事例:作業効率化を機に、デジタル化でプロセスを見直し、誰もが関われる団体運営へ

お客様:NPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様

花壇や区民農園の整備など、屋外での活動がメインのNPO法人 大田・花とみどりのまちづくり様。多岐にわたる事業の事務作業は煩雑を極め、少人数で抱え込んでいた。このままでは活動を継続することが難しくなると危惧され、仕組みから見直すことに。kintoneを導入し、活動記録の集計作業の効率化がひと段落した今、さらなる活用方法を構想中だという理事長の内田秀子氏、事務局長、総務担当の3名にお話を伺った。 

大田・花とみどりのまちづくりは、東京都大田区を拠点に地域の緑化や緑の普及啓発を行うNPO法人だ。駅前花壇の整備、区民農園の管理、平和の森公園内の展示室を活用した「みどりの縁側」の企画運営などを大田区から委託されている。田園調布せせらぎ公園での園芸セミナー、児童館や福祉施設での花壇管理の技術指導といった緑化啓発事業にも、自主活動として取り組む。

メンバーは現在113名。2003年の設立当時に定年を迎えていたメンバーや、その人たちに誘われた同年代の友人たちが集まったため、一番厚い年齢層は70~80代と高いことが特徴だ。会員の8割以上がさまざまなフィールドに出向いて手を動かし、活動している。現場の数は約24カ所、担当するリーダーと副リーダーは30名弱だ。

 

■膨大な量の煩雑な情報を短時間で集計する重労働

同団体では行政からの受託事業も多く、遂行責任が生じる場面が多いことから、作業内容に応じた報酬を支払っている。ただし、定員を設けず、誰もが参加できる場として運営するため、時給換算といった単純な仕組みではなく、「ポイント制」を採用している。作業量による評価額を、その活動に参加した人数でシェアする仕組みだ。ポイントの算出方法は活動ごとに異なるため、集計作業の煩雑さに事務局は頭を抱えていた。

多くのメンバーが参加する活動では、ポイントの集計作業の負担も大きくなっていた

「集計のための表が非常に細かく、それぞれの活動現場が思い思いの書き方で提出してくれます。送られてくるデータはフォーマットがまちまち。手入力もあれば、エクセルのデジタル・データもあります。それがFaxで送られてきたり、メールで送られてきたりと多種多様でした。それを事務局でとりまとめて、整理して、入力からアウトプットまでの時間が短い中、そこから必要な情報を抜き出して間違いなく転記するのは大変です。孤独な作業でもありました」と事務局長は打ち明ける。3カ月に1回の集計作業を終えると、会員の努力とその成果を数字としてとらえることができて面白いのだが、5日間ほど目がかすみ、頭痛にも悩まされていた。

さらに、区に提出する活動報告書への記入内容も、事業や契約先によって異なる。実施したことを毎日紙に書いて提出するチームもあれば、3カ月分をまとめて提出するチームもある。これに、事務局で集計した参加人数や作業時間のデータを突き合わせて、全体像を把握するのだ。

事務局側がこの膨大な作業を、今後も耐え続ければ済むという話でもなかった。「設立から今まで、さまざまな仕事が次々と増え、現場に合わせてつぎはぎで運営してきました。これでは、これ以上は事業を増やすことができない状態です」と話すのは、事務局長の内田秀子氏だ。作業内容が属人的になり、「今ここで整備しておかないと、いつか無理が来てしまう。今こそが変える時」と感じていたという。

 

■効率化を通して、プロセスそのものを見直し

https://www.dunksoft.com/kintone

事務作業を担える人を増やしたい。できれば入力や参照をしやすいよう改善したい。でもこの団体の複雑な動きに対応できるアプリはあるのだろうか……? 悶々と悩んでいるときに紹介されたのが、ダンクソフトだった。抱えている課題を相談するうちに、まずはポイント集計業務の改善を短期的なゴールに定め、業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」を導入してみることとなった。

「出来上がったものをお渡して終わりというプロジェクトではありません。ある程度アプリを操作できるぐらいまでできた段階でお渡しし、使っていただきながら、ご一緒によりよく改善していく開発スタイルをとりました」と語るのは、プロジェクトを担当したダンクソフト企画部の大川だ。

ダンクソフトがkintoneを試運転できる状態に整え、それを事務局で試しながらフィードバックをしていった。実際に担当者がアプリを使って、ここをこうしたいという改善点を伝え、大川がそれらをアプリ側に反映していく。これを何度も丁寧に積み重ねてきた。

「何かあっても大川さんがいるから、という安心感がありました」と総務担当は振り返る。「初歩的なことを聞いても、すぐに分かるように教えてくださるし、『ここを変えたらヒューマン・エラーが減りそう』と言えば、次回までに変えてくださる。課題解決までの2年半は紆余曲折がありましたが、気持ちの部分は楽に進めることができました」。

kintoneを使って集計作業をする、大田・花とみどりのまちづくりの職員

また、大川は北関東在住で、「何か不可能なことがあれば都内のメンバーが伺い、私は当初からリモートでの参加を想定していました」と語る。ちょうどプロジェクト開始時期がコロナ禍の直前だったことも功を奏した。このプロジェクトでオンライン・ミーティングを行うことで、やりとりを通してkintoneに、そしてオンライン・ミーティングにも徐々に慣れていくことができた。

さらに、kintone導入の過程で、活動自体を見直すようにもなった。「当初は私たちの記録方法にkintoneを合わせようという考え方だったのですが、自分たちの記録方法をkintoneに合わせて変える必要があることに気付いたのです」と事務局長は説明する。記録方法やポイント付与の基準を統一するなど、kintoneへの入力、集計がしやすい形へと改めていった。また、現場のリーダーや副リーダーを対象に、活動記録のデジタル化を推進する背景や、協力してもらいたいことについて説明会を何度も実施した。

kintoneの導入は、集計作業の負担軽減だけでなく、業務改善のきっかけにもつながった。

デジタル化の効果を身をもって体験したのは事務局長で、「頭痛が無くなったんです」と表情を輝かせる。総務担当も「パソコンを触れる人ならばできる作業になり、誰もが何らかの形で関われるようになった」と安堵する。最近はデータ入力担当のスタッフが2名参加するようになった。事務局がデータをスムーズに入力することができるよう、ここまで業務改善が進んできた。さらに今後は、「活動への出欠エントリーなどを、会員自身が直接入力できるようにしていけないか」と、アプリを会員間にも広げていくことを視野に入れている。

 

■高齢だからこそ、オンラインの活用を

ちょうどkintone導入と作業の見直しを進めるタイミングが、コロナ禍と重なった。そのため、活動自体の縮小や人数制限、整理を余儀なくされた。多くの人が縦横無尽に動き回るコロナ前の動き方のままだったら、kintoneに合わせて記録方法を見直すことは難しかっただろう。当初は緊張していたオンライン・ミーティングを、コロナ禍までに経験を積むことができていたのも、思わぬ収穫だった。

会員の多くが高年齢でデジタルの操作に慣れていないことや、さまざまなフィールドで手を動かす活動が主体ということもあり、kintoneに実際に触っているのはまだ数名のみだ。情報共有や気分転換を兼ねて、現場に集まってのリアルなミーティングは今のところは欠かせない。

地域の花壇整備や、Zoom体験講座に積極的に参加する、大田・花とみどりのまちづくりの会員のみなさん

だが一方で「高齢だからこそ家から出るのが難しくなり、オンラインであれば参加できるという人も出てきています。『世の中もオンラインの時代だから』と前向きな方もいるんですよ」と事務局長は付言する。少しでも慣れてもらうため、会員の自宅からきれいな庭を配信したり、2021年2月から数カ月、会員向けにZoom体験講座を継続して開催したりした。すると「最初に参加してくらたのが、80代超の人たちだったんです。高度経済成長を引っ張ってきた世代なので、新しいものにも積極的に取り組んでくれるみたいですね」。

 

■システム活用で、団体の価値を高めていきたい

登録された活動記録を元にポイント集計を行う画面

短期的なゴールだったポイント集計作業の改善がひと段落した今、せっかく導入したkintoneを別のことにも活用できないかと同団体では考えている。ポイント集計によって、誰の何時間の働きがどのような成果につながったのかが有機的に見えてくる。財産ともいえるこの貴重なデータを、団体をうまくアピールできる表現に加工や編集ができないないかと模索中だ。

これまでは講演などに出向いた際の団体紹介で、花壇の説明を一から始め、写真を見せながら「黄色いジャンパーを着ている人たちが働いている」と説明してきた。しかし、それにも若干の違和感を覚えていた。「当団体の活動によってもたらされた変化を、データの裏付けを交えながら表現できれば」と内田氏は意気込みを語る。

参加者それぞれに送付するポイント発行案内もkintoneアプリから一括で作成が可能

内田氏が関心を持つのは、「私たちの仕事によって、大田区の何が変わったのか」だという。「作業量でいえば、もちろん業者の方が行う方が格段に多いでしょう。でも、区民が公共事業を担い、区内の緑の何パーセントに関わったのかということについて、データを用いての表現も試みてみたいですね」

これにはkintone導入に関して理解をしてくれた会への感謝の意味合いも込められている。今まで築き上げてきた業務管理方法でも、どうにかギリギリのところで運営してこられたが、それでも新システムの導入について前向きに受け止め、理解を示してもらった。だからこそ、ポイント集計の作業改善にとどまらない成果を出したい、「宝の持ち腐れにしたくない」と事務局長は話す。

実際に事務局長は、kintoneについての書籍を読み込み、アプリ作成も試しているという。「こっそりアプリを作って、やっぱり何か違うなと思い直してすぐ消したり。試してみても誰かに迷惑をかけるわけではないので、楽しみながら試行錯誤しています」

今後はさらに、区内の緑や公園について独自の目線で調査を行い、ストックしたデータを提案に活かすなどの活用ができないかと構想中だ。「行政に対しても、今まではどちらかというと、与えられた仕事をこなすことで精いっぱいでした。もう少し提案型の事業へと発展させたい、それにあたってデジタルの力を借りられれば」と語る事務局長は、若者たちも関わりやすい事業形態へと変えていくことで、新しい仲間を増やしていきたいという希望を抱いている。 


導入テクノロジー

kintone

デジタルもっと活用プラン

※詳細はこちらをご覧ください。https://www.dunksoft.com/kintone 

NPO法人 大田・花とみどりのまちづくりとは

東京の大田区をフィールドに、ボランティア活動を通じて地域の緑化と緑の普及啓発を行い、豊かさと潤いのあるまちづくりに寄与することを目的としたNPO法人です。

https://hanamidori.sakura.ne.jp/