CROSS TALK:ダンクの対話するエンジニアたち 


今回は、ダンクソフトの開発方針についてお話しします。お客様との持続的な対話があるからこそ、つねに先んじて変化に対応した提案が可能になります。こうしたダンクソフトのフレキシブルな開発アプローチと、まだ業界でもめずらしい“対話するエンジニア”たちの姿勢を感じていただければと思います。   

▎ずっと前からアジャイルだった 

 

星野晃一郎

星野 ダンクソフトのシステム開発は進め方が他とは違います。よく「業界のやり方にとらわれない会社」と言われてきました。今でいうアジャイル開発的なアプローチを、昔からずっと追及していたからでしょう。アジャイル開発の概念自体は、21世紀に入って生まれたものです。今でこそ、言葉も手法も市民権を得ていますが、当時はまったく馴染みがありませんでした。 

 

竹内 そうですね、少し解説すると、アジャイル開発の「アジャイル」とは、直訳では「速い、機敏、俊敏」という意味です。文字通り、開発スピードをあげて、素速く提供します。そして、設計、実装、展開を速いサイクルで何度も繰り返しながら、より発見的にすすめていくアプローチです。予め決まったゴールに向かっていって、つどつど変更できないのではなく、むしろ、予想もしなかった結果を生みだすこともできます。サービスインまでが速いことに加え、状況の変化に応じて柔軟に対応できるのが長所です。  

一方、従来型のウォーターフォール開発では、最初にゴールを明確に設定します。まず見積りと設計書を用意。その後、仕様書に従って、決まった各工程を順々に進めていきます。柔軟性には欠けますが、最初に全体像が決まるわかりやすさはあります。 

 

星野 ダンクソフトは昔から、お客様との丁寧な対話と柔軟な変化対応を大切にしてきました。対話を重ねながら、相互的に開発を進める中で、最初に想定していたゴールよりも、もっといいゴールに到達できます。そういう発見的でアジャイルな開発姿勢でずっとやってきました。技術の進化が速い業界ですから、言語や手法やサービスなど、ツールはどんどん進化します。ですが、開発ポリシーの根本は変っていません。そこに多様な経験と高い技術を持つポリバレントなエンジニアが加わって、より盤石の体制となっているのが、現在のダンクソフトなんですね。 

 

よく対話型だと時間がかかりませんかと訊かれますが、対話的であることと、アジャイル型であることは矛盾しません。むしろ、環境変化が速いですから、お客様とたえず情報をやりとりできる関係のほうがいいわけですよ。ちなみに、“対話するエンジニア”というのは、業界ではめずらしいスタイルです。 

 

※ポリバレントとは 

https://www.dunksoft.com/recruit#philosophy 

▎バラエティ豊かな背景のエンジニアたち 

 

星野 今回は、私を含めて、4人のエンジニアが参加していますが、いずれも、経歴も性格も本当に多様で個性的です。バラエティ豊かなんです。それぞれ異なる知見と経験を持つエンジニアたちがチームで協働することは、お互い刺激になりますし、ダンクソフト全体の技術が高まります。価値観も、ずいぶん多様になりました。対話する文化の浸透と相まって、次第に相乗効果を発揮し、いいダンクソフト文化を形成しています。せっかくなので、自己紹介をしてみましょうか。 

 

竹内祐介の「未来の物語」https://www.dunksoft.com/40th-story-takeuchi

竹内 ダンクソフトに参加する前は、私は地元徳島で、ジャストシステム社にいました。約10年にわたり、エンタープライズ向けソリューションや日本語入力システムの開発等に携わっていました。ダンクソフトでは、企業向けシステムや「バザールバザール」等の開発を担当しています。 

 

大川慶一

大川 私は栃木在住ですが、前職は県外の会社で、制御系のシステム開発をしていました。秘匿性の高いソース・コードを扱っていましたので、情報管理に厳しい、かなりクローズドな職場でした。オープンソースやテレワークの対極ともいえる環境でしたね。 

 

ダンクソフトに転職して以降は、地元栃木からの完全テレワークです。サイボウズ社のkintoneなどプログラミングだけでなく、Microsoft社製品やウェブサイト制作のサポートも行っています。 

 

片岡幸人の「未来の物語」https://www.dunksoft.com/40th-story-kataoka 

片岡 大学は文系学部を卒業しました。キーボードも満足に打てないのに、システムエンジニアという響きのかっこよさから、思い立って名古屋のIT企業に入社。エンジニアの道に入りました。やがて地元の高知にUターンし、教育委員会で5年間本業の一般的な事務作業などをこなしながら、平行してさまざまなIT関連業務に携わりました。その間、デジタルで効率化して得られた時間を活かして、教育委員会内で新しいことを提案したり、高知大学の大学院に進んで、学び直したりもしました。その後、教育委員会を退職、ベンチャー企業への参加を経て独立しまして、現在はパートナーとしてダンクソフトのプロジェクトに参加しています。 

▎肌で感じていた、ウォーターフォール型の限界 

 

星野 私たちが今でいうアジャイル型開発を独自に手探りで実践していた時代から、いよいよ本格的にアジャイル開発の手法を取り入れていくことになったのが、2015年です。「バザールバザール」の開発に乗り出した時でした。 

 

竹内 まずはセオリー通りの方法を忠実に取り入れてみようと考えて、アジャイル開発の具体的な手法の1つであるスクラム開発を採用しました。 

 

星野 片岡さんがジョインしたのが、ちょうどこのタイミングでしたね。 

 

片岡幸人

片岡 はい。当時私はアジャイル開発にいくつかの疑問をもっていました。というのも、名古屋のIT企業時代の頃から顕著でしたが、まず見積が重要になるケースがやはり多いですね。最初に予算と全体像を決めてスタートする進め方が、どうしても打破できない。こういうクライアントに対して、アジャイル開発の手法は使えないと思い込んでいたんです。 

 

でも、実際のところ、うまくいっていないプロジェクトを見ると、失敗の原因はだいたいの場合、クライアントとのコミュニケーション不足です。早い段階でコンセンサスがとれていないことがトラブルの原因となっていることがほとんどなんですよ。回避するためには、少しでも早くモックアップを見せ、イメージを共有しながら進めていくこと。勝手に一気につくりすぎない。それって、結局はアジャイルなんですよね。  

▎互いに変化していく“顧問型プロジェクト” 

 

「大田・花とみどりのまちづくり」様を紹介したコラム、『「人を幸せにするシステム・デザイン」をIMAGINEする』 
https://www.dunksoft.com/message/2022-03 

星野 ダンクソフトでは“顧問型プロジェクト”と呼んでいるものがあります。お客様との対話を重視し、連携しながら開発と刷新を繰り返していく進め方を言います。例えば、大川さんが担当したNPO法人「大田・花とみどりのまちづくり」様のプロジェクトは、その好例のひとつとして、以前、コラムでも紹介しました。 

 

大川 私も、前職では完全にウォーターフォール型でした。ダンクソフトに入って初めて目の当たりにした“顧問型プロジェクト”の進め方は、とても新鮮で魅力的でした。大田・花とみどりのまちづくり様のプロジェクトでは、月1回の定例ミーティングを重ねるなかで、お客様が次第に自律的になっていって、自分たちの手でデジタルにチャレンジしていかれる姿に感動しました。 

 

星野 そこは大川さんの持ち味も大きいですよね。エンジニアでありながら、パソコン初心者にもわかりやすい、やわらかい言葉でデジタルを説明してくれます。なにより、お客様と丁寧に対話を重ねていますよね。それによってお客様が一緒になって変わっていく様子が見られます。お互いに学びあって、自律的に育つ環境が生まれたのはなかなか誇らしいことです。  

▎リバース・メンタリングは、開かれた社会の入り口 

 

星野 先ほどのケースはご高齢の方々が運営する団体で、大川さんという孫ほどのエンジニアとCo-learningの関係(互いに学びあう関係)ができました。こんなふうに、うんと若い人からデジタルを学ぶ時代が、もうそこまで来ています。これを「リバース・メンタリング」と言います。その動きは、今後間違いなく加速していくでしょうね。 

 

片岡 そうですね、子どもはどんどん進化します。私の子供も、スマホで話しながらチームを組んで、PCのオンライン・ゲームをやりながら、TVのYouTubeで攻略動画を流し、マルチタスクでデジタルを使いこなしています。順応力が高いんですよ。けれども、まだまだ学校の尺度では、子供のデジタル活用は悪とされることも多いんです。大人がそれを邪魔することのない社会をつくっておかないといけません。 

 

竹内 日本のデジタル化がまだまだだ、ということを星野さんもよく話していますが、日本は、多様性への許容も、ずっと乏しかったのだと思います。世界のなかでもずば抜けて変化が好きでない性分。新しいシステムにのりかえる、そうしたイノベーション・コストを受け入れるのが苦手な人たちというか。そのような考え方は変えていかなければ、と思いますね。 

 

大川 想起されるのは、台湾のコロナ対策の機敏さです。2020年に、IT担当大臣のオードリー・タンが、広く国民の意見をききながらシステムをつくり、広く人々が参加できる場をつくりました。何かと囲い込んで、クローズド環境でプロジェクトをすすめる日本とは、あまりに対照的です。すべてがオープンソース化されている状態がいちばん幸せだと考えています。そういう社会をめざしたいですね。  

▎人々の善さが引き出されるインターネット空間とは 

 

星野 いかにソーシャル・キャピタルを高めて、コミュニティを活性化していくか。これが今、とても重要だと考えています。そのためのコミュニケーション環境を充実させることは、デジタルの大切な役割のひとつです。そこでダンクソフトでは、このことを念頭に、現在、「バザールバザール」のバージョン・アップを進めています。 

 

竹内 もともとバザールバザールは安心・安全な場を提供することを理念としてきました。これに加えて、人の善さが自然と引き出される、いわば性善説が機能する雰囲気・空間にバージョン・アップしていきたいと考えています。 

 

竹内祐介

やらないと決めていることは、既存のSNSとの比較や競争ですね。逆に、ぜひ取り入れたい機能としては、「インターミディエイター」の特徴をバザールバザールに積極的にフィードバックしていくことです。インターミディエイターとは、人と人のあいだを上手に結んで、対話と協働を促進する役割です。 

 

バザールバザールを使うと、さらに対話が活性化されるものにしていきたいと検討しています。具体的には、お互いが大事にしている未来志向の物語を関連づけたり、その結果、参加者(ユーザー)の積極的な参加・関与をうながしたり、使えば使うほど、使う方の可能性が引き出されたりといったあたりを実現したいですね。 

 

また、アジャイルっぽい考え方なのですが、つくり手が使い方を決めすぎない、遊びを持たせた場にしようとも、考えています。私たちが思いもよらなかったような使い方をしてもらえると嬉しいです。  

▎デジタル化で、より楽に仕事ができる環境を 

 

星野 ダイアログが活発になるというのは期待がかかりますね。ダンクソフト・バザールバザールは、コミュニティを形成していくうえでますます重要なツールとなっていきます。実際、阿南工業高等専門学校のACT倶楽部で採用いただき、そこから他の高等専門学校へも、バザールバザールの輪が広がっています。 

 

ダンクソフトの“さきがけ文化”を体験するインターンシップ 
https://www.dunksoft.com/message/2021-10   

事例:学生・教員・企業による対話と協働をデジタル・ツールで支え、地域イノベーションを次々と創出する高専の未来 
https://www.dunksoft.com/message/case-bazzarbazzar-actclub    

「テレワーク」をテーマに阿南高専で特別講義を実施 
https://www.dunksoft.com/news/2019/9/11    

高専×産業界 KOSEN EXPO 2022 
https://expo2022.kosen-k.go.jp/   

星野 一方で、社会全体を見ると、デジタル化がまだまだ、という印象です。河野太郎さんがデジタル大臣に戻ってきましたが、一昨年の3月、河野さんにオンライン上でFAXをやめることを進言しました。しかし、実際にはなかなか減りません。 

 

時々思い出すのが、以前、萩の立明木(あきらぎ)中学で授業をして、先端を示したときのことです。子どもたちは感激して喜んでくれました。あの子たちが大人になって就職し、会社でFAXを使うという未来は避けたい。また、デジタル化の名目で複合機を普及させる会社が多いですが、それではペーパーレスは進みません。 

 

こんな状況がまだまだ多いのですが、私たちはデジタル・デバイドの解消とスマートオフィス構想を着々と進めています。そのかなめになるのは、こうした“対話するエンジニア”たちです。ますますデジタル化を進めて、より楽に仕事ができる環境を、ぜひ多くの方々に整えていただきたいですね。