。かねてから、もっと会社はコミュニティに近づいたほうがいいというイメージを持っています。

photo3.png

◆コミュニティの活性化とソーシャル・キャピタルhttps://www.dunksoft.com/message/2019/10/7/-

 世間には出る杭が打たれる場所も多いようですが、ダンクソフトは、その逆です。言いたいことが言える会社で、言えば実現する。もちろん、未来志向で建設的な事であれば、ということですが(笑)。言った人から楽しくなる会社です。「いま何ができるか」はもちろん大切ですが、新しいことをつねに学び続けること、学びなおすことに意欲的な人に出会いたいと願っています。その方にまだ眠っている能力を、ダンクソフトで引き出せるかもしれません。

◆ポリバレント人材は「一人十色」https://www.dunksoft.com/message/2019/06/03


【プロジェクトの拡大・増加にともない、新たに複数名の仲間をお迎えします】

  • 募集職種: 

  1. 企業ウェブサイトの運用サポート 

  2. ウェブ・デザイナー 

  3. プログラマー 

  4. 需要創造 担当 など 

  • 雇用形態: 正社員(3ヶ⽉の試⽤期間があります)

※ 詳しくはお問い合わせください。 https://www.dunksoft.com/request

 

インターネットに あらゆるものを のせていく─ セキュリティ&プライバシー 編

もくじ

■ 知らないうちに、誰かに自分の情報を利用されている

■ 経営者たちが安心してビジネスの話ができる場が必要だ

■ なぜ、アプリにしないのか?

■ インターネット本来の「オープン」、かつ「安全」を兼ね備える

■ ポスト・コロナ社会は、名刺交換もオンラインで

■ 一人十色の時代です


■ 知らないうちに、誰かに自分の情報を利用されている

 今回は、「インターネットにあらゆるものをのせていく」うえで欠かせない、セキュリティとプライバシーについてです。

インターネットは便利です。ぜひ、インターネットにあらゆるものをのせていくことで、ビジネスを展開していただきたいと思います。ですが、一方で、自分の情報が人のビジネスに都合よく利用されるリスクが常にあります。

「フィルターバブル」ということを聞いたことがありますか。たとえば、検索エンジンやSNSは、ユーザーの検索履歴や行動パタンなどを学習して、その人の好みの情報ばかりが、作為的に表示されるようにできています。結果、自分の興味・関心のある知りたい情報だけに囲まれます。

  この状態を、「フィルターバブル」といいます。泡の中に閉じ込められたような、狭い世界。インターネット事業者のルールで情報がコントロールされている状態です。ここでは、知らないうちに自分の情報が誰かに利用されていることもあります。たとえば、特に無料のツールでは、広告のターゲットとなったり、解析の対象になったりしています。

  データが使われているということについては、いろいろニュースでも取り上げられています。2016年の米大統領選では、フェイスブックで、5000万人の個人情報が選挙のために不正利用されていた疑惑が報道されました。最近では、オンライン会議ツールのZoom(ズーム)の脆弱性問題や、動画配信アプリ TikTok(ティック・トック)で、個人情報リスクが指摘され、トランプ米大統領が利用禁止を表明したニュースが世界を騒がせたりもしています。

■ 経営者たちが、安心してビジネスの話ができる場が必要だ 

そこで、ダンクソフトは、インターネット上の安心・安全な交流の場をめざして、2015年に「ダンクソフト・バザールバザール」を開発しました。人をつなぎ、対話と創発がうまれる場をつくるクラウド・サービスです。

 もともとは、私が理事をつとめる東京ニュービジネス協議会のために開発したものです。 インターネット上で、会に参加する経営者たちが、安心してビジネスの話をしたいとき、フェイスブックやDropbox、Google Driveでは、やはり困るわけです。企業と企業が出会う場は機密情報のかたまりですから、それを守る必要があります。

 

日本全国にいる参加企業の経営者たちが、インターネット上でも会員交流と相互連携をはかろうと、「ダンクソフト・バザールバザール」が誕生しました。組織をまたいだマッチングも行えます。事務局の業務を効率化する機能が備えてありますから、バザールを導入後、団体運営の効率化やコスト削減にも、劇的に寄与する効果が証明されました。これを、同じように会員組織を運営する多くの方のためのクラウド・サービスにし、広く使っていただこうと、製品化しました。  

東京ニュービジネス協議会で行われるイベントの様子。こうした集まりや出会いを、インターネット上でできるようにしようと「バザールバザール」を開発

東京ニュービジネス協議会で行われるイベントの様子。こうした集まりや出会いを、インターネット上でできるようにしようと「バザールバザール」を開発

 ■ なぜ、アプリにしないのか?

 「ダンクソフト・バザールバザール」は、ブラウザさえあれば簡単に閲覧できるコミュニケーション・ツールです。この他の製品・サービスもそうなのですが、ダンクソフトは、製品・サービスをアプリのかたちでは開発していません。

 本来、インターネットは、もっとオープンだし、フラットで、フェアな世界であるはずです。しかし、今のインターネットは実際にはフェアではありません。そのひとつに、アプリケーション・ソフトの存在があります。

 たとえば、スマホのアプリを開発してリリースしようとすると、AppleやGoogleが運営するアプリストアの認証が必要です。売り上げの30%が手数料となることが規約で定められています。しかも認証基準は明確でなく、認証されない理由が知らされなかったり、それまで認証されていたものが突然排除されたりもします。プラットフォーマーが自分たちに不利なアプリは認証しないという方針は明らかでしょう。今年8月には、アプリ外での直接課金システムを導入した人気ゲームが、AppleとGoogleによってアプリストアから削除されるという出来事があり、業界を騒がせました。

 GAFA*が圧倒的な力をもちすぎ、インターネットばかりか、社会を自分たちが行きたい方に引っ張っていこうとしている今の状況です。これを、インターネットの本来であるオープンでフラットでフェアな社会に引き戻してこないと、危なっかしいという思いが強くあります。  (*GAFA = Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとった4社を現す造語) 

 ダンクソフトがブラウザで使えるものを開発するのは、もっとオープンで、フラットでフェアな社会でコミュニティを育てたいからです。一部の強者が弱者を搾取しつづける構造への、アンチテーゼでもあります。

 それに、使う方にとっても、スマホの中に、アプリがいくつも増えていくのは面倒なことです。ブラウザさえあれば、さっと使えるものの方が、使う方にとっても負担が少なくはじめていただけるので、便利で、ユーザー・フレンドリーです。

■ インターネット本来の「オープン」、かつ「安全」を兼ね備える 

 実際には、使用する環境は、オープンでありつつ、セキュリティとプライバシーが守られていなければなりません。そうでないと、安心してビジネスや連携・提携の話をしたり、個人情報を扱ったりなどできません。

 ブラウザで誰でも簡単に閲覧できる環境で、事業者に搾取されることなく、かつ安心・安全が確保されている。その中で、多方向の対話と関係づくりができるプラットフォームをつくる。これが「ダンクソフト・バザールバザール」の基本的な考え方です。 

 しくみはとてもシンプルです。会で開催されるイベント情報が集まった“イベント一覧”、会員の名前と所属がわかる“会員一覧”、「マッチング」と呼ばれる“コミュニケーション・ボード(掲示板)”などの機能があります。マッチングは、いろんな人が出会う場づくり、「市づくり」をしたいという意図でつけた名前です。「バザール」には、信頼できるメンバーたちが集まります。その中で、多様な人々による新しい出会いも生まれます。今では、さまざまな会員組織やコンソーシアム型のイニシアチブにご利用いただいています。

 「バザール」で起こる対話や関係づくりを見ていると、出会いや連携が生まれるには、「さまざまな人やモノの“あいだ”を結び、次の展開をうみだす」というインターミディエイターの役割が重要だと痛感します。上手に使っておられる会では、人と人を結ぶことに長けた方がいて、上手に合いの手のコメントを入れたりしながら場をつくり、対話を進め、メンバーどうしの関係づくりを深めています。 

ダンクソフト・バザールバザールのトップページ

ダンクソフト・バザールバザールのトップページ

掲示板機能のサンプル。各団体では、さまざまな会話が行われている。

掲示板機能のサンプル。各団体では、さまざまな会話が行われている。

■ ポスト・コロナ社会は、名刺交換もオンラインで

 ポスト・コロナ社会においては、インターネットの役割がますます大事になってきます。インターネットが、すべての重要なインフラです。

 たとえば、感染症対策のため、これまで出会いの場となっていたようなオフラインの会合や対面セミナー、イベントは、開催が難しくなりました。生身で人と出会うことが気軽にしづらくなった今、インターネット上で、いかに安心・安全を確保して、出会いの場がつくれるかは、課題です。

  バザールバザールは、このタイミングで、新しい機能を備えました。「プロフィール」の表現を、もっと豊かにしていただけるようにしました。この「プロフィール」のポイントは、多様なプロフィールを、自在にインターネットにのせられる点にあります。

 紙の名刺は、1枚あたりの情報量が少ないうえに、何枚も持たないといけません。そもそもフィジカルに対面しないと名刺交換が成立しません。今回の改良は、非対面でお互いのプロフィールを知ることができる、いわばオンライン名刺交換によって交流を促進できる、というものです。

新しく備わったプロフィール画面(プロフィール・タイプ)

新しく備わったプロフィール画面(プロフィール・タイプ)

■ 一人十色の時代です

 私もそうですが、経営者はさまざまな組織でいろんな役職をもつことが多いものです。たとえば私の場合、ダンクソフトの代表取締役のほか、総務省地域情報化アドバイザー、日本パエリア協会理事、中央エフエム社外取締役・パーソナリティーなど、いくつもの役割をもっています。情報をインターネットにのせておけば、名刺を何枚も持ち歩く必要もなく、気軽にメールやチャットでリンクを送りさえすればいい。インターネット上で、新たな出会いの機会につながりますし、お互いを深く知るきっかけにもなります。そのためのツールがほしいという私のような経営者の要望にも応えてくれるのが、この新機能です。

 役割ごとに、プロフィール写真、2000字までのテキスト、画像情報などが登録でき、表示デザインも選べます。名刺らしさのある名刺型デザインもあれば、文章重視のプロフィール型もあります。複数の会に属している場合、会ごとにプロフィールを設定できるので、見せたい自分を自在に選択できます。そうしたカラフルで多様な情報からこそ、思いがけない連携や協働が生まれたりする経験は、皆さんにもきっと少なからずあるのではないでしょうか。

 ポスト・コロナのこれからは、オンラインで出会い、オンラインで会話や対話を始め、関係を築いていく時代です。また、一人がいくつもの役割を持つ、一人十色の時代です。ポスト・コロナ社会では、名刺もペーパーレスです。名刺をインターネットにのせ、交流をうながすこの新たな機能は、場所、空間、距離の制約がありません。移動にかかる時間やコストが不要になるインターネット社会のメリットを最大限に生かし、いろんな人と柔軟なつながり、ビジネス連携を生み出していただきたいと思います。

 もちろん、セキュリティとプライバシーには気を使っています。プロフィール公開を団体内にとどめることもできるし、広くインターネット上で公開も可能です。ウェブサイトを持たない会社・団体や個人の方にとっては、自分のウェブページを持つ感覚で、使っていただけます。

 こうしたツールを補助にすれば、単なるテレワークに留まらず、インターネットを上手に利用して、クリエイティブに仕事ができるビジネス環境をつくることができます。日本中あるいは世界と連携・協働していく「スマートオフィス構想」を実現していくうえでも欠かせない情報インフラとなるでしょう。オンライン上の空間である「ダンクソフト・バザールバザール」は、ポスト・コロナ社会でも、さらに重要な役割を果たすだろうと考えています。

◆ あわせて読みたい関連コラム

 → インターネットに あらゆるものを のせていく −「スマートオフィス構想」編 

 → 「カスタマー・インティマシー(顧客親密性)」を高めるデジタル

 → 事例:テレワークが創出した瀬戸内市の新たな“魅力と雇用”

 → 働き方改革とは──「クリエイティブ・ワークチーム」というビジョン

インターネットに あらゆるものを のせていく ─ テレワーク実際編

もくじ

■ 全スタッフによるテレワーク開始から4ヶ月

■ ダンクソフトが実践するテレワークの実際

■ 入社当初はあまりの先進性に衝撃の連続

■ 現場で感じるテレワークのデメリットとは?

■ テレワークから「スマートオフィス」へ

 

[参加者]

代表取締役 星野 晃一郎

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

ウェブチーム 谷原 理恵



■ 全スタッフによるテレワーク開始から4ヶ月 

──今回のコラムでは、ダンクソフトがいま経験している「テレワークの実際」を、ダンクソフトのメンバー2名も交えてご紹介します。いい話ばかりではなく、過去の失敗や課題にも触れながら、テレワークの過去・現在・近未来を考えていきます。まずは、星野さん、ダンクソフトの現在のテレワーク状況について聞かせてください。

星野 最近では、3月26日から、新型コロナウィルス感染症対策として、ダンクソフトでは全社テレワーク体制となりました。東京都知事が自粛宣言を出した翌日です。オフィスに人が集まらなくなって、そろそろ4ヶ月。仕事はまったく問題なく進み、現在も引きつづき全員テレワークでプロジェクト進めています。


──ダンクソフトにとっても、これだけ大規模な全社テレワークは初めての経験ですか?

星野 そうですね。ダンクソフトでは、2008年からテレワークの取り組みを始め、すでにテレワークは当たり前の働き方となっていました。ただ、東京・神田や徳島のサテライト・オフィスをはじめ、やはり「オフィス」という物理的空間があり、多くのメンバーは出社して仕事をしていました。それが今回、新型コロナウィルス感染症対策として、全員が完全にテレワークとなりました。これだけ長期にわたって全員がテレワークで仕事を続けるのは、ダンクソフトにとっても初めての経験です。

 

──ウェブチームの谷原さん、コロナ以前の働き方についてお聞かせください。

谷原 コロナ以前は、基本は神田オフィスに電車通勤というワークスタイルでした。テレワークは必要に応じて、頻度は月に数回程度。子どもの体調が悪いときなどに在宅ワークをしていました。神奈川県在住で、小学生と幼児の子ども2人を育てながら働いています。


スクリーンショット 2020-08-03 9.16.11.png

──同じくウェブチームの野田さんはいかがですか。

野田 私はお客様先に出向していますので、コロナ以前は、都心にあるクライアント企業のオフィスに常駐していました。その企業様では、社員のテレワークを導入していなかったかったため、出向のスタッフについては在宅ワークも前例がなく、毎日出勤していました。紙の印刷物が多いオフィスで、連絡手段は主にメール・電話と、口頭でのやり取りでした。


星野 ダンクソフトが全社テレワークに切り替えたのは、3月26日からです。3月25日に東京都知事が、不要不急の外出自粛と在宅勤務を要請しました。ダンクソフトでは、移動を避けるための「全員在宅勤務」を、その日の夜にSNSで外部の関係者や一般の皆さんにも伝え、翌26日から完全テレワーク体制に入りました。

 

■ ダンクソフトが実践するテレワークの実際

──実際やってみてどうでしたか? 不都合や不便はありませんでしたか?

谷原 ありませんでした。実はそれ以前に、試験的にチーム全員が在宅ワークをするテレワーク実験をしていました。いわば避難訓練のようなものですね。そういった経験をして準備が整っていたこともあり、物理的にも精神的にも、ハードルを感じることなく切り替えることができました。


──試験導入を実施されていたのですね。

星野 そうですね。もともとはBCP対策の一環として、社内で実証実験的にテレワークを実施したもので、まさに避難訓練です。2015年1月8日に初開催しました。2015年の1月8日でした。全国17か所から、20名が参加しました。それから全社で何度か実施しています。直近が2020年3月でした。

2015年1月8日に行った初の実証実験の様子 (Skype for Businessで撮影)

2015年1月8日に行った初の実証実験の様子 (Skype for Businessで撮影)

──オンサイト勤務の野田さんも、同じタイミングでテレワークに?

 野田 そうです。前日にダンクソフト本社に必要なものを取りに行って、パソコンをさっと設定してもらえて、翌日から在宅ワークになりました。さっきも話したように、私の出向先はそれまでまったくテレワークをしていません。それが、この緊急事態に対応して実現できたことには感動しました。もともと東京オリンピックの準備のため、在宅やテレワークを導入しなくてはいけないという意識は高くなっていました。デスクトップ・パソコンからノート・パソコンへの切り替えなど、準備が進んでいた成果とも言えると思います。

──実際どんなふうにテレワークをしているのですか? 離れた場所にいるメンバーとのコミュニケーションはどのように?

 谷原 会社から支給されているパソコンを使っています。主なコミュニケーション・ツールとしては、Microsoft Teams(グループ・チャット・ソフトウェア)とBacklog(プロジェクト・マネジメント・ツール)にログインして、仕事を始めます。メンバーとは、常にインターネットでつながっているので、やりとりの気軽さやスピード感はその場にいるのと変わりません。主にはチャットで、詳細説明が必要な場合や認識の確認、デザインを見てもらうときなどは、状況に応じてオンライン通話もします。

星野 こうしたコミュニケーション・ツールは、今回はじめて導入したわけではなく、以前から社内で日常的に使っているものです。あわせて、日報と予定表の連動を「日報かんり」で、経理関連手続きの効率化などを「未来かんり」というツールで行います。

「あらゆるものをインターネットにのせていく」ことで、社内では、事務や雑務に要する時間を大幅に減らせます。同時に、どこにいても仕事ができる環境も整っていました。

野田 私は入社して、1か月弱でオンサイトとしてクライアント先に常駐になったので、ダンクソフトの働き方自体、未体験でした。もちろん、テレワークも未体験でした。今回、初めてグループ・チャットなどでのコミュニケーションを実際にやってみて、コロナ在宅1日目にして「これならいける」と、快適さに驚きました。

自粛要請期間中のニュースで、日本でテレワークができている企業がたった「5%」だと聞きました。ダンクソフトは、その5%に入っているのだなと、身をもって実感で。これだけ進んだ環境があり、それに日頃から馴染んでいたから、「明日から在宅で」と言われても、全員が翌日から何の支障もなく、一斉テレワークができているんだと。あまりに自然すぎて衝撃でした。

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

ウェブチーム 野田 周子 (クライアント企業に出向)

■ 入社当初はあまりの先進性に衝撃の連続 

谷原 実はウェブチームは、メンバーの1人である久米さん(※)が徳島在住で、普段から完全に離れたところで一緒に仕事をしています。ビデオカメラに向かって入社挨拶をしたのは初めてで、驚きました(笑)。 ですから、グループ・チャットもオンライン通話も、もともと日常的に使っていました。そのようにして「離れて一緒に働く」経験をしていたことも大きかったと思います。

──久米さんは、以前このコラムでも登場いただいています。お二人にとっては先輩にあたるわけですね。

野田 はい。谷原さんも私も2019年1月の同じタイミングでダンクソフトに入社しました。入ってまず驚いたのが、いま話題に上がった久米さんの働き方、つまり、「チームメンバーの1人が徳島の自宅からテレワーク」という進んだ環境です。私は将来やってくるだろう介護のことも考え、いずれこういう時代がくると思ってダンクソフトに入社しました。実際に中に入って体験すると、やはり外で想像しているだけではわからない、驚きの先進性でした。

──谷原さんも驚きましたか?

 谷原 はい、もう本当にびっくりしました。そんなに離れていてほんとに一緒に仕事ができるの? と。でもやってみればなんの問題もなくて、新しい働き方を目の当たりにして、「こんな働き方があるんだ」から「できるんだな」へと、変わっていきました。今ではすっかり普通の、そして理想の環境と捉えています。

 

──他にはどんなことに先進性を感じましたか?

野田 いろいろあります。ダンクソフトに入った当初はとにかく衝撃の連続でした。テレワークの他に、やはり、「ペーパーレス」の徹底ぶりですね。ペーパーレスといっても「紙を少なくしているんだろうな」くらいにしか思っていなかったのですが、プリンターで印刷している姿を全くといっていいほど見ないのです。本当に全然紙を使っていなくて・・・それでも仕事ができるんだということを知りました。

 

──やはり紙がいいと感じる場面はありませんでしたか?

野田 あえて言えば、それまで出力紙にメモ書きをする習慣があったことくらいですが、それもデータ上に打ち込んで記録するという方法に変わっていきました。ツールに応じた方法を選ぶということですね。結果、検索性も高まり、やはりメリットしかありませんでした。

■ 現場で感じるテレワークのデメリットとは?

 ──テレワークで感じるデメリットを教えてください。

 谷原 デメリットですか。それが本当になくて。ほぼメリットしか感じていないのです。よかったと感じるのは、まず、やはり子どものことですね。子どもが小さいので、具合が悪くて幼稚園に預けられないときなどは、家で少し様子を見ながら仕事をしたり、昼休みに家のことができたりして助かります。

 

野田 私も、デメリットが見つからないですね。今までは、ずっと外で働いている母親でしたが、帰ってきたときに私が家にいると、子どもは安心していますし、うれしいようですね。あえて言うなら、運動不足になることくらいでしょうか(笑)。

 

谷原 以前は、常に気持ちが焦っているところがありました。子どものお迎えに間に合うかな、とか、電車が遅れたら間に合わないな、とか。いつも走っていました。慣れるまでは気持ちも、体力にも余裕がなくて、ずっと何かに追われている感覚でした。それが、テレワークをして、柔軟な働き方ができることで、余裕が生まれました。そのおかげで、仕事にも気持ち的に余裕がもてて、家族にも余裕をもって接することができるように思います。

──いい話すぎます (笑)。あえてデメリットを挙げるとすると?

谷原 うーん、むずかしい……(笑)。あえて言えば、パソコンや通信機器の調子が悪いと自分で対処しなきゃいけないですが、対応方法がわからないと慌てます。あと、周りの気配や空気を「察する」ということが難しいくらいでしょうか。顔が見えないぶん、相手の忙しさやあせり具合を、察しきれないところがあります。でもそれも、本人にたずねて解決しようと思っていて、やはり私は恩恵を受けている実感しかないですね。

──野田さんはいかがでしょう。不便を感じる場面はありませんか?

野田 私の場合は、できればクライアント企業様も同じような環境になるといいな、と思います。ダンクソフト社内と同じように、効率よく成果もあがるテレワークができるのが理想です。まずはチャットが使えるようになればと思います。今はメールと電話なので、コミュニケーション・ツールが変われば、かなり仕事のスピードもあがると思います。

──ダンクソフトとクライアント先、両者の環境ギャップが大きそうですね。

 野田 そうですね。紙資料の量が断然違いますし。ただ、これは自分ひとりで始められることではないので、やはり会社でこうした先進的な仕組みを整えていただけると、働く人間はより快適に、クリエイティブに働けるようになりますね。みんながそれをできるようになると、もっと仕事が速く進んで、早く終わるようにもなるでしょう。多くの大企業や官公庁こそ、仕事をオンライン化して、もっと連携しやすくしてもらえればと思います。

星野 それぞれの企業の業態に応じてご事情あってのことではあるのですが、それでもコロナを経て、少しずつ進んできたと思います。今回、スタッフたちが実際にやってみられた経験は大きいと思います。ぜひこれを機に、ダンクソフトだけでなく、まわりのみなさんもテレワークを取り入れて、柔軟でクリエイティブな働き方と、これができる情報環境の整備が進むといいですね。

そのためにも、まず、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことです。優秀な方たちが、さらに優秀になって、仕事ができるようになりますので。  

どうしても残ってしまう押印や郵送のため、ひとり出社し、星野が対応する。全員テレワークのため、スタッフは不在。

どうしても残ってしまう押印や郵送のため、ひとり出社し、星野が対応する。全員テレワークのため、スタッフは不在。

 

■ テレワークから「スマートオフィス」へ

──ダンクソフトでは、テレワークの取り組みは2008年にスタート。12年の間には失敗もあったと聞いています。どう克服してこられたのでしょうか。

星野 最近新しくできる会社は、最初から、ペーパーレス・アドレスフリーを前提に仕組みを構築しているところも多いです。ですが、ダンクソフトは設立が1983年。当時は、会社がそのようにはつくられていませんでした。だから最初は本当に紙だらけでしたし。寝袋で床に寝ているエンジニアもいましたし。コンピュータやインターネット回線の性能も、今のように快適ではなかったです。

それが、スタッフが就業規則を自分たち自身でつくったりするなかで、徐々に環境整備も進み、あらゆるものがインターネットにのるようになっていきました。ペーパーレスもキャッシュレスもクラウド化も、スタッフ自身が働きやすさを考えて、自ら実現してきたところも大きいです。素晴らしいスタッフたちだなあと感謝です。

──スタッフの皆さんの協力も、失敗の克服や、それを次に展開するためには、重要ですね。 

星野 冒頭で話したとおり、3月末に全社一斉テレワークになって4ヶ月になりますが、社内業務はまったく支障がありません。支障がないどころか、この状況になってから、スタッフの仕事ぶりは明らかに上がっています。“避難訓練”こそしてきましたが、いきなりこんな非常事態に直面して、全員がパニックになってもおかしくない状況でした。それが、パニックに陥らないばかりか、これまで以上の力を発揮して、いい仕事ができて、スピードも上がっています。自画自賛のようで恐縮ですが、素晴らしいスタッフたちだと誇らしいかぎりです。

──ダンクソフト内のテレワークがそれほどにうまくいっている要因は、どこにあるのでしょうか。 

星野 メンバーのマインドが、「オープンである」 ということが重要だと考えています。それぞれの状況がわかると、お互い助け合えますし、補完しあうことができます。また、助け合おう、補完しあおうという気持ちを皆がもち、積極的に関与しようとする、とてもいい循環が成立しています。

──テレワークの今後、近未来のビジョンを聞かせてください。 

星野 ポスト・コロナ社会のビジネスは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことで飛躍していきます。テレワークに欠かせないペーパーレス、キャッシュレス、コミュニケーション・ツールの活用も、すべて、この「インターネットにあらゆるものをのせていく」の一環です。これにより、仕事はよりクリエイティブに、活躍の場はより広がり、ビジネスの可能性は劇的に高まります。

──社内環境を整えることで、よりよい働き方ができるわけですね。

 星野 そうですね。そして、1社だけがこうしたテレワーク環境を整えるのではなく、関係する企業や組織や個人が、皆それぞれテレワークできるようになり、さらに社内外のさまざまなアクターが連携・協働できる環境になっていけば、さらなる需要や展開がうまれていきます。これがダンクソフトの考える、これからのテレワーク、すなわち「スマートオフィス構想」です。

──最後に、野田さん、谷原さん、テレワークで余裕がうまれることで、新たにできるようになったことがあればお聞かせください。

 野田 子どもが受験期ということもあり、家族の時間を大切にしています。じっくり話を聞いたりと、子どもと向き合うことができています。今が大事なときなので、とてもありがたいですね。

谷原 私は前からやりたかった勉強を始めました。新しいプログラミング言語がわかると、忙しくしているメンバーをサポートもできるかなと。あとグラフィックのデザインをもう少し突き詰めたいなと思っています。

──ダンクソフトが、テレワークから「スマートオフィス」へ、という構想をお持ちであること。そして、いま実際にテレワークによる余力がクリエイティビティを生んでいることが、よくわかるお話ですね。今日はありがとうございました。

Pic_001.png

インターネットに あらゆるものを のせていく −「リ・クリエイター」編

もくじ

■「スマートオフィス構想」の“担い手”はどんな人?

■ これからの価値創造を担う「クリエイティブ・クラス」とは

■ こんな人が、「リ・クリエイター」として活躍する

■ どうすれば、「リ・クリエイター」と出会えるのか

■ 生産性というメガネで見ていると見えないこと

■「スマートオフィス構想」の“担い手”はどんな人?

 ポスト・コロナ社会で、ビジネスの可能性を劇的に広げる秘訣があります。

 それは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」ことです。

 インターネットによって、場所や時間の制約がなくなり、居場所は自由に、仕事はクリエイティブに、人びとの活躍の場は世界へと広がります。1社だけがテレワーク環境を整えるだけでは、もったいない。テレワークできるようにした先に、社内外のさまざまなアクターと連携・協働して、次の需要や展開をつくっていくのが、「スマートオフィス構想」です。この「スマートオフィス構想」が、これからの難しい課題解決や価値創造を、可能にしていきます。12年前からテレワークを実証実験してきたダンクソフトが、いま、積極的に提案している方向です。

◆「スマートオフィス構想」とは? 

https://www.dunksoft.com/message/2020-06

 では、「スマートオフィス構想」のもとで、人はどんなふうに才能をのばしていけるのか。どんな担い手が「スマートオフィス構想」のもとで共に活躍し、アイディアを形にし、働き方やビジネスの進化を加速させていくのか。新たなはじまりをつくっていくキー・パーソンとは、どんな人たちなのでしょうか。

 今回は、「スマートオフィス構想」の“担い手”について、話をしたいと思います。

■これからの価値創造を担う「クリエイティブ・クラス」とは

 「クリエイティブ・クラス」という考え方をご存知ですか。アメリカの社会学者リチャード・フロリダが提唱した概念です。情報社会で活躍する、創造的な課題解決と価値創造を担う人を総称するものです。著書には、なるほどと感じるところも多く、ダンクソフトが大切にする「人」の見方とも重なります。

 ダンクソフトは、これから大事なのは、「リ・クリエイター」(Re-creator)だと考えてきました。

 クリエイティブ・クラスと共通する特徴として、「自分の頭で考え、判断ができる」、「自律的に時間設計ができる」、「趣味や遊び心を仕事に活かせる」、「新しい価値観やライフスタイルを創りだす」、そして「未来を創る推進力になる」などがあります。くわえて、「さまざまな人やモノの“あいだ”を結び、次の展開をうみだす」というインターミディエイターの役割をあわせもつ人が、「リ・クリエイター」として活躍していきます。

 たとえば、自分で考えて判断する力や、自律的に時間設計する力は、テレワークでも欠かせない能力です。身近なところでいえば、今回、コロナのことで急に在宅テレワークが必要になった方もいるでしょう。そのなかには、突然自宅で仕事をすることになり、時間設計にとまどった人も多かったのではないでしょうか。私はかねがね「時間は人生のために」と言っていますが、人間にとって時間はとても貴重なリソースです。自分の大切なリソースである時間を、何にどう使うかに意識的になることは、リ・クリエイターとして必須です。

 また、遊び心や面白い発想は、これからの価値創造に欠かせません。いままでは、それは趣味でしょうと言われて、職場では表立って語ってこなかったことが、むしろ新たなビジネスのきっかけを拓くことも多くなるでしょう。

■こんな人が、「リ・クリエイター」として活躍する

 こうした特徴のいくつかを満たす人が、これからの課題解決や新たな価値創造を進めていく担い手になります。かならずしも一人で全部を満たす必要はなく、いくつかを満たしていれば充分です。すべてを満たすような人がいれば、もうスーパー・リ・クリエイターですね。

 実際、ダンクソフトで活躍しているほとんどのメンバーは、これらの特徴をいくつかあわせ持っています。

 たとえば、何度かコラムに登場している開発チームの竹内祐介も、そのひとりです。彼は、まだサテライトオフィスの実証実験が始まったばかりの頃に、「実証実験で成功しているのだから、遠隔地に常駐する社員がいてもいいのではないか」と、私に直談判しに来たのです(笑)。わざわざそのために徳島から東京へ2泊3日で訪ねてきたのは、自律的に時間設計ができ、自分で意思決定できるからこそ可能だったと思います。その結果として、彼が起点となって、ダンクソフト徳島オフィスが誕生することになりました。

 また、同じく徳島・阿南市の久米まつり。在宅で育児をしながら仕事をしており、2019年8月のテレワークについてのダイアログにも登場しています。子育てを大事にしたいこともあって、当時はアルバイトとして働いていましたが、今は社員としてテレワークで活躍しています。実は、去年ダイアログの時点で、「子どもがもう少し大きくなって、時間の融通がきくようになったら、将来的には社員になりたい」と話していました。まさにそのとおりになったわけで、彼女もやはり上記の特徴を複数あわせ持っています。

 2人の事例で共通して言えるのは、ともすれば制約や制限とも思える条件を逆にいかして、課題解決から新たな価値を創造していることです。竹内はふるさとに住み続けたかったし、やりたい仕事もあきらめなかった。久米は子育てを優先しつつ、キャリアも志向した。どちらも強い意志と柔軟な発想が、新しい価値観やライフスタイルを創りだし、未来を創る推進力になったのです。経営者は、こうしたこれからの芽を見逃さないようにしなければなりません。

■どうすれば、「リ・クリエイター」と出会えるのか

 大事なのは、「誰もがリ・クリエイターになれる」ということです。気づいていないだけだったり、本来のポテンシャルを眠らせていたりするだけで、誰もが、リ・クリエイターの資質を開花させていくことができます。

 では、どうやってリ・クリエイターや、リ・クリエイターの卵を見出すのか。実は、これについては、ダンクソフトならではの知見があります。

 それは、ダンクソフトのフィロソフィーや想いを、さまざまなメディアでコミュニケーションすることです。物語を語り続けると、わたしたちが思い描いている方たちが自然と集まり、結果として、リ・クリエイターたちに出会えます。

 たとえば、それまで縁もゆかりもなかった地域で活動をはじめる場合、まずその地で、とにかく多様なコミュニケーションを図ります。現地の方々に知っていただくために、説明会、セミナー、交流会やワークショップ、地域ラジオ等のコミュニティー・メディア、SNSをつかった地域限定投稿など。また、首都圏など都市部の方へは、首都圏でのセミナー、現地視察ツアー、ウェブでのリアルタイム・レポートなど。そして地域と首都圏を結ぶ仕組みも用意します。現地視察ツアー、両者をオンラインでつないでのセミナーやイベント、写真を多用した報告書、ウェブでのレポートなど。セミナーは開催場所や対象者によって内容を変えて、何度も開催します。また、視察ツアーをコーディネイトすることで、ダンクソフト自身も地元地域との関係が深まり、人を良く知るきっかけにもなります。

 こうした一連の活動についても、「あらゆるものをインターネットにのせていく」ことを、積極的にしています。インターネットにのせることで、複合的なコミュニケーションが実現し、地域や企業に眠る意外なポテンシャルを秘めた人たちとの関わりが生まれます。そうした人は、ちょっとしたきっかけでリ・クリエイターとして目覚め、いきいきと輝きはじめます。そのきっかけづくりが、はじまりをつくることになります。

 思いがけない人や組織からアプローチがきて、どうしてそんな人が…? と思ったら、もう何年も前にセミナーに参加してくださっていたという事例は数え切れません。先述の竹内もダンクソフトを知ったきっかけは、ダンクソフトの活動を知る地元の先輩からでしたし、久米はもともと私たちが地域で開催した講座への参加者でした。最近では、昨年、阿南市長になられた表原立磨市長がダンクソフトをよくご存知で、聞けば、ごく初期に徳島で開催した催しにお越しになっていたということでした。

■“生産性というメガネ”で見ていると見えないこと 

 新たな価値創造は、効率化の延長線上にはありません。まったく違う見方ができる人や遊び心から生まれます。“生産性というメガネ”だけで見ていると、見えないことがあります。たとえばですが、竹内や久米のケースのような、未来に向けた動きを見落としてしまいます。

 ポスト・コロナ社会は、首都圏一極集中から、多様な場所への分散が進むでしょう。AIの進歩も止まりません。そのような状況下ですから、AIができることはAIにまかせ、うまく協働して、人間だからできること、楽しめることに、よりいっそう注力していくべきです。

 この20年で劇的に進化したテクノロジーを、今こそフル活用するときです。時間・空間をこえてコミュニケーションを取ることが可能になりました。オープンソース化が進んで、いろんなアイディアが使えるようになり、枠を越えた動きが活発になっています。さらにスピードを上げて、変われるチャンスがきています。あとは、そこに意識が向くか、向かないか。気づいた人は、すでに動き始めています。

◆ あわせて読みたい関連コラム

 → 「インターネット」に あらゆるものを のせていく

 → インターネットにあらゆるものをのせていく −テレワークとセキュリティ編

 → インターネットに あらゆるものを のせていく -「スマートオフィス構想」編

 → コミュニティの活性化とソーシャル・キャピタル

→ テレワーク ──2008年から始まった取り組み

インターネットに あらゆるものを のせていく −「スマートオフィス構想」編


 

■ポスト・コロナ社会という大変革の真っただ中で 

 ポスト・コロナ社会のビジネスは、「インターネットにあらゆるものをのせていく」かどうかが、時代のカギを握ります。今こそ、あらゆるビジネスをインターネットにのせていく好機です。多くの方が、テレワークの大切さに気がついたと思います。

 ポスト・コロナ社会では、インターネットがすべての重要なインフラになります。場所、空間、距離の制約がなくなり、移動にかかる時間とコストも不要になります。ビジネスも一人ひとりの生活も、行動のデフォルトはオンラインになり、フィジカルな移動は必要最小限に抑えられていくでしょう。今後、人類が感染症と共存していくうえで、公衆衛生や移動の考え方が、根本から書き換えられるからです。

 ビジネスも学びも、どこにいるかは問題でなくなります。情報の地域格差がなくなり、より平等になります。日本国内だけに限らず、世界全体の変化です。ケンブリッジ大学やハーバード大学がいち早くコースをオンライン化したように、世界中が開かれていきます。今、私たちは、社会が一気に変革する真っただ中にいるのです。

 

■今いる場所が 「スマートオフィス」になっていく

 そのようなポスト・コロナ社会では、ダンクソフトが提言する「スマートオフィス構想」は、さらに重要な位置づけを占め、ますます真価を発揮していくでしょう。

 最近では、ビジネスの担い手はさまざまです。企業も、NPOも、自治体も、個人も、ビジネスの担い手になっています。それぞれに合ったスタイルで、インターネットをうまく活用しながらビジネスを推進することが、これからますます重要です。

  「スマートオフィス」とは、「あらゆるものをインターネットにのせていくオフィス」のことで、それぞれのスタイルで、インターネットを上手に利用して、クリエイティブに仕事ができるビジネス環境のこと。テレワーク、クラウド、ウェブ、デジタル・コミュニケーションを組み合わせれば、いろんな人と柔軟なつながりが持て、ビジネス連携が広がる新しいビジネスのあり方を可能にします。そして、スマートオフィスどうしが、日本中あるいは世界とも連携・協働していくと、単体では叶わなかったような社会課題の解決や新たな価値創造ができていきます。そのような連携・協働の広がりを目指すのが「スマートオフィス構想」です。ただ1社がテレワーク化しただけにとどまっては、もったいない。その先があるからです。

 情報がデジタル化され、インターネットでさまざまな人や拠点とコミュニケーションができ、働き方も企業経営も、よりクリエイティブに。場所は問いません。フィジカルなオフィスは、あってもなくてもかまいません。インターネットにつながっていて、必要な情報や人や場にアクセスすることができれば、在宅でも移動しながらでもかまわない。今いる場所がスマートオフィスになっていくとイメージしてください。

 大事なのは、「あらゆるものをインターネットにのせていく」ことです。情報にアクセスでき、人とつながっていることです。そうすれば、スマートに、ビジネスの成果をあげていくことができます。

■新たな時代の物語を生きる

 これまでとこれからでは、社会の前提がまったく違うものになるでしょう。同じ現象でも、違うメガネで見れば意味が変わるように、世の中の課題や可能性を読みかえていかなければならないと思っています。 

 たとえば、これまでは都市と地方の間にはフィジカルな境界や格差がありました。ビジネスの中心は東京などの大都市圏にあり、中心部から遠く離れていることや、移動に時間がかかることはデメリットと考えられてきました。地方や地域の人口が都会へ流出し、地方の人材不足や高齢化が課題となってきました。一方、都市部は都市部で、人の多さや流動性の高さからコミュニティがなくなり、人と人のつながりが希薄だという課題を抱えています。また、日本全国で地域を問わず、多くの中小企業経営者を悩ませている課題として、事業継承、後継者問題が深刻です。

 これらの課題は、これまでは、地方の課題、都市部の課題、中小企業の課題と、別々のカテゴリーで語られてきましたが、これからは、新たなメガネで読み直す必要があります。そして、ポスト・コロナ社会をベースに考えると、「スマートオフィス構想」の切り口から、一気に解決することができるのです。

 まず、「インターネットにあらゆるビジネスをのせていく」ことで、いろんな人とつながって、場所を問わず仕事ができるビジネス環境をもつことができます。これにより、場所、空間、距離の制約がなくなりますから、地方が抱えていた物理的距離というデメリットはなくなります。都会にいても、地域にいても、多様なつながりをもち、距離を超えて複数のコミュニティに属することも可能になります。また、場所にしばられない企業経営によって、事業継承の可能性は大きく広がります。たとえば、離れた土地にいる孫がふるさとの企業を継いで、離れた場所にいながらテレワークで経営を継続していくこともできるからです。

 どうでしょう。「スマートオフィス」の発想によって、これまで難題だとされてきた社会課題が解決され、むしろ新たな価値創造の可能性が広がる。わくわくする未来が見えてくるのではないでしょうか。

 私の親や私くらいの世代までは、「働く」といえば都市部にある企業に就職することだという神話がありました。でも、もうそんな時代ではありません。少し前まで想像もできなかった未来のなかに、すでに私たちは突入しています。ポスト・コロナ社会という、新しい時代の物語を生きているのです。

■スピード感をもって今すぐ始める 

 ポスト・コロナ社会に、あらゆるビジネスをインターネットにのせて進化させていくうえで、大切なことがいくつかあります。

 まず、変革の時代は「スピード」が大事です。いち早くインターネット上にビジネスを展開したいものです。今後の働き方やビジネスの進化を加速させていくためにも、この先の社会を早くイメージして、早く動き出した人から結果を手にしていきます。

 場所が関係なくなり、世界中がマーケットになります。それぞれのビジネスがもつ独自の魅力は大きな可能性となるでしょう。先行者利益は大きく、よりよいものをよりよい形で展開できれば、ビジネスは劇的に進化します。

 だからこそ、経営者のマインドセットを新しくすることが大事になります。やはり経営者がスピードに乗っていけなければ、その企業は時代に取り残されてしまいますから。

■相互信頼とつながりが、きわめて大切になる時代

 そして、この先、きわめて大切なのが「相互信頼」です。こういう時代こそ、信頼できる人どうしが結ばれるべきです。インターネットは、場所の壁も、時間の壁も、言葉の壁も超えていきます。残るのは、意識の壁、つまりマインドセットだけです。連帯・連携できる人がどれだけいるかで速さも広がりも決まります。信頼できる人どうしがつながれば、スピードも加速度的に上がります。空間でつながっているより、未来のイメージを共有できているかどうかで、ビジネスの推進に違いがでます。

 「スマートオフィス構想」がつくりたいのは、人々の思いがつながり合う「ふるさとの未来」です。ここでいう「ふるさと」は、生まれ育った故郷や地域とはかぎりません。縁あって関わりをもち、思いを寄せるコミュニティがあれば、そこもひとつの「ふるさと」です。ですから、一人でいくつもの「ふるさと」をもつことだってありえます。

 従来、地方創生や地域活性化というと、特定の場所に発想が固定され、地元に大企業を誘致するという考えになりがちでした。そうではなく、ポスト・コロナ社会では、「あらゆるビジネスをインターネットにのせていく」こと、それによって日本全国のあらゆるビジネスをデジタル・リクリエーションしていきたい。そうすれば、地域にこそ息づくユニークな企業やサービスやプロダクトを、世界に展開していけます。そのためのテレワークであり、ウェブでの情報公開であり、多様なプレイヤーとの連携なのです。改めて強調したいと思います。

■ふるさとの未来をつくる「スマートオフィス構想」

 「スマートオフィス構想」は、あらゆる場所に可能性をひらきます。テレワーク、クラウド、ウェブ、デジタル・コミュニケーションを組み合わせれば、地方であれ都心であれ、若い人、女性、シニアなど、多様なアクターが活躍する場がつくれます。そこに新しいビジネスが生まれ、社会課題の解決と価値創造をもたらし、住みたい場所で暮らしながら、楽しく働くことができる。相互信頼のつながりに支えられているからこそできるライフスタイルであり、これがスマートオフィス構想がつくりたい「ふるさとの未来」の姿です。ダンクソフトが長年関わっている徳島県阿南市での阿南工業高等専門学校(阿南高専)との連携プロジェクトは、その先行モデルとなる好事例と言えるでしょう。いまも進行中です。

 ソーシャル・キャピタルを豊かにはぐくみ、多様なメンバーがインターネット上で「スマートオフィス構想」を展開していくには、「あいだ」を結ぶインターミディエイターがますます重要になってきます。連携・協働しながら社会課題の解決や価値創造をしていくうえで、欠かせないこれからの役割です。ダンクソフトは、デジタルを媒介に、インターミディエイターの役割を果たしながら、みなさんと連携して、日本全体をカラフルにしていきたいですね。

  


事例:苦手意識のあったデジタルに、挑戦してみようと思わせてくれた協働プロジェクト

お客様:一般社団法人 遊心(ゆうしん)様

一般社団法人 遊心  代表理事 峯岸由美子氏

一般社団法人 遊心 代表理事 峯岸由美子氏

自然体験プログラムをより深いものにするため、リアルな現場とデジタルを融合させ、仕組みを変えていきたい。イベント後も、参加者と関係を継続していきたい。でもデジタルは苦手――そう考えていた遊心(ゆうしん)が、ダンクソフトとの協働を経て、大きく前進している。AR(拡張現実)を用いた動物園学習プログラムの成果・効果、参加者との関係づくりへの期待、広がるデジタルへの関心など、お話を伺った。

■もやもやした想いを抱えて奮闘した30年

遊心は、都会で子育てをする家庭が、身近な自然に触れて親しむプログラムを展開する団体だ。年間のプログラム参加者は3000人以上 に上る。自然や家族、仲間を大切に思う気持ちを育てる活動を展開している。公園での自然遊びや生き物講座、動物園や博物館とのタイアップ・イベントなど、0歳から大人までが夢中になれるプログラムを提供してきた。

2010年の設立当初から大切にしているのは、「しなやかに自律する人を育てる」という理念だと、代表理事の峯岸由美子氏は語る。「自然の中でのさまざまな体験を通じて、一人ひとりが自分の価値観や哲学のような“心の芯”みたいなものを持ってほしい。そして自分たちの力で見聞きして考えて、行動を起こせるような人になってほしいと願い、活動してきました」

 遊心が提供するのは、ただ子どもだけが自然体験を楽しんで終わるプログラムではない。参加することで、親子関係がよりよくなることを心掛けて、プログラムを設計している。「私たちは自然体験の経験が豊富なので、子どもたちは喜ぶし、それは自分たちにとっても面白いのですが、親御さんが置いてきぼりになってしまう。すると、親御さんが私たちに子どもを預けて遠巻きに眺めるようになり、子どもや自然環境の変化を見ないままイベントが終わってしまいがちです。これでは親子関係の改善につながらないので、それは避けたいんですね」と、峯岸氏は課題を語る。 

また、遊心のイベントは0歳から参加できるものもあり、幼い子どもを連れた家族の参加が多い。それゆえ「1時間半~2時間くらいが限度」と、イベントの時間を長くとれないことが悩みだった。

スクリーンショット 2020-05-28 0.26.57.png

「その場で体験したことを持ち帰って、もう一歩気づきを深めることができれば、帰宅後に親御さんたち自身が子どもたちとよりよく関わっていくことができる。でも、なかなかそこに至らずに終了してしまうのです」。その場限りの楽しいイベント体験で終わってしまっていないか、本当に伝えたかった部分を伝えきれていないのではないか、「子育ては大変だけど楽しい」という醍醐味を親御さんたちに感じてもらえただろうかと、ずっと悩んでいたという。

 イベント終了後もフォローできる仕掛けを探して、ファンクラブを立ち上げたり、フェイスブック上でやりとりを続けたりなど、試行錯誤してきた。ただ、イベントには一度に70名ほどが参加することもあるため、きめ細かなフォローをすればするほど、スタッフも疲弊していくことがネックとなり、イベント後のフォローがなかなかできない状況だった。

 遊心を設立する20年ほど前から、峯岸氏は自然体験活動の運営・指導、指導員養成事業に携わってきた。そのころも、講座に参加した幼稚園教諭や保育士などが「良い学びを得ました」と感想を述べていたが、職場に戻ったときにそれを実践できているのかは不明だった。「意義の無いこととは思わなかったけれど、消耗戦のような感じがしていた」と振り返る。

「30年ほど事業に携わってきましたが、もやもやしたこの気持ちはずっと続いていた」と峯岸氏は振り返る。そこで考えたのが、ITやデジタルを取り入れて、イベント後に参加者と対話し、学びを実践するサポートを組み込んでいくことだという。

■じっくり観察する仕掛けをARで提供

地図.png

 2018年、峯岸氏は何か変化をもたらしたいと考え、ダンクソフトが共催する「インターミディエイター講座」に参加した。この講座で、峯岸氏はダンクソフトの板林淳哉と出会う。ダンクソフトも、子どもたちの未来のためにデジタルを活用したいと考えていたことから、両者は意気投合。そして峯岸氏は、ダンクソフトで開発が進んでいた「WeARee!(ウィアリー)」のことを知る。これは、現実の空間の中にマーキングした場所に、情報を登録し、ARコードやGPSなどを用いてスマートフォン内に呼び出すことができるという、拡張現実(AR)の仕組みだ。抱えていた課題を解決できるかもしれないと、WeARee!を使ったコラボレーションが実現することとなった。実証の舞台は、遊心が企画していた上野動物園での体験観察イベントに決まった。

 だが、峯岸氏によれば、動物園を対象にしたプログラムは、作るのが難しいという。プログラムの焦点をどこに当てるか悩んだ末に、今回は過去に実施したことのある動物園学習プログラムと内容は大きく変えず、そこにデジタルを組み込むことにした。

一覧.png

 遊心が提供する動物園学習プログラムの特徴は、ひとつの動物を30分ほどかけて観察することだ。動物園では多種多様な動物を足早に見てまわることもできるが、「目の前の動物をじっくり見ることができるという要素も、野生の動物にはない魅力です。」

 じっくりと観察するには、観察する箇所を絞ることがポイントだという。今回の企画では「動物の口」にフォーカスした。口の形が違う生き物は、食べる時の動きも、餌も違う。観察のポイントが分かると、動物の動きや変化、心情なども見えてくるという。

 観察する楽しみ方を体験してもらう遊心の動物園学習プログラムに、AR技術を組み合わせる上で、特に注意を払ったのは、ARを利用しながら、目の前のリアルな動物を見てもらえるコンテンツにすることだ。スマートフォンに動画が映し出されれば、子どもたちはそちらの方が楽しくて見てしまう。動画を見つつも、目の前にいるキリンやサイに目が向くように、見るポイントやクイズ、家族と話してみてほしい項目などを盛り込んだ。一方で、通常の動物紹介サイトに掲載されているような「奇蹄目サイ科」といった一般的な情報は、一切省いた。

 また、動物の口にフォーカスした動画を10種類も用意した。撮影したのは峯岸氏で、「こんなに動物園に通ったのは久しぶり」と笑う。イベント中に、動物の口の動きを観察してまわるには、餌を食べている時間にその動物の前にいなくてはならない。そのため、従来は餌の時間を事前に確認し、それに基づいてイベントの動線を組んでいた。しかし今回は事前に用意した動画があるため、時間的な制約から解放され、動線を柔軟に組み立てることができたという。

■イベント後も参加者とのコミュニケーションが深められるARツール

 これまでは、プログラムに参加する親子が何に興味を持って会話しているのかは、至近距離でぴったり寄り添って聞いていなければ分からなかった。声を拾おうとすれば、参加している家族の数だけスタッフが張り付く必要があり、負担が大きい。メモを取るのも、難しいことだ。特に全体を統括することが多い峯岸氏は、生の声を聞く機会が少ないと感じていた。

キリン口.png

  アンケートは毎回実施してきたが、書かれているのは現場でのリアルタイムな感想ではなく、終わった後にまとめられた回答だ。読み返しても「リアル感の乏しい反省会になってしまいがちだった」と振り返る。

 そこで、コメントを投稿できるコーナーをWeARee!サイトの各ページに設けた。参加者は動物園内をまわりながら、気付いたことや感想を簡単に投稿できる。イベント実施中に、親子の興味・関心をリアルタイムで知ることができるというのは、大きな手ごたえだった。

 さらに、WeARee!には、当日の気づきや学びを、家に持ち帰ることができるという特徴がある。実際、多くの参加者がイベント終了後に、WeARee!を使って、家で振り返りを行ったようだ。「もう一度動画を見た」といった声が寄せられ、それをきっかけにやりとりが生まれ、フォローアップへとつながった。「今までは、参加者は、終わってしまったイベントを頭の中で振り返ることしかできませんでした。でもまたWeARee!を開けば、動画を繰り返し見ることができて、コメントしあうことができる。これで、気づきを積み重ねていくことができますよね」

 中には「子どもが図鑑を読むようになった」「他の動物の食べる様子も意識するようになった」といった声もあったという。イベントをその場限りの体験にしたくないと常々考えてきた峯岸氏にとって、これはとても嬉しい反応だった。

■価値観を共有できるパートナーとの出会い

_E9A2924_8.jpg

 峯岸氏も遊心のスタッフも、もともとデジタル関連の話題には苦手意識を持っていた。「やってみたいな、という思いはありましたが、分からないから後手にまわっていたというのが、正直なところですね」

 IT企業との協働を模索したことは、これまでに幾度かあったものの、やりとりを重ねるうちに互いに違和感をおぼえるなど、結実したことがなかった。「自然体験」は目に見えるが、「自然体験」によって得られる「何か」は目に見えない価値があると思う。その効果が出てくるのが来週なのか、1年後なのか、10年後なのかも分からない。「10年くらいかけて変えていけばいいかな」と考える遊心と、IT企業とでは時間軸が異なる。価値観を共有し、大切にしてくれるパートナーと、なかなか出会えてこなかった。

 これまで相談してきたIT企業からはなかなか理解が得られないこともあった。動物園学習プログラムに実際に参加した人以外には、見てもよく分からないサイトであるため、「そんなサイトは面白くない」「それでは人様に出せない」と言われてきた。だが遊心としては、伝えたいメッセージも学んでほしいポイントも明確であり、そこは譲れない。「理解してもらえないのなら、自分たちでソフトを買ってきて、素人なりにサイトを作ってしまった方がいいのでは」と考えたこともあった。

 このような経緯があったため、ダンクソフトとの打ち合わせも、最初のころは不安を抱えていたという。遊心が大切にしてきた理念や目的を受け止め、違う方向に持っていくことなく制作してくれるのか? ARを使うと、一体どのようなものが出来上がるのか?

 遊心から聞いた話をダンクソフトが形にしたプロトタイプも、「へぇ~、と言いながらも、よくわからずに眺めている感じが続いていました」と振り返る。

_E9A2987_3.jpg

 転機となったのは、何度目かの打ち合わせの際だった。「ダンクソフトの板林さんから、遊心さんが伝えたいことをやりましょう、という言葉をかけていただいたんです。ダンクソフトがやりたいWeARee!ではなく、遊心のWeARee!を作ろうとして、一生懸命話を聞いてくれていることが分かりました。それならば私たちも、できるかできないかに関係なく、遊心がやりたいことや大切にしていることを共有しよう、そうすればダンクソフトが形にしてくれるんだと気付いたんです。それからは楽でしたね」

 

 ■たとえ失敗しても、新しいことに挑戦したい

 遊心は2019年に設立10年を迎えた。次の10年を見据えていろいろと変えていきたいと考えていたタイミングで、ダンクソフトと出会ったという。「遊心にとっては、切り口をひとつ開けてもらった」と、峯岸氏は話す。「親子の自然体験という現場と、デジタルの融合は、今では次の10年の柱のひとつです。前進するきっかけをダンクソフトは与えてくれました」 

 なにより、「もう一歩前に進んでみようと思わせてくれたのはダンクソフトだからだろうなと思います」と峯岸氏。プロジェクトが行き詰まれば、「やっぱりデジタルなんて嫌」と懲りてしまっていたかもしれない。「でも、目に見えないものを扱っている私たちのような団体を、ダンクソフトは理解して、見える形に落とし込んでくれた。こういうドンピシャなことって、あまりないんですよ。お付き合いする中で、単なる効率化だけではなく、その先の“関係づくり”に寄与するデジタルが大事なのだと、分かってきました。ダンクソフトには、新しい扉を開く存在として期待しています」 

 今は「何でもできそうな感じがしていて!」と声が弾む。それだけに動物園学習プログラムの終了後には、あんなことも、こんなこともできたかもしれないという意見が、遊心とダンクソフトの両方から数多く出てきた。イベント終了後も、もっと参加者とよりよい関係を維持できるように、楽しい学び合いのコミュニティをつくっていくことも、目指したい。

 デジタルへの苦手意識も少なくなったという。「今は、たとえ失敗したとしても、挑戦してみた方が面白いという気持ちになっていますね」。遊心の中では今、リアルとデジタルを組み合わせた自然体験のアイデアが次々と湧き出している。4月には新型コロナウイルス感染拡大に伴い外出を控える中で、自宅周辺でどのように楽しめるかを紹介するYouTubeチャンネル「コロナに負けない外遊び」を初めて立ち上げ、動画を次々に公開した。

_E9A3023 2.jpg

 それでも「イメージがまだ湧き出しきっていないように感じる」と話す峯岸氏は、WeARee!の可能性はもっと大きいと期待を寄せる。「やったことのないもの、できそうもないものの方が楽しい」と、さらなる挑戦を楽しみにしている。

 

導入テクノロジー

WeARee!(ウィアリー!)

 

遊心とは

人と自然が、共存していることを身近な場所で体験する機会を創ることを目指し、2010年に設立。子どもたちが、家族と自然に触れ、面白さや親しみやすさを分かち合う、自然遊びプログラムを提供する。プログラムを通じて、子どもたちが自然や家族を大切に思う気持ちを育んでいる。http://www.yushin.or.jp




インターネットにあらゆるものを乗せていく −テレワークとセキュリティ編

もくじ

■Post-corona社会へ: 一気に進んだテレワーク化で見えてきた課題

■セキュリティは「公衆衛生」と同じ

■テレワークをはじめる時に気をつけたい、PC・回線・ファイル共有のコツ

■どのクラウドを使えば安全なのか?

■いま問題のZoomの脆弱性と対策は?

■この逆境を、「はじまりをつくる」機会に

■Post-corona社会へ:一気に進んだテレワーク化で見えてきた課題

 わずか数ヶ月で、急激にテレワーク化が進みました。これは単に在宅勤務が進んだのではありません。Post-corona社会のはじまりです。4月16日発売の雑誌『DIME』6月号でもテレワーク特集が組まれ、私のインタビュー記事がオンライン版に掲載されています。テレワークのノウハウや注意点についてお話ししました。

◆参考情報

小学館ダイム公式サイト @DIME アットダイム

DIME テレワーク上級者が語る在宅勤務を成功させる秘訣は「社員同士が互いに信頼し合う関係にあり」

 今回、ほとんどの会社で、いきなり、しかもすぐにテレワークを始めざるをえない状況になりました。人・モノ・環境、いずれの準備も追いついていないケースが多く、ダンクソフトでもさまざまなご相談を受けています。いろんな企業の状況をお聞きしていて感じるのは、インターネット・セキュリティに関するノウハウと意識づけが大きな課題だということです。セキュリティ上の問題によく配慮しないでテレワークをはじめてしまうと、会社の重要な情報が危険にさらされてしまうリスクがあります。

 とはいえ、やみくもに恐れる必要はありません。大事なのは、きちんと知って、適切に使うことです。安全のために必要な手間やコストが何か、それはなぜか。そこが分かれば、逆に、何が無駄や過剰なのかも見えてきます。安全で、より便利・快適にインターネットを使えます。情報は会社の最も重要な資産です。大事な資産は、それに見合ったコストと手間をかけて守りましょう。インターネットを上手に使えばいかに便利で楽かを知ると、きっともう戻れなくなるでしょう。

■セキュリティは「公衆衛生」と同じ

  インターネット・セキュリティでいちばんあぶないのは、実は「人間」です。というのも、セキュリティは「公衆衛生」と同じなんです。だれか一人でも欠けていると総崩れになってしまうからです。ダムが蟻の一穴から崩れるのと同じです。つまり、みんながセキュリティのいろはをエチケットとして身につけることが大切なわけですね。全体のレベルを上げ続けていく意識づけが欠かせません。ですが、なかなか難しいのが現状です。

 かぎを握るのは、やはりなんと言っても「経営者」です。経営者こそ、インターネット・セキュリティの必要性を誰よりも理解し、率先して会社の大事な情報資産を守る意識をもちたいところです。目先の利益を優先する方も多いのですが、ここをないがしろにしていると、のちのち大きな損失になってしまいます。今の時代のリスク感覚を掴んでおかないと、ビジネスチャンスや顧客の喪失、業務の停滞といった負の連鎖にもつながってしまいます。情報漏えいが発生したら、「知らなかった」ではすまされません。経営者の法的責任が問われることさえあります。何より、今まで培ってきた企業の「信頼」がなくなることは、避けたいことです。

◆参考情報

→ 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第1部 経営者編(IPA 独立行政法人情報処理推進機構)

 もちろん、技術的なことやシステム運用までを、経営者自身が自分ですることはありませんので、ご安心ください。実務は、エキスパートや技術者に任せればよいのです。ダンクソフトでも、セキュリティ対策のご相談をよく受けており、ツールやシステムのアドバイスからセミナー実施や講師派遣まで、さまざまなお手伝いをしています。

 では、具体的にどんなことに注意し、どんな対策をすれば良いのか、順に見ていきましょう。

◆参考情報

→ インターネットの安全・安心ハンドブックVer 4.10(令和2年4月20日)

  

■テレワークをはじめる時に気をつけたい、PC・回線・ファイル共有のコツ 

 まずは、テレワークをはじめるにあたって、仕事で使うパソコンは、私用のものとは完全に分けましょう。会社で設定したパソコンを送るなり持ち帰るなりして、仕事の情報にアクセスする環境をつくりましょう。ダンクソフトの場合は、パソコン自体にセキュリティをかけて、2段階認証を設定しています。

 そして、共有ファイルには必ずパスワードをかけましょう。たしかに手間はかかりますが、安全の対価と思って、惜しまずやって損はありません。インターネットの世界には警察がいません。悪意をもつ人がすぐそばにいるかもしれません。中小企業や無名の個人であっても、悪意の人からの攻撃は、対岸の火事ではないということです。

 また、もしも顧客情報など機密度の高い情報に外からアクセスする必要がある場合、たとえばVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)のような、より安全なネットワークを使うことでセキュリティ・レベルを上げることができます。ただ、このような高度なセキュリティに関しては、エキスパートのサポートを上手に使うのがいちばんです。

 テレワークをはじめるときに知っておきたいことについては、3月のコラムでもご紹介しています。あわせてお読みください。また、ダンクソフトでもご相談に応じています。

◆参考情報

→ 東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[後編]

 

■どのクラウドを使えば安全なのか?

 次に、インターネットを使ったファイル共有について。

 どこでも仕事ができるようにするためには、繰り返し申し上げているように、「インターネットにあらゆるものを乗せていく」ことが必要です。「クラウド化」というのも、要は情報をインターネットに乗せていくだけのことで、難しいことではありません。 

 ただし、現在のような状況で「すぐテレワークにしなきゃ」という場合でも、無料クラウドの利用には、くれぐれも気をつけてください。一定容量まで無料のサービスはいろいろありますが、無料ということは、それによって向こうも何かメリットを得ているわけです。多くの場合、自分の情報を対価として渡し、使用を許していることになります。 

 みなさんがあずけたデータは、多くは広告のために商用利用をされていますが、中には利用規約に同意すると著作権や所有権まで放棄することになるケースもあります。各社が規約にすべて明記してはいますが、きちんと読んで理解して同意している人はどれだけいるでしょうか。安易な選択は要注意です。一方、Microsoftなどは、データは個人のものという発想があるようで、クラウドもグループ・チャット(Teams)も、安全性が高いと言えるでしょう。

 

■いま問題のZoomの脆弱性と対策は?

 このところ一気に利用者が増えたのが、オンライン会議ツールのZoom(ズーム)です。しかし、利用者の急増にともない、Zoomの脆弱性が問題になり、使用を禁止する企業や学校も出てきました。会議に無関係な第三者が乱入して迷惑行為をされたとか、情報が流出したとか、トラブルが発生したためです。 

 結局、Zoomは使っても大丈夫なのか? 結論から言うと、用途と使い方次第だとみています。Zoomは基本的に使い勝手のいいものを目指して作られています。こういうツールは、セキュリティ・レベルを高めれば動作が重くなるし、手間もかかります。軽くして使い勝手を上げたことが、Zoomの脆弱性につながったわけです。また、他のアプリやツールで使っているID・パスワードと同じものを使い回していると、玄関も窓も開けっ放しにして、さらに鍵をドアノブにぶら下げているようなもので、自分であぶない状態をつくっていますよね。

 もっとも、外部からの乱入に関しては設定で工夫できますし、ID・パスワードの使い回しはそもそも危険行為なので、すぐにやめるべきですね。あとは、利用者側のリテラシーが重要になってくるというわけです。

 

■この逆境を、「はじまりをつくる」機会に

 コロナ禍で世界中が大きな打撃を受けていますが、この逆境のなか、インターネットがここまで普及していたことが活路ともなっています。影響はあと2年近く続く可能性があるとハーバード大学が発表するなど、長期化が予想される状況にあって、経営者の皆さんは、ただ嵐がすぎるのを待つだけではなく、新たなイノベーションに向けてマインドセットを切り替えていく機会でもあります。

 経済や利益の観点から見ても、前提となる「公衆衛生としてのセキュリティ」を守らなければ、社会が足元から崩れてしまうことがわかってしまいました。また、ウイルスそのものがなくなるわけではなく、今後も地球規模のパンデミックが起こりうることを、世界が理解してしまいました。インターネットによるテレワークはもはやインフラとなり、これまでの東京への一極集中は分散へと向かうでしょう。 

 さらに、今回あらためて見えてきたのが、日常的な「関係づくり」の大切さだと思います。お客様やスタッフ・パートナーとの相互信頼が築けている企業は、さまざまな人たちとの助け合いが、いい形で機能しています。インターネットが分断をこえるコミュニケーションの場を生みだしていったのです。セキュリティ対策をしっかりしたうえで、インターネットにあらゆるものを乗せていくことにより、お客様との関係づくりは変わっていきます。

 経営者の考えが、ますます大事になるときです。スピード感のある対応が必要な局面で、困りごとのご相談もよくお聞きしています。組織をこえて連携することで、いろいろなことがより良くなっていきます。ここからはじまる希望の未来に向けて、この逆境を「はじまりをつくる」スタート地点としていきましょう。

 

◆あわせて読みたい関連コラム

 → 「インターネット」にあらゆるものを乗せていく

 → 「カスタマー・インティマシー(顧客親密性)」を高めるデジタル 

 → 事例:楽しさの「背景」までも伝え共感を生むWEBサイトで、閲覧数も売上も120%増

 

◆参考情報

→ テレワーク導入支援 ~働き方だけでなく、企業が変わるテレワークの導入と定着へ  

 → 日報かんり ~急なテレワークへの切り替えで、勤怠管理にお困りの方へ~

 → テレワーク検定 ~テレワーク導入の準備・導入後の効果的な運用のために~

「インターネット」にあらゆるものを乗せていく

もくじ

■ビジネスで、「インターネット」をもっともっと活用しよう

■デジタルによる劇的な「コミュニケーション」の進化

■効率化の先にある大事なこと

■需要創造のメディアとしての「ウェブサイト」

■「信頼」が最大の資本になる時代

■信頼と安心のコミュニティが活性化する未来

 

■ビジネスで、「インターネット」をもっともっと活用しよう

  皆さんは、すでに日常生活で当たり前にインターネットを使っています。電車やバスに乗るときはICカード、コンビニでもスマホでキャッシュレス、LINE通話にZoom会議、ネット通販、チケット購入、ネット・バンキング。全部インターネットの恩恵です。もうインターネットなしに生活が成立しない日常になっています。

 つまり、インターネットは、もう社会の前提になっている。いまや「インターネットが社会である」という状態です。そういう認識のもと、ダンクソフトがご提供する製品やサービスはすべて、「インターネットをビジネスに活かす」ということを大前提としています。

 日常生活では、これだけインターネットがベースにあり、便利に楽になっているのに、ビジネスのシーンになると、それがまだまだできていません。ビジネスでも、インターネットをもっともっと有効活用していけば、仕事が便利に楽になっていきます。そして、軽減できた時間や力を、新しいことをはじめることに振りわけ、「リ・クリエイション」(再創造)することに使っていくことができます。

  ダンクソフトが、製品やサービスを通じて提供するのは、効率化にとどまらない、「リ・クリエイション」(再創造)という価値なのです。「クラウド化」とか、「ペーパーレス」というと、難しくて、大げさに聞こえるかもしれませんが、要は「インターネットにあらゆるものを乗せていくだけ」のことです。これによって、ビジネスも働き方も、もっと快適に、便利になり、活性化していきます。私たちの日常生活が、現在のように快適で便利になったのと同じように。

 テレワークがいい例です。インターネットのおかげでできるようになった、より自由で柔軟な働き方です。場所にとらわれず、どこにいても仕事ができます。ダンクソフトでは、テレワークを2008年から実践していますが、離れた場所でも仕事ができるようにするにも、インターネットに情報を乗せておかないと不便が生じてきます。今回のコロナウィルス感染対策として、急にテレワークに切り替えても、データや書類が会社にあるので仕事ができない、という不便を感じた方も、多かったのではないでしょうか。「インターネットにあらゆるものを乗せていく」。これを機に、情報の置き方、扱い方を見直してみてはどうでしょうか。

■デジタルによる劇的な「コミュニケーション」の進化

 デジタル・テクノロジーは、この40年間で1億倍に進化したと言われています。その流れの中で、直近20年ほどの進展は、実はほぼ「コミュニケーション」の進化でした。計算機能の開発はもう早くに終わっています。インフラのソフトウェア開発も、20世紀にあらかたのものは済んでいて、あとは組み合わせや使い勝手の次元になっています。

 ところが、Googleが検索エンジンを出したあたりから、話が変わってきました。この10年で変わったのは、ほぼ「ソーシャル」の話です。つまり、インターネットがもたらす恩恵として、業務の効率化よりも、「コミュニケーションの活性化」にかんする開発が活発になってきた。わかりやすい例がLINEやFacebookです。そうしたSNSがあるおかげで、離れていてもつながっていられたり、相性の合う人がわかったりします。生活者はそこを使いこなしているわけです。

 もう社会は「インターネットありき」と定義し直さないと、いろんなところで話がおかしくなる時代になっているということです。「紙」もあっていいのですが、これまでのように「紙ありき」の発想では立ち行かない。そうではなくて、インターネットでいろんな仕事をする前提で仕組みを作る。もう一度言いますが、インターネットでいろんな仕事をする前提で仕組みを作る。その中の端っこに、いくらかは紙が残る。というぐらいの認識でビジネスをしていかないと、あまり便利にはなりません。

■効率化の先にある大事なこと

 しかし、“快適・便利” は、インターネットの恩恵の、ほんの入り口にすぎません。ダンクソフトが見ているのは、その先のイノベーションです。インターネットがもたらす「ビジネス・イノベーション」の事例は、挙げればきりがありません。

  たとえばJR東日本の「Suica」を考えてみると、ピッとワンタッチして、ペーパーレス、キャッシュレスで改札機を通れ、買い物もできる。ユーザーの利便性は言うまでもありません。たまにうっかり忘れて外出するとよくわかるように、都度都度きっぷを買う暮らしにはもう戻れませんよね。

 ですが、「Suica」がもたらした成果はそれだけではないと思います。まず、わかりやすいところとして、改札の自動化・無人化がさらに進み、人件費が減りました。スピードも上がって、効率化・高速化しています。この「Suica事業」は、2000年にJR東日本が打ちだした中期構想のひとつの柱でした。このとき、Suicaで鉄道以外のビジネス・チャンスを広げることも、視野に入っていました。

suica.jpg

 では、それによって何が起こったのか。ひとつに、駅務機器の削減によって、新しいスペースが生まれました。当所、駅ナカ商業施設の充実も、中期構想のもうひとつの柱でしたが、カフェ、レストラン、コンビニ、ショッピングセンター、本屋さんにスーパーマーケットまで。キヨスクの売店しかなかった頃からは想像もつかない進化がありました。JRは、余剰になったスペースや人材などのリソースを活用して、ビジネスを大きく転換した。私はこれを、インターネット活用による効率化のおかげで、新しい領域への展開に成功した、イノベーションの好例として見ています。

  ダンクソフトが関わったケースでは、徳島合同証券様の成功例が代表的です。ペーパーレス・ストレッチを導入し、紙の削減からスタートして、業務効率化と大幅な経費削減を実現しました。その結果、空いた場所・予算・時間を活かして、人々が集まれる場所をつくりました。また、同社の泊社長みずからが、エシカルやSDGsに積極的に取り組むようになりました。今や地元で、「とくしまSDGs未来会議」発足メンバーのおひとりになるなど、企業の価値を高めておられます。インターネットを上手に使ってイノベーションを遂げた典型といえるでしょう。

事例:徳島合同証券 様

■需要創造のメディアとしての「ウェブサイト」

 「ウェブサイト」の可能性を考えていない方が圧倒的に多いのは、もったいないことです。実際、ダンクソフトも、当社ウェブサイトをご覧になってのお問い合わせが増えています。

 ここまでは、インターネットを活かして業務を効率化することが、その先の「ビジネス・イノベーション」につながる、という話をしてきました。ここからは、「ウェブサイト」についてです。これは、あらたな需要づくりの装置です。小さな単位の企業や団体こそ、ぜひとも上手に活用していただきたいです。どういうことでしょうか。 

 インターネットは世界中とつながります。東京などの大都市にいなくても、世界全部がマーケットになります。

 たとえば、以前に経済産業省のセミナーで聞いた事例では、ある小さな企業がインターネットに英語で掲載していた情報が注目されて依頼が相次ぎ、最終的にはNASAがお得意さんになって、アメリカに支社をつくったという話がありました。

  また、ダンクソフトもゆかりが深い徳島県神山町では、地域づくりを担うNPO法人グリーンバレーが、ウェブサイトを英語化した時期が早かったことから、海外からの移住者が多いことで知られています。今も、政治的・経済的な事件やできごとが引き金になって、海外からのアクセスが激増する現象が起きることがあるそうです。

 要するに、地域にある小さな町や村から、直接世界につながれます。ウェブサイトは、その窓口です。ウェブにしかるべき情報をしっかり出しておくことで、外部から新しい需要が流れ込んでくるわけです。さらに、一方向に情報発信するウェブにとどまってはなりません。ウェブで、訪れる人たちとの「関係づくり」をしっかり心掛けることで、ビジネスは格段に飛躍します。

 たとえば、オートキャンプ場のケニーズ・ファミリー・ビレッジは、その典型例です。ダンクソフトがご支援して、ウェブサイトを大幅リニューアルしました。その結果、お客様との関係づくり、さらにはそれまで必ずしも十分でなかったプレスとの関係づくりにも成功しています。リニューアル後は、閲覧数・売上ともに120%増、メディア掲載も1.5倍と、劇的な伸びを実現しました。ふだんはクローズアップされにくい事業の根底に流れる理念やスタッフの思いを含め、熱のこもった文章や写真で丁寧に紹介し、共感を生むウェブサイトにできたことが、新しい需要を創り出しています。

事例: ケニーズ・ファミリー・ビレッジ

kfv.jpg

 「共感を生む」といっても、大事なのは、従来の「営業」がおちいりがちな、一方向で、しかも物売り的なアプローチとはまったく違う情報の出し方をすることです。対話型で進めること、そしてモノを売ろうとする発想を転換することです。そうすれば、インターネットを味方に、ビジネスが大きく動いていくことになります。このことをもっともっと知っていただきたいですね。

 最近、インターネット広告の費用がテレビのそれを抜いたというニュースもありました。こうしたタイミングを考えても、ウェブサイトを充実させ、意味ある情報を活発に掲載・更新して、共感いただいたお客様と出会い、今後よりよい関係づくりに励んでいただきたいと思います。インターネット社会における「ウェブサイト」とは、外部から需要が流れ込む窓なのです。

■「信頼」が最大の資本になる時代

  インターネット社会で大事になってくるのが、「信頼 (trust)」です。オープンでフラットであることはインターネットの大きな魅力です。すべての情報がインターネットに集約されていきます。

 ただ同時に、インターネットには情報が多すぎる上に、フェイク・ニュースの問題は根深いので、安心して「この情報がいい」と言い切れない場面が増えています。情報がオープンになればなるほど、見る側が深く知らなければなりませんし、違いを見分ける目、情報を見分ける目も必要です。

だからこそ、これからは、信頼のおける相互関係、そして、信頼できるコミュニティをつくっておかないと、ビジネスを進めることがますます難しい世の中になっていきます。いえ、もうなっていますよね。お互いに信頼できる者同士であれば、インターネットはビジネスを加速し、活性化してくれます。びっくりするようなスピードで物事が決まったりもします。「信頼がおける企業」になれるかどうかが大事です。信頼が得られれば、インターネットに上げた情報も信頼され、お客様とのよりよい関係が深まるメディアとして、ウェブはより有効で有益です。

 一方で、個人情報をはじめとする大事な情報をしっかり隠すことも大事です。というより、インターネットが当たり前になった社会だからこそ、「隠せないと使えない」のが実際です。ここについても、また次回以降で、お話したいと思います。

■信頼で結ばれた安心のコミュニティが活性化する未来

 デジタル・コミュニケーションは、この10年で驚くほど発達しました。まだまだもっと進化します。まずデバイスがスマホから時計型、眼鏡型、そしてホログラムへと変化し、コミュニケーションがもっと変わっていくでしょう。

 しかし、ツールがどう変わっても、基本にあるのは、やはり「相互信頼」です。相互信頼がないと情報のやり取りはきちんとできません。逆に相互信頼があると、コミュニケーションは質もスピードも格段に上がります。

 いちばんいいのは、安心して信頼できる人たちのコミュニティで、かつそこに「インターミディエイター」がいて、様々な参加者たちの「あいだ」を結び、コミュニティを構成する部分がそこここで活性化している状態です。企業はもっと、「コミュニティの活性化」を視野に入れたほうがいい。

  また、この考え方で地域を考えれば、それによって東京への一極集中が改善されて、地域に愛着をもって人々が残るようになり、地域社会にもっとイノベーションの可能性が生まれます。これまで手掛けたプロジェクトから、そういう期待感があります。

 ダンクソフトは、デジタル・テクノロジーを使って、人と人、情報と人、情報と情報などを媒介する「インターミディエイター」の役割を担ってきました。ぜひ「インターミディエイター」としてのダンクソフトを頼りにしていただき、皆さんと協力して、信頼で結ばれた安心できるコミュニティを、おおいに活性化する。そんな未来を描いています。それが、インターネット社会の豊かな未来だと思います。そう思っていただける方々と協働しながら、次の “はじまり”をつくっていきたいと思います。

dunksoft.jpg

東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[後編]

もくじ

■ 危機管理対策としてのテレワーク

■ 東京オリ・パラまでに始めておきたいクラウド化

■ スマホ時代の仕事のしかた

■ 3つの鍵:「ペーパーレス」・「キャッシュレス」・「サインレス」

■ データを守る「情報セキュリティ」のコツ

■「無料」の落とし穴にご用心

■ スムーズなテレワーク開始のために

■ 2020年から始める未来の物語


■ 危機管理としてのテレワーク

ここのところ、危機管理としてテレワークへのニーズが急速に高まり、「導入の方策やノウハウを具体的に知りたい」という声が多く聞かれるようになっています。ダンクソフトにも、在宅勤務体制へ急きょ切り替えたいがどうしたらいいか、というご相談が寄せられています。 

 こうしたリクエストにもお応えするため、今月は、先月の前編につづいて、「企業が東京オリンピック・パラリンピック前にやっておくべきデジタル対策」というタイトルでお届けします。ぜひ最後までお読みください。後編は、具体的な方策についてです。


■ 東京オリ・パラまでに始めておきたい「クラウド化」

 先月のコラムでは、大会時の交通混雑の緩和をめざすプロジェクト「TDM2020」について詳しく紹介しました。期間中、輸送や移動がどれだけ大変になるか、そうした影響や被害から企業活動を守る方法として、オフィスに行かなくても仕事ができる環境をつくるといいですよ、というお話もしました。

 また、新しい働き方プロジェクトの「テレワーク検定」もご案内しました。学習も検定テストも、オンラインで実施するEラーニング方式ですから、この学習と検定に参加することが、テレワークの実践的トライアルにもなっています。テレワークの基本を学ぶ入口として、経営者にもテレワーカーにもおすすめです。

 前回、「まず大事なのは、情報のクラウド化だ」ということを申し上げました。今月は、この「クラウド化」について、詳しくお話ししていきます。



■ スマホ時代の仕事のしかた

 皆さん、ご自身の日常生活では、インターネットをもう当たり前に使っていますよね。アドレス帳はスマホの中だし、そこに電話番号もメールアドレスも、所属企業や属性情報も入っている。モノを買うのも、ネットショップでワンクリック。電車に乗るのも、コンビニの支払いも、スマホをかざすだけで済みます。そうした情報をコンピュータやタブレットなど、他のデバイスと共有できるようにしている人も多いでしょう。

 昔はどこの家庭も電話は固定電話で、一家に一台。電話台に電話帳が置いてあって、それを開いて電話をかけていました。ですが、今はもうそんなことをしている人はほとんどいないのではないでしょうか。キャッシュレス決済も急速に普及しています。交通系ICカード、ポイントカードのアプリ化も進んで、お財布を持たずにスマホひとつで外出できるようになっています。普段あまり気にしないかもしれませんが、インターネットのおかげで、こういったことが可能になりました。

 オフィスでも、同じことなのです。「クラウド化」というと、何か特別な新しいことのように聞こえるかもしれませんが、普段の生活でしているのと同じことを、同じようにできるようにするだけです。ビジネスでも、インターネットありきにしよう、活用しようということです。もう、仕事も暮らしも、インターネットが前提なのです。



■ 3つの鍵:「ペーパーレス」・「キャッシュレス」・「サインレス」

 「クラウド化」の入口としては、やはりまず、「紙」ですね。紙がオフィスにあると、場所を変えて働くことはできません。とはいえ、既存の紙情報をいきなりすべてインターネット上にのせる(つまり、クラウド化する)のは、それなりに大変です。まずは、これから始めるもの、現在進行系で動いているものから、「ペーパーレス」にしていくと良いでしょう。

膨大な過去の書類を、最初からすべて片付けようとしなくてかまいません。いま動いているもの、これから先のものを、まずはデジタル化していく。共有していくメリットがわかってきて、それから残すもの・残さないものを選んでいくわけです。データの保存場所が、社内サーバーからインターネット上に移るだけなので、今までやっていたとおりに仕事ができますし、社外からもアクセスできるようになる。これがテレワーク導入の第一歩です。

 加えて、経費精算などのお金関連を「キャッシュレス」にすること。そして、契約書や承認プロセスなどのサインや押印を「サインレス」にする。この3つがそろうと、地面の上のオフィス空間に縛られない働き方ができるようになります。

 変わるとは、余裕をもって変わることです。ぜひ、急激にではなく、少しずつ、そして持続的に新しい試みを取りいれる、「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」の発想で行っていただけるとよいと思っています。



■ データを守る「情報セキュリティ」のコツ

 テレワークに踏み切れない理由として、セキュリティが不安だからという声がとても多いんです。もちろん、企業にとって、情報は資産です。情報資産を守る「情報セキュリティ」がますます重要になっています。

「データを守る」という意味で、もっとも重要なのは「バックアップ」です。適正な環境でネットに情報をあげておけば、自動的にバックアップを取ることができ、データの完全な損失という大きなリスクを遠ざけることができます。前にもお話ししましたが、当社で情報をクラウド化したとき、私は経営者として、とても安心しました。ああ、これで大丈夫だ、と。

 もちろん、セキュリティについての知識とスキルがあることが前提になります。個人情報を含む情報漏えい等に対してどれだけ堅牢にできるのかは、人のリテラシーをどう高めるのかにかかっています。

  たとえば、個人情報の流出に関しては、実は紙のほうが怖いということをご存知でしょうか。紙の名簿の場合、複写しても履歴が残らず、トレースできません。ですが、デジタルなら痕跡が残りますので、トレースすることができるのです。「紙は安全」というのは神話です。きちんとした知識があれば、企業の大切な情報資産をリスクから守ることができます。

 セキュリティに関するセミナーやオンライン学習で、きちんと知識を習得できれば、あとは日常での訓練あるのみです。ダンクソフトでは、セミナー・勉強会の開催や、ツールのご紹介・ご提供など、ご依頼先の状況に応じたセキュリティ対策のアドバイスとサポートをしています。最初の入口として、ウェブ上でできる簡単な自己診断なども便利です。


※ 参考情報:

 5分でできる!情報セキュリティ自社診断 (IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)

 https://www.ipa.go.jp/security/keihatsu/sme/guideline/5minutes.html

 

■ 「無料」の落とし穴にご用心

 インターネットには多くの無料ツールがあります。メール、クラウド、チャット、写真共有など、皆さんの中にも利用している人は多いことでしょう。ですが、無料サービスにはくれぐれも注意してください。

 「ただほど高いものはない」とはよく言ったもので、サービス提供者は必ず何らかのメリットを得ています。メール内容やファイル情報から、個人情報、嗜好情報、写真、キーワードなど、自分自身の情報が取られたり、統計やシステム学習に利用されたりしています。サービスによっては、選挙活動や彼らのビジネスのために商用利用されています。

 要するに、いろいろな無料ツールを使っていると、大事なデータを配っていることにもなるわけです。自分のデータだけでなく、お客様情報を無断で配っていることになります。ダンクソフトは、そういう不安のないサービスを選定して、安心な環境をお客様に提供しています。



■ スムーズなテレワーク開始のために

 テレワークをはじめるにあたっては、やはりわからないことがたくさん出てくるものです。ダンクソフトの導入支援では、個別に担当者がついて、セットアップから、ツール利用方法のワークショップやサポートまで行います。

 お客様の現状を把握し、コミュニケーション・ツールの活用など「実はすでにできている」ところは、そのまま活かしていただきます。オンラインも活用して社内ワークショップを行い、円滑な導入・定着に向けて丁寧にサポートしていきます。パートナー社労士による助成金活用や社内規程作成のサポートも行います。

 

※ 参考情報:

 

  • テレワーク検定 ~テレワーク導入の準備・導入後に効率よく効果的なテレワークのために~

    https://www.wnw-academy.com/ 

 

■ 2020年から始める未来の物語 

 こうして、ビジネスでも、インターネットとデジタル・テクノロジーを組み合わせることで、働き方が変わり、企業が変わり、人の可能性が引き出されていくことが、ダンクソフトのめざす未来です。 

 もちろん、デジタル・テクノロジーは、不測の事態、緊急事態や危機的状況下での「BCP(事業継続計画)」に有益有用であること、「コストダウン効果」があることは言うまでもありません。

 テレワークなら場所を問わず働けます。首都圏だけに人が集まる必要はなくなります。改めて強調するなら、デジタルによって「従来のオフィスから解放される」のです。今回の東京オリンピック・パラリンピックの開催を、新しい働き方へのテイクオフを進める機会と捉えて、働き方もマインドセットも、アップデートしていく企業が増えてほしいと願っています。

 最後にひとこと。5G(第5世代移動通信システム)になると、スマホも遅かれ早かれウェアラブルになっていくでしょう。それだけではありません。デジタルのスピードは40年で1億倍になったと言われています。これがあと20年たつと、さらに数10万倍に上がります。そうなると、人間のポテンシャルに限度がない以上、SF世界のように瞬間移動のようなことさえ夢物語ではなくなっていくかもしれません。こうした技術の進歩は、機械をあつかう難しさをなくしていき、誰もが“デジタル上手”になることにつながります。 

 目の前の困りごとからでも、まずはご相談ください。この2020年を、一緒にはじまりの年にしていきましょう。


◆ あわせて読みたい関連コラム

  • 「 デジタル・テクノロジー 」を有効に活かすには、「 デジタル・テクノロジー 」だけにとらわれてはならない

https://www.dunksoft.com/message/2019/2/4/-

  • ダンクソフトの「インクリメンタル・イノベーション」が進む理由

https://www.dunksoft.com/message/2019/4/1

 

  • テレワーク ──2008年から始まった取り組み

https://www.dunksoft.com/message/2019/8/1/-2008

 

  • 事例:「ペーパーレス化」で 6期連続の赤字からV字回復

https://www.dunksoft.com/message/2019/7/22/-6v 

東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[前編]

もくじ

■「人」の移動を減らして、大会期間中の企業活動をスムーズに

■ 東京オリンピック・パラリンピックが企業活動に及ぼす影響とは?

■ 道路輸送、鉄道の混雑はどうなる?

■ 移動する「物資」と「人」、すべてに影響する

■ 結果、どんな“困りごと”が起こるのか?

■ 離れた場所でも油断は禁物

■「出勤しなくてすむ」ように、デジタルの力を活かす

■ 情報の「クラウド化」で、場所から解放される対策を

■ Eラーニング形式の「テレワーク検定」もおすすめ

■ 経営者こそテレワークでクリエイティビティの向上を

■ [参考データ]東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通状況とその影響

■「人」の移動を減らして、大会期間中の企業活動をスムーズに

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会もいよいよ目前です。これほど大きな祭典となると、企業活動への影響は避けられません。そこで、年頭所感に続き、今月は、「企業が東京オリンピック・パラリンピック前にやっておくべきデジタル対策」についてお話しします。

というのも、ダンクソフトでは12年前の2008年から、こうした状況に耐えうる環境を徐々に整えてきました。ですので、特に、情報が届いていない可能性が高い中小企業の経営者のみなさんに、ぜひ私たちの経験と知見を、共有したいと思います。

 みなさん、ご存知でしょうか。大会期間中、首都圏の道路・鉄道は、車両・乗客の増加で大変なことになります。そうならないよう、大会時の交通混雑緩和をめざすプロジェクト「TDM2020」が取り組まれています。開催1年前の2019年7月から、「TDMハンドブック」がウェブ上で公開されるなど、情報提供や対策支援が行われています。

 「TDM」とは、 Transportation Demand Management の略で、交通需要マネジメントのこと。移動しなくてもすむものは移動を控え、スムーズに大会と企業活動を両立しましょうというイニシアチブ(積極的取組み)です。ダンクソフトでは、2008年から実施していることですが、都心のオフィスに出勤しなくても、仕事はできます。できるだけ「人」が移動しなくてすむよう、早めに対策をしておきたいですね。まだ、間に合います。

 

■東京オリンピック・パラリンピックが企業活動に及ぼす影響とは?

 ですが、だいじな情報がまだまだ行き渡っていないと実感しています。実際、どういう動きが始まっているか知らない人も多い。とくに中小企業の経営者のみなさんには、大企業や、競技場や選手村近辺の企業にくらべ、情報が届きにくく、調べても全体像がわかりにくい、といったことも起きているかもしれません。

 そこで今回と次回の2回にわけて、大会時、いったい何が起こるのか? どんな影響がでるのか? どんな障害の可能性があるのか? をわかりやすくまとめました。どんな対策をすればよいのかも、もちろんお話しします。

 「TDM2020」については、ウェブサイトが充実しています。詳細データやシミュレーション情報から対策ハンドブックまで、公式サイトを見ればひととおりのことがわかるようになっています。ただ、詳しいかわりに情報量がとても多いので、さっと要点をおさえたい、という人のために、ざっくりポイントをまとめますので、参考にしてください。

 

■道路輸送、鉄道の混雑はどうなる?

 まずは道路です。人の移動はもちろん、物流に大きな影響が出るので、企業活動にとっては死活問題です。「時間が読めない」「納品されない」「出荷できない」。生鮮食品や生活用品の供給に影響すれば、日常生活にも支障をきたしかねません。

  • 選手やメディア関係者が1日5~6万台の規模で車を利用

  • 首都高速道路の日中料金が上乗せに。夜間ETCは割引(2019年10月16日 報道発表)

traffic.jpg

鉄道ももちろん混みます。観客は鉄道を利用しますので、通勤通学ラッシュがさらに混むことになります。 

  • のべ約1,000万人の観客は鉄道を利用

  • 首都圏の鉄道利用者は、1日最大約80万人増加する

 

コラムの最後に、詳しいまとめをつけておきますので、参考にしてください。

station.jpg

 ■移動する「物資」と「人」、すべてに影響する

 物流への影響は、モノのデリバリーを直撃します。「届かない」「送れない」という状況は、あらゆるモノに起こってくるでしょう。

 

  • 自社商品の出荷・納品

  • オフィス備品

  • パンフレットやチラシ等の販促印刷物

  • トイレットペーパー等の日用品

  • 食料・飲料 

 次に「人」です。考えないといけないのはスタッフだけではありません。クライアント、サプライヤー、取引先関係者、運送会社、清掃・ゴミ回収・その他、物品搬出入をともなう業務委託先など、企業活動にはさまざまな人たちが関わっています。夏ですし、事業ゴミの回収に来てくれないとか、回数が減るとか、困りますよね。

 

■結果、どんな“困りごと”が起こるのか?

 これまでのまとめになりますが、こんなことが起こりうるわけです。

 [企業活動で起こりうるリスク]

  • 通勤できない、遅れる

  • 会議・打合せへの移動時間がよめない、行けない、間に合わない、帰ってこられない

  • 来るはずのゲスト(取引先、サプライヤー)が来社できない、遅れる

  • ランチ外食時が混雑、食べられない、間に合わない

  • 大人数が集まるイベントやセミナーが開催できない、開催しても人がこない

  • 機材等の搬入・搬出ができない

  • 荷物が出荷できない・受け取れない

  • 物流業が引き受けてくれない

  • 周辺コンビニにモノが不足、レジが混雑して、必要なものが買えない

  • スーパー、ドラッグストア、物販全般で、供給不安

  • コピー用紙が切れても、納品が間に合わない

  • パンフレットや資料が足りなくなる

  • ゴミ回収がされない、遅れる

  • 清掃業者が来社できない

■離れた場所でも油断は禁物

 また、「うちは場所が離れているから」と思っていても、移動輸送ルートの関係で、思いがけない影響を受ける可能性もあります。自社だけでなく、連携先、関係先の状況にも注意をしないといけません。 

 もちろん、これらは全てあくまでも「可能性」で、そうならないように、国も都も関係者も努力をしています。「最悪の事態」を想定して備えることで、未然に防いだり、困りごとを少なくしたりできる。だから今のうちに知っていただきたいし、アクションを起こしていただければと思うのです。BCP(事業継続計画)の実践ですね。

 それでは次に、「では、どう対策すればいいのか?」です。

 

■「出勤しなくてすむ」ように、デジタルの力を活かす

 やはりなんといっても、首都圏にいる人の数をへらすのが望ましい対応です。時差通勤も言われていますが、都心のオフィスが稼働していると、結局、上記のような問題は、軽減はできたとしても、なくなるわけではありません。

 スタッフが都心のオフィスに出勤しなくていいようにできればベストです。「夏休みを取ればいい」「休業すればいい」という意見もあり、大企業のなかには実際に期間中の休業を予定している会社もありますが……。オリンピック17日間、パラリンピック13日間、合計30日。まるまる休むというのは、多くの企業と経営者にとって、あまり現実的ではありません。

 それならば、「出勤しなくてすむ」ようにすればよいのです。デジタルの力を活かせば、出勤しなくても仕事はできます。在宅勤務、サテライト・オフィス、リモート・オフィス……そう、テレワークです。

 ダンクソフトで実施した徳島県神山町での「テレワーク実証実験」の様子(2011年)

telework2.jpg

■情報の「クラウド化」で、場所から解放される対策を

 では、どんな環境を整えればテレワークが可能になるのかというと、まず大事なのは、情報の「クラウド化」です。 

 データをクラウド上にあげる。それも、エコ・ペーパーレスの考え方をとりいれて、紙を減らし、書類を整理したうえで、クラウド化することが大切です。また、単純にデータをデジタル化してクラウドにあげればいいというわけではないのです。ローカル・サーバーにおいたものを、そのままクラウドにあげつづけていくと、どんどんデータが膨大になって、かえって費用がかさんでしまいます。

 そうならないように、データの扱い方、扱うための考え方を知る必要があります。そうすると、データを扱うときに、ラクだし、習慣化することができます。さらに、人間が手を動かす部分のうち、可能なところは自動化してしまうといいですね。 

disposal.jpg
case_tokushima.png

徳島合同証券様、デスクまわりのデータ整理前の様子

事例:「ペーパーレス化」で 6期連続の赤字からV字回復

 

■  Eラーニング形式の「テレワーク検定」もおすすめ

 中小企業などで、まだクラウドを取り入れて上手に情報を活用できていない企業さんの中には、「パソコンやデジタルに弱くて」「クラウド化にも挑戦しようとしたけど、どうもよくわからない…」とおっしゃる方もおられるかもしれません。そんな方々こそ、東京2020大会を機会に、私たちダンクソフトと一緒に取り組んでみていただきたいと思います。 

 実際に体験していただきながら、使い方やセキュリティ対策など、事例をまじえて丁寧に進めていきます。お客様の実際の環境に応じて、導入するテクノロジーを決め、最善な環境をつくっていただけるので安心です。それに、技術革新が進んだ今、デジタル操作は格段にやさしくなっています。数年前に苦労したことが、今は気にならなくなっているかもしれません。 

 また、一般社団法人エコ・ペーパーレス協議会が実施している「テレワーク検定」も、入口としておすすめです。Eラーニング形式で、専用教材やドリルをダウンロードして学習するので、場所を問いません。検定テストもオンラインです。テレワークの基本を学べますので、講座参加ができない忙しい経営者にも、テレワーカーにも、おすすめです。

 一般社団法人エコ・ペーパーレス協議会 テレワーク検定

 https://www.wnw-academy.com/

 

■経営者こそ、テレワークで「クリエイティビティの向上」を

 私自身の体験でいうと、自社のクラウド化をして大きかったことのひとつが、「安心感」を得られたことです。これで情報が失われることはない、という心強さです。紙やローカル・サーバーの場合、機器のトラブル、災害、事故、人為ミスなど、さまざまな理由で、データが永遠に失われるおそれがあります。経営者として会社に対する責任がありますので、クラウドになってとても安心しました。

 もうひとつが、「クリエイティビティの向上」が見込めることです。テレワーク環境が整うと、経営者自身も、どこにいても仕事ができますから、広い世界を見て、知って、いろんな人と出会うチャンスが増えます。 

 変化の早い時代です。経営者こそテレワークをして、会社経営のクリエイティビティを上げていかないと、時代についていかれなくなりかねません。デジタルをうまく使えるようになると、コスト削減や時間の節約が可能になります。削減できた費用や時間を使って、クリエイティブな働き方の継続、新しいビジネスでのイノベーション、BCP対策など、会社内外の活性化ができるようになります。本当は、それこそが大事です。私たちダンクソフトは、そうした「デジタル活用の先にある、リ・クリエーション(再創造)」にむけて、お客様とご一緒にプロセスを推進しています。どうぞお気軽にご相談ください。 

 次回は、クラウド化からテレワーク導入まで、必要な準備やツール、注意点などについて、具体的にわかりやすくお話ししていきます。

[参考データ]

■東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通状況と影響

  • 選手やメディア関係者が1日5~6万台の規模で車を利用

    主に選手村や宿泊施設と各競技会場の間を1日に複数回行き来することになり、1日約5~6万台に相当する交通量増加が見込まれています。また、大会関係施設周辺では、専用レーンや優先道路の設置も予定されています。

  • 首都高速道路の日中料金が上乗せに。夜間ETCは割引(2019年10月16日 報道発表)

    ETC車両は、朝6時から22時まで、マイカー等が都内区間で通常料金に1,000円上乗せに。0時から4時の夜間は、全車種、首都高全線で5割引になります。

    現金車両は、普通車以下の全ての車両が首都高全線で通常料金に1,000円上乗せ(朝6時から22時まで)。夜間割引はありません。

    実施期間は、オリンピック期間の令和2年7月20日(月)から8月10日(月祝)までと、パラリンピック期間の8月25日(火)から9月6日(日)まで。 

 

東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針

(2019年10月16日  オリンピック・パラリンピック準備局、東京都都市整備局発表)

 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/10/16/17.html

  

■鉄道の混雑はどのくらい?

  • のべ約1,000万人の観客は鉄道を利用

    オリンピックで約780万人、パラリンピックで約230万人。のべ約1,000万人の観客の来訪が見込まれています。ラグビーワールドカップ2019日本大会がのべ約180万人ですから、規模の大きさが別格です。

  • 首都圏の鉄道利用者は、1日最大約80万人増加する

    日によって変動はあるものの、1日最大約80万人の観客が鉄道を利用すると見込まれています。しかも、混む時間が通勤通学時ラッシュ帯に重なります。オーバーツーリズムに悩む京都では、バスが観光客でいっぱいで市民が乗れなくて困っているそうです。東京2020大会時の首都圏でも、列車が来ても乗れない、遅延する、といったことが起こりえます。

事例:楽しさの「背景」までも伝え共感を生むWebサイトで、閲覧数も売上も120%増

お客様:ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場

(鳥居観光株式会社)

 ケニーズ・ファミリー・ビレッジは2018年秋、Webサイトの大幅なリニューアルを決意した。事業の根底に流れる理念や、そこに働くスタッフの思い入れなどをサイト上でていねいに伝えることで、閲覧数や取材申し込み件数が大きく伸びたという。今回はリニューアルの経緯や効果について、お話を伺った。

鳥居観光株式会社 ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場統括マネージャー 川口泰斗氏

鳥居観光株式会社 ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場

統括マネージャー 川口泰斗氏

 

多忙さを理由に、躊躇したWebサイト・リニューアル 

 都心から1時間ほどとアクセスが良い埼玉県飯能市にあるケニーズ・ファミリー・ビレッジ(以下、ケニーズ)は、ファミリー向けの使いやすい施設や、四季折々のイベントが人気を集めるキャンプ場だ。予約方法は電話とオンラインで、9割以上がオンライン予約だという。

 そんな同社が2019年秋、Webサイトを大幅にリニューアルした。スマートフォンでも快適に閲覧できるようにすることと、度重なるアップデートを繰り返すうちにつぎはぎ状態になってしまったサイトを整理することが目標だった。

「実は2017年ごろからサイト刷新を考えていた」とマネージャーの川口泰斗氏は打ち明ける。だが、ちょうど忙しい時期でもあったため、「これは結構大変なことになるぞ」と身構えてしまい、なかなか踏み込めなかったという。

 本腰を入れたのは、それから1年ほど経った2018年秋。前回のリニューアル(2011年)以来、継続してWebサイトを手掛けてきたダンクソフトからの後押しがあり、全面リニューアルに踏み切った。「それまでのサイトには載っていないような新しい価値をお届けしたいとは考えていましたが、それを具体的にどこにどう配置するか、今までのサイトをどのように統合するかがイメージできていませんでした」と川口氏は振り返る。

DSC04611_R-2_3名.jpg

■   思いの丈を、余すところなく言語化

前回のリニューアル以降もさまざまなやりとりを重ねてきた実績から、ケニーズが伝えたいことや雰囲気はダンクソフト側にも共通認識として蓄積されていた。そこで担当者が大まかなフレームワークを作成し提案したところ、川口氏のイメージと一致したという。「ずっと私たちを見ていただいていたので、事業の方向性や顧客層などを十分理解された上での提案でした。デザインに関しても、あまり大きな変更は発生しませんでした」

 フレームワークのフォーマットをダンクソフトから受け取った川口氏は、頭の中にあるものを余すところなく書き出していった。だが、「思いの丈をすべて吐き出す作業に、結構時間がかかってしまって」と苦笑する。本当は夏前にリニューアルを完了させる予定が、10月上旬にまでずれ込んでしまった。「きちんと的確に届けたいという気持ちが強かったので、ここにはだいぶ時間をかけましたね」

 写真も、そこから伝わる情報量が多いため重要視して、選定に膨大な時間を割いた。夢の中にまで出てくるほどの情熱を注いだ川口氏は完全燃焼し、「終わったら、すっからかんになってしまった」と笑う。

■ケニーズらしさの根底にある、自然や環境への想い

  川口氏の熱がこもった文章や写真をもとに、ダンクソフトはそれらの分類方法や文脈の流れ、統合の仕方について助言をしつつ、組み立てていった。

 ネット上にはウェブ・デザインに関するさまざまな情報があふれている。研究熱心な川口氏がこれらを目にし、斬新な事例に目を奪われることもあったという。だが、ケニーズに合うデザインは何か、なぜそう考えるのかを、ダンクソフトは一つひとつ丁寧に理由を述べた。「理由を、納得がいくように語っていただけたので、相談しながら決めていくことができて安心感がありました」。もし自分たちだけで考えていたならば、まだリニューアルできていない――こう川口氏は断言する。

31pool01-01_R-2_夏.jpg

 今回のリニューアルで最も重視したのは、ケニーズの事業が提供する「楽しさ」の根底に流れる理念も的確に伝えることだ。キャンプを楽しみにいらっしゃるお客様はもちろんのこと、取引先や、ここで働きたいと考える人たちも視野に入れ、企業理念や事業に対する考え方、社会への貢献、スタッフの思い入れといった情報も充実させた。さまざまな方向で、信頼関係を構築する必要性を感じていたためである。

 特に、自然の中で活動をすることが人間形成にどのような影響を与えるのか、自然を大事にする気持ちや、豊かな社会づくりのためにどのような効果があるのかという部分は、しっかりと表現したかった。もともと他業界でサラリーマンだったという川口氏が、当時と今とのギャップを日々実感していることや、来てくださるお客様の顔を見ていてその効果を強く感じることも理由だ。「良いことを事業にしているという気持ちで、スタッフは皆働いています。このことを伝えなくてはならないと思いました」

08_R_子ども.jpg

■魅力を的確に伝えるサイトで、メディア露出が1.5倍に

 Webサイト・リニューアルからまだ2カ月ほどしか経っていない(2019年12月現在)が、効果は既にさまざまな部分に出ている。

  まず、今年9~12月の閲覧数は120%増(昨年同時期比)、そのうち新規の閲覧数は130%増(同)であった。また10月の台風で甚大な被害を受け、キャンプサイトの一部閉鎖を余儀なくされたが、それでも売上が120%増(同)と、結果が数字に表れた。

 イメージのミスマッチによるクレームも減った。例えばケニーズは都心からの利便性が良い反面、手つかずの広大な自然をイメージしてきた人からは「自然感が足りない」と言われることもあった。そこで里山らしさを感じる写真を使い、「人と自然が調和した、里山の環境下にあります」という文言を添えて、ケニーズとしての個性を打ち出した。結果として、イメージのミスマッチが発生しにくくなった。営業時間や予約方法、設備やレンタルについても、問い合わせがありそうな内容はあらかじめQ&Aサイトに詳しく記しているため、「サービスを理解していただいた上で、予約をしていただけるようになった」という。

リニューアル後に強く実感するのは、メディアからの新たな取材依頼が増えたことだ。キャンプ場の特徴がウェブからわかりやすいことが功を奏し、取材を実施する価値があるとメディアが判断しやすいのだろう。毎日1件は問い合わせが来るようになっている。その上、口頭で説明できなかった詳細な情報も、Webサイトで確認し、追加して掲載されるようになった。「メディア露出は、1.5倍に増えたというのが、私の体感です」

 アウトドア・ショップの店頭で配布しているケニーズのパンフレットや、メディアが取材した記事を見たお客様は、最終的にケニーズのWebサイトを訪れる。関心を持ってもらい、その関心をアクションにつなげるため、Webサイトは欠かせない場だ。

 2010年から2018年の間にWebサイトの閲覧数も、売上の伸長率も、どちらも約6倍に伸長した。「Webサイトはお客様との接点の最前線であり、情報が集約されている集積地。これが無くては事業ができない、成長ができないくらいの、とても大切なものです」と強調する。

IMG_4700_R_夜.jpg


■さらなる成長を、温かみのある「仲間」と共に

  そもそも、Webサイトを制作できる会社が非常に数多く存在する中で、2011年から一貫してダンクソフトに依頼し続けている理由は何だろうか。

  最初のきっかけは、社長同士のつながりというご縁だった。そこからWebサイトをリニューアルし、閲覧数が上がり、会社が成長していく中で、サービスが増え、それに伴いコンテンツも増えていった。相談を重ねながら更新していく中で、信頼と実績が少しずつ積み重なっていったのだという。だがダンクソフトの最大の特徴は、「デジタルの会社なのに、心がとても温かいこと」だと川口氏は語る。

「こちらの思いに、とても寄り添ってくれるのです。具体的な計画や手法が分からないまま、『こうしたい!』という望みだけを伝えても、いつも的確な提案が返ってきました。その繰り返しが信頼になり、ずっとお付き合いできる安心感につながっています」

 さらに「誤解を恐れずに言えば、同僚や仲間のよう」とも表現する。「良いパートナーであり、良い相談相手でもある。でもビジネス・パートナーというよりは、同じ目的を共有して一緒に働く、同じ船に乗ったクルーのイメージですね」

 川口氏はダンクソフトに、今後もコミュニケーションのインターフェースを整えるサポートを頼みたいと考えている。ケニーズでは自然と触れ合える貴重な場として、2015年から古民家を活用した事業を開始した。今後は、子どもたちが環境について学べる機会も増やしていきたいという。そのためにはNGOや地域に向けても情報を共有し、共感しあえる「仲間」を募っていく必要がある。

 Webサイト以外の部分でも、ダンクソフトに期待を寄せる。「ビジネスを拡張するにあたり、さまざまな部分で物足りなさを感じるようになってきました。今までの方法では達成し得ないので、テレワークや、新しい仕組みづくりについてもサポートいただきながら、一緒に成長できれば」と、川口氏は意気込みを熱く語った。

IMG_20191206_164252_川口様2.jpg

■業務改善ソリューション

WEBサイトの制作・構築、運用コンサルティング

ケニーズ・ファミリー・ビレッジ / オートキャンプ場

(鳥居観光株式会社)

人と自然の架け橋になることを目指し、都心からわずか1時間の里山でファミリー向けのオートキャンプ場を運営しています。2015年には、古民家をリノベーションしたキャンプやバーベキュー場もオープンしました。私たちは、安全・清潔であることを第一に施設を運営し、お客様の視点を忘れず、プロ集団として、人と自然をつなぐ心地よいアウトドア空間を提供していきます。

http://www.kfv.co.jp/








 

2020年 年頭所感

新年あけましておめでとうございます。

 昨年、ダンクソフトは神田鍛冶町3丁目の新オフィスに移転し、心機一転、新たなチャレンジを続けてきました。新オフィスは、明るくオープンな空間をもつ新築物件です。メンバーどうしの対話も広がり、多様な意見が交換されて、チーム力が上がってきている手応えがあります。新規プロジェクト、新規事業、新規クライアントをはじめ、多様な新しい動きが生まれた年でした。デジタルもアナログも生かした新しい“出会い”と“結び目”がイノベーションの力になることを、ますます実感しています。 

 2020年は、いよいよオリンピック・パラリンピックです。1964年10月10日。当時は小学校3年生でしたが、大雨がやんで、広がった青空に、ブルーインパルスが五輪を描いたことを、覚えています。この夏、東京には国内外から1000万人もの人が押し寄せます。さまざまな障害も予想されます。都心のすべての企業、団体、個人が、テレワークをフル活用して、通勤せずに働ける環境を整備しなければなりません。ホスト国の一員として、できるだけのことをしたい。ダンクソフトの知見や経験が生かせるタイミングが来ています。

もくじ

■人間・自然・機械が協働する社会へ

■デジタル領域の 「インターミディエイター」 として

■人類初体験の技術進歩のなかで

■「デジタル・デバイドの解消」、そして 「コミュニティの活性化」 へ

■お客様とともに、デジタルで「実績」をつくる年に 

■人間・自然・機械が協働する社会へ

 2020年は、オリンピック・パラリンピックに向けて、地球規模で変化が加速していくでしょう。なかでも私が注目しているのは、パラリンピックです。ツールが進化し、人のポテンシャルに新たな用具やチームの力が合わさって、障がい者アスリートの記録が健常者の記録を超えていくときが来ました。それもおそらく圧倒的に超えていくでしょう。 

 パラリンピックは、テクノロジーと人間が協働することで、何より、人間のポテンシャルのすばらしさを再確認させてくれます。またそれによって、多様な違いを認めあい、吸収し、助けあえる素地が生み出されます。さまざまな課題解決を、誰もが参加しておこなっていく。そんな時代の先駆けとなる、変わり目の年になる。そういう意味では、人びとの意識を変えていく年に、きっとなるだろうという期待があります。

■デジタル領域の 「インターミディエイター」として

 ご存知でしょうか? これからのビジネスの新潮流として重要なのは、「人間・自然・機械の協働関係」を重視することです。ここでいう「機械」とは、人工知能や人工生命、AR、VR、量子コンピューティングなども含まれます。人間が自然や機械と対立するのではなく、人間と自然と機械がより相互に協働していく関係が大事になります。そういう大きなスコープのなかで、私たちはビジネスを推進していくことが求められています。

 ダンクソフトは従来から、人間と情報と技術のあいだに立つ「インターミディエイター」として、デジタル・テクノロジーで日々の業務にインクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)をもたらす事業を展開してきました。そして、お客様や社会が、デジタルを取り入れて、あたらしい“はじまり”をつくることができるよう、「Digital Re-Creation」を推進しています。

 2020年は、さらに、「人間・自然・機械の協働関係」というより大きなスコープのなかでも、あいだを取り持ち、つねに大小さまざまなイノベーションをおこし続ける「インターミディエイター」の役割を、発揮していきたいと考えています。

■人類初体験の技術進歩のなかで

 さきほどのパラリンピックの進歩にも通じますが、デジタル・テクノロジーはこの40年で、約1億倍に進化しました。パソコンなどのデジタル機器は、最新鋭モデルも2か月後には旧型になっているというくらいのスピードで進化しています。こんなことは他の機械ではありえません。自動車やテレビを考えてもそうですが、他の機械では起こらないことがデジタルには起こっている。技術の進歩のスピードが人類初体験なのです。

 「そうはいっても、あまりの速さについていけないよ」、という状況にいる方こそ、2020年は、私たちダンクソフトと一緒に、この変化の波に乗っていただきたいと思っています。というのも、逆に高速な進歩のおかげで、ちょっと出遅れた人がかえって簡単に追いつけたりもするのです。最初はむずかしい操作ができないと扱えなかったようなものが、インターフェースがどんどんやさしくなって、子どもでも誰でも使えるようになっています。もはやデバイス自体が収れんされて、インターネットに吸収されているのだと思います。

■「デジタル・デバイドの解消」、そして 「コミュニティの活性化」 へ

 技術や知識のハードルがなくなり、デジタルを上手に使えるようになると、仕事も暮らしも、らくに楽しくなっていきます。「デジタル・デバイド(情報格差)」 が解消された状態では、人のポテンシャルがどんどん引き出されるようになります。人間のポテンシャルは素晴らしい。こういう状態を、企業や団体がつくるご支援を、私たちダンクソフトは30年近く、行ってきました。

 しかし、デジタルの効果は、それだけにとどまりません。たとえばペーパーレス化のプロジェクトを推進する場合、まずデジタルが使えるようになり、効率アップや経費削減という成果が得られます。そして、その先には、チーム・ビルディングに結びついたり、BCP(事業継続計画)に有効だったりと、より広く効果の見えやすい実績が出てきます。自社チーム内、あるいは、チームとチームの連携・他社との連携プロジェクトのなかで、また地域社会のなかで、「コミュニティを活性化」するために、デジタルが果たす役割は大きいのです。

■お客様とともに、デジタルで 「実績」 をつくる年に

 21世紀の情報処理技術の進化は、計算ではなく、通信、つまり「コミュニケーション」に見られます。インターネットを中心に、SNS、スマホ、タブレット、動画サイトと、人と人のつながりを補完し、刺激するサービスが劇的に展開しています。これらは、人びとの生活、なかでも特に「コミュニケーション」を一変させてきました。

  ダンクソフトが取り組む“デジタル”は、「コミュニケーション」に寄与するものです。私たちがご提供するのは、お客様が、その先にいるお客様とのコミュニケーションを増やし、関係を深めるためのサービスです。こうした、「カスタマー・インティマシー(顧客親密性)」向上のためには、どうしていけばいいのか。引き続き、お客様とともに考え、形にしていきたいと思います。例えば、関係づくりの観点から、今の多くのウェブには「物語」が足りないと感じています。これからのウェブには、ますます物語が必要です。若い方や女性たちが積極的に物語を語り、参加するようになると、企業・団体にとっては、お客様や地域社会との親密度も変わってくるでしょう。

 今年はオリンピック・パラリンピックもあり、日々、新たなチャレンジをしていく1年になります。新しいビジネス・モデルやサービスも展開します。さらに多様な皆さんとの相互信頼を豊かに深め、多くの実績をともにつくる2020年にしていきます。皆さんとの対話の機会を、今年も楽しみにしています。

 本年が日本と世界の皆さんにとって、さらなる 「Re-Creation」 の一年となることを祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

 

株式会社ダンクソフト 

代表取締役 星野 晃一郎