東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[後編]

もくじ

■ 危機管理対策としてのテレワーク

■ 東京オリ・パラまでに始めておきたいクラウド化

■ スマホ時代の仕事のしかた

■ 3つの鍵:「ペーパーレス」・「キャッシュレス」・「サインレス」

■ データを守る「情報セキュリティ」のコツ

■「無料」の落とし穴にご用心

■ スムーズなテレワーク開始のために

■ 2020年から始める未来の物語


■ 危機管理としてのテレワーク

ここのところ、危機管理としてテレワークへのニーズが急速に高まり、「導入の方策やノウハウを具体的に知りたい」という声が多く聞かれるようになっています。ダンクソフトにも、在宅勤務体制へ急きょ切り替えたいがどうしたらいいか、というご相談が寄せられています。 

 こうしたリクエストにもお応えするため、今月は、先月の前編につづいて、「企業が東京オリンピック・パラリンピック前にやっておくべきデジタル対策」というタイトルでお届けします。ぜひ最後までお読みください。後編は、具体的な方策についてです。


■ 東京オリ・パラまでに始めておきたい「クラウド化」

 先月のコラムでは、大会時の交通混雑の緩和をめざすプロジェクト「TDM2020」について詳しく紹介しました。期間中、輸送や移動がどれだけ大変になるか、そうした影響や被害から企業活動を守る方法として、オフィスに行かなくても仕事ができる環境をつくるといいですよ、というお話もしました。

 また、新しい働き方プロジェクトの「テレワーク検定」もご案内しました。学習も検定テストも、オンラインで実施するEラーニング方式ですから、この学習と検定に参加することが、テレワークの実践的トライアルにもなっています。テレワークの基本を学ぶ入口として、経営者にもテレワーカーにもおすすめです。

 前回、「まず大事なのは、情報のクラウド化だ」ということを申し上げました。今月は、この「クラウド化」について、詳しくお話ししていきます。



■ スマホ時代の仕事のしかた

 皆さん、ご自身の日常生活では、インターネットをもう当たり前に使っていますよね。アドレス帳はスマホの中だし、そこに電話番号もメールアドレスも、所属企業や属性情報も入っている。モノを買うのも、ネットショップでワンクリック。電車に乗るのも、コンビニの支払いも、スマホをかざすだけで済みます。そうした情報をコンピュータやタブレットなど、他のデバイスと共有できるようにしている人も多いでしょう。

 昔はどこの家庭も電話は固定電話で、一家に一台。電話台に電話帳が置いてあって、それを開いて電話をかけていました。ですが、今はもうそんなことをしている人はほとんどいないのではないでしょうか。キャッシュレス決済も急速に普及しています。交通系ICカード、ポイントカードのアプリ化も進んで、お財布を持たずにスマホひとつで外出できるようになっています。普段あまり気にしないかもしれませんが、インターネットのおかげで、こういったことが可能になりました。

 オフィスでも、同じことなのです。「クラウド化」というと、何か特別な新しいことのように聞こえるかもしれませんが、普段の生活でしているのと同じことを、同じようにできるようにするだけです。ビジネスでも、インターネットありきにしよう、活用しようということです。もう、仕事も暮らしも、インターネットが前提なのです。



■ 3つの鍵:「ペーパーレス」・「キャッシュレス」・「サインレス」

 「クラウド化」の入口としては、やはりまず、「紙」ですね。紙がオフィスにあると、場所を変えて働くことはできません。とはいえ、既存の紙情報をいきなりすべてインターネット上にのせる(つまり、クラウド化する)のは、それなりに大変です。まずは、これから始めるもの、現在進行系で動いているものから、「ペーパーレス」にしていくと良いでしょう。

膨大な過去の書類を、最初からすべて片付けようとしなくてかまいません。いま動いているもの、これから先のものを、まずはデジタル化していく。共有していくメリットがわかってきて、それから残すもの・残さないものを選んでいくわけです。データの保存場所が、社内サーバーからインターネット上に移るだけなので、今までやっていたとおりに仕事ができますし、社外からもアクセスできるようになる。これがテレワーク導入の第一歩です。

 加えて、経費精算などのお金関連を「キャッシュレス」にすること。そして、契約書や承認プロセスなどのサインや押印を「サインレス」にする。この3つがそろうと、地面の上のオフィス空間に縛られない働き方ができるようになります。

 変わるとは、余裕をもって変わることです。ぜひ、急激にではなく、少しずつ、そして持続的に新しい試みを取りいれる、「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」の発想で行っていただけるとよいと思っています。



■ データを守る「情報セキュリティ」のコツ

 テレワークに踏み切れない理由として、セキュリティが不安だからという声がとても多いんです。もちろん、企業にとって、情報は資産です。情報資産を守る「情報セキュリティ」がますます重要になっています。

「データを守る」という意味で、もっとも重要なのは「バックアップ」です。適正な環境でネットに情報をあげておけば、自動的にバックアップを取ることができ、データの完全な損失という大きなリスクを遠ざけることができます。前にもお話ししましたが、当社で情報をクラウド化したとき、私は経営者として、とても安心しました。ああ、これで大丈夫だ、と。

 もちろん、セキュリティについての知識とスキルがあることが前提になります。個人情報を含む情報漏えい等に対してどれだけ堅牢にできるのかは、人のリテラシーをどう高めるのかにかかっています。

  たとえば、個人情報の流出に関しては、実は紙のほうが怖いということをご存知でしょうか。紙の名簿の場合、複写しても履歴が残らず、トレースできません。ですが、デジタルなら痕跡が残りますので、トレースすることができるのです。「紙は安全」というのは神話です。きちんとした知識があれば、企業の大切な情報資産をリスクから守ることができます。

 セキュリティに関するセミナーやオンライン学習で、きちんと知識を習得できれば、あとは日常での訓練あるのみです。ダンクソフトでは、セミナー・勉強会の開催や、ツールのご紹介・ご提供など、ご依頼先の状況に応じたセキュリティ対策のアドバイスとサポートをしています。最初の入口として、ウェブ上でできる簡単な自己診断なども便利です。


※ 参考情報:

 5分でできる!情報セキュリティ自社診断 (IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)

 https://www.ipa.go.jp/security/keihatsu/sme/guideline/5minutes.html

 

■ 「無料」の落とし穴にご用心

 インターネットには多くの無料ツールがあります。メール、クラウド、チャット、写真共有など、皆さんの中にも利用している人は多いことでしょう。ですが、無料サービスにはくれぐれも注意してください。

 「ただほど高いものはない」とはよく言ったもので、サービス提供者は必ず何らかのメリットを得ています。メール内容やファイル情報から、個人情報、嗜好情報、写真、キーワードなど、自分自身の情報が取られたり、統計やシステム学習に利用されたりしています。サービスによっては、選挙活動や彼らのビジネスのために商用利用されています。

 要するに、いろいろな無料ツールを使っていると、大事なデータを配っていることにもなるわけです。自分のデータだけでなく、お客様情報を無断で配っていることになります。ダンクソフトは、そういう不安のないサービスを選定して、安心な環境をお客様に提供しています。



■ スムーズなテレワーク開始のために

 テレワークをはじめるにあたっては、やはりわからないことがたくさん出てくるものです。ダンクソフトの導入支援では、個別に担当者がついて、セットアップから、ツール利用方法のワークショップやサポートまで行います。

 お客様の現状を把握し、コミュニケーション・ツールの活用など「実はすでにできている」ところは、そのまま活かしていただきます。オンラインも活用して社内ワークショップを行い、円滑な導入・定着に向けて丁寧にサポートしていきます。パートナー社労士による助成金活用や社内規程作成のサポートも行います。

 

※ 参考情報:

 

  • テレワーク検定 ~テレワーク導入の準備・導入後に効率よく効果的なテレワークのために~

    https://www.wnw-academy.com/ 

 

■ 2020年から始める未来の物語 

 こうして、ビジネスでも、インターネットとデジタル・テクノロジーを組み合わせることで、働き方が変わり、企業が変わり、人の可能性が引き出されていくことが、ダンクソフトのめざす未来です。 

 もちろん、デジタル・テクノロジーは、不測の事態、緊急事態や危機的状況下での「BCP(事業継続計画)」に有益有用であること、「コストダウン効果」があることは言うまでもありません。

 テレワークなら場所を問わず働けます。首都圏だけに人が集まる必要はなくなります。改めて強調するなら、デジタルによって「従来のオフィスから解放される」のです。今回の東京オリンピック・パラリンピックの開催を、新しい働き方へのテイクオフを進める機会と捉えて、働き方もマインドセットも、アップデートしていく企業が増えてほしいと願っています。

 最後にひとこと。5G(第5世代移動通信システム)になると、スマホも遅かれ早かれウェアラブルになっていくでしょう。それだけではありません。デジタルのスピードは40年で1億倍になったと言われています。これがあと20年たつと、さらに数10万倍に上がります。そうなると、人間のポテンシャルに限度がない以上、SF世界のように瞬間移動のようなことさえ夢物語ではなくなっていくかもしれません。こうした技術の進歩は、機械をあつかう難しさをなくしていき、誰もが“デジタル上手”になることにつながります。 

 目の前の困りごとからでも、まずはご相談ください。この2020年を、一緒にはじまりの年にしていきましょう。


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