#Engineering the Next

【Engineering the Next】ダンクソフト・バザールバザール開発物語 Vol.1

全国的に寒波に見舞われた冬のある日、オンラインで各地から3人のDUNKメンバーが集合しました。「ダンクソフト・バザールバザール」開発チームのメンバーです。今回は、「Engineering the Next」と題し、開発者である3人がダイアログを行いました。製品開発のはじまり、開発ポリシー、思い出に残るエピソード、これからの開発構想など、過去、現在、未来の話に花が咲きました。「ダンクソフト・バザールバザール」をご利用の方にも、またそうでない方にも、ダンクソフト開発者たちの距離を感じさせないチームワークや、プロダクト、サービスに対する考えや思いを感じていただければと思います。


竹内 今日の徳島は雪なんですよ。橋は何本か通行止めになっているようですね。

澤口 埼玉も今日は結構寒いですけれど、徳島、雪なんですね。

 数年ぶりで、すごく珍しいことですよね。こちらも積もってきています。

澤口 そういえば、竹内さんは昔から私と話す時は標準語ですが、徳島同士の二人で話す時には徳島の言葉になるので、いつもいいなと思って聞いているんですよ。

竹内 こうやって改まって開発談義するのも珍しいことですが、今日はいろいろ話してみましょう。

 

◆竹内 祐介◆

竹内祐介が描く未来の物語
https://www.dunksoft.com/40th-story-takeuchi 

徳島県徳島市に在住。当日はテレワークで自宅から参加。入社11年目。開発チームのマネージャで、「ダンクソフト・バザールバザール」の開発責任者。SE兼プログラマー。開発チームで扱っているサービス全般への責任を持つ。

◆澤口 泰丞◆

澤口泰丞が描く未来の物語
https://www.dunksoft.com/40th-story-sawaguchi 

埼玉県在住。当日はテレワークで自宅から参加。入社13年目。SE兼プログラマー。「ダンクソフト・バザールバザール」とは別の既存製品について、保守・運用、追加開発を担当する。ダンクソフト40周年プロジェクト・マネージャもつとめる。

 ◆港 左匡◆

徳島県徳島市に在住。2022年3月に阿南高専を卒業し、同年4月、新卒でダンクソフト入社。プログラマー。現在はプログラムをかいたり、製品のテストをしたり、kintone開発に携わるなど仕事の幅を徐々に広げている。

  

■「バザール」を、自分たちの手でいちからプログラミングしたわけ

 

竹内 バザールの提供が開始されたのが、2016年。ダンクソフトに入社して3年目ぐらいの頃に構想が始まったと記憶しています。

澤口 その時、僕も会社にはいましたが、別のプロジェクトに関わっていたので、ほんとうに最初の頃のディスカッションには入っていなかったかな。

 僕はまだまだ子供で、高専にも入っていなかった頃ですね(笑)

竹内 経営チームと開発チーム、そこにさらに今も連携しているパートナーの片岡さんがいましたね。浅草にある古民家をサテライト・オフィスとして使用していたころで、そこで第1回のミーティングを行ったことをよく覚えています。古民家なので、テーブルではなく座卓だったんですよ。なので、座布団にあぐらで、座卓を囲んで、文字通り“ひざ詰め”の状態で。合宿のように、連日どんな新製品のコンセプトにするのか、喧々諤々ディスカッションしていました。当時は結構な頻度で東京に出張したんですよ。

澤口 バザールには「会員かんり」という前身の製品があって。そのリニューアル版として「ダンクソフト・バザールバザール」が生まれたんですよね。

竹内 企画が大変でした。コンセプトもそうですし、実現するためにどんなフレームワークを使うかということも。それでいろいろディスカッションした結果、「自分たちの手でつくろう」ということになりました。だからバザールは、いちから私たちが書いたプログラムになっています。

澤口 前身の「会員かんり」は、マイクロソフトのDynamics CRM(現Dynamics 365)の上で動くソフトウェアでした。Dynamics CRMを使うとリッチな機能は多いのですが、1ユーザー当たりのライセンス料がかかってくるので、会員数が多い組織の場合は、組織に負担してもらうお金が増えてしまうという課題がありました。それと、バザールは、「バザールバザール」と名前に付けたように、1つの組織に閉じずに複数の組織をつなげるものにしたかったのですが、マイクロソフトのDynamicsではそれができなかった。それでいちからつくることに。

竹内 事務局と会員をつなげる機能部分は、「会員かんり」に搭載されていたので、ノウハウとしてもっていました。その部分はバザールでも活かしつつ、新たに会員同士のコミュニケーションを活性化しようということでした。イベント管理、イベント出欠、請求書発行などの機能は、澤口さんが担当してくれました。

港 「会員かんり」に比べて、バザールの方が使いやすさが向上していると感じます。組織同士のつながりにも対応しているという可能性も、「会員かんり」よりも広がりがあって、いいところだなと思っています。

澤口 港さんにそう言ってもらうと、なんだかうれしいですね。

竹内 それと、難しいものを作りこむことに時間をかけるよりも、開発力を無駄にせず、シンプルにつくることに決めました。ただ、立ち上げ時には、たくさんのコードを書かないといけないので、最初の頃は開発を6人前後のチームでやっていましたね。

 苦労した点はあったのですか?

竹内 それはありましたよ!1個の画面を出すのにこんな大変なのかという感じでした。たまに星野さんに見せても、顔色がよくないんです(笑)。すでに数カ月が経っているのに、まだここまでしかできていないのか?という反応で。

ただ、作っている自分たちもそう思っていたんですよ(笑)

例えば、お客様がログインします、といえば、パスワードが正解した時にだけ入るということをプログラムで書いていきます。ログインする動作は使っている人にとっては当たり前ですが、その当たり前のものもひとつずつ手作りしていくのですから、それは時間がかかりました。「今日は、ログインして会員一覧が出る、というデモをします」といわれても、「はあ、まだそれだけ?」という反応になりますよね(笑)

 当時のログが残っているので、ログを見ていると、初期の課題で悪戦苦闘した形跡がみられて、私にとってはとても勉強になります(笑)

  

■自然とボタンを押したくなる「バザール」を目指した

 

竹内 改めて、バザールが何者かというと、企業、NPO、PTAや社会人のクラブ活動などの団体に使っていただくプロダクトです。人が集まる場、団体であれば、どんな分野であれ、そこにまつわる共通作業があると考えています。名簿、年会費の管理、イベント実施のための招待や出欠管理など、これらが効率よくできるようにというのが、バザールの基本構想でした。いわゆる団体を管理している管理者や事務局の仕事効率化をサポートできないかが、スタートでした。 

竹内 ただ、せっかくなので、新しいイメージを追加しました。それは、「バザール」のイメージです。バザールというと、シルクロードなど中東の市場(いちば、マーケット)のイメージが浮かびませんか? そういう市場に人がワイワイ集まるように、会員同士がわきあいあいとしてコミュニティが活性化するといいよね、と考えて、機能を検討していきました。

澤口 さらに、ひとつのコミュニティが活性化するのはもちろんですが、となりにあるコミュニティとも交流できるといいよねと、バザールを2つ重ねて、「バザールバザール」という名前にしたんですよね。

竹内 そう、実際に、2つの組織をつなげて交流するという機能がバザールにはあります。バザールを、単なる効率化を求めた事務局運営ツールとしてではなく、会員間やとなりの団体とも交流するなど、さらに「コミュニティの活性化」を意識したサービスに進化させていこうとしています。ただ、まだやりたいことの一部しかできていないんですよね。

澤口 メジャー・バージョンアップとはまだ言えないかもしれませんが、会員同士のコミュニティ活性化を軸にして、2022年には少しずつ新機能を加えていきました。

竹内 「マッチング機能」という、掲示板(チャット・ツール)を搭載していますが、ここをもっと対話しやすくすることを、昨年から考えていますよね。2022年には、投稿されたコメントに階層型にして返信しやすく、見やすくする機能をいくつか追加しました。

澤口 その後はユーザーさんたちからの反応はどうですか?

竹内 そうですね、掲示板への投稿率が上がった組織がいくつかありますよ。大きくアナウンスしたわけではないですが、自然と使ってくださっているのだなと感じています。

澤口 自然と使えるのが大事ですよね。ダンクソフトの開発するプロダクトに共通することですが、ダンクは、マニュアルを読まないと使えないソフトウェアよりも、メニューがあったら押してみた。そうしたら使えた、というような製品を作りたいですよね。

竹内 そこが、バザールが目指すところでもありますし、私自身がバザールの好きな点でもあります。とにかく、バザールはわかりやすい。自身で作っているからそう感じるのかもしれませんが(笑)、何をしたいかに辿りつきやすいし、余計なメニューや余計なボタンがない。それが、広く使っていただけている理由の一つだと思っています。今後も、誰でも使えるシンプルなもので、デジタル・リテラシーが上下しても、どんな方でも対応できるツールにしたいと思っています。

  

■情報を保護し、使う人を守る「バザール」

 

竹内 デジタル・リテラシーといえば、今は無償で使える便利なコミュニケーション・ツールが世の中に増えましたよね。しかし、便利の代償として、アカウント情報を取られていることもあるし、データを商用利用されたことがニュースになることもありますよね。それを私たちは知っているけれども、デジタルに強くない方々には、そういう仕組みをご存じない方も多く、知らないうちに個人情報をとられている人たちがいます。個人情報を使われていることを知ったら、嫌ですよね? ダンクソフトでは、個人情報を第三者に売却しようとは思っていないです。

澤口 組織の個人情報は、ダンクソフトのモノではありません。利用される方々は、そのひとつひとつの団体の会員さんであって、ダンクソフトの会員さんではないと思っています。ですから、団体の情報を私たちが好き勝手に使っていいものだとは全く考えていません。

竹内 よくバザールのユーザーさんから、“バザールは私たち情報を守ってくれるから安心して使えます”とフィードバックをいただきます。無料のチャット・ツールなどは、個人情報がどう流れているかも、確認しないと危険なことがあります。例えば、データを保管するサーバーが中国にある場合は、中国当局が情報を閲覧できるということもあります。バザールは、マイクロソフトのAzureというサーバーを使っていますが、その置き場所は日本国内なので、より安心・安全な場にデータを保管しているんですよ。

 今、公共性の高い、セキュリティを気にしないといけない団体がバザールを選んでくださっているのも、こういうことが関係しているのかもしれないですね。

 

 

■2023年、バザールはどうなる? どうする?

 

竹内 2023年も、引き続き、掲示板で参加者間での会話・対話が活性化するところを注力していきたいと考えています。そのために考えていることが、「通知」なのですが、この先、「メール通知」を始めようと構想しています。

 スマホ・アプリがあれば便利だというユーザーさんからの声もいただいてはいますが…。でも、アプリでなくても、お知らせが来ると、さらに使いやすくなると思います。

竹内 そうですね、リソースが無限にあれば何でもできるのですが(笑)。メールは何十年も使ってきたツールなので古い印象もあり、メールからも脱却したいところでもあります。ただ、対話を活性化するには、まずは別の人が書いたコメントにタイムリーに気が付かないといけないので、誰かが掲示板に書き込んだよというお知らせがメールで届くようになります。

 確かにメールは古い印象があります。ただ、バザールの開発環境やユーザーさんの幅広い層を考えると、メールがいいのかもしれません。ツールの使い勝手に直結するものだと思います。

竹内 そうですね。今は、メール通知機能と、実現に向けて付随するバックエンドでのしくみづくりですね。

 数年後には、スマホのブラウザー経由でもブッシュ通知を送れるかもしれないという話を聞いたことがあります。いずれはこれから出てくる全く新しい手法を使って改良することも、可能性があると思っています。

竹内 それから、メール通知はお知らせ機能に過ぎないので、2023年以降、さらに対話を促す別の機能性も入れることを検討しています。ますます対話を推進していくツールにしていきたいですよね。

 私の方では今、2023年に始まると想定して、「インボイス制度」に向けた開発を進めています。

竹内 2023年10月に開始と言われている新制度ですが、これが始まると困る方がいる方々もでてきていて、運用開始は二転三転するのかもしれません。ただ、バザールとしては準備を始めています。具体的には、領収書や請求書を発行できる機能がバザールにはありますので、10月の制度開始に備えて、裏側でデータを整えているところです。これを、4月入社の港さんが担当していると考えると、立ち上がりが早いですよね。

 細かいコードの指示をもらってそのまま書くというのは、よくあることだと思うのですが、今回は、どうやって実現するのかというところから任されているので、試行錯誤をするところも経験できました。3ヵ月前から検討を始めましたが、機能としては簡単な機能でも、実際には結構時間がかかりました。バザールの初期の開発がどれぐらい大変だったか、なんとなくイメージがつきます。

澤口 僕は、バザールには、前身の「会員かんり」から引き継いでいる固定観念があると思っていて、それをどこかで脱却したいです。全体的に今は、“事務局と会員”という構図が前提のしくみになっているのですが、事務局と会員ができることに差がなくてもいいんじゃないか、と。例えば、会員の方が、「○○作ったらいいじゃん」と思えば、事務局じゃなくても作れたり。さらに次の製品で実現ということになるかもしれないですが、その区別をもっとなくしていきたいですね。

竹内 会員と管理者ではなく、会員の方にも、会を活性化させていく能力のある方もたくさんいらっしゃいますよね。そういう方がバザール上でもっと活躍できるようになっていくように、明確に役割を分けないで、グラデーションにしていきたいですね。ここ1年間、結構チームで対話をしてきましたが、1年も続けていると、やりたいことが多くでてきますね。

澤口 価格体系のリニューアルについても、ここ最近出てきた話ですね。

竹内 100人程度の会員がいる団体には、年間10万円という今の価格はリーズナブルだと思うんです。でも例えば、僕のクラブ活動で使うには、数名のメンバーなので、年間10万円には手が出せない。バザールを保護者会などで気軽に使ってほしいという考えはあっても、価格がハードルになってしまう。一方で、会員が1000人ほどの規模がある団体には、また別の価格体系があってもいい。同じ団体といえども、規模が色々ありますから、もう少しフレキシブルな価格体系を考えたいねと。

澤口 機能を制限してバザールを広く使っていただけるようにする話もありますよね。少人数の団体にも使っていただきたいのに、なかなかバザールに気軽に手が届かないのはもったいないですよ。制限をしてその分を抑えて、ということもありかもしれないですね。

  

◆広がる評判。使う人に自由度と遊びのある「バザール」へ

 

竹内 以前、事例でも紹介したのですが、今、徳島県阿南市の阿南高専が力を入れている「ACT倶楽部」でバザールを導入していただいています。バザールが、地域企業の課題解決に向けて、地域・企業・学生が協働してプロジェクトを実施する際の、コミュニケーションの場になっています。この阿南高専での活用から始まって、使った方が別の団体やコミュニティにも利用を始めるというように、波が広がりはじめています。会員全員に説明が必要ない、分かりやすい操作性を評価していただいているのが大きいのではないかと。

澤口 どう使ってほしいかについては、他力本願ではないんですが、僕ら開発者がイメージしていること以上のことをしてほしいし、お客様自身に合った活動で新しい使い方を生み出してもらえることを、目指したいと思っていますね。

竹内 それは、バザールに限らず、ダンクソフト開発チームでは共通の考え方でもあります。開発する側が、使い方を決めつけない。使う側の自由度や遊びを残しておくことが大切だと考えて、開発しています。こういう考え方が、ダンクの開発チームでの共通認識ですね。

 

 

ダンクソフト・バザールバザール開発チームの今後の動向に、どうぞご期待ください。