物語だけでなく、その“結び目”もつくろう 


2022年最後のコラムとなる今回は、代表取締役 星野晃一郎と取締役 板林淳哉が対談しました。40年の節目に向けて、そしてこの先の50年を見据え、今年1年を振り返ります。

左:ダンクソフト 取締役 板林淳哉   右:ダンクソフト 代表取締役 星野晃一郎

▎未来の物語は自分でつくる

 

星野 今年1年を振り返ると、やはり創業40年目を迎える年だったことが大きいですね。板林さんはどんなことが印象に残っていますか。

 

「ダンクソフト40周年」特設サイト
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ダンクソフトに関わる人々の「未来の物語」
dunksoft.com/40th-story

板林 いろいろありますが、中でも全社で物語づくりをしてきたことです。7月にオープンした「ダンクソフト40周年」の特設サイトでは、何名かのメンバーが先行して、それぞれの物語を公開しています。その後、若いメンバーが中心になって、全員が物語を書くことになりました。ダンクソフトにとって、とてもよいことだと思います。

 

開発チーム 澤口泰丞の「未来の物語」
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星野 40年目を迎えた節目に、思いがけず、みんなで未来を考えるきっかけになりました。というのも、最初は全社ではなく、有志だけでやろうかと考えていたんですね。ところが、開発チームの澤口さんが「全員に参加してほしい」「人の描いた未来に乗っかるのではなく、一人ひとりが自分で未来を描いてほしい」というようなことを言ってくれたんでしたね。

 

板林 はい、それを受けて、社内でどんどん物語が生まれはじめたのが嬉しいことでしたね。

 

星野 そう、若い世代がどんとボリュームのある、いきいきとした物語を書いてくるんですよね。本当に感心します。

 

ダンクソフトの歴史を、IT 業界や社会の出来事と共にご紹介しています
https://www.dunksoft.com/40th-history

代表取締役 星野晃一郎の「未来の物語」
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板林 「40周年特設サイト」のなかにあるヒストリーのコーナーも、星野さんによるヒストリーのコラムも、よかったですね。僕も知らないことばかりで、毎回新鮮でした。

 

星野 コラム公開後に感想を持ちよってダイアログするのが、社内の習慣として定着しましたね。メンバーから「こうして今があるんだな」「ずっとイノベーションしつづけてきたから今があるのだな」「自分たちも学んで、イノベーションが起こせるようにしていきたい」という声が聞けたのも、嬉しいことでした。

  

▎対話次第で高まるチーム力

 

星野 2022年は、対話の機会を引きつづき増やしました。物語を書いたり、対話を重ねたりする中で、一人ひとりが育ってきました。結果、チームとしての力も上がってきました。それを実感する1年でしたね。スタッフそれぞれのコミュニケーションが、とても豊かになっています。他社と比較しても、ダンクソフトでは、スタッフが自分の考えや伝えるべきことを、自分の言葉で相手に届ける力がついてきています。今年はスタッフ一人ひとりの可能性が、さらに花開いた1年だったと言えます。

 

板林 その成果が次々と形になっていく場面が、とくに秋以降に多くありました。KOSEN EXPO 2022(コウセン・エキスポ2022)CybozuDays 2022(サイボウズデイズ 2022)、DNAセミナー収穫祭。要(かなめ)となるさまざまな場で、それをすごく感じました。

 

星野 多くのメンバーたちが、部門を超えて活動に参加していたのはよかったですね。特に、今年春に新卒で入った2人が、目覚ましい活躍をしてくれました。

 

 ▎若手の活躍が光ったKOSEN EXPO 2022

 

星野 KOSEN EXPOは、高専(高等専門学校)と産業界の連携創出を目的としたイベントです。今年は10月24日(月)から28日(金)まで5日間にわたってオンライン開催されました。その中で、ダンクソフトは30分の配信を行い、全国の高専生の皆さんに向けて、「SmartOffice構想」の話をしました。

中心を担ってくれたのが、この春、阿南高専を卒業してダンクソフトに新卒で入った濱口さん・港さんの若者コンビです。そこに徳島オフィスを立ち上げるきっかけとなった竹内さん、インターミディエイターの中川さんが加わって、番組を配信しましたね。いま手がけている、学生と地域企業の連携・協働を促進するプロジェクト「ACT倶楽部」の話からはじまり、地域の若者が活躍する未来を語りました。

 

■ACT倶楽部について
dunksoft.com/message/case-bazzarbazzar-actclub

■コロナ禍のなかオンラインでインターン経験を積んだ港さん
dunksoft.com/message/2020-11

 

板林 つい、この3月まで学生だった2人が、資料作成も含めてとても頑張っていましたね。準備は大変だったはずですが、ハロウィンの仮装をして楽しそうなよいプレゼンテーションになりました。

KOSEN EXPO 2022の様子

星野 ダンクソフトに入社してからまだ約半年です。しかも、4月から週に1度の出社日以外はテレワークで働いています。それでここまで育っているのは、ダンクソフトが培ってきたテレワーク環境の質を象徴していますね。  

▎CybozuDays 2022での大成功

 

星野 11月には、サイボウズのクラウドサービス総合イベント「CybozuDays(サイボウズデイズ)」に出展しました。11月10日(木)から11日(金)にかけて、幕張メッセで3年ぶりのリアル開催でした。ダンクソフトの出展は、1コマの小さなブースでした。パネルは2枚だけ。石垣島の「はなまる学童クラブ」様の取り組み事例を紹介し、とてもシンプルなブースでしたが、大成功をおさめましたね。はなまる学童クラブの松原かいさんには石垣から来ていただき、今回ユーザーの生の声を語っていただいたんです。

 

■事例:「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に
dunksoft.com/message/case-hanamaru-kintone

 

板林 こうした展示会では、一般的に言って、サービスを提供している側が、自分たちだけで作ったものを紹介するブースが多いですね。しかし、ダンクソフトのブースはそれと違って、開発者と利用するユーザーさんが、一緒にブースに立っていたんですよね。ですから、学童を運営する現場の悩みや課題をよく聞くことができました。それらを理解しながら、ブースに訪れた方々と学童システムについてお話できたのは貴重です。開発者とユーザーが一緒にブースで来場者に応対するスタイルは、なかなか思いつかないし、思いついても簡単にできることではありません。新しい形で成功した、面白い取り組みだったと思います。

 

星野 サイボウズの営業部長にも注目されて、「ユーザーが話してくれるのがいちばんだと気づきました」と高く評価されたそうですね。  

▎横断的チームが力を発揮した

 

ダンクソフトパートナー 片岡幸人の「未来の物語」
dunksoft.com/40th-story-kataoka

星野 このCybozuDaysも、社内横断的なプロジェクト・チームによって実現したものですね。部門を超えて、入社間もない若いスタッフたちも参加したのがいいことですね。メンバーとしては、学童システム開発者でもあり、プロジェクト担当者の中さんを中心に、kintone開発を担当している片岡さん、大川さん。そこに澤口さん、徳島オフィスのメンバーやウェブチーム、企画チームからも参加し、制作物のデザインやウェブ制作、当日の幕張メッセでのブース対応など、スピード感のある横断的チームが力を発揮しました。

 

■石垣はなまる学童クラブ KINTONE通信「祝!1周年」
dunksoft.com/hanamaru/210528

  

板林 サイボウズさんとの付き合いは10年近くになりますが、以前出展した時にはあまり人が来ず、淋しいブースだったりしたのが、今年は全く新しいスタイルがつくれて、本当によかったです。

 

星野 当日は11時の開場からすぐに人が集まり始めて、ちょっと見たことがないような活況ぶりでしたよ。ただ道行く人にチラシを配るようなやり方じゃなくて、2日で100人以上の方々にしっかり話をすることができたようです。1週間を待たず問い合わせが入って次につながるなど、充実した成果となっています。よい流れができました。

▎近況からはじまるCo-learning:DNAセミナー

 

板林 DNAセミナーは年に2回開催している全社セミナーで、2006年から実施しています。今回もオンラインを併用し、ハイブリット型で開催しました。トピックの発表では、前述の港さん・濱口さんが高専エキスポの体験を話し、ウェブチームのメンバー2名が、松江でのワーケーション体験を共有しました。

 

星野 一人ひとりの近況も面白かったよね。

 

板林 はい。全社テレワークになってからは、雑談もなかなかできないので、DNAセミナーの冒頭に、各自からの5分間近況シェアを取りいれました。それぞれが工夫して面白く話していて、コミュニケーションが豊かになりましたね。チームの関係を深めるよい機会にもなりました。

 

星野 個性というか、それぞれの地域差も面白くて、ダンクソフトに集うメンバーたちはほんとに特色がありますね。前にも増して、多様性をひしひしと感じました。最近ウェブチームに入ったあるメンバーは、周囲にクヌギ林があって、カブトムシを幼虫から育てていると話しながら、実際にカメラごしにカブトムシを見せたりもしていました。

 

板林 3日前から息子を誘ってベースを始めましたと、弾いてみせたメンバーもいましたね。あと、関西メンバーはどうしてもオチをつけたがる(笑)。やはりお笑いの精神が身についているんでしょうか。  

▎一人ひとりの物語づくりと未来志向の結び目づくり

 

板林 DNAセミナーのコアの部分として、物語づくりをしましたね。それぞれが自分とダンクソフトの過去・現在・未来の物語を書く30分のグループワークです。5月のDNAセミナーでは、まだまだ遠慮がちな書きぶりにとどまっていたものが、今回はしっかりと物語の形になってきました。テーマは、ダンクソフトに入る前、入ってからどうなってきたか、そして未来に何をしていきたいか。

 

星野 みんな楽しんで書いてたね。

 

板林 そうですね、他のメンバーの物語を聞くことからの発見も大きかったです。まだまだ未来の部分が書き足りない感じなんですが、それでも聞いているとやはり大きな方向は共有してるんじゃないでしょうか。それぞれが描いた物語をつくりっぱなしにせず、孤立させずに、物語と物語の“結び目”をつくっていくのがポイントですね。それによって互いが連携・協働していくことをイメージしているのですが、今回は未来に結び目ができていく期待が持てました。

 

星野 DNAセミナーは以前から、自ら学ぶこと、そして、お互いから学ぶことを大切にしてきました。では何を学ぶのか。はっきり言えるのは、エンジニアだからといって技術だけ学べばよいわけではありません。より広く、深く、永く生かせる学びを、コ・ラーニングできるといいなと思った時に、物語の力はこれからますます重要になると考えたんですね。というのも、物語を介してコミュニケーションをすることで、互いの理解が深まるんですね。これからは多様なメンバーがチームを組み、ネットワーク的に課題解決をし、需要創造に向かうことで、社会全体がより豊かになっていく。それとともに、ダンクソフトもよりよい未来に向かっていく。ここから50年先の未来を一緒に考えてみる機会。そんなイメージでいます。板林さんはどう思いますか。

 

板林 そうですね、会社の中にこもって、コードを書いてプログラムを作る人だけと話していると、未来から逆算してつくるより、今できることだけに取りくんでしまうというか、小さくまとまった守りの姿勢になって、閉じがちです。でも本当は未来に向かってやりたいことをどうすればできるかを考えたいですね。そして自分がそこにどう関われるかをポジティブに考え、主体的に結び目をつくっていく。このとき、お互いの物語を知ることで、相手と自分の結び目が見えて、一緒にやるきっかけになっていくんですよね。未来の部分がまだみんな書き足りないので、もっと豊かにしていきながら、かつ、たくさんの結び目を見つけていきたいです。

 

星野 そのためにも、「対話」が大事ですよ。

 

神田藍のプロジェクトでも、物語を描くことによって、それまでよく知らなかった近隣の人たちやコミュニティーとのつながりができていったんですね。しかも、話がトントン拍子に進み、プロジェクトが一気に加速しました。分断が進む時代ですが、だからこそ、対話と協働で、一人ひとりの物語を丁寧に重ねていくことが大切ですね。みんなで物語をつくる取り組みは、今後も続いていきます。来年に向けて、ぜひ社外の方々とも、多様な「物語の結び目」をつくっていきたいですね。それが、イノベーションにつながっていきますので。

 

■事例:神田藍プロジェクト 〜ソーシャル・キャピタルを育む藍とデジタル
dunksoft.com/message/case-kanda-ai