「未来通帳®」─時間を生み出すコツとその恩恵とは─

ダンクソフトでは40周年を機に、「未来通帳®」の開発を、新たに進めようとしています。先月のコラムでは、青写真をみなさんと共有しました。今月は、未来通帳®をつかって「時間預金」をすると、どんな未来がまっているのか。時間預金するコツやそれによっておこる恩恵について、イメージをお話しします。 



■人にとって最大のリソース、それが「時間」   

「未来通帳®」については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。

『“時間預金”でウェルネス豊かな社会を ―「未来通帳®」の描く未来―』
https://www.dunksoft.com/message/2023-08

未来通帳®は「時間」にフォーカスするツールです。デジタルを使って人々の手間を省くと、その分、時間が生まれます。そして、その時間、つまり時間を未来に向かって何に使うか、あれこれ構想したくなるサービスです。資産運用というと、なにかと「お金」の話ばかりになりますが、時間もまた、私たちがもつ最大の資産です。 

でも、すべての人々が忙しく、速いスピードで動く現代社会です。日本は14年連続で人口が減少しています。今年は、初めて47都道府県すべてで人口減少が認められたそうです。これまでの量的拡大を前提とした社会に変わり、これからは一人ひとりの生活の質を豊かにするために、そろそろ「時間」というリソースについても、語られるべき時代です。 

 

多くの人は、お金は貯められても、時間は貯められないと考えているようです。でも、ほんとうにそうでしょうか。無駄な作業をそいで、時間を貯め、その時間をより有効に使う。「時間預金」というアイディアについて考えてみたいと思います。   

■効率化が時間を生みだし、提案の質を高める   

ダンクソフトのペーパーレス化について、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

『理想的で機能するテレワーク環境づくり:発想転換のポイント』
https://www.dunksoft.com/message/2021-05 

ダンクソフトは完全ペーパーレスです。紙の書類や印鑑を使わず、「日報かんり」など自社開発のソフトウエアを利用することによって、事務処理の時間は最小限に抑えられています。日報かんりを使用する前と比べて、事務処理にかける時間は10分の1以下になりました。 

 

これまで事務仕事にあてていた時間が大幅に削減されたことで、私たちはその時間をお客様への提案のブラッシュアップに充てることができました。以前なら、「完成した」と思って終えていたところから、さらにひと手間かけて、クオリティを高めることができます。そうしていくと、ウェブサイトもシステムも、お客様にとって、より使いやすいものになるのは明らかですよね。私たちの業界では、このように改善スパイラルをどれだけ繰り返せるかが、質を決める生命線。たいへん大事なことです。 

  

ダンクソフトが、お客様によい提案ができるのは、スパイラルを繰り返す「時間」があるおかげですね。何度も見直して、細かなところを改善することができます。創った時間を、一人ひとりの学びにあてることも、ダンクソフトでは推奨しています。デジタルの分野は日進月歩ですので、次のテクノロジーを常に学んでいくことはとても大切です。結果的に、お客様に喜んでもらえますし、他社とクオリティの面で違いを出せる。開発者も仕事にやりがいを感じることができます。  

■時間預金で、子育て・介護、そして地域貢献も可能に 

プロジェクトの充実だけでなく、それぞれがゆとりをもって子育てや介護などもできるようになるのもプラス面ですね。会社全体で見ても、一人ひとりに時間の余裕がある状況は、休暇の取りやすさと直結しているのが分かります。それぞれの事情にあわせて、働く時間をコントロールできるようになりますし、助け合う余裕も出てくるんですね。 

  

徳島オフィスの竹内 祐介の”物語”はこちらをご覧ください。
https://www.dunksoft.com/40th-story-takeuchi 

さらに、効率化で預金した時間を使って、地域との関わりにも参加できるようになります。徳島オフィスの竹内は、そのモデル・ケースですね。地元・徳島を離れずにダンクソフトで働きながら、徳島県主催の「未来創造のための若手部会」に参加したりしていました。今も、阿南工業高等専門学校(高専)で授業をうけもち、若手の、つまり未来人材の育成にたずさわったりしています。効率化して捻出した時間預金で、ダンクソフトのメンバーによる地域貢献が実現しています。 

 

このように、働く人たちそれぞれが“時間を生みだす”ことは可能ですし、またそうすることで、企業のなかだけでなく、家庭や地域にまで、いい影響が及びます。未来に向けて、いいサイクルがまわりだすことを実感しています。  

■人生を大事にするヨーロッパの文化 

 人として生きていくうえで、時間がいかに大事なのか ──。 

ワールドカップを見に行った時のエピソードはこちらのコラムをご覧ください。

『HISTORY3:「インターネット」をいち早く実験、フランスへの旅で可能性を確信(90年代後半)』
https://www.dunksoft.com/message/2022-05 

こんなことに気づいたのは1998年、フランスにワールドカップを見に行ったときのことでした。当時の日本チームは、まだ世界レベルではなかったので、日本が出場できるのは一生に一度の機会だろうと思い、気合を入れて2週間の休みを取りました。 

 

現地は、サッカー好きの人々が、さまざまな国から集まっていました。彼らと話していると、2週間の休みは短すぎると口々に言うのです。「もっと休みを取らなきゃダメだよ」と、どこに行っても言われました。このとき、ヨーロッパの人々は、人生を随分と大切にしているように思ったんですね。休暇をしっかり取って、のんびりと旅行したり、何もしない時間を楽しんだり。 

 

一方、日本はといえば、前回2022年のワールドカップのときに、スタジアムで「2週間の休暇をありがとう」と上司への謝辞を掲げた人が話題になりましたね。あれから20年以上たっても、いまだに日本では休みをとるのが難しいことがわかります。   

■時間的にも、空間的にも、「バッファ」を 

「バカンス(vacance)」とは、「何もない状態(vacant)」と語源が共通です。つまり、バカンスとは、何もしないこと。この「余白」が大事なんですね。現状を見直したり、新しいものを取り入れたりするためには、バッファ(buffer)が必要です。時間的にも、空間的にも、です。 

  

空間的なスペースが必要だと思ったのは、ペーパーレス化を一挙に進めたときです。当時のオフィスにはオープン・スペースがあったので、そこに書類や文房具のたぐいを全部集めたんですね。自分たちが何をもっているのか一覧して、必要なものだけを残しました。全体を見て、取捨選択するためには「スペース」が欠かせないと思います。  

■デジタル時代、「頭のスペース」は拡張した 

じつは、頭のなかも同じではないでしょうか。携帯電話が普及する前の私たちは、よく使う電話番号や取引先の住所など細かな情報を記憶していましたよね。そうすると、けっこう頭はパンパンな状態。かといって、脳のなかのいらないものを出すわけにもいきません。 

  

でも、いまは違います。デジタル・ツールを使うことで、単純な情報を覚えずに済むようになりました。昔と今では、頭のなかのスペースの量がぜんぜん違っているんですよね。ずいぶん広がりました。 

  

頭のなかにたくさんのスペースがあるので、新しいものをいろいろ取り入れることができます。「これとこれをつないでみようか」と新結合(イノベーション)を導く試行錯誤もできるようになります。    

■余白が生みだす、思いがけない次の展開 

このように、ちょっとした余白があると、思いもよらなかった活動が生まれてくることも実感しています。 

 

たとえば、私がオフィスで藍を育てられるのも、デジタル・ツールを使って仕事を効率化して、時間をつくりだしているからです。藍は生き物ですので、水やりを忘れると枯れてしまいます。藍の世話をするためにも時間をつくろうというモチベーションにもなります。 

  

また、神田藍の会では、月に1回の会合を開いています。ダンクソフトの本社ビルからZoomをつないでいますので、リアルに参加したい人は集まり、オンラインで自宅や職場からの参加も可能です。録画もしてありますから、日程が合わなくてもキャッチアップできます。議事録は私がその場で打ち込んで作成し、それを共有します。その議事録は保存しておき、助成金を申請するためのデータとしても活用します。 

 

このように、情報を効果的に活用していくことで、一人ひとりのメンバーに時間の余裕が出てきました。そのおかげでしょうか、いまでは神田藍の活動から、様々な展開が自然と芽吹いてきたところです。   

■デジタル × イマジネーションで進める災害対策 

時間的なスペースは、イマジネーションを働かせるためにも重要です。近年、企業には災害対策が求められています。スタッフの安全を守ったり、事業を続けたりといった社内のことだけでなく、地域における防災拠点を担うといったことも企業の責任です。 

 

ダンクソフトが考えるこれからの防災については、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

『BOUSAIFULNESS ──災害前提社会への備え 』
https://www.dunksoft.com/message/2022-06 

災害対策は、とくにイマジネーションを発揮することが必要です。災害はこれからやってくるものですから。どういう危機が起こりうるのか、あらゆる可能性を事前にイメージしておくということですね。それが備えにつながります。 

  

これからも予期せぬ災害は起こるでしょうが、いまの時代にはデジタルがあります。現代人は、そこが救いだと思いますよ。 

  

今年は関東大震災から100年。報道から当時の様子を見聞きしていると、現場が大混乱していて、情報が発信されないことが問題だと感じました。ですが、いまであればAIやIoTといった技術があります。人が動かずとも、プログラムで勝手に動くインフラが整っています。デジタル・テクノロジーを使うことで地域間の連携は進み、災害のときも、普段のときも、人々の生活はより良くなる時代になりました。 

 

私たちは災害が起こりうるということを、普段、つい忘れてしまいがちです。それでも、時間に余裕があれば、いざというときのことも考えられるようになるはずです。日ごろからの時間預金をすることで、災害対策に気を配ることもできる。そんな心の余裕も、持っておきたいですね。  

■地域全体で時間をつくり、ソーシャル・キャピタルを高める 

個人の時と同じで、地域全体で時間に余剰ができると、地域を今よりよくする可能性がでてきます。ですから、「未来通帳®」というデジタル・ツールを、地域全体で導入し、データを共有することなどもイメージしています。 

 

たとえば、ダンクソフトの学童支援システムを導入している はなまる学童クラブさんの現場に、「未来通帳®」というデジタル・ツールを導入したら、これまでの事務効率化に、さらに輪をかけて効率化できると思います。 

  

はなまる学童クラブさんのシステム導入事例はこちらをご覧ください。

『「学童保育サポートシステム」が運営を楽に便利に、石垣島の子供たちを笑顔に』
https://www.dunksoft.com/message/case-hanamaru-kintone 

石垣島の はなまる学童クラブさんでは、毎月決まって行政に提出する報告書類があるそうです。未来通帳®を使えば、まず、パソコンを使わずに、スマホの音声入力で簡単に情報を入れられる。スマホを使うので、写真の添付にも手間がかかりません。その情報をクラウドにあげることで、家で事務作業する人たちも仕事に関われるようになります。スマホで入力したものが、そのままボタンひとつで日々の報告書に変わる。そして、それを役所への提出書類としても活用できます。デジタル・ツールによって、報告書をつくる時間を大幅に短縮することができるのです。 

 

地域全体で業務の手間や時間を省ければ、お子さんや高齢の方たちをコミュニティ全体で見守ることもできますね。安心・安全な社会がつくりやすくなります。 

 

また、今年の6月には、岐阜のいぶき福祉会(https://ibuki-komado.com/)さんを訪ねにいきました。そこでも、デジタルの力で可能性がひらける可能性を強く感じました。デジタルが進んでいけばいくほど、いぶきで仕事をしている仲間のみなさん(障害のある利用者さんたち)の「できる」が増えていくはずです。 

 

そして、スタッフのみなさんが事務処理にかける時間にしても、確実に大幅に省くことができます。いぶきのみなさんは、団体内に閉じるのではなく、地域に開かれた活動をなさっていますから、時間が余れば余るほど、岐阜ではソーシャル・キャピタルが高まっていくと想像しています。   

■未来通帳®が、事務を、暮らしを、地域を変えていく 

これからは、自分のため、地域のため、社会のために時間を使っていく時代です。一人ひとりが余剰時間をつくっていくことで、これからの日本が変わっていくことになります。学ぶ時間にあて、行動変化を起こすのもいいでしょう。家族と過ごす時間にするのも大事です。考える時間も大事ですから、何もしない余白の時間を確保するのもいいですよね。一人ひとりの地域での活動がもっと増えれば、ソーシャル・キャピタルが豊かな社会へつながるでしょう。「未来通帳®」をつかって時間を預金していくことが、未来をつくります。 

  

ダンクソフトは、この7月から、50周年にむけての10年があらたに始まりました。私たちはどんなふうに「時間」というリソースをつかっていくのか。どんな未来社会をつくっていくのか。あらためて考えるタイミングです。「未来通帳®」を使った地域構想とともに、人々の時間の見方や使い方を変えていきたいですね。