「人を幸せにするシステム・デザイン」をimagineする


▎注目したい3つのポイント 

 

今回は、先日公開された事例、NPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様のプロジェクトを取りあげます。私の目から見た意味や価値、それを支えた開発メンバーの活躍についてお話しします。  

NPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様の活動の様子

こちらの皆様は、花壇や区民農園の整備など、花とみどりで人と人をつなぎ、明るく安全で、住みよいまちづくりを目指す団体です。東京・大田区で20年以上にわたり活動を続けています。 

 

もともと情報管理に紙とデジタルを併用しておられ、メールやファックスなど連絡方法もさまざまでした。ですが、これから活動を続けていくためには、やはり団体運営にデジタルを取りいれることが必要だと、kintone導入に踏み切られました。 

 

プロジェクトは2年半にわたりました。詳細はここでは省きますが、いろいろと紆余曲折がありました。結果としては、すばらしい成果と価値を生み出しました。 

 

中でも今回注目したいポイントが、3つあります。 

まず、プロジェクトの進め方が、変化に対応できるフレキシブルな伴走型アプローチである点。次に、プロジェクトを通じてお客様の可能性や新しい行動を引きだす「エンパワリング」の好例となった点。そして、よりよい社会に向けた「インターネットの善用」という未来と希望についてです。また、真摯にやさしくクライアントと連携しつづけた開発メンバー、企画チーム大川慶一のサポートぶりについても紹介したいと思います。 

 

事例:作業効率化を機に、デジタル化でプロセスを見直し、誰もが関われる団体運営へ 

お客様:NPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様 
https://www.dunksoft.com/message/case-hanamidori-kintone    

▎対話を通して、変化に対応していくフレキシブルな開発アプローチ 

 ひとつめのポイントは、プロジェクトの進め方です。ダンクソフトとのプロジェクトは、進め方が「変わっている」「他とは違う」とよく言われてきました。 

 

というのも、一般的なシステム開発では、最初にゴールを明確に設定し、機能や仕様を設計書に落とし込んでから、計画通りにつくっていく進め方が、まだまだ主流です。いわば、答えを決めてからスタートするわけです。 

 

しかし、私たちはそうではないやり方を得意としています。何ができるようになるとよいか、大まかなゴールを共有します。そのうえで、まずは出来るところから着手し、小さな部分からでも改善しながら、設計、実装、展開を速いサイクルで繰り返し、開発を進めます。 

 

大田・花とみどりのまちづくり様と対話を重ね、作りあげたシステム。参加者それぞれに送付するポイント発行案内もkintoneアプリから一括で作成が可能。

これは一般的にはアジャイル開発と呼ばれているアプローチです。アジャイルとは、身軽で敏捷なという意味ですが、ダンクソフトはこれにくわえ、昔から、お客様との丁寧な対話と変化への対応を大切にしてきました。対話を通して、少しずつイノベーションを積み重ねていく「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」を掲げるダンクソフトらしい柔軟な開発プロセスです。 

 

これが大きく奏功したのが、今回のプロジェクトでした。プロジェクト開始前では見えてこなかった課題を発見しながらリクエストにも対応できますし、常に「小さな提案」をしながら進めていくことができます。変化の激しい時代には、このほうが結果として、お客様の満足が高く、使い勝手もよくなり、長いこと使っていただけるシステムになるのです。   

▎やわらかい言葉でお客様と連携できるエンジニアがいる 

 大田・花とみどりのまちづくり様は、事業もデータもとても複雑な団体です。多岐にわたるすべての要件を満たすのは、容易ではありません。また、事務局も活動メンバーも比較的ご高齢で、パソコンやデジタルになじみのない人がほとんどでした。 

 

ダンクソフト 企画チーム 大川慶一

そんな中で、つくりながら試運転と改善を重ねる開発スタイルでこのプロジェクトを推進したのが、ダンクソフト企画チームの大川というエンジニアです。コロナ前から100%在宅ワークで勤務している北関東在住のスタッフで、打合せもサポートもリモートが基本でした。団体の皆さんにもオンラインでの打ち合わせに慣れていっていただきながら、共感をもって協働関係を築いていきました。 

 

一般的なIT企業では、営業担当がお客様と接して、エンジニアはお客様と会わずに、営業担当者が聞いてきたことをもとに開発だけするケースが多いものです。でも、ダンクソフトには営業担当はいません。プログラマーやエンジニアが直接お客様と対話し、プロジェクトを進めていきます。一人ひとりがフレキシブルに多様な役割を果たす、「ポリバレント」な動きをしています。 

 

大川はエンジニアでありながら、パソコン初心者にもわかりやすい、やわらかい言葉でデジタルを説明でき、システム導入の話ができます。しかも、そうした方々と、望ましいゴールを探りながら進むプロジェクトです。ダンクソフトに、このようにお客様と対話し、提案ができるエンジニアたちがいることは誇りです。  

 ▎可能性と行動を引きだし、学ぶ意欲を高めた「エンパワリング」なプロセス 

 さて、注目したい第2のポイントは、このプロジェクトに参加することで、団体メンバーの方々がエンパワーされたことです。ひとりひとりの可能性や新たな行動が引きだされたり、学びの意欲が生まれたりしたことです。ダンクソフトのプロジェクトは、関わった人たちがプロジェクトを通じてエンパワーされることも、特徴のひとつです。エンパワーというものは、1回したから終わりではなく、常にエンパワーしつづけることが大事ですから、これを「エンパワリング」と呼びます。 

 

デジタルにチャレンジし続ける、大田・花とみどりのまちづくり様

たとえば、大田・花とみどりの街づくり様の場合、kintoneを導入したことをきかっけに、事務局長みずからが本で勉強して自分でもアプリ作成をはじめたり。メンバーの皆さんも、コロナ禍でプロジェクトを継続するために、初めてリモート会議に挑戦したり。都度都度、大川に相談しながら、より自律的に、自分たち自身の手でもデジタルにチャレンジし続けていく学習力が生まれたようです。そうなると、プロジェクトをさらに先へと展開させていく推進力になるんですね。 

 

このように、ダンクソフトのプロジェクトは、プロセスのなかで一人ひとりが、デジタルによってできなかったことができるようになり、その先の課題に目が向くようになります。 

 

「ここを変えたらもっと良くなる」という試行錯誤を重ねて、今、こちらの団体では、「他にこんなこともできる」「活動と団体のさらなる価値向上を」と、デジタルを活用した新たな価値創造へと視野を広げておられます。   

▎団体の社会的意義 ~花と緑の防犯効果、安全で住みよいまちづくり 

 花や緑や花壇が整っている街は、歩いていても暮らしていても心地よいものです。人の癒しになるだけでなく、防犯効果や安全・安心につながります。「みどりで人と人をつなぎ、明るく安全で住みよいまちづくりを目指す」という、大田・花とみどりのまちづくり様の理念にうたわれている通りです。 

 

大田・花とみどりのまちづくり様が管理する、駅前花壇

普段の生活の中で、たいていの人は花や緑の果たす役割に気づきません。整った状態を維持する方たちがいることや、その業務の大変さを意識することもないでしょう。ですが、ニューヨークもそうでしたが、らくがきがなくなった街では犯罪が減少します。これと同じで、緑が整備されていることで、その街で安全・安心して暮らせているのだと思います。 

 

地域コミュニティの価値を高める活動の意味がいかに大きく重要か、私たちにとっても貴重な気づきとなりました。私自身、住んでいる地域で、緑や環境整備に目が行くようになり、そうした視点から街を評価するようになりました。今までとはまた違った目で地域を見るようになったのも、この団体をご支援したことがきかっけです。   

▎よりよい社会に向けた「インターネットの善用」を目指す 

 こうした社会的意義の大きい団体と連携できることで、自分たちの仕事が、デジタルの力が、またインターネットの活用が、社会がよりよい方向に向かう一助になっていることを、担当者が直接実感できます。その経験や知見を、さらに開発にフィードバックしていくことができます。このことは、ダンクソフトにとって大きな価値になっています。 

 

現に、このプロジェクトを担当した大川は、最近、「人を幸せにするシステム・デザインって何だろう」ということを考え始めています。 

 

インターネットは良くも悪くも便利なツールになりました。それだけに、どうしてもお金が儲かる方向に悪用されることがあります。そちらの方が目立ってきているし、ユーザーの側が心無い企業に日々データを搾取されている実態もあります。 

 

ですがダンクソフトは、「インターネットの善用」を目指しています。よりよい社会に向かうために、インターネットの力を役立てたい。人がより明るい未来に向かうための活動を支援したいし、自分たちも向かっていきたい。そう考えています。 

 

社会全体でさまざまな分断が進むなか、インターネットで仕組みをつくる側にいる立場として、デジタルをどう使っていくか。「デジタル・デバイドの解消からコミュニティの活性化へ」というデジタルの未来を見据え、「よりよいインターネット」に寄与する存在でありたいと思います。