ダンクソフトの「インクリメンタル・イノベーション」が進む理由

■「人」から始まる。
─インクリメンタル・イノベーションの実際(1)─

 「その人」だからできることが、誰にもあります。ダンクソフトはデジタルで「はじまり」をつくる会社ですが、始めるのは「人」です。というよりも、「人」でしか始まらないと言ってもいいでしょう。

 たとえば、当社の開発チームに、竹内祐介というメンバーがいます。開発チームは文字通りシステム開発を担当するチームです。竹内は、もともとはプログラミングが本務です。ところが、お客様へ製品・サービスのサポートを行っているうちに、お客様との信頼関係が深くなり、やがて窓口的にお客様と対話をする役割を担い、さまざまな側面でお客様とのパートナーシップが生まれていきました。

 竹内は徳島在住で、徳島サテライト・オフィスで仕事をしています。彼が担当するクライアントのひとつに、徳島合同証券株式会社様があります。地元徳島のお客様を中心に、一緒に生きていくことを理念とし、日本株だけを対面で扱う、地域密着の証券会社です。ペーパーレス化の取り組みをご支援したのが、最初のプロジェクトでした。

 7トンもの紙類があふれるオフィスから、3.5トンを廃棄しました。ペーパーレスにして、きれいにすることで、社員の皆さんの意識が変わることを実感されたようです。オフィス環境が社員のマインドを刺激し、新しいマインドが結果を生み出します。年間700万円のコスト削減にも成功されました。そこからさらに、次はクラウドでのファイル共有、次はデジタル環境の整備……というように、デジタル・テクノロジーの活用によるオフィス改革が次々と進み、それにつれて業績も伸びていきました。これは、少しずつ、持続的に進める「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」の好例と言えるでしょう。

 関わりが深まるなかで、竹内がご支援する内容も幅が広がり、社内セミナーのご依頼をいただくようになりました。『クラウド環境でのファイルの使い方』に始まり、『情報セキュリティー』、『プライバシー・マーク』から『BCP(事業継続計画)』まで、竹内は、デジタル・テクノロジーに関する、さまざまなセミナーで講師をつとめるようになりました。徳島県内や四国地域へのご縁が広がり、ビジネス・パーソンを対象としたもののみならず、地元の阿南高等専門学校で授業を受け持つようになりました。OSとプログラミング言語についての授業を、2018年から担当しています。

 このような広がりは、ダンクソフトの製品やサービスがあるからだけでは起こりません。まわりの方々と関わり合うなかで、竹内という人間の可能性やチャームが、新たな活躍の領域をひらいたのだと言えます。一人ひとりが複数のポジションを担うことができる「ポリバレントなプレイヤー」をつねに目指す、ダンクソフトならではの活躍の仕方でもあります。

 徳島合同証券 様は、今では「うちのIT顧問はダンクソフトだ」とおっしゃってくださるようになりました。ペーパーレス化やデジタル・テクノロジーを活かした取り組み等が認められ、同社[A1] は「倫理的消費(エシカル消費)」普及・啓発活動」実践企業の事例として、消費者庁のウェブサイトに掲載されています。また年頭所感でお話しした、ご当地銘柄ファンドの取り組みを、徳島合同証券 様と一緒に進めています。[A2] 

 

■大手術をしなくても、現状は変えられる
─インクリメンタル・イノベーションの実際(2)─

 竹内のいる開発チームで開発した製品のひとつに「日報かんり」があります。社内のプロジェクト管理や商品管理と連動して、原価管理ができるしくみです。もとは25年以上前に、お客様のニーズから開発したシステムでした。その後、ダンクソフト社内でも実際に使いはじめました。IT業界では、製品を自分たちで使いながら、改良を重ねていく文化があります。というのも、やはり自分たちで使うと理解が進むもので、利点も新たな可能性も見えてきます。いまでは、こうして蓄積した実際的な知見をもとに、より使っていただきやすいものへとアップデートし、広くさまざまなお客様に提供しています。

 あるとき、「こういう機能があったらいいよね」と社員から声が上がりました。このリクエストについて、企画チームの中香織が、さっとプログラムをかいて、みんなの希望していた機能を実装してくれました。中は、開発チームではなく、企画チームのメンバーです。それが、javaScript(ジャバスクリプト)でさっと書いてくれました。

 また別の時に、神山サテライト・オフィスにいる新規事業開発チームの本橋大輔が、それまで手作業でしていた作業がシステム上でできるよう、さらに機能を追加してくれた、ということもありました。

 気づいた人が自発的にクリエイトするということは、ダンクソフト文化でもあります。ただ、このとき、前提にある「思い込み」に気づくことが大事で、気づく目を持っていることが大切です。「手作業で当たり前」「それはできないこと」など、いわば“あきらめられている部分“にこそ目を向ける。そして、気づいたらすぐにやってみることによって、人が困っているところにさっと手が届く。

「インクリメンタル・イノベーション(漸進的イノベーション)」とは、まさにこういうことなんですね。小さなイノベーションを重ねて、少しずつ良くしていく。ちょっとしたひと手間で、「現状を変える」ことはできるのです。

 ダンクソフトでは、日々社内でこのような「インクリメンタル・イノベーション」が起きています。昨日より今日、今日より明日。チームを超えて、少しずつより良くしていこうという、文化としての「インクリメンタル・イノベーション」があります。大手術が要らないよう、日々少しずつ気をつけている、とも言えるでしょう。

 大切なのは、現状は「自分の手で変えられる」という実感をもつことです。小さなことであっても、これを続けていくことで、一人ひとりのマインドセットが変わっていく。クリエイティブな自己変容の体験です。やはり“思い込み”に気づく、“あきらめられている部分”に目を向ける、気づいたらすぐにやってみる、といったマインドセットが重要です。徳島合同証券 様もそうでしたし、ダンクソフトも、実際、意識することで少しずつ変わってきました。少しずつでいいんです。「明日に向かって歩を進めていく会社」が増え、働くこと、そして「自分の手で変えられる」ことが楽しい社会に、みんなで向かっていきたいものです。