テレワーク ──2008年から始まった取り組み

[参加者]

代表取締役 星野 晃一郎(東京)
企画チーム 中 香織(神奈川)
ウェブチーム 久米 まつり(徳島) 

■“出勤”先はネット上のバーチャル本社

星野 今年も7月22日(月)から9月6日(金)まで、「テレワーク・デイズ」が実施されています。ダンクソフトは、この、国の取り組みに賛同し、毎年参加しています。そこで、今回は、先月のコラムでも予告したように、“テレワーク特集”をお届けします。

 テレワーク・デイズ参加企業は、この期間中、各社趣向を凝らした活動をするのですが、これが一番困ります。というのも、2008年から取り組みを始めたダンクソフトでは、もはや毎日がテレワーク・デイズです。この期間だからといって、なにか特別にとってつけたようにやる必要がないからです。一般的に新しい働き方といわれていることが、当社ではすでに日常になっています。そうお伝えすると、よく、では実際にどのようなことが行われているのかを聞いてみたいという声をいただきます。そこで、せっかくの機会ですから、今回のコラムでは、実際にテレワークしている当社メンバー2名との対話形式で、ダンクソフトのワークスタイルをご紹介してみます。「外の目」として、外部のインタビュアーさんにも入っていただきました。

 

──それでは、さっそく、実際にダンクソフト社でテレワーク勤務をしている中さんと久米さんにお聞きします。現在、どんな働き方をしていますか? 今いる場所を含めて、教えてください。

中  私は今、神奈川県の自宅にいます。週5日勤務の裁量労働で、そのうち4日がテレワーク、週に1回東京・神田のオフィスに出社します。オフィスまでは、ドアツードアで約1時間半の距離です。11歳と5歳の子ども2人を育てながら働いています。

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久米 私は徳島県の自宅にいます。私も子どもが2人いて、4年生と1歳7ヶ月です。100%テレワークで、週5日、平日9時〜16時勤務が基本です。まだ子どもが小さいこともあり、子どもの病気や用事などで時間を調整させてもらうこともあります。

 

──社内の他の人とは、どのようにコミュニケーションしていますか?

中  仕事中は「バーチャル本社」とチーム・チャットに入り、常時接続の常態にしています。そこでのテキストによるチャットや、顔を見ながらの会話が中心ですね。

 

──バーチャル本社? どういうものですか?

星野 神田オフィス、徳島や高知にあるサテライト・オフィス、そして各地のテレワーカーをオンラインでつなぎっぱなしにしています。ログインしている全員の拠点の様子が、モニター上に画面分割されて映っています。場所やワークスタイルを問わず、オールダンクソフトが集まるところ、それがバーチャル本社です。今は5か所からの参加ですね。朝、ここにログインすることで、出社した、ということになるんですよね。

久米 はい、みんなの様子がわかるので安心感がありますね。私はまだ東京オフィスには行ったことがなく、徳島のサテライト・オフィスしか知りませんが、こうしてバーチャルにつながっていることで一体感を感じられます。作業中も先輩や上司と画面共有をしながら、まるで横にいるかのようにやりとりできます。

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■「通えないなら、デジタル・テクノロジーを活かせばいい」

──お二人がテレワークをはじめたきっかけは?

中  私は2003年に入社し、普通に毎日出勤していました。その後、2008年に産前産後休暇・育児休暇をとりました。ところが、復職しようとしたところ、保育園に入れなかったんです。これはもう仕事に戻れない。育休延長を相談したところ、星野から、通えないなら、オンラインでつないで勤務をしてみてはどうかと言っていただいて。自宅からのテレワークが始まりました。

 星野 だから中さんはダンクソフトのテレワーカー1号なんです。2010年の4月ですね。ダンクソフトでは2008年頃から伊豆でリモートオフィスの実証実験をしていましたが、当時はまだウェブ回線が不十分で。ファイル送信すらじれったいような状況でしたから、なかなか実用段階には届きませんでした。

 

──2010年には、かなり環境も整っていたということでしょうか。

星野 とにかく試してみようと、中さんの自宅とテレビ電話(ビデオ通話)をつないだんですよね。そうすると、当時まだ1歳数ヶ月だったお子さんが、画面ごしに僕に話しかけてくれた。小さい子とでも、こんな風にコミュニケーションできるなら、これはいける。そう確信しました。あの情景は今でも覚えています。その子がもう11歳なんですね。

中  その後、2012年に2回目の産休・育休をとり、2014年に復職して5年がたちます。2度目の育休中にバーチャル本社ができていたので、復職して「おお」と驚きました。いつもみんなとつながれて様子が見えるし、他にもテレワーカーがたくさんいて。ひとりでテレワークをしていると、やはりちょっと孤独感はありました。なので、バーチャル本社で常につながってるってすごいなと思いました。

星野 オフィスに集まるのがデフォルトだと思いすぎない方がいいですよね。

久米 私は2016年に徳島県阿南市で開催された「プロライター育成講座」を受講したのをきっかけに、ダンクソフトと出会い、2017年から阿南市でテレワークをしています。ダンクソフトが関わった地方創生雇用創出プロジェクトで、地域人材の有効活用を推進するプログラムでした。子どもといる時間をしっかりもちながら仕事をしたいと考えていたので、在宅で仕事ができるのは願ってもない環境でした。

 

──久米さんはずっと徳島ですか? 東京のオフィスに来たことは?

久米 徳島のサテライト・オフィスは行ったことがありますが、東京はありません。実は星野ともまだ実際には会ったことがないんです(笑)。

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星野 こうして顔を合わせて話してるから、全然そんな感じがしないんだけど、そうなんですよね(笑)。実際、顔見て声を聞いて話ができたら、十分わかりますから。対面しないとわからないのってサイズくらいじゃないかなあ。

 

──サイズですか?

星野 そう、身長ですね。若い人は足が長いから座ってるとわからなかったりして。前にもありましたよ。実際に会ってみたら190cmを超える長身で驚いたりとか。「テレワークあるある」ですね。

 

──「あるある」なんですか。おもしろいものですね。

 

■東京と徳島で「まるで隣にいるよう」に働く

──そうしたテレワークを実現するためには、どんな環境やツールが必要でしょうか。高速インターネット回線、PC、それから何が要りますか?

星野 メール、メッセンジャー、あとチーム・チャットやグループツールとかかな。今使っているのはMicrosoft Teams(グループチャット・ソフトウェア)です。

中  そうですね。Teamsのステータスを見れば在席か離席か、また会議中であることなどもわかります。PCを一定時間離れると自動で退席中というステータスになりますし、ステータスが予定表(オンライン上で共有するカレンダー)にも自動連動していますので、便利です。

久米 昼食や席外しの際はチャットで書き置きをします。私は基本12時〜13時をお昼休みにしていますが、前後ずれることもありますし、テレワークの人はだいたいそんな感じで発言してますね。

中  雑談チャットもあるので、そこでちょっとした雑談したりとか。

久米 相談や聞きたいことがあれば、「今ちょっといいですか?」とメッセンジャーで声をかければ、いれば応えてくれます。返事がなければ、今いないか、出られないか。でも必ず返事は来るので。コミュニケーションの不安がなくなるとは言いませんが、あきらかに減りますよね。そこは「ツールの力」を感じます。

中  その「必ず返事は来る」とか「メール・メッセージを見ない人がいない」という土壌は大きいと思います。

星野 同感です。いまだに「メールを送りました」と電話をかけてくる人がぼくの周りにもいて、ということは、それが必要な世界があるわけですから。

久米 はい。社内に関してはその心配がいらない、というのは、とても大きいです。

中  スマホでも見られるので、総じてレスポンスは早いですね。ただ、弊害というか、常時仕事モードになってしまって切り替えをうまくしないと、というのはありますね。

久米 私は、今、仕事はPCのみでやっています。スマホにもアプリを入れたことはあったのですが、やはり勤務時間外に来る通知が気になってしまい、結局、削除しました。PCを開いて、バーチャル本社とTeamsにログインすると、仕事の時間、という感じで、メリハリを自分でつけるようにしています。

中  そうですよね。そういう人も結構います。私の場合は、通知を見て、やってしまった方がすっきりするときは対応しますが、それもケースバイケースです。要するに、それぞれができるだけストレスのないようにするのが一番、ということなんです。会社からは、それをどうこうしろともするなとも一切なく、本人に任されています。だからお互いどうしているのかも知らなかったりします。

星野 そうですね、管理というよりも、「信任」という考え方を大事にしています。

 

■テレワークが優秀な人たちを惹きつける

──企業がテレワークを成功させるコツは、なんでしょうか。

星野 物理的なツール以上に、メンタル、マインドセットが大事なのだと思います。さっきの「メールやメッセンジャーは見るもの。見たら返事をするもの」といったリテラシーも重要です。また、何よりも、情報をシェアする、オープンにすることが当たり前だという組織内文化、風土です。誰にでもわかる情報をみんなにシェアすれば、みんながわかり、動けます。ベースに「信任」と「共有」があるかどうかが、離れた場所にいるメンバーがチームとして働くうえで、とても大事になります。それがあれば、どこにいても一人ひとりが活躍できるし、キャリアアップしていけます。現に久米さんがそうですね

久米 テレワークで最もメリットがあるのは、地方の人なんです。私もそうでしたが、地方では、ハローワークに登録して自分の通勤できる範囲でしか仕事ができないのが現状です。時間や場所の制約で、もってるスキルやよさを活かせない、好きな仕事ができない人はとても多いです。実力のある人がいっぱいいるのに、自分に合わない仕事をしなければいけない。でもこうしてテレワークで仕事ができれば、そういう人が活躍できます。引っ越したり、結婚したり、子どもができたりしても、会社をやめずに仕事を続けることができるのは、とても大きいです。

星野 それは本当に大事なことです。日本は、実力ある女性が結婚や出産とキャリアを両立できるキャリアプランが描けていません。地域人材、地域の活性化という意味でもですし、何より一人ひとりのキャリア形成を考えたときに、企業を移ってしまうとどうしてもゼロクリアーされがちです。でも、企業内でポリバレントに自分の幅を広げて、やれることが増えていくのは、本人にとっても会社にとってもいいことです。そういう現実をむしろ経営者がわかっていないことの問題が大きいです。経営者の理解によって、現実が進んでいくことが大事です。

 

──お2人に質問です。今後のキャリアプランをどう考えていますか。

久米 私は、子育てを大事にしたいこともあり、今はアルバイトとして働いています。子どもがもう少し大きくなって、時間の融通がきくようになったら、将来的には正社員になりたいと考えています。そのためのスキルアップもしていきたいです。

星野 ぜひ。期待しています。

中  私は入社してから今まで、やることがどんどん変わってきています。根本には「無駄をなくしたい」という思いがあって、もっといいやり方が見えると、それを形にしたくなる。今後も自分で自分を限ることなく、できることをやっていけたらと思います。

星野 中さんは、業務の分野もこえて、勝手にいろいろやれちゃう人だから(笑)、どんどんスケールを大きくしていってもらえればと思います。楽しみにしています。

 

──それでは最後に、テレワーク推進のためのビジョンをお聞かせください。

星野 先ほど久米さんの話にあった地域人材の話がやはりとても大事で、もっと多くの方にその意義が伝わるべきだと思います。雇用する側にとっても、すでに人材不足で悩んでいたり、これからどんどん人口が減っていったりという課題があるわけです。そんななか、「テレワーク」を取り入れることで、これだけ優秀な人と出会える。他にも、震災などによるリスクを分散できるBCP(business continuity planning 事業継続計画)の観点からも、また生産性の追求や、クリエイティビティの向上という意味でも、企業経営視点から見たメリットは多くあります。

 中小企業でのワークスタイル改革が、大企業に比べて遅れているのが心配ではありますが、メリットを享受できることは間違いないので、思い切ってやってしまえばいいと思うんです。遅いスタートだからこそ、よりよい環境を低コストで整えて、先を行ける可能性があります。中小企業の経営者の方々には、ぜひダンクソフトのスマート・ワークスタイルを、ご参照いただきたいですね。ダンクソフトは、2019年5月の新オフィス移転を機に、新たな実験的試みをはじめています。今、スタッフの半数以上がテレワークを行うようになりました。

これからの働き方は「スマート」がキイ・ワードです。Digital(デジタル)、Dialogue(対話)、Diversity(多様性)の「3つのD」を活かせたとき、テレワークの質は高まりますし、チームが機動力を発揮します。東京オリンピック2020をきっかけに、日本自体がバージョンアップしていくよう、ダンクソフトもアクションを続けていきたいですね。

 

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★テレワークとは?

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

 言葉としては、「tele = 離れた所ところで」と「work = 働く」をあわせた造語です。「テレ」がテレフォン(電話)だと誤解する人もいるようですが、テレフォンだけでなく、テレビジョン、テレスコープ(望遠鏡)、テレパシーの「テレ」と同じく、「遠く」を意味するギリシャ語がルーツです。

 具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、サテライト・オフィス勤務といった働き方になります。