事例:さまざまな部署との対話を重ね、進化し続けるウェブサイト改善プロジェクト

お客様:国際機関日本アセアンセンター 様

 注目が高まるASEAN地域の情報を提供して、経済や人々の交流を促進する日本アセアンセンター。膨大な情報を整理し、幅広い層の人々にとって情報を見つけやすいサイトの在り方を模索し続けている。

左から国際機関日本アセアンセンター事務総長室広報担当官の宮内智子氏、園屋恵美子氏

左から国際機関日本アセアンセンター事務総長室広報担当官の宮内智子氏、園屋恵美子氏

■ 多様な人々に向けた、情報量が膨大なサイト

 国際機関日本アセアンセンター(東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)は1981年、当時のASEAN加盟国政府と日本政府が設立した国際機関だ。貿易、投資、観光、そして人物交流の促進を目指しており、小学生向けのイベントからビジネス関係者に向けたセミナーまで、幅広いステイクホルダーへ事業を展開している。

「さまざまな層の方々へ、ASEANの情報を提供することを、とても大切にしています」と語るのは、広報の宮内智子氏だ。事業が多岐にわたるためウェブサイトの情報量が膨大で、訪れた人たちが接点を見出しやすい発信の仕方を模索していた。長い間使ってきたウェブサイトは、部署ごとに明確に分けて情報を掲載していた。ただ、「お客さまが探している貿易の情報が、当センターでは投資に分類されているなど、線引きが分かりにくく、すれ違いが生じていました」と振り返る。情報が多い上、検索サイトでは上位に表示されない構造になっており、使い勝手が悪いことも課題だった。

 当時は情報更新を各部署に任せていたが、これが運用上の課題となっていた。サイト制作ツールの知識を持たない人が担当すると、作業に時間がかかり効率が悪い。担当が変わると、引継ぎにも時間がかかる。一方で、詳しい担当者がいる部署では独自の改変を加え、統一感が崩れていくケースも見られた。運用が難しいと、日本語と英語の両ページの管理が非常に手間取り、英語版の更新が滞ってしまうこともあった。

 また、2018年に大幅な組織改編があり、縦割り型から横のつながりを強化した体制へと変わった。部署をまたいだ「センターワイド事業」が増え、ウェブ表現も、センターとしての統一感を持たせた見せ方へと変える必要があった。

 そこで2016年度に、ウェブサイトを大幅にリニューアルすることになった。担当したのは、以前から何度か修正作業などに携わったことがあったダンクソフトだ。「私たちの活動内容をよく理解した上で、仕組みや見せ方などを提案してくれる、貴重なパートナー」というのが、宮内氏の評価だ。

第74回ASEAN投資調整委員会(於:マレーシア)

第74回ASEAN投資調整委員会(於:マレーシア)

■ 部署間で異なる要望に応えた、1回目のリニューアル

 リニューアルに際してダンクソフトがまず実施したのは、センター各部署へのていねいなヒアリングだった。組織の外部にいるダンクソフトだからこそ、情報の断捨離や全体の交通整理がしやすいという側面がある。だが多忙なメンバーを集めての開催はスケジュール調整が難しく、完了までには実に約4カ月を要した。今年7月から参画したという広報の園屋恵美子氏も、ヒアリングの様子を聞いて「各部署の要望を直接聞いて形にしてくれる制作会社って、なかなかいないですよね」と驚く。

 「ヒアリングを重ねるうちに、部署ごとに要望が異なることが改めて浮き彫りになりました」とダンクソフトの大村美紗は語る。例えば、セミナーを多く実施する部署では、セミナーの案内に特化して、なるべく多くの件数を表示させたいと考えていた。一方で別部署では、事業についての情報を中心に出したいと望んでいた。「重要視しているのは、どこにゴールを持っていきたいかという点。部署ごとの思いがそれぞれあるので、なぜそのように考えているのか、お話を伺ってから提案するようにしています」(大村)

 また、外部の視点が入ることで、見る人の立場で分かりやすいサイトになっているか意識しやすくなった、と宮内氏は話す。「日本アセアンセンターの内部でよく使う用語も、外部から見ると堅苦しく感じられるのではないか、もっと分かりやすい別の言い方に変えた方が良いのではないかと、私たちのことをよく理解した上で見てくださっていますね」

日ASEAN女性起業家リンケージプログラム(AJWELP)(於:ブルネイ)

日ASEAN女性起業家リンケージプログラム(AJWELP)(於:ブルネイ)

■ 分かりやすさと統一感に力点を置いた、2回目のリニューアル

 各部署の要望を反映したサイトにリニューアルしたものの、「実際に運用が始まると、また新しい課題も出てきて、もう一度整理したくなりました」と宮内氏は振り返る。特定の活動目的に分類できない横断的な事業が今後増えてくることも想定された。

 そこで、リニューアル後に出てきた新たな課題の解決を目指し、2018年度にはトップページを中心にサイトの手直しを実施した。このときに重視したのは、センター全体で活動内容を整理し、統一感のある見せ方へと改善することだ。

 以前は部署ごとに更新していた新着情報は、事業部ごとのアイコンを付けてトップページに集約し、時系列に並べて見せるように変更した。トップページには常に最新情報が表示されるため、サイト訪問者にとって見やすくなり、部署ごとの更新頻度のばらつきも目立たなくなったという。トップページや、事業部ごとのページのレイアウトを変え、コンテンツ更新は広報がゲートキーパー(門番)となって目を配るよう運用方法を改めるなど、サイト全体に統一感を持たせる工夫を凝らした。

マレーシア企業と日本企業を対象にビジネスミーティング(於:マレーシア)

マレーシア企業と日本企業を対象にビジネスミーティング(於:マレーシア)

■ 信頼できるパートナーと共に、激変の時代を乗り切る

 2度のリニューアルを経たアセアンセンターのサイトだが、さらに改善したいポイントが出てきていると、宮内氏は考える。これまでは膨大な情報を抽出しやすいようロジカルに整理することに力点を置いてきた。今後は事業部横断型の事業の見せ方を工夫し、お客さまにとってセンターとの接点が分かりやすいようSEO対策にも力を入れていきたいという。

 特に注力したいと宮内氏が語るのは、日本アセアンセンターのブランド・イメージの構築だ。センター設立当時と比べると、情報の入手が容易な時代となり、ASEAN地域の専門家の数も増えた。そういう中で、日本アセアンセンターならではの特長を出していくことの重要性を宮内氏は感じている。日本とタイ、日本とカンボジアといった2国間の枠組みで情報発信している機関は他にもあるが、「ASEANという地域全体を対象として情報提供しているのは、日本アセアンセンターしかない。価値ある独自コンテンツをもっと強化していきたいですね」と展望を語る。

 また、昨今は人々がオンライン上にいる時間が長くなった。日本アセアンセンター独自のコンテンツ、特にオンライン・コンテンツの充実を検討しているという園屋氏は「今の時代に合った進め方をしていかないと、置いていかれてしまう。存在感を出すために、独自性を積極的に出していかなくては」と危機感を募らせる。

 さらに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、事業形態も変化を余儀なくされた。事務所に併設された多目的ホールに人を集めていたセミナーはオンラインで開催しているが、対面でのプログラムや、ASEAN各国に赴いてのワークショップは開催できていない。観光事業もプロモーション活動を思うように実施できない状況だ。

 一方、オンラインでセミナーを実施するようになった今は、さまざまな数字の把握が可能となり、効果的にデジタル・テクノロジーを活用したコミュニケーションを展開できる体制が整いつつある。園屋氏はダンクソフトに対し、「ウェブサイトのトレンドは何か、どのような見せ方が可能なのか、オンライン上で何ができるのかなど、今後もプロの視点でいろいろご提案いただけると大変ありがたいです」と、変化の激しい時代を共に乗り切るパートナーとして期待を寄せている。

 幸いなことに、日本アセアンセンターの広報とダンクソフトの間には、日ごろから思いついたことをチャットですぐ相談できる信頼関係が築かれている。「WEBサイト関連でわからないことがあると、すぐチャットで話しかけてしまう」と宮内氏は笑うが、肩ひじを張らないやり取りの中で「こんなことをしてみたい」と目的を伝えると、それが高い精度で実現していくのだという。

 注目度が高まるASEAN諸国の情報が集まる日本アセアンセンターと、デジタル・テクノロジーによる関係づくりを得意とするダンクソフトの協働は、今後ますます密度の濃いものとなりそうだ。ウェブサイトを、多様なステイクホルダーとの対話が、さらに促進される場となるよう、取り組んでいきたい。

4_Myanmar観光3MB.JPG

観光従事者を対象とした研修(於:ミャンマー)

 

■ 導入テクノロジー

 Webデザイン、運用コンサルティング、システム開発 

 https://www.dunksoft.com/web-t

  

国際機関日本アセアンセンターとは

 日本アセアンセンターは、ASEAN加盟国政府と日本国政府との協定によって1981年に設立された国際機関です。日本とASEAN諸国間の「貿易」「投資」「観光」という3分野における経済促進と、「人物交流」の促進を主な目的として活動しています。

 ASEAN諸国から日本への輸出の促進、日本とASEAN諸国間の直接投資、観光及び人物交流を促進するため、日本の関係各省並びにASEAN諸国の貿易・投資・観光促進機関や駐日大使館と密接な連携を保ちながら、日本・ASEAN双方のニーズを踏まえ、貿易・投資・観光促進のためのテーマ別セミナーやワークショップの開催、産業分野毎のASEAN各国高官と日本人投資家との政策対話、人的交流プログラム、各種情報提供など多岐にわたる事業を実施しています。

https://www.asean.or.jp/ja/