デジタルで「顔の見える」IRがはじまる

■新しいプロジェクトは、つながりから生まれる

 6月の決算月を終え、7月から新年度に入りました。ダンクソフトは今年度もひきつづき「Digital Re-Creation はじまりをつくる」を実現していきます。

  ダンクソフトは、デジタル・テクノロジーで、地域と地域、地域と人、人と人をつなぐ、結びつけていく、ということをやってきました。また、2011年の東日本大震災以降、自らスマートワークの実証実験を行ってきました。徳島県・神山町にいちはやくサテライト・オフィスを開設したことをきっかけに展開したたくさんの活動からの知見を、全国各地に展開し、地域で仕事がうまれるようテレワーカー育成に取り組んできました。

  昨年は、その応用として、株式情報のポータルを運営するストックウェザー社と連携して、岡山県瀬戸内市で、株価情報の入力オペレーター育成事業を行いました。瀬戸内市では、証券会社のデータをダウンロードしてアップロードするという、特別なスキルがない人も参加していただける仕事をご用意し、習熟した方には、さらにステップアップしていただける可能性を含んだ事業となりました。

 この流れの中で、今年度、特に楽しみにしているプロジェクトがあります。それは、「IR」(Investors Relations)の分野で、新たな“はじまりをつくる”ことです。

 

■「顔の見える」IR情報で、ステイクホルダーと企業を結ぶ

 90年代の後半に、ダンクソフトは、証券会社をスピンアウトした人たちと組んで、個人を対象とした株式情報のポータル・サイトを作りました。そのポータルを運営するのが、ストックウェザー社です。その当時からの流れで、私は今も外部役員として参加しています。みなさんもご存知の通り、諸外国と比較して、日本は投資に対して消極的で、総資産の数%しか投資にお金が回っていません。タンス貯金もふくめて、もう少し世の中に循環させていかないと、社会が活性化していかない。とはいえ、投資に対して皆さん積極的ではないので、個人投資家へ情報を提供しているストックウェザー社としては、株に触れたことがない人たちにもっと市場に参加してもらうしかけができないか、という課題がありました。

 そこで、ダンクソフトが、今までデジタル分野で培った知見を活かして、「IR」(Investors Relations)というものの見方を変え、多くの人に参加してもらうしかけができないかという課題に応えようというのが、今年注力するプロジェクトのひとつです。

 世の中には、いい会社がたくさんあります。でも、それが知られていません。魅力を周知していくことで、その会社が伸びて、投資した人にも還元がある。さらに、企業にとっては、地域社会の中でつながりのある人たちが増えることで、新しいアイディアがその会社にめぐり、サービスも地域も結果的にうまくまわること。そうした流れのきっかけをつくるのが、このプロジェクトの眼目です。

 具体的には、上場企業のIRサイトをもっともっとわかりやすく改善して、上場した意味を周りに告知し、ステイクホルダーとのつながりと関わりを強めましょうというサービスです。各企業のIRサイトをもっと興味を持ってもらえるよう作り変えて、上手に関係づくりができるようにし、対話的なコミュニティをつくろうと思うのです。

 とくにIR情報について、現状は、企業のウェブサイトのなかでそっけなくデータが並べられているだけのことが多い。事業報告などの数字だけを比較したところで、「いい会社」だということが分からないんです。上場はしたが、上場のメリットがどこにあるのかを事業会社も深く考えていなくて、上場して終わり、ということもあると思います。もっと会社を分かりやすくコミュニケーションしていくほうが、興味を持って投資した人にとっても還元できる流れができるし、日本全体にもいいことではないかと考えています。

 

■IR(Investors Relations)の「R」=「多方向関係づくり」が大事

 企業のIRサイトをわかりやすく作り変えるということももちろんですが、さらに大事なのは、IRの「R」の方。Relations、つまり多方向でよりよい関係をつくっていって、事業を活性化することです。

  これこそ、あいだの担い手である“インターミディエイター”としてのダンクソフトの出番です。ですから、つくるのはウェブサイトばかりではありません。あわせて、場づくりも促進していきます。オンライン・オフライン双方の場づくりが、よりよい関係を深めるために欠かせません。

  外部に公開されるオープンなウェブサイトに加え、かかわる方たちだけがクローズドの環境で安全に参加できるコミュニティ・ツール「バザールバザール」を使えば、オンライン・コミュニティ形成のご支援ができます。さらに、サテライト・オフィスやさまざまな地域拠点をつかって、実際に集まることのできる場をつくっていく。以前コラムでも触れたように(デジタルという「新しいリアル」の価値)、デジタルでつながることと直接会うことの相乗効果には、はかりしれないものがあります。その中で、みんなで情報交換できて、イノベーションのきかっけをつくることを考えています。

 また、投資といったときに、なんとなく後ろめたいイメージが持たれている現状も払しょくしていかなければいけない、と思っています。投資活動には、いい時も悪い時もありますが、投資面から賢明に関与しつづける人をどう増やせるか。日本のビジネスは、こうした新しい状況をつくらないと活性化していきません。当該企業の株をもつだけではなく、ポイントは「応援する」という意識になれるかどうかだと思います。

  そこは、徳島に本社を置く徳島合同証券様とのおつきあいを通しても、投資を媒介とする「関係づくり」の可能性と重要性に気づくようになりました。つまりそれは、「投資」といっても、従来の経済的リターンだけを目的とした投資を超えて、「応援したい」という気持ちが相手に伝わるような投資であり、株主と企業が共に成長する「共進化」を重視した投資です。

  

■ユニークな企業の「多方向関係づくり」を支援

 IRというと上場している会社だけが対象になりますが、実際には、それ以外の会社のほうが数も多い。上場だけではなく、クラウド・ファンディングも含めて、お金の循環をうながす仕組みは他にもありますので、それらを活用して社会を活性化していくことを、そろそろ模索していく時期にあると思っています。

 日本でも昨今、色々な企業のチャレンジが、私が理事をつとめる東京ニュービジネス協議会などの身近な企業で盛んです。たとえば、ミドリムシで有名なバイオ・テクノロジーのユーグレナ。ミドリムシを燃料にして飛行機をフライトさせるというプロジェクトがあります。化石燃料に代わる新たな燃料の可能性に、バイオ技術でチャレンジしています。同じくバイオ・テクノロジー企業の株式会社CO2資源化研究所は、二酸化炭素から脱石油100%のプラスチックをつくることに成功しました。どちらも環境関連のバイオ企業で、いまもっとも必要とされる課題をテクノロジーで解決しようとしています。

 東京ニュービジネス協議会メンバーのように、上場はしていなくても社会課題を積極的に解決して評価されるこのような企業をPRする場を提供したいと考えています。また、地域社会で、特徴のあるおもしろい取り組みをされている企業もたくさんあります。こうした企業が仲間を増やし、コミュニティづくりをしていくためには、「顔の見える距離感」「企業の人格が伝わる情報」が必要です。それを実現するウェブサイトづくりを入り口に、多方向関係づくりをご支援していきます。必要な情報がステイクホルダーに届き、対話が始まると、ファウンダーとの出会いや関わりはもちろん、雇用、人材確保にもつながっていくでしょう。

  年頭所感で、お金と情報が一体となって流通していく未来について少しお話しました。このとき、地域や社会の課題解決に積極的な企業をみんなで応援するしくみができれば、地域のみならず日本社会がよりよい方向に変化する一助になるはずです。このプロジェクトを通じて、社会の変化を促進させていきたいと考えています。

  もともとダンクソフトは、ご要望どおりのシステムをつくることにとどまらず、お客様との対話を通じて、何かしら次を見据えた提案をしながら、より便利なもの、より良いもの、よりおもしろいものをつくってきた会社です。

  ユニークな活動をされている企業の魅力をより多くの人に知ってもらい、応援したいと思うステイクホルダーが増えるよう、ダンクソフトは、デジタル・テクノロジーと持ち味を最大限に活かして、「多様性の中の関係づくり」のお手伝いをしてきたし、これからもしていきます。

  令和の時代に、新たな“はじまり”がスタートします。

 

 ■毎日がテレワーク・デイズ

  先日、徳島サテライト・オフィスの竹内祐介が記事に取り上げられました。デジタル・テクノロジーで人々を幸せに、というダンク・ビジョンの身近な例のひとつであり、注目高まるテレワークの先行事例のひとつでもあります。

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「仕事は住みたい場所で、技術革新が生む一体感  テレワーク「当たり前」で、みんな幸せ(2)」

 https://www.47news.jp/3670085.html

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  7/22から「テレワーク・デイズ2019」が始まります。東京オリンピック2020の混雑緩和や、働き方改革の広がりを目指して、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府などが展開するものです。いわば「毎日がテレワーク・デイズ」状態のダンクソフトは、もちろんこれに賛同し、毎年参加しています。

  そこで、次回8月のコラムは“テレワーク特集”とし、「テレワークそもそも話」をはじめ、ダンクソフトの「テレワーク検定」やワークスタイルの実際も、大公開する予定です。どうぞお楽しみに!