“いいコミュニティ”はデジタルとともに

代表メッセージ

もくじ

  • デジタル・テクノロジーで地域コミュニティを支える

  • 地元高専の卒業生や企業も連携

  • 「テレワーク」が可能にする地域活性化

  • 地域防災を視野に入れた安心・安全の関係づくり

  • ソトの地域も社会的ネットワークの一員に

  • 地域に評判情報が循環し、互恵的関係をつくる

  • 高専のまわりに“いいコミュニティ”がうまれる未来

  • 8年つづく「徳島サテライト・オフィス視察ツアー」

  

■デジタル・テクノロジーで地域コミュニティを支える

 前回に続き、「コミュニティの活性化とソーシャル・キャピタル」について、最近のトピックを交えながら話していきます。

 今回取りあげるのは、徳島の事例です。徳島県阿南市に、いま、地元の企業をはじめ、学校、地域で働き暮らす人たち、そして行政職員、さらに他地域の関係者も含めた、ゆるやかな結びつきができつつあります。ダンクソフトも、デジタル・テクノロジーで、この地域コミュニティを“いいコミュニティ”にしようと、積極的に関わっています。

 

■地元高専の卒業生や企業が連携

  去る9月24日、阿南高専リカレント教育「次世代光関連事業開発支援プロジェクト」キックオフ・フォーラムが、徳島市の四国大学交流プラザで開催され、ダンクソフトも参加しました。内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金事業」に採択された徳島県計画の一環として開催されたフォーラムです。

 主催の阿南工業高等専門学校(以下、阿南高専)とダンクソフトとのご縁は長く、徳島オフィスに常駐する竹内が講師をつとめていることは、これまでにもご紹介しているとおりです。また同校を支援する卒業生や、企業約100社からなる“ACTフェローシップ”という会にも参加しています。

「次世代光関連事業開発支援プロジェクト」キックオフ・フォーラム

「次世代光関連事業開発支援プロジェクト」キックオフ・フォーラム

■「テレワーク」が可能にする地域活性化

 キックオフ・フォーラム当日は、ブースを展示して、テレワークや阿南高専での授業の様子などについて、参加者たちに紹介しました。

 デジタルを取り入れることで、地域の優秀な学生がテレワークによって地元に残ることができる。地域の企業も、テレワークという働き方を知って実施すれば、優秀な人たちを採用でき、地域がより活性化できる可能性につながる。ふだん私たちが言っている通りの話をしました。

 最近、リカレント教育や地方創生の流れの中で、“定着や定住”ということが、やっと言われ始めたようです。移住でなく、いったん外に出た経験のある地元の人が、地域に戻ることも含めた“定住”。私たちは以前からその重要性をお話ししてきていますが、行政側の動きとしても、始まってきたようです。人口減少を問題視すると、移住ではパイの奪い合いになってしまう。だから“定住”が重要です。今まで上がってこなかったトピックでしたが、これからもっと言われだすでしょう。

フォーラム会場で参加された学生と対話する株式会社ダンクソフト 開発チーム マネージャー 竹内祐介

フォーラム会場で参加された学生と対話する株式会社ダンクソフト 開発チーム マネージャー 竹内祐介

■地域防災を視野に入れた安心・安全の関係づくり

 地方定住の流れが進むには、やはり地方・地域のコミュニティがどれだけ活性化して、魅力があるかが大事になってきます。ただ、昔のように住民が中心となった自治会のようなコミュニティというのは、もうあまり現実的ではありません。企業も地域コミュニティの担い手になる役割を引き受ける必要がある時代に、もうなっていると思います。

 地域防災の観点から見てもそうですね。安心・安全のコミュニティは、相互信頼にもとづく社会的ネットワークがないと成立しません。もちろん互恵的関係が成り立っているコミュニティです。つまりは「ソーシャル・キャピタル」が豊かであるということです。コミュニティが活性化していれば、災害発生時にセーフティネットとして機能します。その際に、オフラインの関係だけでなく、オンライン上での、デジタル・テクノロジーを有効活用した日ごろからの関係づくりが、とても重要になってきます。

 

■ソトの地域も社会的ネットワークの一員に

  ソトの地域との社会的ネットワークも大事です。一地方、一地域に閉じたコミュニティではなく、ご紹介した阿南市のケースのように、他地域の人たちも混ざった、ゆるやかに開いたコミュニティの方がいいのですね。

 阿南市の場合、ダンクソフトが 「インターミディエイター」 となってあいだを取りもち、以前、他の自治体の方が視察ツアーに参加しました。その後、自治体間での交流や情報交換が進んでいます。規模感や課題や問題意識など、何らか似たところがある自治体が、遠く離れていても関係を結び、互恵的関係が徐々に生まれ、そこに私たちのような企業も関わっている。互恵的関係を継続できることが、相互信頼につながっていきます。

 

■地域に評判情報が循環し、互恵的関係をつくる

 学校、学生、教員、企業、地元に働く人、Uターンしたい人、自治体……社会的ネットワークへの参加メンバーが多様であることは大事です。それまで出会う機会の少なかった人と出会うチャンスが増え、地域のコミュニケーションに広がりが生まれます。様々な人たちとの「開かれた対話」があることで、“新しい動き”も生まれます。地域の人たち自身が、それまで知らなかった魅力を発見できるようになり、地元が再評価される。人や優良企業の評判情報も、地域内に届きやすくなります。雇用も発生するし、よい情報の循環が生まれて、地域がにぎわっていきます。

  今はほとんどの人や企業が東京を見ているので、外側に大きな市場がないと成り立たないと思い込んでいますが、本当は農産物がそうであるように、地域でまわるはずなんですよ。むしろ地産地消でないとその先に行くわけがないと私は思っています。

  同時に、“企業もコミュニティのよき一員である”という観点でいえば、地域社会に価値をリターンできない企業は持続可能なかたちで成り立たないでしょう。地域との互恵的関係が築けないと、相互信頼も社会的ネットワークも生まれませんから。

左より株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎、阿南工業高等専門学校 校長 寺沢計二氏、阿南工業高等専門学校 地域連携テクノセンター長 杉野隆三郎氏、セレクトライン代表 / サーティファイド・インターミディエイター 中川桐子氏、西野建設株式会社 代表取締役 / ACTフェローシップ 会長 西野賢太郎氏

左より株式会社ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎、阿南工業高等専門学校 校長 寺沢計二氏、阿南工業高等専門学校 地域連携テクノセンター長 杉野隆三郎氏、セレクトライン代表 / サーティファイド・インターミディエイター 中川桐子氏、西野建設株式会社 代表取締役 / ACTフェローシップ 会長 西野賢太郎氏

■高専のまわりに“いいコミュニティ”がうまれる未来

“いいコミュニティ”とは、コミュニティが活性化しているということ。そのためには、「ソーシャル・キャピタル」が豊かであることが大事です。そのためには、①「相互信頼」、②「社会的ネットワーク」、③「互恵的関係」の3つが必要です。

 高専のまわりに“いいコミュニティ”がうまれること。より開かれた、多様な人びとの関わるコミュニティが、阿南高専のまわりに育っていくことを期待しています。連鎖していく先で、望む人が地域にいながらにして特性に合った仕事ができるよう、企業が地元を応援する。そうすることでまた、心ある徳島の優良企業情報がいきわたり、地元の人たちが企業を応援できるようになるといい。

 ダンクソフトとしては、3つの活動を進めていきます。第1に、阿南高専ACTフェローシップと同校の学生を結ぶ取りくみです。阿南高専が地域のあいだを担ってコミュニティを活性化させていくモデルを、デジタル面からサポートしていきたいと考えています。

第2に、徳島サテライト・オフィスへ、プログラミング・コンテスト部の学生をまねいて、プログラミングをCo-learning(共同学習)できる場づくりです。これは一方向に教える場ではありません。竹内がいま学校と協議しているところです。

 そして第3に、さらなる広がりとして、「高専が地域コミュニティのインターミディエイターになる」というモデルを、他の地域にも展開していく可能性を考えています。高専は全国にあり、地域とよい関係をつくっている学校が多いですから。

徳島県神山町

徳島県神山町

8年つづく「徳島サテライト・オフィス視察ツアー」

 ダンクソフトでは、「徳島サテライト・オフィス視察ツアー」を毎年実施しています。2011年に始まり、毎年2回ですから、通算16回ほどになります。今年も11月6日から一泊二日の日程で、神山町、美波町、阿南市などを訪れ、各地の最新の取りくみを見てきます。

 訪問地は、まちの変貌を体感できるモデル地域です。神山町などはほんの数年で大きく変化し、地産地消のフレンチ・ビストロができ、地元の間伐材を使ったプロダクトが海外にも知られるようになりました。

 人びとが少しだけ“新しい動き”をするだけで、まちの中が変わる。変化を目の当たりにしたこと、「変われるんだ」という実感を得たことは、私自身にとっても刺激になりました。

 この視察ツアーは、県庁(地方創生局地域振興課・集落再生担当)との連携で、ダンクソフトが企画して実施しているものです。県庁担当部署の全面的な協力のもと、地元との調整や手配は県が担い、情報発信やネットワークづくりなど 「インターミディエイター」 としての役割はダンクソフトが担う、というように、お互い得意な部分で貢献しつつ、継続実施しています。

 2011年から約8年かけて続けてきたことが、当地のコミュニティの活性化やソーシャル・キャピタルの醸成に、少しでも貢献できていれば嬉しいことです。

 

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