もくじ
■ 知らないうちに、誰かに自分の情報を利用されている
■ 経営者たちが安心してビジネスの話ができる場が必要だ
■ なぜ、アプリにしないのか?
■ インターネット本来の「オープン」、かつ「安全」を兼ね備える
■ ポスト・コロナ社会は、名刺交換もオンラインで
■ 一人十色の時代です
■ 知らないうちに、誰かに自分の情報を利用されている
今回は、「インターネットにあらゆるものをのせていく」うえで欠かせない、セキュリティとプライバシーについてです。
インターネットは便利です。ぜひ、インターネットにあらゆるものをのせていくことで、ビジネスを展開していただきたいと思います。ですが、一方で、自分の情報が人のビジネスに都合よく利用されるリスクが常にあります。
「フィルターバブル」ということを聞いたことがありますか。たとえば、検索エンジンやSNSは、ユーザーの検索履歴や行動パタンなどを学習して、その人の好みの情報ばかりが、作為的に表示されるようにできています。結果、自分の興味・関心のある知りたい情報だけに囲まれます。
この状態を、「フィルターバブル」といいます。泡の中に閉じ込められたような、狭い世界。インターネット事業者のルールで情報がコントロールされている状態です。ここでは、知らないうちに自分の情報が誰かに利用されていることもあります。たとえば、特に無料のツールでは、広告のターゲットとなったり、解析の対象になったりしています。
データが使われているということについては、いろいろニュースでも取り上げられています。2016年の米大統領選では、フェイスブックで、5000万人の個人情報が選挙のために不正利用されていた疑惑が報道されました。最近では、オンライン会議ツールのZoom(ズーム)の脆弱性問題や、動画配信アプリ TikTok(ティック・トック)で、個人情報リスクが指摘され、トランプ米大統領が利用禁止を表明したニュースが世界を騒がせたりもしています。
■ 経営者たちが、安心してビジネスの話ができる場が必要だ
そこで、ダンクソフトは、インターネット上の安心・安全な交流の場をめざして、2015年に「ダンクソフト・バザールバザール」を開発しました。人をつなぎ、対話と創発がうまれる場をつくるクラウド・サービスです。
もともとは、私が理事をつとめる東京ニュービジネス協議会のために開発したものです。 インターネット上で、会に参加する経営者たちが、安心してビジネスの話をしたいとき、フェイスブックやDropbox、Google Driveでは、やはり困るわけです。企業と企業が出会う場は機密情報のかたまりですから、それを守る必要があります。
日本全国にいる参加企業の経営者たちが、インターネット上でも会員交流と相互連携をはかろうと、「ダンクソフト・バザールバザール」が誕生しました。組織をまたいだマッチングも行えます。事務局の業務を効率化する機能が備えてありますから、バザールを導入後、団体運営の効率化やコスト削減にも、劇的に寄与する効果が証明されました。これを、同じように会員組織を運営する多くの方のためのクラウド・サービスにし、広く使っていただこうと、製品化しました。
東京ニュービジネス協議会で行われるイベントの様子。こうした集まりや出会いを、インターネット上でできるようにしようと「バザールバザール」を開発
■ なぜ、アプリにしないのか?
「ダンクソフト・バザールバザール」は、ブラウザさえあれば簡単に閲覧できるコミュニケーション・ツールです。この他の製品・サービスもそうなのですが、ダンクソフトは、製品・サービスをアプリのかたちでは開発していません。
本来、インターネットは、もっとオープンだし、フラットで、フェアな世界であるはずです。しかし、今のインターネットは実際にはフェアではありません。そのひとつに、アプリケーション・ソフトの存在があります。
たとえば、スマホのアプリを開発してリリースしようとすると、AppleやGoogleが運営するアプリストアの認証が必要です。売り上げの30%が手数料となることが規約で定められています。しかも認証基準は明確でなく、認証されない理由が知らされなかったり、それまで認証されていたものが突然排除されたりもします。プラットフォーマーが自分たちに不利なアプリは認証しないという方針は明らかでしょう。今年8月には、アプリ外での直接課金システムを導入した人気ゲームが、AppleとGoogleによってアプリストアから削除されるという出来事があり、業界を騒がせました。
GAFA*が圧倒的な力をもちすぎ、インターネットばかりか、社会を自分たちが行きたい方に引っ張っていこうとしている今の状況です。これを、インターネットの本来であるオープンでフラットでフェアな社会に引き戻してこないと、危なっかしいという思いが強くあります。 (*GAFA = Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとった4社を現す造語)
ダンクソフトがブラウザで使えるものを開発するのは、もっとオープンで、フラットでフェアな社会でコミュニティを育てたいからです。一部の強者が弱者を搾取しつづける構造への、アンチテーゼでもあります。
それに、使う方にとっても、スマホの中に、アプリがいくつも増えていくのは面倒なことです。ブラウザさえあれば、さっと使えるものの方が、使う方にとっても負担が少なくはじめていただけるので、便利で、ユーザー・フレンドリーです。
■ インターネット本来の「オープン」、かつ「安全」を兼ね備える
実際には、使用する環境は、オープンでありつつ、セキュリティとプライバシーが守られていなければなりません。そうでないと、安心してビジネスや連携・提携の話をしたり、個人情報を扱ったりなどできません。
ブラウザで誰でも簡単に閲覧できる環境で、事業者に搾取されることなく、かつ安心・安全が確保されている。その中で、多方向の対話と関係づくりができるプラットフォームをつくる。これが「ダンクソフト・バザールバザール」の基本的な考え方です。
しくみはとてもシンプルです。会で開催されるイベント情報が集まった“イベント一覧”、会員の名前と所属がわかる“会員一覧”、「マッチング」と呼ばれる“コミュニケーション・ボード(掲示板)”などの機能があります。マッチングは、いろんな人が出会う場づくり、「市づくり」をしたいという意図でつけた名前です。「バザール」には、信頼できるメンバーたちが集まります。その中で、多様な人々による新しい出会いも生まれます。今では、さまざまな会員組織やコンソーシアム型のイニシアチブにご利用いただいています。
「バザール」で起こる対話や関係づくりを見ていると、出会いや連携が生まれるには、「さまざまな人やモノの“あいだ”を結び、次の展開をうみだす」というインターミディエイターの役割が重要だと痛感します。上手に使っておられる会では、人と人を結ぶことに長けた方がいて、上手に合いの手のコメントを入れたりしながら場をつくり、対話を進め、メンバーどうしの関係づくりを深めています。
ダンクソフト・バザールバザールのトップページ
掲示板機能のサンプル。各団体では、さまざまな会話が行われている。
■ ポスト・コロナ社会は、名刺交換もオンラインで
ポスト・コロナ社会においては、インターネットの役割がますます大事になってきます。インターネットが、すべての重要なインフラです。
たとえば、感染症対策のため、これまで出会いの場となっていたようなオフラインの会合や対面セミナー、イベントは、開催が難しくなりました。生身で人と出会うことが気軽にしづらくなった今、インターネット上で、いかに安心・安全を確保して、出会いの場がつくれるかは、課題です。
バザールバザールは、このタイミングで、新しい機能を備えました。「プロフィール」の表現を、もっと豊かにしていただけるようにしました。この「プロフィール」のポイントは、多様なプロフィールを、自在にインターネットにのせられる点にあります。
紙の名刺は、1枚あたりの情報量が少ないうえに、何枚も持たないといけません。そもそもフィジカルに対面しないと名刺交換が成立しません。今回の改良は、非対面でお互いのプロフィールを知ることができる、いわばオンライン名刺交換によって交流を促進できる、というものです。
新しく備わったプロフィール画面(プロフィール・タイプ)
■ 一人十色の時代です
私もそうですが、経営者はさまざまな組織でいろんな役職をもつことが多いものです。たとえば私の場合、ダンクソフトの代表取締役のほか、総務省地域情報化アドバイザー、日本パエリア協会理事、中央エフエム社外取締役・パーソナリティーなど、いくつもの役割をもっています。情報をインターネットにのせておけば、名刺を何枚も持ち歩く必要もなく、気軽にメールやチャットでリンクを送りさえすればいい。インターネット上で、新たな出会いの機会につながりますし、お互いを深く知るきっかけにもなります。そのためのツールがほしいという私のような経営者の要望にも応えてくれるのが、この新機能です。
役割ごとに、プロフィール写真、2000字までのテキスト、画像情報などが登録でき、表示デザインも選べます。名刺らしさのある名刺型デザインもあれば、文章重視のプロフィール型もあります。複数の会に属している場合、会ごとにプロフィールを設定できるので、見せたい自分を自在に選択できます。そうしたカラフルで多様な情報からこそ、思いがけない連携や協働が生まれたりする経験は、皆さんにもきっと少なからずあるのではないでしょうか。
ポスト・コロナのこれからは、オンラインで出会い、オンラインで会話や対話を始め、関係を築いていく時代です。また、一人がいくつもの役割を持つ、一人十色の時代です。ポスト・コロナ社会では、名刺もペーパーレスです。名刺をインターネットにのせ、交流をうながすこの新たな機能は、場所、空間、距離の制約がありません。移動にかかる時間やコストが不要になるインターネット社会のメリットを最大限に生かし、いろんな人と柔軟なつながり、ビジネス連携を生み出していただきたいと思います。
もちろん、セキュリティとプライバシーには気を使っています。プロフィール公開を団体内にとどめることもできるし、広くインターネット上で公開も可能です。ウェブサイトを持たない会社・団体や個人の方にとっては、自分のウェブページを持つ感覚で、使っていただけます。
こうしたツールを補助にすれば、単なるテレワークに留まらず、インターネットを上手に利用して、クリエイティブに仕事ができるビジネス環境をつくることができます。日本中あるいは世界と連携・協働していく「スマートオフィス構想」を実現していくうえでも欠かせない情報インフラとなるでしょう。オンライン上の空間である「ダンクソフト・バザールバザール」は、ポスト・コロナ社会でも、さらに重要な役割を果たすだろうと考えています。
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