東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[前編]

もくじ

■「人」の移動を減らして、大会期間中の企業活動をスムーズに

■ 東京オリンピック・パラリンピックが企業活動に及ぼす影響とは?

■ 道路輸送、鉄道の混雑はどうなる?

■ 移動する「物資」と「人」、すべてに影響する

■ 結果、どんな“困りごと”が起こるのか?

■ 離れた場所でも油断は禁物

■「出勤しなくてすむ」ように、デジタルの力を活かす

■ 情報の「クラウド化」で、場所から解放される対策を

■ Eラーニング形式の「テレワーク検定」もおすすめ

■ 経営者こそテレワークでクリエイティビティの向上を

■ [参考データ]東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通状況とその影響

■「人」の移動を減らして、大会期間中の企業活動をスムーズに

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会もいよいよ目前です。これほど大きな祭典となると、企業活動への影響は避けられません。そこで、年頭所感に続き、今月は、「企業が東京オリンピック・パラリンピック前にやっておくべきデジタル対策」についてお話しします。

というのも、ダンクソフトでは12年前の2008年から、こうした状況に耐えうる環境を徐々に整えてきました。ですので、特に、情報が届いていない可能性が高い中小企業の経営者のみなさんに、ぜひ私たちの経験と知見を、共有したいと思います。

 みなさん、ご存知でしょうか。大会期間中、首都圏の道路・鉄道は、車両・乗客の増加で大変なことになります。そうならないよう、大会時の交通混雑緩和をめざすプロジェクト「TDM2020」が取り組まれています。開催1年前の2019年7月から、「TDMハンドブック」がウェブ上で公開されるなど、情報提供や対策支援が行われています。

 「TDM」とは、 Transportation Demand Management の略で、交通需要マネジメントのこと。移動しなくてもすむものは移動を控え、スムーズに大会と企業活動を両立しましょうというイニシアチブ(積極的取組み)です。ダンクソフトでは、2008年から実施していることですが、都心のオフィスに出勤しなくても、仕事はできます。できるだけ「人」が移動しなくてすむよう、早めに対策をしておきたいですね。まだ、間に合います。

 

■東京オリンピック・パラリンピックが企業活動に及ぼす影響とは?

 ですが、だいじな情報がまだまだ行き渡っていないと実感しています。実際、どういう動きが始まっているか知らない人も多い。とくに中小企業の経営者のみなさんには、大企業や、競技場や選手村近辺の企業にくらべ、情報が届きにくく、調べても全体像がわかりにくい、といったことも起きているかもしれません。

 そこで今回と次回の2回にわけて、大会時、いったい何が起こるのか? どんな影響がでるのか? どんな障害の可能性があるのか? をわかりやすくまとめました。どんな対策をすればよいのかも、もちろんお話しします。

 「TDM2020」については、ウェブサイトが充実しています。詳細データやシミュレーション情報から対策ハンドブックまで、公式サイトを見ればひととおりのことがわかるようになっています。ただ、詳しいかわりに情報量がとても多いので、さっと要点をおさえたい、という人のために、ざっくりポイントをまとめますので、参考にしてください。

 

■道路輸送、鉄道の混雑はどうなる?

 まずは道路です。人の移動はもちろん、物流に大きな影響が出るので、企業活動にとっては死活問題です。「時間が読めない」「納品されない」「出荷できない」。生鮮食品や生活用品の供給に影響すれば、日常生活にも支障をきたしかねません。

  • 選手やメディア関係者が1日5~6万台の規模で車を利用

  • 首都高速道路の日中料金が上乗せに。夜間ETCは割引(2019年10月16日 報道発表)

traffic.jpg

鉄道ももちろん混みます。観客は鉄道を利用しますので、通勤通学ラッシュがさらに混むことになります。 

  • のべ約1,000万人の観客は鉄道を利用

  • 首都圏の鉄道利用者は、1日最大約80万人増加する

 

コラムの最後に、詳しいまとめをつけておきますので、参考にしてください。

station.jpg

 ■移動する「物資」と「人」、すべてに影響する

 物流への影響は、モノのデリバリーを直撃します。「届かない」「送れない」という状況は、あらゆるモノに起こってくるでしょう。

 

  • 自社商品の出荷・納品

  • オフィス備品

  • パンフレットやチラシ等の販促印刷物

  • トイレットペーパー等の日用品

  • 食料・飲料 

 次に「人」です。考えないといけないのはスタッフだけではありません。クライアント、サプライヤー、取引先関係者、運送会社、清掃・ゴミ回収・その他、物品搬出入をともなう業務委託先など、企業活動にはさまざまな人たちが関わっています。夏ですし、事業ゴミの回収に来てくれないとか、回数が減るとか、困りますよね。

 

■結果、どんな“困りごと”が起こるのか?

 これまでのまとめになりますが、こんなことが起こりうるわけです。

 [企業活動で起こりうるリスク]

  • 通勤できない、遅れる

  • 会議・打合せへの移動時間がよめない、行けない、間に合わない、帰ってこられない

  • 来るはずのゲスト(取引先、サプライヤー)が来社できない、遅れる

  • ランチ外食時が混雑、食べられない、間に合わない

  • 大人数が集まるイベントやセミナーが開催できない、開催しても人がこない

  • 機材等の搬入・搬出ができない

  • 荷物が出荷できない・受け取れない

  • 物流業が引き受けてくれない

  • 周辺コンビニにモノが不足、レジが混雑して、必要なものが買えない

  • スーパー、ドラッグストア、物販全般で、供給不安

  • コピー用紙が切れても、納品が間に合わない

  • パンフレットや資料が足りなくなる

  • ゴミ回収がされない、遅れる

  • 清掃業者が来社できない

■離れた場所でも油断は禁物

 また、「うちは場所が離れているから」と思っていても、移動輸送ルートの関係で、思いがけない影響を受ける可能性もあります。自社だけでなく、連携先、関係先の状況にも注意をしないといけません。 

 もちろん、これらは全てあくまでも「可能性」で、そうならないように、国も都も関係者も努力をしています。「最悪の事態」を想定して備えることで、未然に防いだり、困りごとを少なくしたりできる。だから今のうちに知っていただきたいし、アクションを起こしていただければと思うのです。BCP(事業継続計画)の実践ですね。

 それでは次に、「では、どう対策すればいいのか?」です。

 

■「出勤しなくてすむ」ように、デジタルの力を活かす

 やはりなんといっても、首都圏にいる人の数をへらすのが望ましい対応です。時差通勤も言われていますが、都心のオフィスが稼働していると、結局、上記のような問題は、軽減はできたとしても、なくなるわけではありません。

 スタッフが都心のオフィスに出勤しなくていいようにできればベストです。「夏休みを取ればいい」「休業すればいい」という意見もあり、大企業のなかには実際に期間中の休業を予定している会社もありますが……。オリンピック17日間、パラリンピック13日間、合計30日。まるまる休むというのは、多くの企業と経営者にとって、あまり現実的ではありません。

 それならば、「出勤しなくてすむ」ようにすればよいのです。デジタルの力を活かせば、出勤しなくても仕事はできます。在宅勤務、サテライト・オフィス、リモート・オフィス……そう、テレワークです。

 ダンクソフトで実施した徳島県神山町での「テレワーク実証実験」の様子(2011年)

telework2.jpg

■情報の「クラウド化」で、場所から解放される対策を

 では、どんな環境を整えればテレワークが可能になるのかというと、まず大事なのは、情報の「クラウド化」です。 

 データをクラウド上にあげる。それも、エコ・ペーパーレスの考え方をとりいれて、紙を減らし、書類を整理したうえで、クラウド化することが大切です。また、単純にデータをデジタル化してクラウドにあげればいいというわけではないのです。ローカル・サーバーにおいたものを、そのままクラウドにあげつづけていくと、どんどんデータが膨大になって、かえって費用がかさんでしまいます。

 そうならないように、データの扱い方、扱うための考え方を知る必要があります。そうすると、データを扱うときに、ラクだし、習慣化することができます。さらに、人間が手を動かす部分のうち、可能なところは自動化してしまうといいですね。 

disposal.jpg
case_tokushima.png

徳島合同証券様、デスクまわりのデータ整理前の様子

事例:「ペーパーレス化」で 6期連続の赤字からV字回復

 

■  Eラーニング形式の「テレワーク検定」もおすすめ

 中小企業などで、まだクラウドを取り入れて上手に情報を活用できていない企業さんの中には、「パソコンやデジタルに弱くて」「クラウド化にも挑戦しようとしたけど、どうもよくわからない…」とおっしゃる方もおられるかもしれません。そんな方々こそ、東京2020大会を機会に、私たちダンクソフトと一緒に取り組んでみていただきたいと思います。 

 実際に体験していただきながら、使い方やセキュリティ対策など、事例をまじえて丁寧に進めていきます。お客様の実際の環境に応じて、導入するテクノロジーを決め、最善な環境をつくっていただけるので安心です。それに、技術革新が進んだ今、デジタル操作は格段にやさしくなっています。数年前に苦労したことが、今は気にならなくなっているかもしれません。 

 また、一般社団法人エコ・ペーパーレス協議会が実施している「テレワーク検定」も、入口としておすすめです。Eラーニング形式で、専用教材やドリルをダウンロードして学習するので、場所を問いません。検定テストもオンラインです。テレワークの基本を学べますので、講座参加ができない忙しい経営者にも、テレワーカーにも、おすすめです。

 一般社団法人エコ・ペーパーレス協議会 テレワーク検定

 https://www.wnw-academy.com/

 

■経営者こそ、テレワークで「クリエイティビティの向上」を

 私自身の体験でいうと、自社のクラウド化をして大きかったことのひとつが、「安心感」を得られたことです。これで情報が失われることはない、という心強さです。紙やローカル・サーバーの場合、機器のトラブル、災害、事故、人為ミスなど、さまざまな理由で、データが永遠に失われるおそれがあります。経営者として会社に対する責任がありますので、クラウドになってとても安心しました。

 もうひとつが、「クリエイティビティの向上」が見込めることです。テレワーク環境が整うと、経営者自身も、どこにいても仕事ができますから、広い世界を見て、知って、いろんな人と出会うチャンスが増えます。 

 変化の早い時代です。経営者こそテレワークをして、会社経営のクリエイティビティを上げていかないと、時代についていかれなくなりかねません。デジタルをうまく使えるようになると、コスト削減や時間の節約が可能になります。削減できた費用や時間を使って、クリエイティブな働き方の継続、新しいビジネスでのイノベーション、BCP対策など、会社内外の活性化ができるようになります。本当は、それこそが大事です。私たちダンクソフトは、そうした「デジタル活用の先にある、リ・クリエーション(再創造)」にむけて、お客様とご一緒にプロセスを推進しています。どうぞお気軽にご相談ください。 

 次回は、クラウド化からテレワーク導入まで、必要な準備やツール、注意点などについて、具体的にわかりやすくお話ししていきます。

[参考データ]

■東京オリンピック・パラリンピック開催時の交通状況と影響

  • 選手やメディア関係者が1日5~6万台の規模で車を利用

    主に選手村や宿泊施設と各競技会場の間を1日に複数回行き来することになり、1日約5~6万台に相当する交通量増加が見込まれています。また、大会関係施設周辺では、専用レーンや優先道路の設置も予定されています。

  • 首都高速道路の日中料金が上乗せに。夜間ETCは割引(2019年10月16日 報道発表)

    ETC車両は、朝6時から22時まで、マイカー等が都内区間で通常料金に1,000円上乗せに。0時から4時の夜間は、全車種、首都高全線で5割引になります。

    現金車両は、普通車以下の全ての車両が首都高全線で通常料金に1,000円上乗せ(朝6時から22時まで)。夜間割引はありません。

    実施期間は、オリンピック期間の令和2年7月20日(月)から8月10日(月祝)までと、パラリンピック期間の8月25日(火)から9月6日(日)まで。 

 

東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針

(2019年10月16日  オリンピック・パラリンピック準備局、東京都都市整備局発表)

 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/10/16/17.html

  

■鉄道の混雑はどのくらい?

  • のべ約1,000万人の観客は鉄道を利用

    オリンピックで約780万人、パラリンピックで約230万人。のべ約1,000万人の観客の来訪が見込まれています。ラグビーワールドカップ2019日本大会がのべ約180万人ですから、規模の大きさが別格です。

  • 首都圏の鉄道利用者は、1日最大約80万人増加する

    日によって変動はあるものの、1日最大約80万人の観客が鉄道を利用すると見込まれています。しかも、混む時間が通勤通学時ラッシュ帯に重なります。オーバーツーリズムに悩む京都では、バスが観光客でいっぱいで市民が乗れなくて困っているそうです。東京2020大会時の首都圏でも、列車が来ても乗れない、遅延する、といったことが起こりえます。