もくじ
■Post-corona社会へ: 一気に進んだテレワーク化で見えてきた課題
■セキュリティは「公衆衛生」と同じ
■テレワークをはじめる時に気をつけたい、PC・回線・ファイル共有のコツ
■どのクラウドを使えば安全なのか?
■いま問題のZoomの脆弱性と対策は?
■この逆境を、「はじまりをつくる」機会に
■Post-corona社会へ:一気に進んだテレワーク化で見えてきた課題
わずか数ヶ月で、急激にテレワーク化が進みました。これは単に在宅勤務が進んだのではありません。Post-corona社会のはじまりです。4月16日発売の雑誌『DIME』6月号でもテレワーク特集が組まれ、私のインタビュー記事がオンライン版に掲載されています。テレワークのノウハウや注意点についてお話ししました。
◆参考情報
小学館ダイム公式サイト @DIME アットダイム
DIME テレワーク上級者が語る在宅勤務を成功させる秘訣は「社員同士が互いに信頼し合う関係にあり」
今回、ほとんどの会社で、いきなり、しかもすぐにテレワークを始めざるをえない状況になりました。人・モノ・環境、いずれの準備も追いついていないケースが多く、ダンクソフトでもさまざまなご相談を受けています。いろんな企業の状況をお聞きしていて感じるのは、インターネット・セキュリティに関するノウハウと意識づけが大きな課題だということです。セキュリティ上の問題によく配慮しないでテレワークをはじめてしまうと、会社の重要な情報が危険にさらされてしまうリスクがあります。
とはいえ、やみくもに恐れる必要はありません。大事なのは、きちんと知って、適切に使うことです。安全のために必要な手間やコストが何か、それはなぜか。そこが分かれば、逆に、何が無駄や過剰なのかも見えてきます。安全で、より便利・快適にインターネットを使えます。情報は会社の最も重要な資産です。大事な資産は、それに見合ったコストと手間をかけて守りましょう。インターネットを上手に使えばいかに便利で楽かを知ると、きっともう戻れなくなるでしょう。
■セキュリティは「公衆衛生」と同じ
インターネット・セキュリティでいちばんあぶないのは、実は「人間」です。というのも、セキュリティは「公衆衛生」と同じなんです。だれか一人でも欠けていると総崩れになってしまうからです。ダムが蟻の一穴から崩れるのと同じです。つまり、みんながセキュリティのいろはをエチケットとして身につけることが大切なわけですね。全体のレベルを上げ続けていく意識づけが欠かせません。ですが、なかなか難しいのが現状です。
かぎを握るのは、やはりなんと言っても「経営者」です。経営者こそ、インターネット・セキュリティの必要性を誰よりも理解し、率先して会社の大事な情報資産を守る意識をもちたいところです。目先の利益を優先する方も多いのですが、ここをないがしろにしていると、のちのち大きな損失になってしまいます。今の時代のリスク感覚を掴んでおかないと、ビジネスチャンスや顧客の喪失、業務の停滞といった負の連鎖にもつながってしまいます。情報漏えいが発生したら、「知らなかった」ではすまされません。経営者の法的責任が問われることさえあります。何より、今まで培ってきた企業の「信頼」がなくなることは、避けたいことです。
◆参考情報
→ 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第1部 経営者編(IPA 独立行政法人情報処理推進機構)
もちろん、技術的なことやシステム運用までを、経営者自身が自分ですることはありませんので、ご安心ください。実務は、エキスパートや技術者に任せればよいのです。ダンクソフトでも、セキュリティ対策のご相談をよく受けており、ツールやシステムのアドバイスからセミナー実施や講師派遣まで、さまざまなお手伝いをしています。
では、具体的にどんなことに注意し、どんな対策をすれば良いのか、順に見ていきましょう。
◆参考情報
→ インターネットの安全・安心ハンドブックVer 4.10(令和2年4月20日)
■テレワークをはじめる時に気をつけたい、PC・回線・ファイル共有のコツ
まずは、テレワークをはじめるにあたって、仕事で使うパソコンは、私用のものとは完全に分けましょう。会社で設定したパソコンを送るなり持ち帰るなりして、仕事の情報にアクセスする環境をつくりましょう。ダンクソフトの場合は、パソコン自体にセキュリティをかけて、2段階認証を設定しています。
そして、共有ファイルには必ずパスワードをかけましょう。たしかに手間はかかりますが、安全の対価と思って、惜しまずやって損はありません。インターネットの世界には警察がいません。悪意をもつ人がすぐそばにいるかもしれません。中小企業や無名の個人であっても、悪意の人からの攻撃は、対岸の火事ではないということです。
また、もしも顧客情報など機密度の高い情報に外からアクセスする必要がある場合、たとえばVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)のような、より安全なネットワークを使うことでセキュリティ・レベルを上げることができます。ただ、このような高度なセキュリティに関しては、エキスパートのサポートを上手に使うのがいちばんです。
テレワークをはじめるときに知っておきたいことについては、3月のコラムでもご紹介しています。あわせてお読みください。また、ダンクソフトでもご相談に応じています。
◆参考情報
→ 東京オリンピック前に、中小企業経営者がやっておくべき“デジタル対策”[後編]
■どのクラウドを使えば安全なのか?
次に、インターネットを使ったファイル共有について。
どこでも仕事ができるようにするためには、繰り返し申し上げているように、「インターネットにあらゆるものを乗せていく」ことが必要です。「クラウド化」というのも、要は情報をインターネットに乗せていくだけのことで、難しいことではありません。
ただし、現在のような状況で「すぐテレワークにしなきゃ」という場合でも、無料クラウドの利用には、くれぐれも気をつけてください。一定容量まで無料のサービスはいろいろありますが、無料ということは、それによって向こうも何かメリットを得ているわけです。多くの場合、自分の情報を対価として渡し、使用を許していることになります。
みなさんがあずけたデータは、多くは広告のために商用利用をされていますが、中には利用規約に同意すると著作権や所有権まで放棄することになるケースもあります。各社が規約にすべて明記してはいますが、きちんと読んで理解して同意している人はどれだけいるでしょうか。安易な選択は要注意です。一方、Microsoftなどは、データは個人のものという発想があるようで、クラウドもグループ・チャット(Teams)も、安全性が高いと言えるでしょう。
■いま問題のZoomの脆弱性と対策は?
このところ一気に利用者が増えたのが、オンライン会議ツールのZoom(ズーム)です。しかし、利用者の急増にともない、Zoomの脆弱性が問題になり、使用を禁止する企業や学校も出てきました。会議に無関係な第三者が乱入して迷惑行為をされたとか、情報が流出したとか、トラブルが発生したためです。
結局、Zoomは使っても大丈夫なのか? 結論から言うと、用途と使い方次第だとみています。Zoomは基本的に使い勝手のいいものを目指して作られています。こういうツールは、セキュリティ・レベルを高めれば動作が重くなるし、手間もかかります。軽くして使い勝手を上げたことが、Zoomの脆弱性につながったわけです。また、他のアプリやツールで使っているID・パスワードと同じものを使い回していると、玄関も窓も開けっ放しにして、さらに鍵をドアノブにぶら下げているようなもので、自分であぶない状態をつくっていますよね。
もっとも、外部からの乱入に関しては設定で工夫できますし、ID・パスワードの使い回しはそもそも危険行為なので、すぐにやめるべきですね。あとは、利用者側のリテラシーが重要になってくるというわけです。
■この逆境を、「はじまりをつくる」機会に
コロナ禍で世界中が大きな打撃を受けていますが、この逆境のなか、インターネットがここまで普及していたことが活路ともなっています。影響はあと2年近く続く可能性があるとハーバード大学が発表するなど、長期化が予想される状況にあって、経営者の皆さんは、ただ嵐がすぎるのを待つだけではなく、新たなイノベーションに向けてマインドセットを切り替えていく機会でもあります。
経済や利益の観点から見ても、前提となる「公衆衛生としてのセキュリティ」を守らなければ、社会が足元から崩れてしまうことがわかってしまいました。また、ウイルスそのものがなくなるわけではなく、今後も地球規模のパンデミックが起こりうることを、世界が理解してしまいました。インターネットによるテレワークはもはやインフラとなり、これまでの東京への一極集中は分散へと向かうでしょう。
さらに、今回あらためて見えてきたのが、日常的な「関係づくり」の大切さだと思います。お客様やスタッフ・パートナーとの相互信頼が築けている企業は、さまざまな人たちとの助け合いが、いい形で機能しています。インターネットが分断をこえるコミュニケーションの場を生みだしていったのです。セキュリティ対策をしっかりしたうえで、インターネットにあらゆるものを乗せていくことにより、お客様との関係づくりは変わっていきます。
経営者の考えが、ますます大事になるときです。スピード感のある対応が必要な局面で、困りごとのご相談もよくお聞きしています。組織をこえて連携することで、いろいろなことがより良くなっていきます。ここからはじまる希望の未来に向けて、この逆境を「はじまりをつくる」スタート地点としていきましょう。
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