情報を利用する技術

  • 機械はいかに改良されようとも、最も基本的な意識というものを欠いている。それは傾向も欲望も感じることはない。したがって、到達すべき目的も設定しない。記号を蓄積し組み合わせはするが、その意味や作用を知ることはない。ただ機械は、推論をするといってもよい。なぜなら推論することは計算することであるから。しかし機械は、計算機がその加算の正確さが分からないのと同じように、得られた結論の必然性はわからない。あらゆる好奇心とは縁がなく差別しないから、それだけ忠実に与えられた情報を受動的に記録する。なにも自問しないにしても、人間が提起した問いに答える事が出来る。しかし、質問の意味も解答の意味も理解せず、すなわち意志がなく、水洗便所の水槽にひとたび水が一杯になれば、水の出が停まる体系(システム)以上の決断を示さない。
  • あらゆる機械と同様に、電子機械は道具の最も単純なものと同じように、人間が設定する目的の実現のために使おうとして造った技術者にそのすべての能力を負っている。他の機械と同じく何も創造しない。ただしその役割は、もはやエネルギーの変形でなく情報の変形である。
  • にもかかわらず、電子機械はその本性から見ればその無意識性によって人間より、はるか下に位置づけられている。とはいえ、その有効性から見ると多数の操作によって人間よりは優れているが、それは特に人間の中にある、あまりに人間的なものを免れているからであると付言しておこう。