#kintone

事例:受注者・発注者という枠を超え、アイディアを出しあい実現した「働き方改革」

お客様:一般財団法人 地域活性化センター 様


kintoneを使った電子決裁システムの導入で、業務効率を大幅に改善し、「働き方改革」を実現された 一般財団法人 地域活性化センター 様。ひとづくり、まちづくりなど地域社会活性化のための諸活動を支援し、地域振興の推進に寄与するために、1985年10月に設立された団体だ。職員79名のうち、約8割の63名が地方公共団体等からの出向者で、ほとんどの出向者の任期が2年のため、毎年多くの職員の入れ替えが起こる。また、職員の総出張数が年間800以上という業務上の特殊性があり、電子決裁システム導入、情報のデータベース化が急務だった。

2023年4月から運用を始めた電子決裁システムが軌道にのり、すでに第2フェーズがはじまっている。今回は、地域活性化センターの総務課で情報担当をされている西田周平さんにお話を伺った。


■約8割の職員が、地方公共団体等からの出向者

地域活性化センター、オフィスの様子

地方創生を実現するために様々な事業を展開している 地域活性化センターの職員は、現在79名。その約80パーセントにあたる63名が、地方公共団体等からの出向者である。ほとんどの出向者の任期は2年のため、毎年多くの職員が入れ替わる。人の出入りが激しく、出向元へ戻る職員と、新たに出向してくる職員に接点が必ずしもあるわけではない。このような要因が重なり、過去の情報がうまく引き継がれていないことが、長年の課題となっていた。

「過去の資料やノウハウのすべて紙ベースで蓄積されていて、データベースとしてまとまっていませんでした。必要な情報が見つからない、引き出すのに時間がかかることがよくあり、とても効率が悪かったです」と、西田さんはかつてのワークスタイルを回想する。

また、年に800件を超える出張が発生するにも関わらず、出張申請は紙で提出する必要があった。オフィスに出勤しないと申請できないうえ、承認する人が出張や休暇中の場合は、そのプロセスがストップしてしまう。承認者の机やポストは申請書であふれ、書類を紛失しそうになったり、出張の日までに決裁が間に合わないこともあったそうだ。

以前は、ポストや机に申請書があふれていた。

西田さんのデスクやポストにも、1日でも休むと決裁を必要とする書類が山積みになっていたという。「休暇明けに出勤してまずすることは、ポストと机に山積みになっている決裁が必要な書類をかたづけること。半日が過ぎてしまうこともあり、休み明けは少し憂鬱でした」(西田さん)。

2022年、「長期的な視点をもってデジタル化に取り組むべき」と、センターの新方針が発案され、西田さんが情報担当に任命された。それまで、「たまたまデジタルに詳しい出向者」がなんとか回していたセンターのデジタル化は、西田さんと数名の職員を中心に、出向者も交え、本格的にスタートすることになった。

■現場の意見を最大限に反映しながら進めるアジャイル開発

ダンクソフトをシステム開発のパートナーとして選んだ理由は、いくつかある。まず、今までにも多くの財団やNPO法人などへのシステムを開発していることで、安心感を得られた。また、ダンクソフトが得意とする “アジャイル開発” が、センターには適していると感じたことが大きかった。

「職員全員が新システムを使わないことには、導入の意味がありません。ですので、いったん導入をした後で、実際に使う現場の意見を聞きながら、システムに落とし込んでいく “アジャイル開発”が、私たちにはあっているのではと思いました」と、西田さんは言う。

この聞き慣れない “アジャイル開発” に難色を示した職員もいた。あらかじめゴールを明確に設定し、仕様にそって開発、出来上がった完成品が納品されるウォーターフォール型の開発に慣れている職員たちもいた。「ただ、無理に進めるのではなく、実際に使う職員には、丁寧に話していきたかったのです」(西田さん)。

左:お話を伺った西田周平さん、右:前事務局長の杉田憲英さん

実際、プロジェクト監修を担うダンクソフトの片岡幸人は、打ち合わせで見る西田さんの振る舞いに着目していた。「西田さんの伝える力が強いんですよ。伝え方が丁寧で、適格で、やわらかく、腑に落ちる。私たちも学ぶところがたくさんありました」と、片岡はプロジェクト開始時を振り返る。当時、事務局長をつとめていた杉田憲英さんの強い後押しも、プロジェクトを大いに前進させた。西田さんの丁寧な説明、ダンクソフトの適切なアドバイスなどが功を奏して、いよいよシステム開発がはじまった。

■受注者・発注者という枠を超え、アイディアを出し合う 

“アジャイル開発”では、ある程度運用できる状態のシステムをまず初めに導入する。その後、実際に使ってみて、課題や改善点があれば、その都度解決していくことを繰り返す。隔週で行われる定例の打ち合わせでは、他部署の職員も交えてアイディアを出し合った。西田さんは「発注者、受注者でなく、お互いにアイディアを出し合って、より良いものをつくれたことが、今回の開発の肝でした。ダンクソフトさんとは、同じ目標に向かって協働できたことがとても良かった」と、振り返る。

「アジャイルはひとつのチーム。一緒にアイディアを出し合って、ともに創っていかれたことが本当に良かった。」と、片岡もプロジェクトで感じたセンターの協働力を評価する。

プロジェクトメンバー

■業務プロセスを見直し、組織としても成長

それまでの出張申請には、複雑なマクロを駆使したエクセルを使用していた。その形式をそのままkintoneのアプリに落とし込むこともできたが、今回は新しいことを試みた。それは、システム開発と同時に「業務プロセスの見直し」をしてみることだった。「現在の業務プロセスに合わせてシステムを組むのではなく、システムに合わせて業務をシンプルにしていくことが、効果が高いことに気がつきました。ダンクソフトさんにご提案いただいたその点は、特に大きな学びでした。組織としてもひとつ成長ができました」(西田さん)

連動して、決裁の階層も見直された。今まで決裁の承認者となっていたが、回覧のみで十分だった人を分けて、承認の階層を減らしたのだ。地方公共団体のデジタル化にも精通する片岡は、「決裁の方法を変えるのは、団体にとっては大きな決断だったはずです。でも、元のやり方を残して複雑なシステムを作って、結局使えない人がでてくると、元も子もない。システムは導入がゴールではなく、そのシステムによって業務が改善されて初めて、本当のDX改革がなされていると思います。その意味で、最後までやり切って素晴らしい成果です」と語る。

■成果は上々、約9割の職員が「時間を短縮できた」と高評価

2022年11月から開発をスタートし、2023年3月に職員向けの導入説明会、4月から本格的に運用開始と、プロジェクトは順調にスピーディに進んだ。導入する際になにか問題がなかったかとたずねると、デジタルが当たり前の年代の職員が多く、比較的すんなりと新しい仕組みを受け入れてくれたという。

「システム自体が使いやすくデザインされていましたし、デジタルが得意でない方々には、とにかく丁寧にフォローしました。また、詳しいマニュアルもkintone上に作りましたので、それを参考にしている職員もいます」(西田さん)。

導入後に集めた職員のアンケートでは、「起案の手間が減った」「決裁に要する時間が飛躍的に短縮された」「過去の情報が探しやすくなった」など、たくさんの好意的な意見が寄せられた。実に、約9割の職員が「起案や申請、決裁にかかる時間を短縮できた」と答えた。

承認する側の職員からも、「外出中にスマホでも決裁ができるようになり、本当に楽になった」という意見が寄せられている。「出向元の自治体でも、センターのような電子決裁をとりいれていきたい」という前向きなコメントもあった。自らが “地域力創造大学校®”としての役割があると標榜するセンターで、自治体職員が出向時に、新しい働き方改革を体験してから地元に戻れることも、波及効果のひとつとして大きい。

「新システムの導入はセンターとしては大きな転換でした。最初は心配でしたが、みんなが好意的に受け入れてくれて、大きな混乱もなく安心しています。今は出勤中の電車の中からも、出張の移動中も、昼食中でもスマホを使って決裁ができるので、憂鬱が解消されました」と西田さんは微笑む。決裁途中の申請も、今は、どこでストップしているかすぐに検索できるようになっている。

以前は決裁を必要とする書類がポストにあふれていた

現在はあふれている書類もなくすっきりしたセンターのポスト


■ 地域活性化センターの「働き方改革」は続く

現在、センターのデジタル化は、第2フェーズが始まっている。


「セミナーの運営業務について、受付から企画、実施後のアンケート調査までをシステム化していきたいと考えています。今までは、情報が一元化されていなかったので、セミナー内容や参加者の名簿、講師のリスト、アンケートなどをうまくデータベース化して、その次のセミナー企画に活用していきたい。その次は、今まで発行してきた情報誌の記事をデータベース化して、会員の方たちが記事の内容で検索できたりするシステムを作ってみたい。センターがもっている有益な情報を地域に還元したり、有効活用する方法を模索しているところです」と、次々に未来への構想が西田さんからあふれ出す。


「組織を運営していると、業務形態が変わったり、社会上のルールが変わったりするので、システムを柔軟に変えていく必要があります。現場の意見も聞きながら、ダンクソフトさんのアドバイスもとりいれつつ、これからも柔軟に対応していきたいですね」(西田さん)。


プロジェクトを担当された西田さん自身も、プロジェクト担当をすることでエンパワリングされている。導入したkintoneは、プログラミングの知識がなくても、アイディア次第でいいものができる特色がある。西田さんは独自でkintoneの学習を進め、日々の業務の中で、デジタル化できそうなことを見つけては、自身でkintoneのアプリを作り始めている。「ダンクソフトさんと一緒に仕事をして新しいことを学び、とても楽しかった。今も、働き方が変わるようなデジタル活用を考えるのが楽しい」と目を輝かせる。


プロジェクト・チームのダンクソフト中香織は、自発的に担当者がアプリ開発をするようになったことを喜び、この動きに期待を寄せている。


「ダンクソフトが第1フェーズで作ってきたことは、今の西田さんだったらできるのではと思うぐらい、ご自身で学ばれているんですよ。プロジェクトも第2段階に進んでいますが、組織もスタッフも、第2段階に突入しています。そのうち私たちダンクソフトのご支援がなくてもアプリ開発ができていきそうですが、それが理想の形かもしれません。ご一緒に学びあいながら、進化していけたらいいですね」(中)。


地域活性化センターの「働き方改革」はまだまだ続く。


■    導入テクノロジー

  • kintone

  • 顧問開発

※詳細はこちらをご覧ください。https://www.dunksoft.com/kintone

■    プラグインの開発

地域活性化センターの業務の特徴と職員の使いやすさを追求するために、今回、いくつかのプラグインも作成した。プラグインとは、必要な所に自由に組み込むことができる拡張機能のことだ。このプラグインによって、画面が見やすくなり、感覚的にシステムを活用できるようになる効果が期待される。西田さんがご自身で作ったシステムのマニュアルにも、このプラグインを使っている。

ダンクソフトが作成し、地域活性化センターへ提供したプラグインの一部を紹介する。

① 24時以降の時刻をプルダウンで入力できるようにする時刻入力プラグイン

通常の時刻入力フィールドだと、23:59までしか入力ができないが、超過時間勤務を入力する際には24時以降の入力が必要だった。

② kintoneの複数レコードの内容を、1つの文書のように表示するプラグイン

これにより、kintoneや業務のマニュアルをkintone上で使いやすく作成することができるようになった。


③ 指定した条件で、指定したフィールドのみを編集できるようにするプラグイン

フィールドごとに編集の権限を設定したい際に、編集可能なフィールドを選べるプラグイン。


■一般財団法人 地域活性化センターとは

一般財団法人地域活性化センターは、活力あふれ個性豊かな地域社会を実現するため、ひとづくり、まちづくり等地域社会の活性化のための諸活動を支援し、地域振興の推進に寄与することを目的として、1985年10月に、全国の地方公共団体と多くの民間企業が会員となって設立され、平成25年4月に一般財団法人へ移行いたしました。

地域力創造大学校®としての存在であることをめざし、「地域づくりはひとづくりから」を基本理念として、地域活性化や地方創生を担う人材を育成するとともに、相互の情報交換やネットワーク構築のための場を提供しています。

また、地方公共団体と協働で、中長期計画に基づいてさまざまな人材育成メニューを組み合わせた「人材育成パッケージプログラム」や、地域活性化センターが提供する各種セミナー動画をアーカイブ形式で提供するなど、人材育成に係る事業の拡充を図っています。

https://www.jcrd.jp/about/ 

事例:前例のなかったNPO評価認証プロセスをシステム化、効率と高品質を同時に実現へ

お客様:公益財団法人 日本非営利組織評価センター(JCNE)様

 

公益財団法人 日本非営利組織評価センター(以下:JCNE)は、2022年4月から、NPO(非営利組織)を対象とした組織評価制度「ベーシックガバナンスチェック」について、kintoneによる管理・運用システムを開始した。エクセルやメールを使っていたかつての申請プロセスが、フォームに入力するスタイルへと簡素化。その結果、導入から半年足らずで、団体内の事務作業が効率化されただけでなく、利用団体の手続き負荷が軽減されるなど、すでにいくつもの成果があがっているという。今回は、新しいシステム導入の経緯や効果について、JCNE事務局の村上佳央氏にお話をうかがった。


 ■目の前の業務に追われ、後回しになっていたシステム改善

 

JCNEは、2016年の設立以来、NPOを対象に団体の組織評価・認証制度を提供している。NPOにとっては、JCNEのような第三者機関から評価を受け、ガバナンスをみなおすことが、団体の基盤強化につながる。加えてJCNEでは、集約した評価情報を関係機関へ提供したり、広く公開することで、NPOの信頼性や認知向上に貢献している。近年では、助成財団が助成対象となるNPOを審査する際に「ベーシックガバナンスチェック」の利用を推奨するなど、JCNEの評価制度にますます注目が集まっている。

https://jcne.or.jp/data/gg-voice2022.pdf 

グッドガバナンス認証を取得した団体を紹介する「Good Governance Voice」。応援したい団体を見 つけることができるガイドブックとなっている。

「全国レベル、分野共通の非営利組織の評価機関の設立は初の試みです。ですので、日本社会においての『組織評価制度の確立』が、当初、JCNEの大きな課題でした。」と本プロジェクト主担当である村上佳央(かなか)氏は、スタート当時を振り返る。NPOは規模も分野も多岐にわたり、企業に比べて運営体制も脆弱な団体が多い。その状況を考慮しながら、どのような指標やデータを評価対象とするかなど、制度をゼロから設計するところに工夫が必要だった。 

現在、JCNEは「ベーシックガバナンスチェック」「グッドガバナンス認証」という、2段階の評価制度を提供している。申請件数は年間数百。これだけの申請数をわずか5名の事務局員で対応している。これまでは、データはすべてExcelで管理し、申請団体とのやりとりもメールが中心だった。そのため、申請団体からのちょっとした登録内容の変更依頼に対しても、その都度スタッフが手作業で対応する必要があった。

「団体の評価情報を適切に管理したり、もっとデータを活用したくても、手作業の多いExcel管理に追われ、人的リソースを割けずにいました」(村上氏)と、普段からもどかしさを感じていたという。こうした管理体制は、事務局と申請団体の双方に負担がかかり、変更漏れや入力ミスといった情報管理上のリスクも含んでいた。 

JCNE事務局の村上佳央氏。「以前働いていた印刷会社が、大量のゴミを出して環境を害していることに疑問を感じ、NPOへの転職を考えた」という。村上氏は、職場の同僚が、近くにある有名なNPOのことさえ知らなかったことに課題意識を抱き、NPOの認知向上に寄与するJCNEへの就職を決意したという。

■ダンクソフトの「NPOへの実績」と「評価制度への理解」が決め手に

 

 そこで、業務の手間を減らして効率化していくことが、より質の高い体制や、多くの団体評価を実現してNPOの信頼を高めることにつながるだろうと、JCNEの業務改善に取り組むこととなった。NPO業界では、業務プロセス改善にkintoneを使っている団体も多いことから、今回、JCNEもkintoneを使うことを決めた。kintoneの無料相談窓口に問い合わせると、複数の企業を紹介された。その中から、最終的にダンクソフトへ依頼することとなり、2021年12月に、本プロジェクトがスタートした。

 

「ダンクソフトさんは、理解することがなかなか難しいJCNEの評価制度について、提供した資料以上のことを理解しようとしてくださいました。このことが決め手になりました。」と村上氏は振り返る。

 

また、ダンクソフトがサイボウズのパートナー企業であり、NPOへのkintone導入実績が充実していることも、安心感につながったという。

 

「実は“評価”というのは、システム化するのが一番むずかしい分野なのです」と語るのは、ダンクソフトの片岡幸人だ。片岡は、サイボウズ社公認のkintoneエバンジェリストでもあり、今回導入したシステムの全体設計を担当した。JCNEの評価制度は仕組みが緻密で、評価項目も多岐にわたる。このことから、kintoneでのシステム化や運用は、相当にハードルが高いものと予想していた。

 

しかし、実際には、予想以上にスムーズに初期バージョンを完成させることができた。それは、JCNEのシステム化チーム(村上氏・浦邉氏)と、ダンクソフトの中香織が中心となって、対話的なプロセスを重視したことが大きな要因だろう。

 

JCNEには当初から、「こういう課題を解決したい」という明確なイメージがあった。また、中香織はウェブ・デザイン出身の強みを活かし、JCNEの課題に対して、ユーザーが使いやすいUIデザインの提案を続けた。相互に対話を重ねながら、徐々にシステムを形にしていき、運用がスタートしたのは、2022年4月。最初の問い合わせから、わずか4か月で導入に至った。

 

■kintone導入で実現した3つのシステム改善 

kintoneによるシステム化によって、JCNEが重視していた点が、いくつも改善している。ここでは、その中から3つのシステム改善を紹介する。

 

1つ目は「長期的に継続利用できる団体データベース」であること。

kintoneによる管理ページの一部。団体の審査ステータスが視覚的にわかりやすく、別ステータスのレコードにも簡単に移動できるステータス・バーが実装されている。

JCNEの評価制度は、認証が得られたら終わりではなく、3年ごとに更新をおこなっている。また不足があって認証されなかった団体からも、再評価申請を受けつけている。そのため、1回の申請で終わりではなく、長期的に活用できるデータベースである必要があった。更新や再審査にまつわる情報もすべて含めて管理できることで、申請団体を長い目で見守ったり、長くお付き合いしたりすることができるようになる。

2つ目は、「ユーザーが使いやすいレイアウトの実現」だ。

これまで利用していたExcelのレイアウトをベースにデザインされたデータベース。従来のレイアウトにそったUIにすることで、スタッフの負荷なくkintoneのシステムへと移行できた。

kintoneは情報を上下にレイアウトしていくのが得意なアプリだが、JCNEではExcelで使っていた横長レイアウトに馴染みがあった。そのため、「横長のレイアウト」へのリクエストに対応。スタッフが慣れ親しんだフォーマットを尊重したデザインとなった。小さな工夫ではあるが、もたらした成果は大きい。スタッフたちが新しい業務プロセスへ移行する際の負担を、大幅に減らすことに貢献した。

 

3つ目は、「団体用マイページの作成」である。

これまでメールで届いた登録内容の変更はJCNE事務局が修正し、評価結果のステイタスはメールで連絡していた。それが、すべてマイページ上で、申請した団体が自分たちで更新やステイタスの確認をできるようになった。この機能は申請団体からも好評で、「マイページであらゆる手続きができるため、以前よりプロセスがスムーズになった」と嬉しい声も多数届いている。

申請団体が利用するマイページ「じぶんページ」(左)。申請団体は、評価の進捗状況の確認や登録内容の更新をマイページでいつでも自分の手でおこなえる。右図では、提出書類のチェック結果が表示されている。

■「アジャイル方式」で、お互いの専門を超えた協働が実現

 

とはいえ、前例のないシステムづくりゆえに、想定外の事態も起こった。

 

「一言に“NPO”といっても、規模も分野もさまざまです。ですから、いざ新しいシステムで申請が始まると、ほとんどがイレギュラー対応という感じでした」と、村上氏は振り返る。運用が始まったばかりのシステムではまだ対応できない、想定外の申込内容が、システム導入後に次々に届き、その度にシステム修正の必要性がでてきた。

 

新たに表出した課題ひとつひとつに対して、ダンクソフトはスピーディーに柔軟に改善していき、システムは、多様な団体の申請にこたえられるように進化していった。これは、ダンクソフトの顧問型支援の特徴でもある。世の中では「アジャイル方式」とも呼ばれ、小さな単位で開発と実装を繰り返すため、開発がアジャイル(機敏)になるというものだ。

 

「まだまだ制度が確立しきっていない私たちからすると、できるところから改善して、新たな課題が見つかったら改善して・・・、というやり方はとてもフィットしました。NPOやJCNEに向いているスタイルでした」(村上氏)

 

また、対話を重視するダンクソフトとの協働スタイルについて、村上氏はこう振り返る。「NPOのよりよい組織づくりには、NPOの専門家だけでなく、それを形にするシステムの専門家も加わって、両者による連携が必須です。今回のシステム導入がうまくいったのは、システムの専門家であるダンクソフトさんが、JCNEの組織評価制度を本当によく理解してくださっているからだと思います。私たちにとって、ダンクソフトさんは評価制度を推進するパートナーですね」。 

 

■デジタルでまだまだ広がるNPOの可能性

 

kintoneのシステム導入からまだ半年足らずであるにも関わらず、単なる業務効率化にとどまらない効果がすでにあらわれている。(2022年9月現在)

 

まず、サポートが必要な団体へのフォローや、評価にかかわる業務など、本業や今まで手の届かなかった業務に注力できるようになった。また、ダンクソフトが作成したマニュアルを活用することで、これまで担当者ごとに微妙に異なっていた管理ルールが統一され、データ管理リスクが軽減された。さらに、申請団体側のプロセスも、わかりやすくスムーズになった。「“評価”というと、ハードルが高いものと思われがちですが、そのハードルをいかに下げられるかという点で、今回のkintoneによるシステム化が大きく貢献しています」と、村上氏は嬉しそうに語る。

 

今回のシステム化の成功を受けて、JCNEではすでに今後実現したいプランがいくつも出てきているようだ。

 

「信頼性の証」となるグッドガバナンス認証マーク
https://jcne.or.jp/evaluation/good_governance/

ひとつは「グッドガバナンス認証」へのkintone導入だ。「グッドガバナンス認証」は、今回システム導入をした「ベーシックガバナンスチェック制度」のアドバンスド版である。評価項目がさらに多く、数値では表現しづらい団体の想いやヒアリング情報も扱う必要がある。こうしたデータをどのようにハンドリングしていくかなどの難しい課題はあるものの、今後チャレンジしていきたいという。

 

 また、「評価情報の活用」を、デジタルでさらに有効にしていくという展望もある。今回のシステム化によって、蓄積したデータをいかす基盤ができあがった。研究機関へデータを提供したり、一般の方々がNPOを検索しやすくするために用いたりなど、デジタルによって新たなデータ活用の可能性がうまれている。

 

さらに、「グッドガバナンス認証団体のコミュニティづくり」も、次に実現したいことのひとつである。JCNEでは、グッドガバナンス認定を受けたNPOの優れた組織運営ノウハウを、他のNPOへシェアするコミュニティをつくることで、NPO組織全体の底上げに寄与したいと期待を寄せている。ダンクソフトでは、デジタル化の価値は、単なる効率化にとどまらず、その先のお客様や関係者とのコミュニティを活性化するところにこそ、活用の真価があると提唱している。

 

村上氏は、「ほとんどのNPOは、どうしても自分たちの“事業”やその成果に重きをおきすぎています。組織評価を通じて、自分の“組織”にも目を向けてケアをしたり、足元をかためることに力を割いていただきたい」と述べる。さらに、JCNE自身も、グッドガバナンス認証を600団体にするという、次の目標を掲げている。「自身の団体力強化にも目を向けていきたい。そのためにも、これからも、ダンクソフトさんと協働しながら、徐々にシステム改善を続けていきたいとも思っています」と、今後の展望に胸を膨らませた。 


■導入テクノロジー

  • kintone

  • kintone顧問開発

※詳細はこちらをご覧ください。https://www.dunksoft.com/kintone

 

■ 公益財団法人 日本非営利組織評価センター(JCNE)とは

https://jcne.or.jp/

2016年に設立した非営利組織(NPO)。「グッドガバナンス認証」と「ベーシックガバナンスチェック制度」という組織評価制度をつうじて、NPO組織の基盤強化をおこなうとともに、その評価情報を活用することで、NPOの信頼性向上と認知向上にも取り組む。また、世界約20ヶ国の評価認証機関からなる国際ネットワーク「ICFO」に加盟し、加盟団体との意見交換や最新の情報収集をおこなっている。